「黒炎の隼」

蛙鮫

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「交える」

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 静まり返った闘技場。普段、多くの観客で賑わうこの場所。隼人はそこで木刀を相手に振るっていた。

 対するは早見沙耶。この学園の生徒会長だ。

「まだまだ行くぞ! 松阪君!」

「上等です!」
 早見が長い黒髪を靡かせて、何度も激しい攻撃を加えてくる。隼人は今もつかせないような猛攻にも次々と対応していく。

 さすがは生徒会長。隼人はそんな事を考えながら、隙を伺っていく。すると猛攻のせいか、早見の動きが僅かに遅れた。
 
「隙あり!」
 早見の息が僅かに乱れたタイミングを見計らって、首元に先端を突きつける事に成功した。

「あはは。負けちゃった」

「少し休憩しましょう」
 隼人は木刀を下ろして、近くの椅子に腰掛けた。

「ふう。ごめんね。急に誘って」

「いえ、別にこれくらいは」
 隼人が一人で木刀を振るっていると同じく特訓目的の早見に声をかけられて、今に至ったのだ。

「孤島での合宿。明日だっけ?」

「はい。どんなものか楽しみですね。拍子抜けしなければいいんですけど」

「君の自信と実力には感服するよ」
 早見が眉を八の字にしながら、笑みを浮かべた。

「合宿は訓練目的も大事だけど、仲間とも築ける機会だから、この際もっとクラスメイトとの仲を深めてもいいんじゃないか?」

「何言ってんですか? 俺に仲間は不要ですよ」
 隼人はため息交じりに応えた。以前と比べて、クラスメイトとの関わりは少しずつ増えている。

 しかし、隼人は依然として対人関係には積極的ではない。

「じゃあ? 私は?」

「先輩は仲間というか尊敬の対象なので、公平な立場には立てません」

「その返答は少し、ずるくないかい?」

「どうでしょう?」
 隼人は笑みを浮かべた。彼に釣られて早見もクスクスと小さく肩を震わせた。
 実際のところ、早見の事を尊敬しているのは事実だ。自分と近い年の人間でここまで剣術が秀でている存在を知らなかった。

「まあ、ゆっくりと歩んでいけばいいさ」

「どうも」
 隼人はそれとなく、返事を返した。


 早見と別れたあと、隼人は一人、近くの公園を走っていた。辺りは既に茜色一色。夕焼けに包まれており、影と光の境目が所々くっきりと別れていた。

 額に汗を滲ませながら、走っているととある存在が目に入った。

「聖堂寺」

「松阪君」
 結巳がベンチで腰を下ろして、本を読んでいたのだ。
「何をしていたの?」

「見ての通り、走り込み。そっちは読書か」

「ええ。久しぶりに読んでみるとなかなか、面白くてね」
 本を眺める彼女の顔はどこか子供のようなあどけなさが伺える。戦闘時の気の張ったような顔とは違い、友人達と談笑している時のように楽しそうな様子だ。

「あなた、本は読んだりするの?」

「たまに。トレーニング関連のやつを」

「あなたらしいわね。でもたまには小説とか読んでみるのもいいんじゃない?」

「まあ、考えとく」

「それ、行動しない人の言葉よ」
 結巳が怪訝そうな表情をとった後、笑った。隼人もその顔につられて、軽い笑みを浮かべた。

 その後、軽く談笑して二人は共に寄宿舎へと戻った。


 そして、待ちに待った合宿の日が訪れた。
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