銀龍の筆

門永直樹

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惣右介が療養所から帰った次の日。

いつも通りの仕事を終えて、惣右介が帰ろうとすると、棟梁の辰五郎に呼び止められた。


「おい惣右介。昨日よぉ、惣吉のせがれが大怪我して運ばれたって聞いたんだが……、お前ェの事じゃなかったのか?」

「いや……、あの……、どうなんでしょうか」

「まぁお前ェ、怪我なんかしてねぇもんな。むしろ昨日より元気なんじゃねえか? 聞いた時は……ちっとばかり肝冷やしたぜ。まぁ違うなら良いんだ、ゆっくり休めよ」

「は、はい、ありがとうございます」


辰五郎に別れを告げて、貰った六十文で雑穀と野菜を分けて貰い、十文で絵描き用の紙を一枚買った。

惣右介は家に帰り、雑炊を鍋で煮込みながら物思いにふけっていた。


「昨日のアレ・・、夢じゃねぇんだよな。だって今でも……」


惣右介が腕に意識を集中する。すると──


──ヴァンッ


銀の鱗に覆われた腕が現れる。
その腕は半透明で向こうの畳が透けて見える。そして昨日と同じように立派な筆を持っているのだ。


「俺が死にかけたり、危なっかしいから、……おっとうとおっかあが持たせてくれたのかな。そうか……、そうだなきっと」


そう思うと、不安はどこかへ行き、この銀色の腕が妙に頼もしく、愛おしいような気さえしてくる。

家の中に煮えてきた雑炊の香りが漂い始める。


「お、そろそろ煮えてきたかな。はぁ……昨日ぶりの飯だ。腹減った……」


鉄鍋の木蓋を開けると、湯気と共に良い香りが惣右介の鼻腔を満たす。その匂いを肺一杯に吸い込んだ。


「あぁ、美味そうだ。いただきます」


熱い雑炊をお椀にすくい、あわと大根の葉の雑炊をとゆっくり流し込んでいく。


「ハフっ、……うめぇっ。生き返るなぁ」


雑炊を掻き込みながら、惣右介は昨日、死の淵で見た花見の光景を思い出していた。
白米のおむすびを食べていたが、今思うと惣右介ばかり食べていた気がして申し訳無い気持ちになった。


「あの頃のおっとうとおっかあ、ちゃんと飯食ってたのかなぁ……。あのおむすび、俺ばっか食ってねぇで、おとうとおっかぁに食べてもらえばよかったな」


そう言って雑炊を飲み込んでしまうと、鉄鍋に蓋をした。鍋の中にはまだ半分残っているが、後は暗くなってから食べようと思っていた。

惣右介の腹の虫がぐぅっと音を鳴らした。


「腹減ったなぁ……」


惣右介は白米を思い出しながら、ぼんやりと腕を眺めた。自分の腕に重なった銀鱗ぎんりんの腕がゆっくりと動いた。
そしてその手に持った筆で、何気なく空中におむすびを描き始めた。


「そうそう、こんなおむすび……。白くて、一粒一粒が輝いてて、手に持ったらもっちり──」


──トサッ


筆が描いた半透明のおむすびに、次第に色や質感が増していったかと思っていると、その絵は実体化して、惣右介の手の中に落ちたのだ。


「……へっ? ……えぇっっ!! えええッ!」


惣右介の手の中に、もっちりとした白米だけのおむすびが収まっている。まるで、おひつから出したばかりのように、米粒はキラキラと輝いて、この世の食べ物じゃないくらい甘い香りがする。


「……おむすび……、なんで……?! 熱っ! 絵だったのに……?! また夢の中に入ったのかな……よ、よしっ」


現実だと確かめるためにも、ここはひとくち食べるしかないと決めた惣右介は、おむすびの頂点を口一杯に頰張った。


「んふーっ!」


すると、口の中に得も言われぬ白米の香りが拡がり、鼻腔へ抜けた。ゆっくり噛んでいくとその米粒の甘さに体が歓喜し、舌が溶けていくようだった。
惣右介は目を閉じて、その白米の美味しさをゆっくりと噛み締めた。


「ほ……、本物だ……っ!」


目を開けると、手の中のおむすびは自分がかじった分だけ形を崩している。
そしてもう一口、もう一口とあっという間に平らげてしまった。白米の付いた指を大事そうに舐めると、ようやく気持ちを落ち着けた。


