稀有ってホメてる?

紙吹雪

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第2章 覚悟と旅立ち

更なるレベル上げ #3

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 リミルは何となく、この場で言えそうな気がして夜にクライと決めた内容を話すことにした。

「昨日ギルレイから聞いたんだけど、俺の戸籍が見つかったんだ。」

 昨日話していた内容がわかりクロト達は納得し、安堵した様子で祝福してくれた。身元が分からないままは異端だからこの反応が普通なのかもしれない。

『ホントなの!…良かった。』

『…そうだな。良かった。年齢や出身は分かったのか?』

 全員から祝辞を述べられ擽ったいがリリアンとクリードのほんの僅かな間が気になった。探るように見ると後でと言われているように感じた。


「…ああ。アキリムと同い年で28歳、出身はルセフらしい。」

『同い年だったんだ。そう言われるとそんな気もするなぁ。』

『俺には二人とも20代に成り立てくらいに見えるよ…。』

『クロトのとこだと歳をとる毎に老けていくんだもんね。幼世代で老けた人は見たことないなぁ。唯一ジャックが同世代の中では年上だよね。一応。』

 アキリムがのんびりとした口調で言うとクロトが全然28歳に見えないと愕然とし、ニーナはクロトの認識が中々直らないから仕方ないといった感じで話す。

『俺はもうすぐ50歳だからな。』

『え、今年の誕生日か?』

『いやあと数年。』

 ジャックとのやり取りにクロトが『マジかよー。』と変なポーズを取るとアキリムとリミルが笑う。つられてニーナも笑い、ジャックはやれやれと肩を竦める。クライに前足を乗せられクロトが転け、みんなで笑う。
 最近のお決まりの流れである。

『仲良いなお前ら。』

『楽しそうで良いわね。』

 クリードとリリアンもクスクスと笑った。


 笑い終えたリミルは話を戻し、旅の最終地点をルセフにしようと思っていることを伝えた。

「痕跡を見つけたいんだ。両親は行方不明だし。」

『行方不明?…そうか。他に親戚は?』

 クリードが何かを察したのか深堀はしないでくれたので助かった。皆を巻き込みたくはない。

「居るよ。両親の親とママの兄が。グレモスには両親の親達に会ってみないかって言われてて、その時はまだ確信がなかったんだけど、昨日ギルレイから確定だって聞かされて…。会おうか迷ってる。」

『そうなのね。母親のお兄さんって言うのは?』

 リリアンもクリードが突っ込まないことに気づいてそちらから意識を逸らしてくれた。


「ギルレイだよ。」

 一瞬沈黙があり、皆が一斉に反応し出す。

『嘘ぉ!リミル君、ギルレイの甥っ子だったの?』

 ニーナが驚き、

『あんまり似てないな。』

 クロトが驚き、

『妹の子供なら似てなくて仕方ないと思うよ?』

 アキリムが納得し、

『そうなのか。』

 クロトが納得し。

『分かって良かったな。親戚なんだから思い切って甘えれるようになるだろ?』

 ジャックの認識は多分一般的だ。

「今までの生き方を簡単には変えられない。甘え方もよく分からないしな。でもまぁ、パパやママもギルレイを頼りにしてたみたいだし俺もそれぐらいなら。」

 クリードとリリアンはあまりの衝撃に声も出ず、ただただ顔を見合わせていた。暫く見つめ合うとハッとしたようだった。


 その後、必然と手紙の話になり、コピーした3枚目を見せる。原本は大事に収納している。写絵もコピーして原画は保存してある。

『事件に巻き込まれた感じか?』

 ジャックがそう言うので用意していた言葉を述べた。

「いや、パパは捜査機関の人らしいからそれでじゃないかってギルレイとは話した。」

『捜査機関の人か。なら有り得るね…。』

 アキリムとジャックが納得してくれたのでホッとする。ニーナとクロトは知らないのでクリードが説明してくれた。

『危険な仕事なの?』

『警察みたいなものか?』

『そうだな。警察も捜査機関の1部だ。危険は多い方だろうな。ギルドは対魔物だが捜査機関は対人物だ。捜査相手によっては危険なこともあるだろう。』


 クリードの説明に皆が納得してくれたところで、ニーナがそれにしてもと口を開く。

『リミル君愛されてるんだね。良かったね。』

「ああ。ありがとう。」

 ニーナの屈託のない笑顔にリミルは寂しく笑うしかできなかった。


 クライはその流れで気になっていた両親の親と会うことについて聞くことにした。

<それで、ミルレアの親とリーマスの親には会うのか?>

「うーん…。」

 正直、あまり会いたいとは思わない。せめてもう少し心に余裕が出来てからにしたい。どう接して良いのかも分からないし、どういう顔して会えばいいのかもわからない。
 そうリミルが言うと、無理しなくて良いと思うとニーナが言ってくれた。ニーナも両親の親とは会っていないらしい。
 アキリムとジャックは不思議そうだったが、自分たちには分かってあげられないからゆっくり決めればいいんじゃないかと言ってくれた。

『複雑だよな…。』

 クロトがボソリと言ったのが不思議とリミルの耳に届いた。本当に複雑な心境だ。
 捨てられたのであれば憎んで自分には関係ないと切り捨てることも出来たかも知れない。愛されていたからこそ、接し方が分からなかった。会ってみればいいのかも知れない。でも簡単には踏ん切りがつかない。どんな人かもグレモスに聞いた程度しか知らない。会うのが怖い。
 そう思う一方で愛されていてとても嬉しかった。もし祖父母にも愛されるのなら会ってみたい。そうも思っている。自分も優しい家族に囲まれることが出来るのでは、そう思うと期待してしまう。だからこそ、より一層会うのが怖くなって行く。

『うん…複雑だな。』

 はは、と乾いた笑いが出た。



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