「黒炎の隼」

蛙鮫

文字の大きさ
13 / 115

「烈火の踊り場」

しおりを挟む
 衆人観衆の中、隼人は聖滅具を生み出すと赤間との間合いを図った。
紅蓮レッド殺矢アロー
 赤間が弓型の聖滅具を展開して、炎の矢を飛ばして来た。隼人は交わして地面に刺さった瞬間、いきなり爆発した。

 とっさは距離を取って、爆破に巻き込まれずに済んだ。

「起爆性があるのか」

「その通り、言うなら矢の形をした爆弾とでも思えばいいさ」
 赤間が余裕に満ちた笑みを浮かべる。

「どーする? 降参する?」

「いいや。刀を抜いたら降参しないと決めているんだよ」
 隼人は息を整えて、赤間の動きに目を向ける。一度の射撃で一本。少なくとも複数ではない分、攻撃自体は交わしやすい。

「同じ炎の使い手。だけど適正率に関してはこちらが上だ!」
 赤間がそう言って、優越感に浸るような笑みを浮かべた。それとともに放たれる無数の矢。

 一つ一つと交わしていき、接近の機会を伺っていく。

「なんだよ。逃げてばっかかよ」

「やっぱりこの前、聖堂寺に勝ったのまぐれだったんだよ」

「適正率最下位が調子に乗るからこうなるんだ」
 観客からは心ない言葉がちらほらと聞こえ始めた。

「馬鹿っているのね。彼の実力のどこを見て、まぐれと思えるのよ」
 結巳が隼人に罵詈雑言を浴びせる生徒達に呆れていた。彼女自身、負けず嫌いだがそれとは別に彼の実力の高さは身にしみて、理解している。

 近距離型の遠距離は非常に厄介だ。

「君の攻撃パターンは完全に近距離型。そして、適正率が低い以上、長時間は使えない。故に僕とのタイプは最悪」

「ああ、知っている」
 隼人は聖滅具を構えながら、思考を巡らして行く。影焔を使うとしても持久戦に持ち込まれては敗北する可能性がある。

「この手を使うか」
 隼人は鋭い切れ味の刀身に左手で握ると、激情に任せて勢いよく、引いた。
「えっ!」

「何? 自傷行為?」

 周囲の見物客達が騒ぎ出した。

「違う。あれは」
 隼人の手から真っ赤な血が流れて刃を伝った。その瞬間、いつも以上の勢いで黒い炎が轟々と燃え上がった。

「自分の血で火力を上げたのか!」

「そうだ。少し手荒だけどな。あんたをすぐさま片付けるならこれが手っ取り早い」

「ほざくな!」
 隼人の言葉に赤間が激昂しながら、何度も火の矢を放ってくる。しかし、今の隼人には全てが遅く見えた。

「なっ! 火力だけじゃなくて動きの速度が上がっている!」

「ああ、血を与えることでさらに引き上げる事が出来るんだ」
 隼人の言葉を聞いた時、赤間の顔が徐々に青ざめていく。どこかで自分の敗北を悟ったのだ。

「あんた。確かに強いな。でも結巳の方が遥かに強いぞ」

「生意気なんだよ! 最低値のくせに!」
 声を荒げた赤間がさらに何発も矢を打ち込んできた。しかし、いくら打ち込んでも隼人にとってあくびが出るほど遅く見える。

「僕は赤間家の時期当主だ! こんなところで負けるわけにはいかない!」
 赤間が先ほどまで見せていた余裕の表情を崩しながら、声を荒げる。

「悪いけどあんたの技は見切ったよ」
 隼人は額から血を流しながら、赤間を捉えた。赤間に殺意を飛ばした。彼の刀身から黒炎が更に轟音を立てながら、燃え上がる。

「覚悟しろ」

「ひっ!」
 赤間の顔が明らかに恐怖で顔が滲んでいる。その目はまるで捕食者に狙われる哀れな小動物そのものだ。

 隼人は自身から距離を離そうとする赤間を追跡して行く。必ず狩る。彼の中にあるのはその思考だけだった。

「うわああああ!」
 赤間が何度も無造作に炎の矢を放ってきた。隼人はいともたやすく回避して、一気に接近する。
 
「もう逃がさん」
 まるで獲物の狩りに行く隼のように赤間に迫って行く。

「わっ、悪かった! やめてくれえええええ!」
 絶叫する赤間の眼中の前に刃を突き立てた。あと数センチ近づけば失明は免れない。

「あっ、あ」
 端正な顔立ちが見るに堪えない程、崩壊していた。

「しょ、勝者。松阪隼人」
 審判の高らかな宣言で会場が活気に沸いた。

 隼人は地面にへたり込んでいる赤間を一瞥すると、踵を返して待機室に足を向けた。

 待機室に向かう途中、急に視界が朧げになった。

「なっ。くそ。やっぱり安易に使うもんじゃないな。はは」
 隼人は乾いた笑い声を上げながら、廊下に腰を下ろした。短時間の仕様だったから結巳との対決の時のように鼻血は出なかったが、それでも倦怠感は感じていた。

「ひどい顔色よ」
 聞き覚えのある声が聞こえて、眼を向けるとそこには結巳がいた。声だけ聞いてみると冷静だが心配そうな表情を浮かべている。

「ああ、問題ねえ。こんな経験は何度もある」

「そう。なら良かったわ」
 結巳が少し安堵したような様子を見せると、隼人の横に座った。

「赤間くんに勝てたわね。まあなんとなく分かっていたけど」

「あの爆破攻撃はかなり厄介だったけどな」
 ため息をつきながら、試合中の苦労を思い出した隼人。近距離型の自分にとっては遠距離型の異能とは明らかに愛想が悪い。

 だからこそそれを補えるほどの速度で動く、もしくは攻撃を与える隙もなく相手を倒せる強さが必要なのだ。

「俺行くわ」

「何故一人で行くの。私も行くわよ」
 少し顔色が良くなった隼人は隣でため息をつく結巳とともに学園へと向かった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...