みんなそれぞれ変わった好みはあるけれど、僕の恋人にはおかしな嗜好は全くないと思う

このえりと

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 少し風が冷たくなってきた気がする。そう思いながら本をベンチに置き顔を上げると、目の前から男の人が歩いてくるのが見えた。僕に向かって歩いてきたのは、先ほど話題に上がったローレンスだ。

「やはりフェリでしたか。こんなところで1人でいるなんて……どうしました?」
「ん、ちょっと……ね。それよりローレンスこそこんなとこまでどうしたの?」
「ああ……イアン見ませんでした? 探しているんです」

 僕の前に立つローレンスが鞄を持っていることから察するに、どうやら剣術クラブが終わって帰るところのようだ。

「ローレンスのクラブが終わるまでの暇つぶしにだと思うけど、さっきまでここにいたよ。あれ……会ってない?」
「いえ、終わってから教室も見に行きましたが会ってませんね……あ、もしかして」

 なにか思いついたらしいローレンスに、どうしたのかと尋ねる。

「イアン、この前の植物学の小テスト赤点だったんですよね。再テストが今日だったはずなんですけど……」
「サボってたのが見つかっちゃったんだ」
「きっとそうです、まったくしょうがないですね」

 イアンが見つからない理由がわかり、2人でくすくすと笑い合う。もしかしたらさっきイアンがここに来た理由も、本当は先生に見つからない場所だったからかもしれない。でも結局見つかってしまったんだろうな。
 植物学の先生はちゃんと合格点数になるまで何度でも受けさせる人だから、終わるまで少し時間がかかりそうだ。

「……まだかかりそうなので……フェリ、少し相談してもいいですか?」

 同じことを考えていたローレンスが、僕に尋ねてくる。なんかさっきも聞いた言葉だ。いいよと答えると、ローレンスが話し始める。

「実は……イアンのことなんですけど……」

 すごく困った顔でローレンスが小声で話し出すから、僕も思わず真剣な表情になってしまう。もしかして、イアンの悩みとは違って深刻なものなのかもしれない。

「……イアンが……自分のナカで、その……おしっこを、してほしいと言うんです……」

 ローレンスの言葉に、僕は驚いてしまった。

「え、ナカって……」
「……はい。お尻の、ナカ、です……」

 やっぱりそうなんだ。思ってた方向性とは違う悩みだったけど、たしかに結構すごい悩みだ。おまんこにおしっこをするなんて、考えたこともなかった。
 どうしてイアンがそんなことを言い出したのかと尋ねると、ローレンスは頬を赤らめる。

「実は、少し前に……すごく激しく抱いてしまいまして。終わったあと動く気力もなくなっていたときに、どうしても我慢できなくて……私がイアンのナカにもらしてしまいまして……」

 説明された内容に、僕もドキドキして身体が熱くなっていく。いっぱいナカに精液を出されたあとに、おしっこまで注がれてしまうなんて。

「……イアン、クセになっちゃったんだ」

 僕がそう言うと、ローレンスが頷いた。

「はい。それ以来ナカでおしっこをしてほしいとねだってくるんです。大体は断ってるんですが、断り切れないときもあり……でも、僕としてはできればしたくなくて……」
「病気になっちゃうから、とか?」

 自分で言って、ふと気づく。イアンが具合悪そうにしているところをこの数年見たことない気がする、と。実際はどうだったかなと思い出していると、ローレンスが首を振った。

「いえ、洗浄魔法を使うので一応大丈夫なんですが……でも、どうにかイアンに諦めさせたくて。やっぱりお尻の中でおしっこするのは……フェリもどうかと思いますよね?」
「僕? うーん……想像したことなかったけど、病気にならないなら……してみてもいいと思うなあ」

 そう答えはしたけど、おかしいとかおかしくないとかはおいといてローレンスの気持ちが大事だ。

「でも、ローレンスが嫌ならちゃんと言わないとって思うよ」
「……あー……いえ。えっと、嫌というわけでは、なくて……」

 歯切れの悪い言い方をするローレンス。嫌じゃないのにしたくないとはどいうことだろう。僕が尋ねると、少し言い淀んだあと彼は話し始める。

「その……正直に言いますと、かなり……興奮するんです。ナカに注ぐこともそうですし、私が注いだおしっこをイアンがお尻から出すのを見るのが……」
「そうなんだ。じゃあなにが問題なの?」
「あー……えっと。出す場所、ですね。トイレまで連れて行けばいいんですが、理性を失っていることが多いので、ベッドの上で出させてしまい……」

 清掃魔法をかけるにしてもやっぱり何度もベッドの上におしっこを出すのは気が引ける、とローレンスは続けた。

「ふむふむ。じゃあベッドを汚さない方法があればイアンのお尻におしっこしてもいいわけだね」
「……まあ、そうなりますね」

 恥ずかしそうに答えるローレンスに、僕は笑いかける。

「じゃあさ、ベッドのそばにバケツを置くのはどう? あとは……おまるとか」

 僕の言葉に、ローレンスは大きく目を見開いた。

「なるほど……それはいい考えですね。たしかに、出させる場所をあらかじめ用意しておけば連れて行く必要もないですし……ふふ、おまる、いいですね」

 ずっと困り顔をしていたローレンスの口元がにやけ始める。きっとイアンがおまるに跨がる姿を想像したんだろう。ちなみに僕はしてない、断じて。うん。
 ローレンスは再び僕の方を向いて、にこっと微笑む。

「フェリに相談してよかったです。場所のこともそうですが……正直、おかしいことだから諦めさせないとと思い込んでいました」
「解決してよかった……ふ、っ」

 返事をしながら僕はぶるりと身体を震わせる。

「フェリ? どうしました?」
「えへへ、ちょっとくしゃみが」
「風が冷たくなってきましたからね。大丈夫ですか?」
「うん……もうあったかくなったから大丈夫」

 温かいミルクを飲み干して、僕はローレンスに笑いかける。

「ならいいんですが……あ、そろそろイアンの様子を見に行きますね。風邪を引く前にフェリも校舎に戻ってくださいね」
「うん、そうする。ありがと」

 では、と言って踵を返すローレンスに僕は手を振って見送った。
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