「黒炎の隼」

蛙鮫

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「合宿始め」

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 合宿当日。五時間の船旅の末、合宿の舞台である孤島に着いた。

 隼人達は二泊三日間、この島で合宿という名の訓練に励むことになる。

「ここが合宿の舞台か」
 隼人の目の前に雄大な自然が広がっていた。生い茂る木々。時折、聞こえる小鳥と虫の音。

 そのどれもが隼人の目には美しく見えた。他の生徒達も非日常的な光景のせいか、とても気分が上がっているようだった。

 普段から厳しい授業と特訓も行なっているので開放感のある光景に気持ちが高ぶるのは理解できる。

「久しぶりね」
 結巳が懐かしさを覚えているのか、少し笑みを浮かべていた。その近くでは揚羽が他の生徒達を囲んで、写真を撮っていた。


 合宿所の前に着くと、教官の前で他の生徒たちと共に整列した。なにやら訓練の内容が発表されるそうだ。

「えー今、この山一帯を使って訓練をしてもらう。内容は簡単。今から諸君らには星状のバッチを一つ配っていく。他の生徒と戦い、勝ったものは敗者から星を一つ奪う。制限時間内までに星を多く手に入れた者が優勝となる。星がなくなったものは脱落し、ここの場所まで戻ってきてもらう」

「他の生徒が戦っている時でも奇襲するのは大丈夫ですか?」

「問題ない。戦場ではいつどこから敵が手で来るかわからん。この訓練はそれを模倣したものだ。他に質問のあるものは」
 すると隼人の近くにいた揚羽が茶目っ気を出しながら、手を挙げた。

「えーっと、これって仮に優勝したら何か賞品とかあるんですか?」

「よくぞ聞いてくれた。優勝した者には温泉旅行のチケットをプレゼントする」
 教官の発表と共に周囲の生徒たちは大声を出して、湧き上がった。狂喜乱舞。

 そう言ってもおかしくないほど、その場は賑わっていた。

 隼人自身、商品には興味がない。しかし、訓練となれば手を抜くわけにはいかないのだ。

「商品には興味がないわ。ただ私はあなたに勝つ」
 隣にいた結巳が隼人を強く睨みつけた。彼女自身、隼人に敗北したことを未だ根に持っているのだろう。

「ああ、望むところだ」
 どんな訓練でも戦場と同じ。やるからには真剣には取り組む。隼人は結巳を強く睨み返した。



 生徒達が山の中に入り、準備が整った。辺りの木々のさざめきや鳥の鳴き声が不思議と緊張感を与えてくる。

「それでは用意始め!」
 教官がメガホンで合図したと共に周囲が一斉に騒がしくなり始めた。生徒達が一斉に動き始めたのだ。

「見つけた! てりゃ!」

「うおおお!」

 発砲音や辺りから鳴り響く金属音。辺りは騒然とし始めた。隼人も身構えていると早速、後ろから殺気を感じた。
「てりゃあ!」
 男子生徒が短刀型の聖滅具を片手に襲いかかってきたのだ。しかし、既に気配を感知していた隼人にとってこの程度の攻撃をかわすのは造作もなかった。

「遅い!」
 隼人は男子生徒の腕を掴んで、そのまま地面に一本背負いをした。

「ぐっ!」
 背中を強く打ったのか、男子生徒がぐったりとしている。隼人はそのすきに星を剥ぎ取った。

「まずは一つ」
 隼人は一層警戒心を固めながら、森の中を進んでいく。すると男子生徒を一人、見つけた。

「隙あり!」
 男子生徒の首に強めの一撃を加えると膝から崩れ落ちた。星を取った瞬間、近くの木から何かが飛んできた。

 矢だ。よく見ると女生徒が弓をこちらに向けていたのだ。

「勝たせてもらうよ。特待生くん!」
 そこから何発も続けてざまに打ってきた。隼人は森の木々を盾にして、自分の身を隠した。

「逃した! どこ!」
 女生徒が弓を構えながら、辺りに視線を配っている。隼人はゆっくりと足音を殺して、接近していく。

 そして、女生徒が座っている枝の反対側に移動した。隼人は気配を悟られないようにゆっくりと近づいた。

「いったいどこに」

「動くな」

「ひっ!」
 隼人は女生徒の背後を取る事が出来た。そして、そのまま星を掠め取り、森の中に飛び込んだ。

 鬱蒼とした森の中、息をひそめながら、進んでいると遠くの方から凄まじい音と叫び声が聞こえた。

 何事かと思い、静かに進んでいくと隼人は目を疑った。無数の生徒が地面に倒れているのだ。

 横たわる生徒達を見下ろすように一人の女生徒が佇んでいた。隼人は草陰から姿を現して、彼女の正面に立った。

「あら、松阪君」

「よう。聖堂寺」
 
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