みんなそれぞれ変わった好みはあるけれど、僕の恋人にはおかしな嗜好は全くないと思う

このえりと

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 穏やかな夕日降り注ぎそよ風が木々を揺らす、放課後の中庭。ベンチに座って本を開いていると、校舎の方から足音が近づいてくる。誰か来たのかなと思いながらも本を眺めていたら、僕の名前を呼ぶ声が聞こえた。
 顔を上げると、幼なじみの1人であるイアンが僕の方に向かって歩いてくる。彼は僕の前で立ち止まり、僕に笑いかけた。

「フェリ、どうしたのこんなとこで」
「ちょっとね。イアンはローレンス待ち?」
「あー……うん。そうそう。ぶらぶらしてたら窓からフェリが見えてさ。隣座っていい?」

 うん、と返事をするとイアンが僕の隣に座った。もう1人の幼なじみであるローレンスが剣術クラブに行っているから暇なんだろう。イアンとローレンスは恋人同士で、いつも2人で一緒に帰っているから。

「……フェリ、ちょっと相談してもいい?」

 再び僕が本に視線を落としてから少し経ったころ、隣から伺うような声が聞こえた。もちろんと言って彼の方を向きながら僕が返事をすると、イアンは内緒話をするように小さな声で話し始める。

「ローレンスがさ、その……最中にオレの身体すげー舐めてくるんだけどさ……」
「ふふ、愛されてるね」

 僕が返すと、そうなんだけけど、と照れたイアンが少し困ったような顔をした。

「別に腹とか背中とかならオレも好きにさせとくんだけど……足の裏とか、足の指の間まで舐めようとしてきて……さすがにちょっとどうかと思ってさー」

 はあ、と小さくため息をつくイアン。本人はいたって真面目なんだろうけど、可愛い悩み事だなと思ってしまった。

「イアンは足の裏とか舐められるの嫌?」
「嫌っていうか……汚いじゃん。洗っても靴とかスリッパとか履いてベッドまで歩くしさ」

 なるほど。たしかに歩いてベッドに向かうなら気になるかもしれない。綺麗な状態ならいいのかと尋ねると、イアンはほんのりと頬を赤くした。

「んー……あいつに舐められるの、気持ちいいし……手の指の間とか、結構感じ……って! ごめん、変なこと言った。とにかく、どうしたら諦めてくれるかなって……」

 ローレンスはちょっとやそっとじゃ諦めないタイプだ。うーん、と悩むイアンを見ながら、僕ははっとひらめく。

「無理に諦めさせなくても、歩く前ならいいんじゃない? 洗ったすぐとかなら汚くないし」
「洗ったすぐ……って……え、風呂……とか?」
「うん。一緒に入るでしょ?」

 僕が質問で返すと、イアンの顔はさらに赤くなっていく。

「はっ……入るわけないじゃん!」

 真っ赤な顔で答えるイアンに、僕はどうしてかと尋ねる。イアンは少しだけ口ごもったあと俯いた。

「……恥ずかしいじゃん。明るいし……全部見えちゃうし……」

 ぽつりと呟きながら、耳まで赤くしている。これだけ恥ずかしがるということはもしかして、夜にしかしてないのだろうか。お休みの日は一日中えっちとか、みんなあんまりやらないのかな。
 僕は少し腰を浮かして座り直して、イアンに笑いかける。

「イアンがどうしても嫌なら、話せばローレンスもきっとわかってくれるよ。でしょ?」
「うーん……でも……よく考えたら、どうしても嫌ってわけじゃ、ないし……」
「汚い状態で舐めさせるのが、っていうなら……2人で考えたらいい感じの案が浮かぶかもしれないよ?」

 たとえば足に浮遊魔法かけて浮いてベッドまで行くとか。そう僕が提案すると、イアンの肩が震え出す。

「あははっ! なにそれ。でも……そうだね。うん」

 顔を上げたイアンが、照れながらもにっこりと笑った。

「ありがと。ちゃんと話してみる。フェリに相談してよかった!」

 役に立ててよかったと返すと、イアンは再びありがとうと言って立ち上がった。

「オレそろそろ行くね。フェリも寒くなる前に中に入りなよ。顔、赤くなってるみたいだし……大丈夫?」
「うん、大丈夫。ありがとう。もう少ししたら帰るから」
「ならいいけど。じゃあまた明日……って、ん? ここ濡れてたっけ」

 イアンが視線を向けた先は、僕が座っている場所の少し前。地面が濡れて色が濃くなっている。

「さっきお水こぼしちゃって」
「まったく、フェリは相変わらずぼんやりしたとこがあるんだから。気をつけなよ。じゃあねー」

 そう言ってイアンは校舎の方へ歩いて行く。僕は彼の姿が見えなくなるまで手を振って見送った。
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