「黒炎の隼」

蛙鮫

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「バーベキュー」

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満月が照らす屋外。隼人は網の下で揺れる炎を眺めながら、焼き加減抜群の肉を食べていた。

 周囲も同じく生徒達が美味しそうに食べながら、談笑している。合宿最後の夜。壮絶な二日間の労いを兼ねて、教官達がバーベキューを用意してくれたのだ。

 肉と野菜が疲労の溜まった体に染み渡る。成長期ということもあり、隼人はモリモリと食べ進めていた。

「随分と食べるわね」
 結巳が隼人の隣にやってきた。隼人は彼女の皿を見たとき、驚愕した。自分の倍以上はある量の肉や野菜が盛り付けられていたのだ。

「あんたも人のこと言えないぞ」

「しっ、仕方ないでしょ!」
 
「もー。聖堂寺さんは怒りん坊だね」

「そういう貴女は写真撮ってないで食べなさい!」

「はーい」
 揚羽が結巳をからかいながら、食事をとっている。コントまがいの掛け合いに隼人は微笑ましく思った。
「グオオオオオ!」
 突然、何かの叫び声が森の奥から聞こえた。周囲の生徒や教官が箸を止めて、騒然とし始める。しかし、隼人はなんとなく察していた。

「まさか」

「松阪君! 今のって」

「おそらく忌獣だ。聖堂寺は合宿所周辺を! 俺は森に行く!」

「ちょっと! 松阪君!?」
 隼人は近くに置いてあった聖滅具を手に取ると、結巳の声を置いて行くように夜の森へと走って行った。

 月明かりと忌獣の声が聞こえた記憶を頼りに場所を目指して進んだ。

「グオオオオオ!」
 再び、忌獣の声が聞こえた。今度はかなり近くからだ。早速現場まで急行した。

「ああああ! 来ないで!」

「くるなああああ!」
 そこには軟体動物のような姿をした忌獣とそれから逃げる男子生徒と女子生徒がいた。

 おそらく先ほどのバーベキューからひっそりと抜け出したのだ。

「ゲルルルルル!」
 忌獣が唾液を垂らしながら、生徒二人を追っている。徐々に二人の距離は縮まっていた。

 その時、忌獣の触手が女子生徒の足に絡みついた。必死にもがくが忌獣の前には無駄なあがきである。
 
「ひいいいいい!」
 女子生徒を置いて、男子生徒が一目散に合宿場の方へと走って行く

「ちょっ、ちょっと! 助けよ!」
 女子生徒を待ち構えるように忌獣が何百本も生え揃った歯が並んでいる口を開いた。

「ヤダヤダ! 助けてえええ!」

「はああ!」
 隼人は聖滅具を構えて、触手を切り落とした。

「早く逃げろ!」

「あっ、ありがとう!」
 女子生徒が隼人に礼を言うと不恰好な走りで逃げていく。

「グオオオオオ!」
 食事を邪魔されたことに怒りを覚えたのか、忌獣が鋭い視線を隼人にぶつけてきた。

「今、楽にしてやるよ」
 隼人は目にも止まらない速さで近づいて、忌獣を切り刻んだ。飛び散った血を甲で拭き取りながら、辺りに目を向ける。

「グルル」
 すると暗い森の陰から熊のような姿をした忌獣が顔をのぞかせた。

「来いよ」
 隼人は瞳に殺意を宿しながら、武器を構えた。
 忌獣が鋭利な爪を振り下げた時、隼人は後方に回避した。

「遅い!」
 隼人は瞬きする間も無く、華麗な剣さばきで忌獣の四肢を切断した。そして、叫び声をあげる忌獣の首を落として、永久に黙らせた。

 しかし、隼人には疑問があった。
「突然、発生した忌獣の群れ。何故だ」

「それは僕が連れてきたんだよ?」
 
 暗くなった木々の間から茶髪の癖毛をした細身の男が姿を見せた。彼は直感的に感じた。

 肌がひりつくような緊張感。間違いなく只者ではない。
「あんた。何者だ」

「おいおい。人に名前を訪ねるときはまず自分から名乗るのが筋なんじゃないのか? 礼節を欠くって事は僕を無自覚に見下しているって事だよね。全くどんな教育受けたんだよ。まあ、いいや。僕は優しいから特別に教えてあげるよ。僕の名前はみこと。鳥籠の幹部さ」 
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