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私と僕の間にあるもの
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「生徒会は多数決の結果から、明日から六年二組の裕樹さんは、女の子として学校に通うことに決定いたしました」
体育館で行われた生徒総会で一つの議題が可決された。
この議題は、先生を巻き込み半年かけて行われた一大プロジェクトの結果である。
でも、それですべてが解決したわけではありませんでした。
「来るなオカマ!」
「私はただ、落ちた消しゴムを拾ってあげようとしただけなのに……」
「うるせえ! 俺のものに触るなよ。オカマちゃんがうつるだろ!」
「だよなー」
「そーそー」
この六年二組の教室だけは、こうした怒号が常に起きている。
「ちょっと男子! 生徒総会と学活の時間に決めたことでしょ。裕樹さんの心は女の子なんだから、みんなで分かり合おうって」
いつもいざこざが起きると、間に行ってくれる生徒会長の雛子ちゃん。
「はい来ました、ほんと生徒会長はウザ。俺はオカマが嫌なんだよ」
耳をほじりながら剛志くんは反論してくる。
「いいの雛子ちゃん。私が悪いのだから」
「そんなことないよ。悪いのはちゃんと決まりを守らない男子なんだからね」
その雛子ちゃんの笑顔にいつも私は救われていた。
「お手洗い一緒に行こうか?」
「うん」
雛子ちゃんと手を繋いで教室を出ると、いつもの口癖が出てきた。
「ほんと男子っておこちゃまよね。裕樹さんは女の子なんだし、あの態度ってヒドくない」
「うん、そうだね……」
私はそれ以上、本物の女の子でないから言えなかった。
お手洗いは女子トイレを使用できるので、生徒会の面々のおかげで本当にありがたい。
しかし、扉を開けて二人で入ると数人の女子が居たが、私を見るとそそくさと出て行った。
「何よ!」
「仕方ないよ、見た目や心は女の子だけど、今の体は違うしさ」
「そうかもだけど、ちゃんとみんなで決まったことだしさ、気にしないでね」
生徒会長だからかもしれないけど、雛子ちゃん本当に優しい。
ある日、一人でお手洗いに行くと、中に居た女子からも指摘されてしまう。
「裕樹くんは一応男子なんだし、女子トイレに行るのはちょっとねぇ……」
「ごっ、ごめんね」
慌てて出てきたけど、いつもの雛子ちゃんは居ないし、仕方なく隣の男子トイレへ入ると、すぐに個室を使った。
それを見ていたのは、剛志たちだった。
「なぁ聡。俺、いいこと思いついたんだけどさ……」
剛志たちは男子トレイに入ると、バケツに水を汲み始めた。
「そうじ、掃除っと」
モップやらブラシでカタカタ音を立て、喚いていた。
「よし水がたまったから流すぞ」
そう剛志が言うと、溜まったバケツの水を個室の上の開いているところめがけて、上から水をかけてきた。
「きゃー」
私はずぶ濡れになった。一瞬のこと過ぎて何が起きたのかわからなかったが、外で笑い声をあげている剛志たちを声を聴いていると、早く逃げなきゃと思った。下着を上げると個室を飛び出していった。
「おい、ちゃんと流していけよ!」
「そーだーそーだ」
「わっははははははは」
後ろから聞こえてくるのは剛志たちの笑い声であった。
「もうやだよ」
逃げる様に昇降口へと向かう。早くこの学校から逃げなければと、言う思いでいっぱいだった。
「あれ、裕樹さんどこに行くの?」
昇降口で上履きから靴に履き替えていると、先生に呼び溜められたが、答える気力すら起きなかった。ただこの場から逃げたい一心である。
「ちょっとずぶ濡れじゃないの! 一体何があったの?」
先生は私の手首を握るも、やはり私は何も答えることなく、濡れた手で振り切って逃げだした。
校門を開け放つと、その場からとにかく逃げたかったのだ。
走って走って、気が付くと近所の土手を歩いていた。
悔しくて悔しくて、土手の芝生に座ると二匹の猫が寄ってきた。
「にゃーん」
猫の親子がすり寄ってきた。
撫でてあげたると、とても喜んでくれた。
ある程度遊び終わると、私の横で親猫はゴロンと横になった。
子猫はチョウチョでじゃれている。
私も猫の自由な発想に習って、芝生の上に横になってみた。
目の前に広がるのは、まばらに雲があるり、とても晴れ渡っていてきれいな空だけだった。
「くーん、わん?」
気づくと右隣りに白い犬が来ていた。
犬にまで元気づけられているのだと思って、わんわん泣きながら、疲れ切って眠ってしまった。
私の何がいけないの?
