87 / 115
「休息と兆し」
しおりを挟む
対策本部の戦闘員の怒号や忌獣を雄叫びが飛び交う月夜の下、迦楼羅はガラスケースを持ちながら、吸い込まれそうな程、輝く満月を眺めていた。
「要」
ケースの中には自身の配下である彼女の心臓が入っている。忠誠の証として彼女に持って欲しいと懇願されたのだ。
その心臓の動きが鈍くなっている。心臓を切り離れているから不死身とはいえ、肉体の再生には限度がある。
裂傷が激しいほど再生能力も落ちる。彼女の心臓を見るに肉体は使い物にならなくなっている。
迦楼羅はゆっくりと取り出して、素手で触れた。鼓動が遅くなっているとはいえ、手のひらの温もりから彼女の生存を確信した。
「貴女はよくやってくれました。要。もう十分です」
迦楼羅は力を込めて、心臓を握りつぶした。自身を崇拝する人間が一人、この世を去った瞬間である。
隼人は突然、倒れた要に驚いていた。念のため、恐る恐る手首に手を添えて、脈を測った。反応はない。
「死んだのか」
隼人はゆっくりとその場に腰を下ろした。疲労を覚えた為、休息を取りたかったのだ。
「松阪君」
結巳が疲労感漂う表情でこちらに歩み寄って来た。先ほどの激闘を勝利できたのも彼女のおかげだ。
彼女がいなければ要の動きに翻弄されて、敗北していた可能性もあった。
「さすが幹部。今回も中々手強かったわね」
「ああ、かなり疲れた」
隼人は目を閉じながら、風を感じていた。しばらくこの夜風で心身の疲れを緩和することにした。
静けさが漂う部屋の中、松阪シライは項垂れていた。その通りにいた星野奏も同じ様子だった。
原因は自分が読んでいる本のせいだ。聖堂寺家の文献。
隼人から渡された聖堂寺の歴史書だ。言伝である程度の詳細は聞いていたが、目を通すと内容の重さが胸にのしかかった。
「こんなことがあったなんて」
眼に映る驚愕の事実の数々。それはシライが抱いていた由緒正しい聖堂寺の姿を大きく覆すものだった。
忌獣、いや鳥籠の戦いは聖堂寺家の血縁者同士の対立で生まれたものだ。つまり自分達は今まで一つの一族の内輪揉めに付き合わされていたのだ。
「このためにあいつは」
シライの脳裏に亡き親友である鵙の顔が映った。それだけではない。数多の争いの数々が頭を巡った。
「にわかには信じがたいですが、おそらくここに記されている通りでしょう。どうなさいますか?」
奏の鋭い眼差しがシライに向いた。おそらく彼女の中でもある程度の決心がついているはずだ。
「決まっているさ。これを世に公表する」
これ以上、隠す必要はない。聖堂寺に隠された闇。それが公になるカウントダウンが始まった。
「要」
ケースの中には自身の配下である彼女の心臓が入っている。忠誠の証として彼女に持って欲しいと懇願されたのだ。
その心臓の動きが鈍くなっている。心臓を切り離れているから不死身とはいえ、肉体の再生には限度がある。
裂傷が激しいほど再生能力も落ちる。彼女の心臓を見るに肉体は使い物にならなくなっている。
迦楼羅はゆっくりと取り出して、素手で触れた。鼓動が遅くなっているとはいえ、手のひらの温もりから彼女の生存を確信した。
「貴女はよくやってくれました。要。もう十分です」
迦楼羅は力を込めて、心臓を握りつぶした。自身を崇拝する人間が一人、この世を去った瞬間である。
隼人は突然、倒れた要に驚いていた。念のため、恐る恐る手首に手を添えて、脈を測った。反応はない。
「死んだのか」
隼人はゆっくりとその場に腰を下ろした。疲労を覚えた為、休息を取りたかったのだ。
「松阪君」
結巳が疲労感漂う表情でこちらに歩み寄って来た。先ほどの激闘を勝利できたのも彼女のおかげだ。
彼女がいなければ要の動きに翻弄されて、敗北していた可能性もあった。
「さすが幹部。今回も中々手強かったわね」
「ああ、かなり疲れた」
隼人は目を閉じながら、風を感じていた。しばらくこの夜風で心身の疲れを緩和することにした。
静けさが漂う部屋の中、松阪シライは項垂れていた。その通りにいた星野奏も同じ様子だった。
原因は自分が読んでいる本のせいだ。聖堂寺家の文献。
隼人から渡された聖堂寺の歴史書だ。言伝である程度の詳細は聞いていたが、目を通すと内容の重さが胸にのしかかった。
「こんなことがあったなんて」
眼に映る驚愕の事実の数々。それはシライが抱いていた由緒正しい聖堂寺の姿を大きく覆すものだった。
忌獣、いや鳥籠の戦いは聖堂寺家の血縁者同士の対立で生まれたものだ。つまり自分達は今まで一つの一族の内輪揉めに付き合わされていたのだ。
「このためにあいつは」
シライの脳裏に亡き親友である鵙の顔が映った。それだけではない。数多の争いの数々が頭を巡った。
「にわかには信じがたいですが、おそらくここに記されている通りでしょう。どうなさいますか?」
奏の鋭い眼差しがシライに向いた。おそらく彼女の中でもある程度の決心がついているはずだ。
「決まっているさ。これを世に公表する」
これ以上、隠す必要はない。聖堂寺に隠された闇。それが公になるカウントダウンが始まった。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
まずはお嫁さんからお願いします。
桜庭かなめ
恋愛
高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。
4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。
総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。
いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。
デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!
※特別編7が完結しました!(2026.1.29)
※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録、感想をお待ちしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる