69 / 96
第1章 出会い
増えるもの減るもの #6
しおりを挟む
『そうか。パーティは組むのか?』
「向こうで組んで来た。どうせ一緒に行動すればパーティに見られるだろうからって…でも俺は正直どうしていいかよく分からない」
庭園で1人になった際に考えていたが結局結論が出なかったので思い切って話してしまうことにした。
『何をだ?』
「とりあえず登録したての3人は鍛えなきゃだろ?でも全員の食や装備何かのためには稼がなきゃだろ?」
リミルは今まで自分で何でもやってきたがアンリに出会って教えて貰ったり守ってもらったりを知って、ギルレイには最近だが家も食事も与えてもらっていた。
皆の家すら与えてもらってこれ以上甘えられない。
自分も保護対象にはそうしなければ行けないのか。
ギルレイに与えられるほどにそういう思いは強くなる。
リミルの中の当たり前は"自分でどうにかする"ことだった。
でもそれだと危険が多いことは知っている。
だから保護するため鍛えるのには付き合わなければならない。
依頼を受けて稼ぐと言っても、強くなければ危険があったり簡単なものしか受けられなかったりと1食食べるのにも苦労するだろう。
そうなると保護するためには強くなるまでは依頼を受けさせられない。
食を確保する手段として狩りもあるが、狩りとなると森に入ることになるので更に難易度が上がるため却下。
保護対象の2人には強くなるまでは鍛錬に集中してもらうしかない。
鍛えることについてはラッセル達のこともあるので一緒にダンジョンに連れていけば良い。
だが、レベルの上がり方がギルレイの言っていた感じだと時間がかかりそうだ。
その間どうやって稼ぐのか。
鍛錬にも付き合って、新たな依頼も受けて、となると今までほどのんびりしていられない。
最悪リミルの所持金を食い潰す形になるだろう。
そこまでしなければいけないのか。
食事や装備などの素材に使う以外全て貯金してきた。
旅で必要になるだろうと思って貯めてきた金だ。
自分の楽しみにしていた旅が出来るのはいつになるのだろう。
連絡手段も作ったのだから直ぐに出ても問題ないはずだ。
自分の貯金を崩す以外に彼らを養う方法を思いつかなくてどうしたらいいのか分からなくなっていた。
そこにギルレイが追い打ちをかける。
本人はそんな気は無いかもしれないが。
『当分は俺が面倒見るぞ?』
「それはダメだろ?」
『何故だ?親が子の面倒を見るのは当然だろ?』
「………当然…か…。ギルレイは何故そんなことが出来るんだ…俺には…無理だ」
とうとうリミルは頭を抱え込んでしまった。
リミルは自分とギルレイの器の大きさを比べて愕然とする。
どうして自分はギルレイのように"貯金なんて良いよ、また貯めるし"と思えないのか。
ギルレイが自分にしてくれるように保護対象の2人にしてやれと言われているようで…。
今のリミルにはお金にも心にも余裕がなかった。
お昼ご飯の時、3人が稼げるようになるまでジャックと分担することになった。
しかしジャックにいきなり二人分もの食費の負担を強いることにも罪悪感がある。
自分の従魔であるから尚更だ。
しかし自分の都合で増えた3人の食費として出してもらうのはもっと気が引ける。
クライの食費の半分を担って貰うとして、リミルは自分の分の他に4人分。
今までから二人分増えることになる。
受ける依頼を増やさなくてはならない。
自身の鍛錬の時間が減る。
人の鍛錬に付き合わなくてはならない。
比較的自由に生きてきたリミルにこの環境の変化はキツいものがあった。
更にここ最近の窮屈さ。
本当なら依頼をこなしてノフテスから一気に帰ってきて日常に戻るはずだった。
旅の許しが出るまで今まで通りその日その日でやりたい事をして生きる。
そのはずだった。
危険がないか分からない相手と行動を共にするように言われ、会ってみたら歳が近くて話も楽しくて、新たな職業を手に入れて、旅へ1歩近づいて。
そこにいた村娘も同行することになって2人の保護者にされて、わいわいと移動して一緒にカリィ食べて奢って。
ギルレイにもルシノにも増築してもらって、ルシノに勘違いされたと思って悲しくなって好きだと自覚して、もう2人同行者が増えてルシノにお昼ご飯を奢ってもらって。
嬉しいこともあったけど今までと違いすぎてこれからのことが不安だった。
ずっと人と一緒にい続けることなどなかった。
人と過ごしたのはアンリとの言葉の勉強の間と誰かと話す時、依頼、ギルレイの家での数日間とルシノに出会ったときしか経験がなかった。
クライとだってたまに別行動することもあった。
クロトと出会ってから人と接する時間が急に増えすぎて心にストレスがかかっていた。
クロトが悪いとかではない。
クロトは良い奴だ。
ただ、慣れていないだけだった。
リミルは誰かが何かを言う前に、逃げた。
「少し出てくる。《転移》」
視界は一気に暗く、キラキラとした光景に変わる。
いくつかの花が綺麗に光っている。
そこは夜の庭園だった──。
「向こうで組んで来た。どうせ一緒に行動すればパーティに見られるだろうからって…でも俺は正直どうしていいかよく分からない」
庭園で1人になった際に考えていたが結局結論が出なかったので思い切って話してしまうことにした。
『何をだ?』
「とりあえず登録したての3人は鍛えなきゃだろ?でも全員の食や装備何かのためには稼がなきゃだろ?」
リミルは今まで自分で何でもやってきたがアンリに出会って教えて貰ったり守ってもらったりを知って、ギルレイには最近だが家も食事も与えてもらっていた。
皆の家すら与えてもらってこれ以上甘えられない。
自分も保護対象にはそうしなければ行けないのか。
ギルレイに与えられるほどにそういう思いは強くなる。
リミルの中の当たり前は"自分でどうにかする"ことだった。
でもそれだと危険が多いことは知っている。
だから保護するため鍛えるのには付き合わなければならない。
