「黒炎の隼」

蛙鮫

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「慟哭と動揺」

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 混乱する町外れの建物。対策本部の残党勢力が集まっていた。

 各自、避難し遅れた町の住民を警察や消防署と手を組んで、保護していた。


 そんな中、隼人は結巳や揚羽はヘリコプターに乗り、怪物の方に向かっていた。

 巨大な怪物といえど、体の仕組みは忌獣と同じ。なら弱点も脳に限る。地上は他の隊員達に任せて、隼人達は怪物を止める任務を背負ったのだ。

 緊張感漂う機内。聖滅具を睨みつけながら、メンテナンスを行っていた。これから挑むのは彼らの中でも最大の試練だ。決して失敗は許されない。

「多分、あの化け物は聖堂寺の文献で書いていた化け物だ。お前の兄貴と迦楼羅が蘇らせたんだろうな」
 聖堂寺の文献と怪物が出現したポイントからして可能性はその可能性がかなり高い。

「巨大な忌獣だとしたら弱点はやはり脳ね」

「兄さんに必ず問い詰めるわ。何故、こんな事をしたのか! 何が望みなのか」
 結巳がつり目をさらに鋭くした。言葉から伝わる怒りと微々たる不安感。そして、兄を止めるという強い想いが彼女の原動力となっているのだ。

「私もお父様を止めたい。力を貸して」

「揚羽」
 普段、快活な彼女も真剣な表情を浮かべていた。

「オオオオオオオオオオオオ!」
 突然、怪物が雄叫びを上げ始めた。あまりの声の大きさで周囲を空気が僅かに震えた。

「なっ。なんだ。いきなり」

「ねえ。あれ」
 揚羽が一点を指差した。指先の方を見ると怪物の皮膚が何箇所か蠢いている。

 まるで卵から孵る幼虫のようだ。するとその比喩が当たるように皮膚から何かがこちらに向かって、勢いよく向かってきた。

 それは忌獣だ。その一頭を皮切りに無数の忌獣が鉛玉のように隼人達の乗るヘリコプターに飛んできたのだ。

「グオオオオオオオ!」

「ゲルルルルルル!」

「捕まれ!」
 操縦席で操作している男性がヘリコプターを動かした。躱して行くと忌獣達が次々と落下して行く。

「一体。どうなっているの」

「おそらく向こうも抵抗しているんだろう。このまま続けられたら近づけない」
 隼人はどこから飛び込もうか、思考を凝らした。その時、突き抜けるような閃光が走った。

 閃光はヘリコプターのプロペラ部分に直撃した。その瞬間、ヘリコプターが音を立てて、黒煙を巻きながら、回転し始めた。

 機内を支配する警告音と赤い点滅。耳から心臓へと急激な不安感が体を包み込んで来た。

「脱出するぞ!」
 操縦席の男性が揺れる機内の中、パラシュートを隼人達に渡してくれた。地震のように揺れる機内の中、どうにかパラシュートを装着した。

「行くぞ!」
 隼人は仲間達を鼓舞して、機内から飛び降りた。紐を引っ張るとパラシュートが音を立てて、浮遊感を覚えた。

「よっと。危なかった。大丈夫か?」

「ええ」

「うん」

「問題ない」
 地面に着地した数秒後、ヘリが落ちた方角から凄まじい衝撃音と爆発音が聞こえた。

「さて。これからどうーー」
 操縦席にいた男性が話している最中、首が飛んだ。草陰から出て来た忌獣にやられたのだ。
「運転手さん!」

「忌獣! さっきあの怪物が出して来た奴か」
 一体が姿を見せた瞬間、待っていたといわんばりに物陰から姿を表した。突然、包囲に隼人は思わず、生唾を飲んだ。

「後半に備えて、戦闘は避けたいけどやるぞ!」
 隼人の声に結巳と揚羽が頷いた。次の瞬間、忌獣達が雄叫びをあげて一斉に飛びかかって来た。

 しかし、彼らも歴戦の猛者。襲いかかる忌獣達を華麗に斬りさばいて行く。

 隼人達が動くたびに土煙が舞い、忌獣の血が飛び散る。そして、瞬く間に忌獣達を討伐する事に成功した。

「やったか」

「ガアアアアア!」
 隼人が深くため息をついた時、背後から忌獣が飛びかかって来た。

「松阪君!」
 結巳の金切り声のような叫びが耳に届いた瞬間、忌獣の頭部が突然、切断されたのだ。

 倒れた忌獣の側にフードを被った何者かが立っていた。以前、都市部で出会ったフードと同じだ。

 隼人は正体不明の存在に警戒心を強める。

「誰だ」

「久しぶりだね。隼人」
 聞き覚えのある声だった。懐かしい思い出の日々を蘇らせるような暖かい声だ。

 静かにフードを取り、素顔を目にした瞬間、目を疑った。

「鷹」
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