ループもの小説のモブに転生したがどうやら今世もループしそうなのでオレは肉便器になる

このえりと

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60:ケイト・エスターのこれから①

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 アミス子爵――リオの父親の突然の逮捕により、学園は朝から騒然となっていた。まあ生徒たちが話している内容のほとんどは、グレン様との婚約はどうなるのか、だけど。
 まだしばらくリオに会えなさそうだなと寂しい気持ちになりながら教室に入り席に着く。鞄から教科書などを取り出していると、教室の入り口の方が騒がしくなった。

「お前、なんで学園に来てるんだよ!?」
「父親が大変なのに……薄情なやつだな、アミス!」

 耳に届いた名字に驚きながら振り返る。ヤジのような罵声のような言葉を浴びせられているのに全く気にするそぶりもなくこちらに歩いてくるのは……。

「……リオ?」
「おはよう。久しぶりだね、ケイ」
「あ、ああ……おはよう……久しぶり……」

 にこにこと微笑みながらオレの隣に座ったのは本当にあのリリオン・アミスなのだろうか。生徒たちからの心ない言葉に、いつもならば傷つき怯えたような表情になり背中を丸めているはず。

「……リオ、大丈夫か?」
「なにが? ……あ、家のこと?」
「それもなんだけど……その、さっきの……」

 ちらりと入り口の方を見る。かけた言葉を無視された生徒たちは唖然とした表情を浮かべている。リオも一瞬だけ彼らの方に視線を向け、すぐにオレに笑顔を向けた。

「えへへ、心配してくれて嬉しいな。でも大丈夫。ぼくもう気にしないことにしたから」
「そう、なのか? まあ、それならいいけど……」

 この数週間でなにがあったのだろうか。オレが知っているリオじゃない気がして、不信感が募っていく。

(……まさか、ここにきて誰かが憑依したのか!? 虐げてきた元凶を告発してざまぁ展開みたいな感じか……?)

 ループだけじゃなくて憑依属性までついてしまったのだろうか。転生したオレもいるし、この世界は一体何系小説になってしまったんだ。
 リオ本人に尋ねてもいいものだろうかと悩みながら大きくため息を吐くと、彼が耳元に顔を寄せてきた。

「……ケイ。放課後、いろいろと話したいことがあるんだけど……いいかな?」
「ああ……いいぞ」

 小声で返事をしながらリオを見れば、嬉しそうに微笑んだ。笑顔も少し大人びたが、それでも以前のような花が咲くような可愛らしさもある。
 リオの笑顔に少しだけ安心感を覚え、オレも笑い返した。

 *

 今日に限ってやたら時間の進みが遅いと感じながらも、ようやく迎えた放課後。中庭の隅っこにあるベンチにオレとリオは並んで座った。鞄を下ろし心地よいそよ風を感じていると、ベンチに置いていた手を優しく握り込まれる。

「えっとね、どれから話そうかな……」

 ぽつりと呟くリオ。彼から話し出すのを待っていた方がいいのかもしれないが、どうしても気になってしまいオレは口を開く。

「……いきなり直球で悪いんだけど、家のこと聞いてもいいか? その、アミス子爵がいろいろ悪事を働いてたって読んだんだけど……大丈夫なのか?」

 余罪もありそうだから爵位剥奪は免れないだろうと新聞には書かれていた。それに子爵夫人もいろいろとやらかしているらしい。リオも一応子爵家の人間だから、とばっちりを受けるのではないだろうか。
 オレの問いかけに、リオはふわりと微笑んだ。

「心配してくれてありがとう。たしかに子爵家は処罰を受けるけど……ぼくは大丈夫だよ。学園にもこのまま通えるし。卒業後のことも、なんとかなりそう」
「そうなのか? それならよかったけど……なんでだ?」
「ぼくが神子だからっていうのもあるけど……子爵の悪事を暴いて告発したのがぼくだからね」

 やっぱり、リオが告発したのか。もしかして本当に誰かに憑依されてしまったのだろうか。その疑問はまだ口にできなくて、別のことを聞くことにした。

「いつから準備してたんだ? この3週間でってわけじゃないんだろ?」

 新聞に書かれていた内容だけでも3週間で調べきれるものではないだろう。記事によれば裁判の日程も決まっているようだから、余罪についてもある程度調べはついているはずだ。
 質問を口にすると、リオは少し悩んだような表情を見せる。オレはハッとして、再び口を開いた。

「あ、話せなさそうならいいんだ。ちょっと気になっただけで。部外者が首突っ込んでいい問題じゃないよな……ごめん」
「え? あ、ううん。違うよ。どう説明しようかなって考えてただけなんだ」

 そう言ってオレの手を優しく撫でるリオ。少しして、リオは話し始める。

「アミス子爵が関わっている事件っていろいろあって。その中でトリスティア家に関係するものがあって、それは何年も前から調査していたみたい。あとは、グレン殿下も脱税とか怪しい動きをしている貴族を結構前から調べていて、子爵も調査対象だったんだって」
「……あ。もしかしてネフェル様やグレン様たちも協力してたのか?」
「うん」

 なるほど。みんなが放課後忙しくなったのは偶然じゃなかったのか。納得していると、リオはまた話を続けていく。

「殿下たちが調べているのを知っていたから、ぼくは証拠を出したんだ」
「え、すげえじゃん。どうやって準備したんだ?」

 憑依者のチート能力か、なんて考えながらも尋ねると、リオはにこりと微笑んだ。
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