「なんだこの筆……っ! おっとう、おっかあ……、俺になんて物を授けたんだ……っ!」


惣右介は思い出していた。
昨日、死んだ時に龍神の胸から落ちた巻物に書いてあった文字を。


極異能ごくいのう筆走ふでばしり……。そう書いてあった。龍神様だ……。龍神様が俺に与えてくださったんだ……」


惣右介は慌てて自分で描いた仏の絵に向き直ると、必死に手を合わせた。


「龍神様っ……、おっとう、おっかあ……、俺には過ぎた贈り物だっ……! こんな力、どう使ったら良いだか……」


惣右介は物言わぬ仏の絵に問いかける。答えを待っても帰ってくる訳もなく。


「そうだ……、でもせっかく頂いた力だ。俺がちゃんと健康で使わないとなんねぇ。うん。い、良いんですよね? 龍神様……」


惣右介の銀鱗の腕も何も答えはせず、陽炎のようにゆらゆらと揺れている。


「よ……、よしっ!、なら……おむすびだっ! おむすび食べるぞっ、俺はっ!」


そう立ち上がって宣言すると、鉄鍋に蓋をしていた木蓋を取ってひっくり返し、その蓋の上におむすびを二つ、異能の力で描いたのだ。


「よ、よし……っ! おぉ、出たっ……!」


惣右介が描いた通り、木蓋の上におむすびが二つ並んだ。美味しそうに湯気を立てて。


それから一刻後。


「はぁ……、もうお腹一杯だ……、美味かった……」


結局、惣右介はそれから大きなおむすびを六個も出して、それをみんな平らげてしまった。
何年振りに腹一杯になった惣右介はいつの間にか、ウトウトと寝てしまっていた。


目が覚めると、陽が傾いてすっかり夕方になっていた。遠くの寺で暮れ六つ(現在の17時)を鳴らす鐘が聞こえてくる。


「あっ……、いけねっ、寝ちまったよ……。あんまりお腹いっぱいだったから……。もう暗くなったから絵も描けないか……。あ、そうだ」


暗くなった部屋の中、惣右介は畳の上に飛び起きた。


「棟梁の家で見たあれだ……。あれがあれば夜で暗くなってたとしても、絵が描けるんじゃねえかな……」


惣右介があれと呼んだ物は行灯あんどんだ。
江戸時代に使われた照明で、木枠の中に油で火を灯した皿を入れ、それを和紙で囲った照明器具だ。
しかし、その油は高価で一部の庶民にしか使えなかった。なので惣右介はこれまでも夜は囲炉裏のうっすらとした灯りで絵を描いていた。


「そうだ……、良く思い浮かべるんだ……」


龍の筆が空中に線を描いていく。惣右介が見た棟梁の家の行灯を細かく思い出していく。


「和紙が貼ってあって……、中の油は菜種油って棟梁が言ってたな……、こうなって、こんな枠で……ちょっと慣れてきたぞ」


惣右介がまるで指揮者がタクトを振るように空中で腕を振ると、それに合わせて龍の筆が動く。


「よし、出来たっ」


惣右介の描いた行灯が徐々に質感を高めて具現化していくと、静かに床に落ちる。


「中の皿の油に火を付けて……おぉっ!」


惣右介の暗かった部屋に優しい灯りが灯った。今までの暗闇が嘘のように部屋の四隅までを照らす。


「まるで昼間みたいだ……。わぁ、外は暗いのにこんなに明るいなんて……。これで夜も絵が描けるぞっ」


早速今日買ってきたばかりの紙を取り出すと、すずりに墨を擦っていく。小皿で調墨して紙に筆を垂らしていく。
惣右介の腕に、まるで銀龍の腕が重なるようにゆっくりと筆が紙の上を走っていく。

墨だけで描いた彼岸花の絵が、まるで風に吹かれて揺れているように生き生きとして描かれる。
これまで何度と描いてきた彼岸花の中でも、とびっきり見事な出来栄えだった。
もしも名うての絵師が描いたと言っても誰もが信じるだろう絵を惣右介は一枚の紙に描いたのだ。