この服や心だからいけないのかな?
こんな思いをするなら、生まれてこなかった方がよかったのかな?
ねぇ、神様。居るとしたら私はどうしたらいいのでしょうか?
「ねえ、君。起きてよ。学校はどうしたの?」
起こされるとTシャツにショートパンツ姿の肌の白くてきれいな、お姉さんが右隣に座っていた。
「ずっと泣きながら寝ているんですのよ」
左隣にはフリフリピンクドレスで、日傘をさしたお姉さんがいつの間にか座っていた。
私は混乱の中で目をパチクリしていた。
「私達に話せることなら話してみてくれないかな」
「力になれるかもですわ」
そう言ってくれてうれしくて、また泣き出してしまった私。
フリフリドレスのお姉さんはトモエさんと言って、そっと抱きしめてくれた。Tシャツのお姉さんは、ユキさんと言って私の頭をなでてくれた。
落ち着いたころに、私の心と体の問題と、今起きている事情を話した。
「そっか、君の心は女の子なんだね」
「……はい。ですが周りからはそう思われてないんです」
「自分の意見をちゃんと言ったかい?」
「それは……言えてないかもです」
「いくら回りがサポートしてくれても、本人が意見を言わないと何も変わらないわ」
「でも、怖くて……」
「そうね、とっても怖いよね。だけど言わないと何も伝わらないわ」
「ちゃんと伝えられるかな……」
「あなたは自分の心と体が違うことに気づけたのだもの。他の人よりも自信を持っていいのよ」
「君の心は自由なんだ」
「……私は……自由」
「この先の人生でもあなたを拒絶する人は必ず出るわ。時には自分のために意見を言わなきゃ、何も変わらないもの」
「そろそろ、学校へ戻ろうか!」
「服も乾いたしちょうどいいんじゃないの?」
ユキさんとトモエさんにそう諭されると頷いた。
学校への足取りとはとても重い、何度も立ち止まりながらも、ユキさんとトモエさんは「大丈夫だよ」「勇気を出してみよう」と励ましてくれた。
学校へ着くと先生がすぐに駆け寄ってきてくれた。
ユキさんはトモエさんは、私が出て行った経緯を先生に話してくれた。
「辛い思いをされてしまって、ごめんなさい」
先生は泣きながら謝ってくれた。先生は悪くないのに
「あなたを守り切れなかったのだもの」
でも先生は悪くない。私にはそれ以上、言えなかった。
「さぁ、入りずらいかもしれないけど、教室に戻りましょうか」
私は頷き、先生に背中を押されて昇降口へと向かった。
お姉さんたちにお礼してないや、そう思い校門を見ると、そこには白い犬と親子の猫が座っていた。
ユキさんとトモエさんは? もしかしてと思いながらも私は手を振ってお別れをした。
クラスでは議論に決着をつけるべく、私のことをみんなが待っていた。
入ると全員の視線は私にそがれていて、その目線から逃れたくていたまれなかった。
教壇には生徒会長である雛子ちゃんが居た。
「おかえりなさい。みんな裕樹さんが来るのを待っていたのよ」
私は雛子ちゃんの隣に用意された椅子に座らされる。
「大丈夫。私が隣にいるから、ね」
ニコっと私に笑顔を見せると、学活が再会された。
今度は私からの意見を言わなきゃね。そう決意した。
体育館で行われた生徒総会で一つの議題が可決された。
この議題は、先生を巻き込み半年かけて行われた一大プロジェクトの結果である。
でも、それですべてが解決したわけではありませんでした。
「来るなオカマ!」
「私はただ、落ちた消しゴムを拾ってあげようとしただけなのに……」
「うるせえ! 俺のものに触るなよ。オカマちゃんがうつるだろ!」
「だよなー」
「そーそー」
この六年二組の教室だけは、こうした怒号が常に起きている。
