「黒炎の隼」

蛙鮫

文字の大きさ
103 / 115

「数多の想い」

しおりを挟む
 
ヴリトラが雄叫びをあげて町に向かっていく中、隼人は結巳、揚羽、鷹とともに迦楼羅と戦闘を繰り広げていた。

「押し切れ! 奴に攻撃の隙を当てるな!」
 隼人の掛け声で他の三人が次々と攻撃を加えていく。しかし、さすがは鳥籠の首領というべきか。全ての攻撃を防いでいるのだ。

「この程度ですか? 私に膝をつかせるにはまだ足りませんよ」
 迦楼羅の冷静かつ重みのある声が耳に伝わる。四人がかりで押しても、未だに迦楼羅が優勢に立っているのだ。

「黒揚羽、邪災の音!」
 揚羽の刀身から漆黒の斬撃とともに幾千もの黒い蝶が迦楼羅めがけて飛んでいく。

 猛毒の蝶。触れれば命取りだが迦楼羅からおそれる気配はなかった。

「くどい」
 迦楼羅が背中から黒い翼を生み出した。そこから幾千もの黒い羽根を弾丸のようにいくつも飛ばして来たのだ。

氷壁アイスウォール!」
「障壁!」
 結巳が異能で氷の壁を生み出して、鷹もV因子を利用して、瞬く間に黒い壁を作り上げた。

 凄まじい衝撃が壁越しに伝わり、心臓の鼓動が早まる。攻撃を止んだのを見計らい、隼人は走り出した。

「影焔!」
 隼人は異能を発動し、一気に加速した。燃えているように体の内側が熱くなっている。

「ほお、これは見事な暗殺剣。適正率も対して高くないだろうにその年でよくもここまでやっているものです」

「どうも!」
 迦楼羅を討ち取ろうと攻め込んでいく。己の激情が刀身に宿っているように黒炎が燃えている。

 しかし、どれだけ攻め込んでも迦楼羅にはほんのひと掠りもしないのだ。

「炎の勢いから威力の高さは伺えますが、当たらなければ意味がない!」
 迦楼羅がV因子を剣に纏いながら、対抗して来た。一つ一つが正確で威力も鉛のように重い。

 まるで獲物を刈り取ろうとする一匹の猛禽類そのものだ。その時、迦楼羅めがけて横から何かが飛んで来た。

 彼がそれを剣先で防ぐと金属音のような音が聞こえた。隼人は急いで後方に下がって飛んで来たものの正体に目を向けた。

 よく見るとそれは対策本部が使用している鉛玉だった。

「何」
 迦楼羅が銃弾を持って、首を傾げているとどこか聞き覚えのある音が聞こえる。

 それは無数のヘリコプターだった。ヘリコプターがヴリトラの周囲を取り囲んでいたのだ。

「まさか、対策本部の!」

「小癪な真似を」
 迦楼羅が飛んでいるヘリコプターに向かって構えた瞬間、鷹と結巳、揚羽が攻撃を阻止した。

「邪魔させないよ。父さん」

「自惚れも大概にしなさい」

「自惚れじゃねえよ。俺達はあんたを倒して、馬鹿げた計画もぶっ潰す」
 隼人は刀身を向けて、迦楼羅を睨みつけた。

 そして、いくつかのヘリコプターの中から次々と戦闘員達がロープを使って降りてくる。

 残りの数機からは戦闘員がヴリトラから湧き出る忌獣を狙撃していた。

 ヘリコプターの中から鶏マスクを被ったガタイの良い男性がこちらに向かって来た。

「松阪君! 大丈夫か!」

「庭島さん! 住民の避難は!?」

「粗方完了した! 残りは自衛隊の人に任せた。町に向かっていく忌獣はソラシノがどうにかしてくれている。なら俺達がやることは一つだ」
 庭島が迦楼羅の方を向くと同時に他の戦闘員を同じように首を動かした。

「ここで必ず終わらせる! いくぞ!」
 庭島が叫び声をあげると同時に隼人達は一斉に声を張り上げながら走り出した。

  全てはこの戦いを終わらせるために。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...