依頼を受けて稼ぐと言っても、強くなければ危険があったり簡単なものしか受けられなかったりと1食食べるのにも苦労するだろう。
そうなると保護するためには強くなるまでは依頼を受けさせられない。
食を確保する手段として狩りもあるが、狩りとなると森に入ることになるので更に難易度が上がるため却下。
保護対象の2人には強くなるまでは鍛錬に集中してもらうしかない。
鍛えることについてはラッセル達のこともあるので一緒にダンジョンに連れていけば良い。
だが、レベルの上がり方がギルレイの言っていた感じだと時間がかかりそうだ。
その間どうやって稼ぐのか。
鍛錬にも付き合って、新たな依頼も受けて、となると今までほどのんびりしていられない。
最悪リミルの所持金を食い潰す形になるだろう。
そこまでしなければいけないのか。
食事や装備などの素材に使う以外全て貯金してきた。
旅で必要になるだろうと思って貯めてきた金だ。
自分の楽しみにしていた旅が出来るのはいつになるのだろう。
連絡手段も作ったのだから直ぐに出ても問題ないはずだ。
自分の貯金を崩す以外に彼らを養う方法を思いつかなくてどうしたらいいのか分からなくなっていた。
そこにギルレイが追い打ちをかける。
本人はそんな気は無いかもしれないが。
『当分は俺が面倒見るぞ?』
「それはダメだろ?」
『何故だ?親が子の面倒を見るのは当然だろ?』
「………当然…か…。ギルレイは何故そんなことが出来るんだ…俺には…無理だ」
とうとうリミルは頭を抱え込んでしまった。
リミルは自分とギルレイの器の大きさを比べて愕然とする。
どうして自分はギルレイのように"貯金なんて良いよ、また貯めるし"と思えないのか。
ギルレイが自分にしてくれるように保護対象の2人にしてやれと言われているようで…。
今のリミルにはお金にも心にも余裕がなかった。
お昼ご飯の時、3人が稼げるようになるまでジャックと分担することになった。
しかしジャックにいきなり二人分もの食費の負担を強いることにも罪悪感がある。
自分の従魔であるから尚更だ。
しかし自分の都合で増えた3人の食費として出してもらうのはもっと気が引ける。
クライの食費の半分を担って貰うとして、リミルは自分の分の他に4人分。
今までから二人分増えることになる。
受ける依頼を増やさなくてはならない。
自身の鍛錬の時間が減る。
人の鍛錬に付き合わなくてはならない。
比較的自由に生きてきたリミルにこの環境の変化はキツいものがあった。
更にここ最近の窮屈さ。
本当なら依頼をこなしてノフテスから一気に帰ってきて日常に戻るはずだった。
旅の許しが出るまで今まで通りその日その日でやりたい事をして生きる。
そのはずだった。
危険がないか分からない相手と行動を共にするように言われ、会ってみたら歳が近くて話も楽しくて、新たな職業を手に入れて、旅へ1歩近づいて。
そこにいた村娘も同行することになって2人の保護者にされて、わいわいと移動して一緒にカリィ食べて奢って。
ギルレイにもルシノにも増築してもらって、ルシノに勘違いされたと思って悲しくなって好きだと自覚して、もう2人同行者が増えてルシノにお昼ご飯を奢ってもらって。
嬉しいこともあったけど今までと違いすぎてこれからのことが不安だった。
ずっと人と一緒にい続けることなどなかった。
人と過ごしたのはアンリとの言葉の勉強の間と誰かと話す時、依頼、ギルレイの家での数日間とルシノに出会ったときしか経験がなかった。
クライとだってたまに別行動することもあった。
クロトと出会ってから人と接する時間が急に増えすぎて心にストレスがかかっていた。
クロトが悪いとかではない。
クロトは良い奴だ。
ただ、慣れていないだけだった。
リミルは誰かが何かを言う前に、逃げた。
「少し出てくる。《転移》」
視界は一気に暗く、キラキラとした光景に変わる。
いくつかの花が綺麗に光っている。
そこは夜の庭園だった──。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様
あけちともあき
ファンタジー
上澄タマルは過労死した。
死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。
「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」
だが、その世界はダークファンタジーばりばり。
人々が争い、魔が跳梁跋扈し、天はかき曇り地は荒れ果て、死と滅びがすぐ隣りにあるような地獄だった。
こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。
あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。
ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。
死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ!
タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。
様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。
世界の異形をコレクションし、タマルのゲットしたモンスターやアイテムたちを寄付できる博物館。
地獄のような世界をスローライフで侵食しながら、タマルのドキドキワクワクの日常が始まる。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。
ふとした事でスキルが発動。
使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。
⭐︎注意⭐︎
女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる