「黒炎の隼」

蛙鮫

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「宣戦布告」

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 日も登らない早朝。松阪隼人は木剣を振っていた。特徴的な銀色の髪を揺らしてただ、素振りに意識を向けている。

「ふう。これくらいにするか」
 彼は木剣を置くと額に浮かんだ汗を拭った。隼人にとってこれが毎日の日課である。

 部屋で今日から行く学園の制服に袖を通した。必要なものを持ち、玄関で靴を履いた。

「行ってくるよ」
 未だに布団で眠る両親や姉を起こさないように隼人は家の扉を閉めた。


 ガタンゴトンという音ともに隼人は電車に揺られていた。僅かに眠気が残っており、普段から鋭い目つきは余計に尖っていた。

「昨夜。二十二時半頃、A地区の森で忌獣が現れました。駆けつけた戦闘員との
接戦で討伐されましたが死者三名。重軽傷者合わせて十二名との事です。駆けつけた忌対策本部の戦闘員によりますと、忌獣は雄叫びをあげながら、周辺住民に襲いかかっていたという事です」

 電車の中に設置されているテレビからニュースキャスターが淡々と凄惨な出来事の詳細をつらつらと述べていく。

「また忌獣ですか。百年前から現れて、今日に至るまで我々の存在を脅かし続けている怪物。確か、視界に入った生き物を見境なく襲う性質だとか」

「生態系は荒らすし、食料にも資源にもならないんで、一体何の価値があるんでしょうか」
 画面の向こう側にいるコメンテーター達が眉間に皺を寄せて、忌獣に対して嫌悪感を交えたような言葉を連発する。

「忌獣」
 そのニュースを見て、隼人は心地よい朝日を浴びながら、胸の淵から湧き上がる不快感を覚えていた。

 車掌が隼人の目的地を告げると、ゆっくりと腰を上げた。駅の改札を抜けると春の匂いが漂う並木道が彼を出迎えた。

「結構、多いな」
 辺りには彼と同じ制服姿の学生達が歩いている。これから隼人の同級生となる若者だろうか。

 しばらく歩いていると隼人の目の前に巨大な白い校舎が見えた。

「ここが金剛杵学園か」
 『金剛杵学園』今日から彼が入学する学校であり、三年間過ごす全寮制の学校だ。中等部と高等部に分かれており、多くの生徒が内部進学で高等部へと進級する。

 この学び舎で忌獣に対抗する技術を手に入れて、卒業後、忌まわしい怪物を狩る組織『忌獣対策本部』へと就職するのだ。暖かな空気を胸に入れて、校門をくぐった。

 入学式が行われる体育館に入ると、パイプ椅子に新入生たちが腰を下ろしていた全国から忌獣殲滅を胸に掲げて、やって来た若者達だ。

 隣同士、雑談をするなど緊張感が見られない者や背筋を真っ直ぐに伸ばして、真面目な態度で式を待つ者など様々である。

「新入生代表。聖堂寺せいどうじ結巳ゆみ

「はい」
 清らかな声とともに白髪の少女が席を立った。肩まで伸びた雪のように白い髪と透き通るような白い肌。少し釣りあがった気の強そうな目。

「あれが適正率最高値の」

「聖堂寺家のご令嬢か」
 周囲から彼女に向けて、畏敬の言葉や羨望に似た眼差しが向けられていた。

 そんな関心を振り払うように彼女は堂々とした振る舞いで体育館の舞台に上がっていく。

 隼人はその名前に聞き覚えがあった。聖堂寺家。百年前に忌獣対策本部を創設した一族である。

「この度、我々はこの学園に入学できた事を心から光栄に思います。私達新入生はこの学び舎で私達は文武を身につけて、胸を張って卒業出来るよう邁進していく事を誓います。そして、忌獣との百年以上続いたこの争いに終止符を打つために尽力します!」

 彼女の凛とした声がマイクを通して、体育館内に流れる。つらつらと述べられるスピーチは春の暖かさと相まってか不思議と心地よさを覚えた。

 結巳が高らかに述べると、一斉に拍手がコーラスのように建物内に響いた。ひとり、また一人と増していく拍手の数と音。ここにいるのは忌獣に恨みを持っている者がほとんどだ。

 彼らの大多数が彼女に演説に魅了されて打倒、忌獣の目標をより強固なものにするのだ。その後、配属先の説明等が行われて入学式は幕を閉じた。


 入学式を終えた後、隼人は一人、校長室に向かっていた。体育館から出ようとした時、出口の近くにいた黒服に呼び止められたのである。
 
 木製の扉の前には黒服が立っており、隼人の姿を見るなり、扉を軽くノックした。

「こちらです」

「はい」
 黒服に言われるまま重い扉をゆっくりと開けると、二人の女性の姿が見えた。一人は新入生代表の少女である。

 そして、もう一人は結巳が年を重ねたような雰囲気の女性だった。

「初めまして、松阪隼人くん。学園長兼対策本部首長の聖堂寺せいどうじ美香みかです」

「初めまして、松阪隼人です」
 隼人は丁重な態度で挨拶をした。

「松阪隼人君ね。初めまして、私は聖堂寺結巳」

「どうも。それで何のよう?」
 隼人は軽く会釈すると彼女からただならぬ気が漂ってきた。

「単刀直入に言うわ。私と戦いなさい!」
 彼女がそう言って、髪色と同じく鞘に収まった真っ白な剣を目の前につきつけた。
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