銀龍の筆

門永直樹

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「おいっ、惣右介っ! ちょっと頼みてぇ事があるんだがな。帰りに家に寄ってくれ」


いつもの仕事終わり、そそくさと帰ろうとする惣右介を大工の棟梁である辰五郎が呼び止めた。
棟梁の自宅に寄ると辰五郎の妻、お駒が出迎える。


「あらっ、惣ちゃんいらっしゃい。ちょうど良かったわぁ、美味しい落雁らくがんがあるのよ。お茶入れるからゆっくりしてね」

「えっ、あ……、ありがとうございます、お駒さん……」


大工の惣吉の息子でもある惣右介の事を、お駒は幼い頃から何かと目をかけてくれていた。
女性が苦手な惣右介だったが、母親のように接してくれるお駒の気持ちが嬉しかった。

棟梁の家に来るのは、こないだ小判を見せてもらって以来だ。奥の座敷に辰五郎がどっかりと腰をおろして美味しそうにタバコをくゆらせている。


「おぅっ、来たか惣右介。まぁ座ってくれや。お駒がまんじゅう食わせるってはりきってたからな」

「あ、はい……、ありがとうございます」


火の入っていない囲炉裏を挟んで辰五郎の前に正座する。
辰五郎にジッと見られる。
惣右介はなんだか居心地悪いような気持ちになってくる。


「惣右介、お前、少し太ったか?顔色も随分と良いようだな」

「え……っと」


惣右介に心当たりが無い訳でもない。
何せここの所、ニワトリ達が毎日産んでくれる卵を食べて、野菜や白米に雑穀、最近では柿などの果物まで、銀龍の筆で描いて食べているのだから。


「いや、あの……、そうだっ! 棟梁……た、頼みって言うのは……?」

「おう、そうだったな。忘れちまってたよへへへ。頼みってのは他でも無ェんだが、お前さんに絵を描いてもらいたくてな」

「絵……ですか?」


辰五郎は昔から、惣右介が絵が得意な事を知っていた。死んだ惣吉がいつも『あの子は将来、立派な絵師になる』といつも言っていたのも憶えている。


「そうなんだよぅ。実はな、俺の使ってた道具箱を新しくしたんだが……、どうにも何かこう威厳ってもんが欲しいんだよ」

「い、威厳……ですか」

「そうよぅ。俺達大工は道具箱を肩に担いで歩くだろ? そん時によ、あら、あれは大工の辰五郎さんじゃない? 素敵ねぇ。誰か良い人でもいるのかしら妬けちゃうわねぇ……、なんて言われてよぅ。へへ……そしたら俺も、俺に惚れたら火傷しちまうぜお嬢さん、なんてのたまう訳よっ! そしたらその女がよ──」

「……」


辰五郎の突然始まった寸劇を、惣右介は口を開けて見ていた。惣右介の後ろには冷ややかな目でその寸劇を眺めるお駒もいたが。


「辰五郎さん、私、辰五郎さんに惚れてしまいました。何言ってやがる……俺に惚れちゃダメだって言ったじゃねぇかお嬢さん。……だってあちき、初めて見たあの日から……恋の花咲くこの日まで、胸がこんなに苦しく──」

「ねぇ、誰なんだいそれ?」


お駒の一言で寸劇は急遽、幕を閉じた。


「うおぉいっ! びっくりさせるなよお駒っ! いつからいたんだよてめぇはっ!」

「妬けちゃう所からいましたけど……。まったく馬鹿な亭主を貰うと苦労するよ。はい、惣ちゃん、これ落雁らくがんね。食べてみてっ」

「誰が馬鹿だって?! てめぇ誰のお陰で──」

「どう? 美味しいでしょ?」

「んっ! お駒さん、美味しいですっ!」

「でしょ? 惣ちゃんは素直だから大好きよっ」


お駒に背中を叩かれて、惣右介は顔を真っ赤にして落雁を頬張る。正直こうなると味はもうよくわからない。


「お駒っ! てめぇも若い惣右介に色目なんか使うんじゃねぇっ。でな、惣右介。どこまで話したかな? そうそう、その道具箱によ、絵を描いて欲しいんだよ。どうだ? 頼めるか?  もちろんちゃんと謝礼は払うつもりだからよ」

「惣ちゃん、この馬鹿に頼まれてやってくれない?」

「誰が馬鹿でぃっ!」


(そうか……。棟梁は俺の事を気付かって……)


