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第2章 人の人生を変えるなら、人に人生変えられるかくご位してやがれ
CROWNは、その日開店5周年を迎えました。中編<108>
しおりを挟む食事を終え、私が流し台で食器を洗っている傍で、冬野さんは飲み物を作っていた。
何か飲みたい?と聞かれたのでソルティライチをリクエストしたら、ディタ(ライチリキュール)ベースで早速作ってくれている。
「一時的な異動だから」
「……え、はぁ」
「真鍋ちゃんも君が願うなら、検討するって課長言ってたよ」
「彼女の判断に委ねます。会社の指示であれば、社畜ですから、断りません」
断らない以外何するか保証はありませんけどね。
私は、淡々と食器を片づけ、冬野さんの隣で、冬野さんが作るドリンクを見つめた。
「怒ってる?」
「もう、折角の休みに、悩みたくないので、忘れたいです。忘れさせて下さい」
「協力すろよ。じゃあ、俺、キスしようか?」
「いや、そっとしておいて下さい。……キスは、したいですけど」
冬野さんは、グラスを置いて私の頬に手を添えて、キスをした。
テキーラをショットで飲み干したレベルの心地好い眩暈がする。
「キス、うまくなったね」
「……そうですが?」
どこら辺がだろう?
そう思っても、それを口には出来なくてやきまもきしながら、冬野さんにリクエストしたソルティドッグを二人で飲んだ。
グレープフルーツの酸味とあら塩の塩梅が秀逸で、私はとても幸せだった。
飲み物を飲んだ後、グラスは私が片付けを買って出た。
二人分のグラスを片付け終わると、私はソファーで寛いでいる冬野さんの元へ向かった。
冬野さんの隣に座ろうとした。
「おかえり」
「ただいま戻りました」
台所から5メートルも離れてないソファーまでですけど。
冬野さんは、私の手首を攫って隣に座ろうとした私を膝の上に引き寄せた。
「セイ、キスにする、お風呂にする? それとも……ベッドに行く?」
新婚の奥さんが言うセリフに聞こえるが、項目が全部違う。
「キスはさっきしたんで、シャワーで良いですか? お風呂はもう遅いと思うので」
「俺も一緒に入って良い?」
お風呂は湯舟があるから、二人で入るって合理的だと思う。
でも、シャワーを二人で浴びるのって、分かんない。
「シャワーは一つなんで、二人だと無理じゃないですか?」
「物事を合理性で考えた? 俺は合理的にシャワーを浴びたいんじゃないだよ。セイとそう言う事したいの」
「そう言う事の意味が分かりません?」
冬野さんは、私の鎖骨に手を伸ばし、綺麗な指で私のブラウスの一番上のボタンを外した。
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