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「絶望の権化」
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忌獣対策本部の一室。首長の聖堂寺美香とその他の幹部が会議を行っていた。
「では会議を始めます。対策本部に情報提供している者については?」
「以前、調査中です。島の一件に関する情報を提供して以降、接触はありません」
「引き続き調査をお願いします」
室内には緊張感が漂っており、皆、真剣な趣で議論に望んでいた。
「そういえば、娘さん。今日文化祭なんだってな」
「ええ。だからこのまま無事に終われば、心起きなく入れるんだけど」
柘榴の発言に美香が困り眉を作りながら、苦笑を浮かべた。最近、物騒な事が立て続けに起こっている。
彼女自身も気を抜けない状況に押しやられている。その時、さらなる試練を告げるように勢いよく扉が開いたのだ。
一人の職員が入り込んできた。息を切らしながら、何度も荒い呼吸をする。
「どうしたんですか?」
「金剛杵学園に迦楼羅が出現しました!」
職員のその一言で美香の背筋と空気が凍りついた。
「それは本当か!」
「はい! さらに学園内、都市部にも複数、忌獣が出現しており現場で戦闘員と交戦中とのことです!」
「追加で戦闘員を向かわせるんだ! 死傷者を出すな!」
庭島が職員に指示を出して、向かわせた。困惑する周囲。六年間姿を見せなかった敵の頭目が姿を現した。
「北原君は?」
「本日は遠方の方で忌獣討伐に向かっております」
「北原が本部に不在と知っても強行か?」
「今は考えている暇はないわ。すぐに戦闘員を現場に派遣してください!」
美香の言葉を機に職員達が慌ただしく動き始めた。
金剛杵学園の屋上。隼人は感じた事がない程の緊張感を抱いていた。
緊張感のあまり過呼吸に陥りそうになったものの、胸に力を入れて何とか堪えた。
報告書で何度も読んだことがある特徴。それらと一致している。目の前にいるのは対策本部にとって最悪の敵。
「おや、君は。そうか。君が幹部二人を倒した青年か」
素性が割れている。隼人の身にもっと力が加わった。
「そんなに怯える必要はありませんよ。青年」
迦楼羅が体から放出させている異様な気迫には不釣り合いな程、穏やかな声で語りかけてきた。
気づくと迦楼羅の姿はなく砂煙のみが舞っていた。途端、背後から凄まじい殺気を感じ取った。
「ただのご挨拶ですから」
瞬時に刀を構えると迦楼羅が杖から抜きとった刀身で切りかかっていたのだ。
「私の動きに反応するとは」
隼人の額からひんやりとした一筋の汗が流れた。あと少し反応が遅ければ、確実に首が飛んでいた。
「ではこれならどうですか?」
迦楼羅がバサリと音を立てて、翼を広げ始めた。
「まずい!」
殺気を感じて刀を構えた瞬間、数千はある黒い羽根が隼人に飛んできたのだ。
とっさに物陰の方に隠れて漆黒の弾雨を凌いでいく。恐る恐る鵙の方を覗くと床や柵などに羽根が着弾して、辺りが見るも無残に破壊されていた。
「ふん!」
勢いを収まったところで隼人は飛び出して、影焔を発動する。体温の上昇を感じるとともに、体が軽くなる感覚も伝わってきた。
「ほお。その剣術」
「迦楼羅!」
隼人は恐怖を押し殺して、迦楼羅に食らいついて行く。何度も懸命に刀身を振るったが一向に当たらない。
しかし、それ以上に隼人は迦楼羅に対して、抱くものがあった。
「なんだ。この感覚」
刃と刃が重ねながら隼人は不思議な感覚に陥ったのだ。まるで以前に対峙したことがあるような手応えだ。
「まさか、私の剣術を知っているんですか?」
迦楼羅が探るような口調で隼人に問いかけた。その瞬間、隼人の心臓が激しく脈打った。
否定できない。自身はおそらく目の前の怪物の動きを知っている。幾度なくこの剣筋を見た事がある。
「松阪君!」
屋上の扉付近に額から汗をかいている結巳が立っていた。
「聖堂寺! 忌獣は?」
「なんとか討伐できた。それよりも」
結巳がゆっくりと迦楼羅に目を向けた。彼女自身、目撃するのは初めてなのだろう。僅かに肩が震えていた。
「松阪、そうか」
迦楼羅が一人、合点が言ったような口ぶりだった。
「あなたの実力も知れた事ですし、今日はここで失礼します」
「待て!」
「ああ、これ。置き土産です」
立ち去る際、迦楼羅が空中に黒い羽根を飛ばした。黒い羽根が徐々に肥大化して、別の形に姿を変わった。
「グギャアアアアアアアア!」
憎悪の権化。四体の忌獣が屋上に姿を現したのだ。凶悪さが感じられる爪と牙を持った獣型の忌獣達だった。
「忌獣! 羽根から生み出すことも出来るのか」
「ふふ。では」
そう言うと迦楼羅が剣を鞘に収めて、屋上の柵から飛び降りた。
隼人はすぐさま、柵に手をかけて見下ろした。しかし、そこには何もなく砂煙だけが散っているのが見えた。
「逃げられた」
「ええ。それより」
結巳の言葉通り、隼人は討伐対象を四体の忌獣に向けた。口の端から唾液を垂らしながら、こちらに睨んでいる忌獣達。その姿に隼人は腸が煮えくり返りそうになった。
「おい。なにメンチ切ってんだよ」
隼人は鋭利な刃物を彷彿とさせる目つきを忌獣に向ける。
文化祭を混乱に陥れ、大事な存在達を危険に晒した。そして、何よりこの日のために皆が力を合わせて築き上げてきた物を踏みつけにした。