辰五郎は惣右介がいつも六十文の日当を貰う時に、若い大工にからかわれているのを気にしてくれていたのだ。ちゃんと飯は食っているのか、野菜も食えなどいつも一言添えてくれていた。
彼岸用に描いた仏様の顔料代に用立てた借金が早く終われば、元の日当の百二十文に戻る。

そう思って、惣右介の得意な事で仕事を考えてくれたのだろう。
辰五郎のその深い優しさが惣右介には嬉しかった。


「棟梁……。俺の事を心配してくれてるんですよね……ありがとうございます……」

「なっ、何言ってやがんでェ! 違うよ馬鹿っ! てめぇがなぁ、からかわれてるのなんか、俺は気にしちゃいねぇよっ」

「そうなのかい? あんた? ちょいと見直したよっ」


辰五郎は照れ臭そうに横を向くと、煙草を大きく吸い込んだ。


「ふんっ、違うって言ってるだろ?! で、どうなんだ惣右介、引き受けてくれるのか?」

「はいっ、受けさせてもらいます」









辰五郎の家から真新しい木で組まれた道具箱を預かって帰った惣右介は、さっそく取り掛かっていた。
何色かの顔料とにかわを異能の力で小皿に揃え、硯に墨を出していく。


『俺の名前は辰五郎だろ? だからたつ、つまり龍の絵を箱に描いて欲しいんだ』


「龍の絵か……。龍ならこないだ龍神様を見たばかりだから描けそうだぞ……よしっ」


惣右介の気持ちに呼応するように、銀龍の腕が揺らめいている。
その日、惣右介の家の灯りは明け方まで消える事は無かった。










翌日。

仕事を終えた惣右介は辰五郎から日当を受け取った。辰五郎は惣右介に近付くと囁くように訪ねてくる。


「なぁ惣右介、無理するなよ。まぁ来年までには出来れば良いやなんて──」

「棟梁、もう描けましたから、今から取りに帰ってすぐに家にお持ちしますね」

「そうだな、今から──えぇっ! 今なんつったっ! もう描いちまっただと……?」


走って家に帰って行く惣右介の背中を、辰五郎はぼんやりと眺めていた。


「えらく焦りやがったな……。まぁ借金を早く返したいだろうからな」


それから半刻ほど経って、惣右介は辰五郎の家に大きな風呂敷に包まれた道具箱を背中に担いで来た。


「すみません、遅くなって……」

「いやなに、悪かったな惣右介。急ぎ仕事させちまってよぅ」

「惣ちゃん、ゆっくりでよかったのに……。どうせこの人のつまらない見栄なんだからさ」

「大工が見栄張って何が悪いってんだ、お駒。大体てめぇだってな──」

「何よっ、お前さん」


いつもの夫婦喧嘩が始まりそうだったので、惣右介は風呂敷を解いて棟梁とお駒に、仕上げた道具箱を見せた。 


「あ、あの、棟梁……、これです。ど、どうでしょうか?」

「てめぇもやれ、おしろいだの何だのって……。えぇ……っ!」

「見栄だ、威厳だって訳のわからない、……ちょ、ちょっとお前さん……!」


辰五郎とお駒はその道具箱に描かれた龍を見て絶句した。

その道具箱の蓋には、墨で描かれた勇壮な龍がとぐろを巻き、所々に銀色のような耀きがあしらってあった。
その描かれた龍の眼光は鋭く、見る者を威圧するかのようだ。
本人でなければおいそれと、この道具箱に触れるのをためらう程だろう。
神社仏閣の修復などで龍の絵などには若干、目の肥えているはずの辰五郎だが、さすがにこの絵には舌を巻いた。


「なんだよ……惣右介、この絵は……」

「え……、あの……龍の絵ですけど……」

「あぁ、そうだ。龍の絵だがな……。だけどこんな絵は今まで見た事ねぇぞ……お前ェ、本当にとんでもねぇ絵師の才能があるじゃねぇか……」

「そうだよ、惣ちゃん凄いよこれっ! 絵の事なんかさっぱりわからないあたしにも流石に凄さがわかるよっ!」


惣右介が自分の絵を褒められたのは、亡くなったおっかあに褒めてもらって以来だったので素直に嬉しかった。


「本当ですかっ? あ、ありがとうございますっ!」

「いや、こりゃすげぇ道具箱だっ! 威厳なんてもんじゃねぇ! ちょっくらこれ担いで、街でも練り歩きたい位さっ! 龍神様だろ、これっ! こりゃ縁起が良いぞ。よし、お駒、ちょっとそこの銭入れ取ってくれ」