「ちょっと男子! 生徒総会と学活の時間に決めたことでしょ。裕樹さんの心は女の子なんだから、みんなで分かり合おうって」
いつもいざこざが起きると、間に行ってくれる生徒会長の雛子ちゃん。
「はい来ました、ほんと生徒会長はウザ。俺はオカマが嫌なんだよ」
耳をほじりながら剛志くんは反論してくる。
「いいの雛子ちゃん。私が悪いのだから」
「そんなことないよ。悪いのはちゃんと決まりを守らない男子なんだからね」
その雛子ちゃんの笑顔にいつも私は救われていた。
「お手洗い一緒に行こうか?」
「うん」
雛子ちゃんと手を繋いで教室を出ると、いつもの口癖が出てきた。
「ほんと男子っておこちゃまよね。裕樹さんは女の子なんだし、あの態度ってヒドくない」
「うん、そうだね……」
私はそれ以上、本物の女の子でないから言えなかった。
お手洗いは女子トイレを使用できるので、生徒会の面々のおかげで本当にありがたい。
しかし、扉を開けて二人で入ると数人の女子が居たが、私を見るとそそくさと出て行った。
「何よ!」
「仕方ないよ、見た目や心は女の子だけど、今の体は違うしさ」
「そうかもだけど、ちゃんとみんなで決まったことだしさ、気にしないでね」
生徒会長だからかもしれないけど、雛子ちゃん本当に優しい。
ある日、一人でお手洗いに行くと、中に居た女子からも指摘されてしまう。
「裕樹くんは一応男子なんだし、女子トイレに行るのはちょっとねぇ……」
「ごっ、ごめんね」
慌てて出てきたけど、いつもの雛子ちゃんは居ないし、仕方なく隣の男子トイレへ入ると、すぐに個室を使った。
それを見ていたのは、剛志たちだった。
「なぁ聡。俺、いいこと思いついたんだけどさ……」
剛志たちは男子トレイに入ると、バケツに水を汲み始めた。
「そうじ、掃除っと」
モップやらブラシでカタカタ音を立て、喚いていた。
「よし水がたまったから流すぞ」
そう剛志が言うと、溜まったバケツの水を個室の上の開いているところめがけて、上から水をかけてきた。
「きゃー」
私はずぶ濡れになった。一瞬のこと過ぎて何が起きたのかわからなかったが、外で笑い声をあげている剛志たちを声を聴いていると、早く逃げなきゃと思った。下着を上げると個室を飛び出していった。
「おい、ちゃんと流していけよ!」
「そーだーそーだ」
「わっははははははは」
後ろから聞こえてくるのは剛志たちの笑い声であった。
「もうやだよ」
逃げる様に昇降口へと向かう。早くこの学校から逃げなければと、言う思いでいっぱいだった。
「あれ、裕樹さんどこに行くの?」
昇降口で上履きから靴に履き替えていると、先生に呼び溜められたが、答える気力すら起きなかった。ただこの場から逃げたい一心である。
「ちょっとずぶ濡れじゃないの! 一体何があったの?」
先生は私の手首を握るも、やはり私は何も答えることなく、濡れた手で振り切って逃げだした。
校門を開け放つと、その場からとにかく逃げたかったのだ。
走って走って、気が付くと近所の土手を歩いていた。
悔しくて悔しくて、土手の芝生に座ると二匹の猫が寄ってきた。
「にゃーん」
猫の親子がすり寄ってきた。
撫でてあげたると、とても喜んでくれた。
ある程度遊び終わると、私の横で親猫はゴロンと横になった。
子猫はチョウチョでじゃれている。
私も猫の自由な発想に習って、芝生の上に横になってみた。
目の前に広がるのは、まばらに雲があるり、とても晴れ渡っていてきれいな空だけだった。
「くーん、わん?」
気づくと右隣りに白い犬が来ていた。
犬にまで元気づけられているのだと思って、わんわん泣きながら、疲れ切って眠ってしまった。
私の何がいけないの?