「描けたっ……、描けたぞ彼岸花……、心に浮かんだ風景をこんなにしっかり、はっきり描けたのは初めてだ……」


──翌日。


惣右介はいつもの木屑拾いの仕事を終えて、棟梁から日当を貰うと、仲間のからかう声も耳に届かない程軽快な足取りで棟梁の辰五郎と共に現場を去っていく。


「あ? なんだあいつ? ちっ、からかい甲斐の無ェ奴だぜ」


惣右介は辰五郎の家にお邪魔すると、お願い事を聞いてもらった。そしてその目的を果たすと、まるで羽根でも生えたように惣右介は飛ぶように帰って行った。


「あれ? あんたっ、惣ちゃんもう帰っちまったのかい? せっかくだからお茶入れたのに」

「あ? あぁ、俺にも惣右介の考える事はわかんねぇ……」


棟梁の所から惣右介が家に帰ると、誰も入ってこないようにつっかえ棒を引き戸に掛けた。
惣右介の家を訪ねて来る者はまぁいないのだが。

惣右介は仕事中、木屑を集めながら、自分のこの能力で何を形にしたら良いかを考えていた。

そして考えを絞り込むと早く試してみたくて、ワクワクしながら帰ってきたのだ。


「よし……っ。まずはこれだ……っ」


──ヴォンッ……


惣右介は銀龍の腕を発動させると、そのままゆっくりと操っていく。具現化させる物の質感をしっかり想像しながら、丁寧に。

やがて空中に描いたそれ・・は質量を蓄え、ドサリと畳の上に落ちた。


「……やったっ! 出来たっ……」


惣右介が銀龍の筆で具現化した物。それはだった。紙屋で販売用に束にして積んである紙を、異能の力で具現化したのだ。
その数は約二百枚。金額にして二千文分の紙だ。


「これで思う存分絵が描けるぞっ……!次は、これだ……」


次に惣右介が描いたのは、つがいのニワトリだった。
生きた鶏も描けるのか、試しに描いてみると、立派なニワトリが2羽、土間の上を優雅に歩いて惣右介を不思議な顔で見ている。
なんとも可愛らしい。


「生き物も産み出せるんだ……。凄い能力だな……」


そして最後。

これは本当に半信半疑だったが、一度試してみようと思った。あまり見る機会が無いため、想像力に乏しかったので、棟梁にどうしてもとお願いして本物をしっかり見させてもらった。


「お……、おいっ……、お前、目が血走ってるぞ……どうしたんだよ、変な考えは起こすなよっ」


思わず歯を食いしばって見ていたため、辰五郎に怖がられたが、どうしても一度試してみたかったのだ。


それは小判だ。


これが出来れば……そう考えると震える手が止まらない。やがて覚悟を決めると、銀龍の筆で小判を描いていく。
一枚、二枚と増やしていき小判のしっかりとした山を描いていく。
そしてその質感を細部まで丁寧に描くと、金色に輝く小判が空中から畳に音を立てて流れ落ちたのだ。


──ガシャガシャンッ!ガシャガシャガシャンッッ!

──ガシャガシャンッ!ガシャガシャガシャンッッ!


「わわわわわわっっ!」


惣右介の家の中に、小判同士がぶつかり合うけたたましい音が鳴り響いた。ニワトリ達もその音に驚いて土間の上を飛ぶように走り回っている。

小判の数は八十両。
一両の価値が約四千文のこの時代、惣右介はとんでもない大金を手に入れてしまった。


「やっぱり……、でっ……、出たっ……本当に、小判を出しちまったっ……!」


惣右介の家の畳の上には、不釣り合いに輝く黄金色の大量の小判が鎮座する。
惣右介が改めて自分の腕を見つめると、銀の鱗に包まれた腕は何事も無かったように揺らめいている。


「なんて力だっ……。だけど、こりゃやっぱり良くねぇ……」


こんな風にしてお金を手に入れてしまうなんて、亡くなったおっとうとおっかあに、なんだか合わせる顔が無い。
惣右介は両親が身を粉にして働いていた姿を思い出す。


「そうだ……」


惣右介は立ち上がると土間に降りて、抱える程の大きさの空いた壺を持ってくると、その中に小判を一枚、また一枚と入れていく。
そして畳を一枚めくって床板を剥がすと、床下の土の上にその壺をゆっくりと置いた。
畳を元に戻すと、惣右介は正座して手を合わせるのだ。


「龍神様……。せっかく小判を出してもらったんですが、二度とこんな風に出したりはしません……。この小判は、もしもの時の為にここにしまっておきます。へへ……、ありがとうございました」









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