「はいよ、お前さん」


お駒が取り出したのは小さな木箱。辰五郎はその木箱の蓋を開けると中からお金を取り出した。


「惣右介。今回の仕事はこれでどうだ?」

「え……っ!」


辰五郎が取り出したのは何と二両。小判二枚を惣右介の前にスッと置いた。惣右介の大体、百三十日分の日当だ。


「用立てた分の残り一両と、それとは別に二両。全部で三両だ」

「と、棟梁……、いくら何でもこれは頂き過ぎです……っ!」

「いやっ! そんな事はねぇ。この絵には二両よりも価値があると俺は思う。だが、今は値がつけられねぇ。今回は初仕事って事でこの額で行こうじゃないか」

「あたしも、惣ちゃんの絵にはもっと価値があると思うわ。この人の気持ちよ。貰っておきなさいな」

「そ……そんな……」


惣右介は自分の絵で初めて報酬を貰った。
それもこんな高い値段を付けて貰って。
尊敬する辰五郎に自分を認めてもらえたような気がして、惣右介の心は嬉しくて嬉しくて、はちきれそうだった。


「では……、あ、有り難く……頂戴しますっ! ありがとうございますっ……」

「おぅ、受け取ってくれぃ」


受け取った二両の小判を、惣右介は目を潤ませ唇を噛んで見つめている。その様子に辰五郎とお駒は目を合わせて微笑んだ。


「あの……じゃあ棟梁……俺、これで失礼します」

「お? なんだもう帰るのかよ。どうせなら祝いに一杯付き合わねぇか?」

「いや……、この小判をおっとうとおっかあに見せたくて……。それに、ゆうべ一睡もしてなくて……」

「馬鹿やろう、無理しやがって……。すまねぇな、ありがとよ惣右介」
 
「はい。……じゃ、失礼します」

「じゃあね惣ちゃん、転ばないように気をつけるのよ」

「お駒……惣右介は子供じゃねぇんだからよぅ」



惣右介は辰五郎の屋敷を出ると、家までの道を目一杯に駆けた。胸から湧いて出る嬉しい気持ちを爆発させるように。


「ハアッ、ハァッ、俺の絵が……、認められたんだっ!」


惣右介はそのまま走って河沿いの土手を登っていく。
まるでこのまま空まで昇っていくような気持ちで。
途中、草のつるに引っ掛かって派手に転んだ。お駒に見られて無くて良かったと思いながら、そのまま小さな石だらけの河原まで降りると、ハアハアと苦しい胸を押さえた。

河を静かに流れる水の輝きが惣右介の瞳に映る。惣右介は思いっきり叫んだ。


「おっとお……! おっかあ……っ! 俺、頑張るからっ! 俺……、がんばるから……」


惣右介は嬉しくて泣いていた。
誰かに認められるという事は、一人の人間としてこの社会の一部に初めてなれたような気がしたからだ。
柔らかな日差しを、流れる河の水面が反射する。
その光はまるで父と母の眼差しのように暖かかった。