この服や心だからいけないのかな?
こんな思いをするなら、生まれてこなかった方がよかったのかな?
ねぇ、神様。居るとしたら私はどうしたらいいのでしょうか?
「ねえ、君。起きてよ。学校はどうしたの?」
起こされるとTシャツにショートパンツ姿の肌の白くてきれいな、お姉さんが右隣に座っていた。
「ずっと泣きながら寝ているんですのよ」
左隣にはフリフリピンクドレスで、日傘をさしたお姉さんがいつの間にか座っていた。
私は混乱の中で目をパチクリしていた。
「私達に話せることなら話してみてくれないかな」
「力になれるかもですわ」
そう言ってくれてうれしくて、また泣き出してしまった私。
フリフリドレスのお姉さんはトモエさんと言って、そっと抱きしめてくれた。Tシャツのお姉さんは、ユキさんと言って私の頭をなでてくれた。
落ち着いたころに、私の心と体の問題と、今起きている事情を話した。
「そっか、君の心は女の子なんだね」
「……はい。ですが周りからはそう思われてないんです」
「自分の意見をちゃんと言ったかい?」
「それは……言えてないかもです」
「いくら回りがサポートしてくれても、本人が意見を言わないと何も変わらないわ」
「でも、怖くて……」
「そうね、とっても怖いよね。だけど言わないと何も伝わらないわ」
「ちゃんと伝えられるかな……」
「あなたは自分の心と体が違うことに気づけたのだもの。他の人よりも自信を持っていいのよ」
「君の心は自由なんだ」
「……私は……自由」
「この先の人生でもあなたを拒絶する人は必ず出るわ。時には自分のために意見を言わなきゃ、何も変わらないもの」
「そろそろ、学校へ戻ろうか!」
「服も乾いたしちょうどいいんじゃないの?」
ユキさんとトモエさんにそう諭されると頷いた。
学校への足取りとはとても重い、何度も立ち止まりながらも、ユキさんとトモエさんは「大丈夫だよ」「勇気を出してみよう」と励ましてくれた。
学校へ着くと先生がすぐに駆け寄ってきてくれた。
ユキさんはトモエさんは、私が出て行った経緯を先生に話してくれた。
「辛い思いをされてしまって、ごめんなさい」
先生は泣きながら謝ってくれた。先生は悪くないのに
「あなたを守り切れなかったのだもの」
でも先生は悪くない。私にはそれ以上、言えなかった。
「さぁ、入りずらいかもしれないけど、教室に戻りましょうか」
私は頷き、先生に背中を押されて昇降口へと向かった。
お姉さんたちにお礼してないや、そう思い校門を見ると、そこには白い犬と親子の猫が座っていた。
ユキさんとトモエさんは? もしかしてと思いながらも私は手を振ってお別れをした。
クラスでは議論に決着をつけるべく、私のことをみんなが待っていた。
入ると全員の視線は私にそがれていて、その目線から逃れたくていたまれなかった。
教壇には生徒会長である雛子ちゃんが居た。
「おかえりなさい。みんな裕樹さんが来るのを待っていたのよ」
私は雛子ちゃんの隣に用意された椅子に座らされる。
「大丈夫。私が隣にいるから、ね」
ニコっと私に笑顔を見せると、学活が再会された。
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