体内の血が沸騰する勢いで憤りを覚えていた。
「失せろ。俺は今、虫の居所が悪いんだ!」
目を血走らせながら、静かに武器を構えた。
「では会議を始めます。対策本部に情報提供している者については?」
「以前、調査中です。島の一件に関する情報を提供して以降、接触はありません」
「引き続き調査をお願いします」
室内には緊張感が漂っており、皆、真剣な趣で議論に望んでいた。
「そういえば、娘さん。今日文化祭なんだってな」
「ええ。だからこのまま無事に終われば、心起きなく入れるんだけど」
柘榴の発言に美香が困り眉を作りながら、苦笑を浮かべた。最近、物騒な事が立て続けに起こっている。
彼女自身も気を抜けない状況に押しやられている。その時、さらなる試練を告げるように勢いよく扉が開いたのだ。
一人の職員が入り込んできた。息を切らしながら、何度も荒い呼吸をする。
「どうしたんですか?」
「金剛杵学園に迦楼羅が出現しました!」
職員のその一言で美香の背筋と空気が凍りついた。
「それは本当か!」
「はい! さらに学園内、都市部にも複数、忌獣が出現しており現場で戦闘員と交戦中とのことです!」
「追加で戦闘員を向かわせるんだ! 死傷者を出すな!」
庭島が職員に指示を出して、向かわせた。困惑する周囲。六年間姿を見せなかった敵の頭目が姿を現した。
「北原君は?」
「本日は遠方の方で忌獣討伐に向かっております」
「北原が本部に不在と知っても強行か?」
「今は考えている暇はないわ。すぐに戦闘員を現場に派遣してください!」
美香の言葉を機に職員達が慌ただしく動き始めた。
金剛杵学園の屋上。隼人は感じた事がない程の緊張感を抱いていた。
緊張感のあまり過呼吸に陥りそうになったものの、胸に力を入れて何とか堪えた。
報告書で何度も読んだことがある特徴。それらと一致している。目の前にいるのは対策本部にとって最悪の敵。
「おや、君は。そうか。君が幹部二人を倒した青年か」
素性が割れている。隼人の身にもっと力が加わった。
「そんなに怯える必要はありませんよ。青年」
迦楼羅が体から放出させている異様な気迫には不釣り合いな程、穏やかな声で語りかけてきた。
気づくと迦楼羅の姿はなく砂煙のみが舞っていた。途端、背後から凄まじい殺気を感じ取った。
「ただのご挨拶ですから」
瞬時に刀を構えると迦楼羅が杖から抜きとった刀身で切りかかっていたのだ。
「私の動きに反応するとは」
隼人の額からひんやりとした一筋の汗が流れた。あと少し反応が遅ければ、確実に首が飛んでいた。
「ではこれならどうですか?」
迦楼羅がバサリと音を立てて、翼を広げ始めた。
「まずい!」
殺気を感じて刀を構えた瞬間、数千はある黒い羽根が隼人に飛んできたのだ。
とっさに物陰の方に隠れて漆黒の弾雨を凌いでいく。恐る恐る鵙の方を覗くと床や柵などに羽根が着弾して、辺りが見るも無残に破壊されていた。
「ふん!」
勢いを収まったところで隼人は飛び出して、影焔を発動する。体温の上昇を感じるとともに、体が軽くなる感覚も伝わってきた。
「ほお。その剣術」
「迦楼羅!」
隼人は恐怖を押し殺して、迦楼羅に食らいついて行く。何度も懸命に刀身を振るったが一向に当たらない。
しかし、それ以上に隼人は迦楼羅に対して、抱くものがあった。
「なんだ。この感覚」
刃と刃が重ねながら隼人は不思議な感覚に陥ったのだ。まるで以前に対峙したことがあるような手応えだ。
「まさか、私の剣術を知っているんですか?」
迦楼羅が探るような口調で隼人に問いかけた。その瞬間、隼人の心臓が激しく脈打った。
否定できない。自身はおそらく目の前の怪物の動きを知っている。幾度なくこの剣筋を見た事がある。
「松阪君!」
屋上の扉付近に額から汗をかいている結巳が立っていた。
「聖堂寺! 忌獣は?」
「なんとか討伐できた。それよりも」
結巳がゆっくりと迦楼羅に目を向けた。彼女自身、目撃するのは初めてなのだろう。僅かに肩が震えていた。
「松阪、そうか」
迦楼羅が一人、合点が言ったような口ぶりだった。
「あなたの実力も知れた事ですし、今日はここで失礼します」
「待て!」
「ああ、これ。置き土産です」
立ち去る際、迦楼羅が空中に黒い羽根を飛ばした。黒い羽根が徐々に肥大化して、別の形に姿を変わった。
「グギャアアアアアアアア!」
憎悪の権化。四体の忌獣が屋上に姿を現したのだ。凶悪さが感じられる爪と牙を持った獣型の忌獣達だった。
「忌獣! 羽根から生み出すことも出来るのか」
「ふふ。では」
そう言うと迦楼羅が剣を鞘に収めて、屋上の柵から飛び降りた。
隼人はすぐさま、柵に手をかけて見下ろした。しかし、そこには何もなく砂煙だけが散っているのが見えた。
「逃げられた」
「ええ。それより」
結巳の言葉通り、隼人は討伐対象を四体の忌獣に向けた。口の端から唾液を垂らしながら、こちらに睨んでいる忌獣達。その姿に隼人は腸が煮えくり返りそうになった。
「おい。なにメンチ切ってんだよ」
隼人は鋭利な刃物を彷彿とさせる目つきを忌獣に向ける。
文化祭を混乱に陥れ、大事な存在達を危険に晒した。そして、何よりこの日のために皆が力を合わせて築き上げてきた物を踏みつけにした。
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