翌日。

辰五郎の現場で、大工達が自分の道具を用意して今日の仕事に備えている。
やれ、ゆうべの酒は旨かっただの、あの女に騙されただのと会話を交わしている。

惣右介は大工達とは少し離れた所で、一人、掃除道具の手入れをしていた。

そこへいつものように道具箱を肩に担いだ棟梁の辰五郎が遅れてやって来た。


「よし、みんな揃ってるか」

「へいっ!」

「さぁ今日も怪我しねぇように仕事してくれよっ」

「へ……っ!」


辰五郎がこれ見よがしに、自慢の道具箱が見えるように身体をひるがえす。
若い大工達は返事を忘れて息を飲んだ。


「おぅ、お前ェら、返事はどうしたっ!」

「あ……、あの……、棟梁、それ……」

「ん?、これか……。へへへ、ある絵師に頼んでな。描いてもらったんだよ……龍の絵をよ。どうよ? なかなかいきだろ?」


辰五郎が肩から道具箱を降ろすと、若い大工達は一斉に辰五郎の道具箱にわぁっと群がった。


「凄ぇ……、本物みてぇだ……」

「こっち睨んでますね……、こりゃいきですぜ棟梁……」

「あ……、あの、これって描いてもらうのにいくらかかるんですか?」


興味津々な大工達に、辰五郎は鼻高々と自慢するように言った。


「ふん、まぁ六両って所だ。どうだ? まぁお前ェらも描いて欲しいなら、特別に俺が口添えしてやっても良い。案外もう少し安くしてくれるかもしれんな」


そう言って辰五郎は惣右介を見てニヤッと笑った。


「……っ!」


惣右介は辰五郎の言葉に驚いた。他の大工達に頼まれたなら描いても良いと思っていたからだ。


「どうだ? はくがつくぞっ」

「棟梁っ! 俺のも描いてもらいてぇっ! 口添えしてもらえませんかっ!」

「俺もっ! 俺もお願いしますっ!」

「こりゃ一生物だ……っ! しばらく岡場所通い止めたら良いんだっ。お、俺もお願いしますっ!」

「よしっ!、さすがはテメェら職人だっ! この帳面に順番に名前を書いて、道具箱を預けやがれっ! 値段交渉も任せてくれ、まぁ一両くらいは値切ってくるからよっ!」

「お願いしますっ!」


元々、高給取りな職人達。しばらく酒や遊びを止めればこんな粋な道具箱が手に入ると、こぞって帳面に名前を書いていく。

惣右介はその様子を呆気に取られて見ていた。


──その日の仕事終わり。


惣右介は辰五郎の家に呼ばれていた。
煙草をくゆらせる辰五郎が、惣右介の前に帳面を置いた。


「惣右介、悪かったな。勝手に話を進めちまってよ」

「い……、いえ……。でも、驚きました……」

「そうだろうな。うちの組の大工で十二人。まぁ俺の顔を立てて少しまけてやってくれや。五両としても……えっと」

「六十両。お前さん、惣ちゃんに聞かずに勝手にそんな約束取り付けて大丈夫なのかい? はい、惣ちゃんお茶ね」


話を聞いていたお駒が、惣右介にお茶を出しながら心配そうに言うのだ。


「あ、ありがとうございます。絵の方は大丈夫です……。もう徹夜で描いたりはしませんから……。はは……熱っ」

「俺のお茶は無ェのかよ、まったく……」

「あら、気が利きませんで~」

「まぁ良いや。惣右介。俺はな惣吉にお前を任されたんだ。大工にしてやってくれとは言われてねぇが、惣右介の事を頼むってな」

「俺の……おっとうに……?」

「あぁ」

「惣吉さんは良い職人だったものね……」


惣吉が亡くなる少し前から、惣右介は辰五郎の所に見習いとして入っていたが、惣吉がそんな事を言っていたなんて初耳だった。


「惣吉はな。惣右介は将来立派な絵師になるっていつも言ってやがった……。絵師なんて根無し草な仕事じゃなくて大工の方が良いだろうって俺は言ったんだが、あいつはお前が絵師になるって疑わなかったよ」

「……っ」


惣右介の瞳からふいにポロポロと涙がこぼれた。亡くなった父は自分の事をそんな風に想ってくれていたのかと。


「惣右介。俺はもう決めた。お前は今日限りでウチを辞めろ」

「えぇっ!」

「あんたっ! 何でよっ!」


辰五郎から告げられた突然の解雇に、惣右介は驚きを隠せなかった。
惣右介が泣き顔を上げると、泣いていたのは惣右介だけではなかった。
辰五郎も泣いていたのだ。


「惣右介。お前はもう立派な絵師だ。これだけの金を稼げるんだ。もう俺なんかの所に居る事はねぇ。こういう商売はな、人の口づてに伝わっていくんだ。お前が誠実に絵を描いて行けば、その想いはきっと伝わっていくさ。俺もこれで……ようやく……死んじまった惣吉に顔向け出来るってもんさ……すまなかったな惣右介……」

「……うぅっ」


惣右介は泣きじゃくりながら顔を横に小さく振った。
辰五郎は辰五郎で、自分の現場で幼い惣右介を残して、大黒柱である惣吉を死なせてしまった事を深く気に病んでいたのだ。


「だからな……惣右介。今日でお前はここを卒業だ……。そこにある道具箱一つと、この帳面を持って帰ってくれ。明日から忙しくなるぞ……」


辰五郎の言葉に、惣右介は正座したまま一歩ほど下がると両手を付いて頭を畳に押し付けた。


「棟梁っ……、長い間……、うぅっ……、本当に……、ありがとうございましたっ……!」

「おぅ……、御苦労だったな……、俺の方こそ、長い間、勤めてくれて……ありがとうな……」


惣右介と辰五郎は互いに涙を流しながら、最後の師弟の挨拶を交わした。


「ちょっと……湿っぽいじゃないか、男の涙なんて……。惣ちゃんの門出だよ」

「グスッ、そうだなっ。惣右介、まぁ近い内に飲みにでも行こうや。今日は明日に備えて、ゆっくり休んでくれや」

「はい……」


三人の顔は晴れ晴れとしていた。

惣右介の絵師としての人生の始まりだった。


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