ついてくる男の子

ハツカ

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中3・春・女の子

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「高校はどこ行くの?」
週に1度の、囲碁・将棋部の部活中。
私と対局中の彼が聞いてきた。
―パチリ
将棋の駒が鳴る。
「K高が第1志望で、S女子も滑り止めで受けるつもり」
「ふーん…」
そっけない返事だけど、適当な生返事でもない。
私と彼は、一応、幼稚園の頃からの幼馴染だ。
特に仲良しという関係でもないが、来年の春どこにいるのか、興味くらいはあるのだろう。
「そっちはどこに行くつもりなの?」
―パチリ
駒を打ってから、私も同じ質問をした。
「僕もK高が第1志望なんだ」
彼の答えに私は驚いた。
「へえ、てっきりT高が第1志望かと思った」
K高は市内の公立高校の中では、上から2番目の学力の学校だ。
彼の学力なら最も偏差値の高いT高を狙うと思っていた。
彼はプルプルと首を振った。
その動きに合わせて彼の髪もフワフワ揺れる。
「いや、T高は勉強が本当に大変そうだし。それにあの学校、交通の便がすごく悪いんだよ。通学が大変そうでさ」
へえ、そうなのか。
私は学力的にT高に行くのは無理なので、あの学校の場所すら知らない。
場所を知っているということは、やっぱりT高は彼の候補の1つではあったんだろう。
盤を挟んで目の前に座っている彼を見る。
男の子の中では小柄だ。
髪も長い、というか、量が多くて、短髪というよりショートボブと表現した方がしっくりする。
顔立ちも柔らかそうな優しい顔立ちで、さすがに女の子には見えないけど可愛らしい顔をしている。
そこそこ美少年だと思う。
10年以上、細く、でも途切れずのつきあいがあるせいか、幼稚園児の頃から大して見た目が変わっていないように思える。
変わってないはずないのに。
でも、白いワイシャツと紺色のブレザーに包まれた体は女子の私の目から見てもやっぱり華奢だ。
もう中学3年生の春の季節も終わる。
もし私が来年の春K高に合格しなかったら、彼と会うこともめったになくなる。
幼稚園の頃からの知り合いと、あと1年足らずでお別れになるかもしれないと思うと、今から少し寂しかった。
いや、私が合格すればお別れにならないんだけど。
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