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「数多の想い」
しおりを挟むヴリトラが雄叫びをあげて町に向かっていく中、隼人は結巳、揚羽、鷹とともに迦楼羅と戦闘を繰り広げていた。
「押し切れ! 奴に攻撃の隙を当てるな!」
隼人の掛け声で他の三人が次々と攻撃を加えていく。しかし、さすがは鳥籠の首領というべきか。全ての攻撃を防いでいるのだ。
「この程度ですか? 私に膝をつかせるにはまだ足りませんよ」
迦楼羅の冷静かつ重みのある声が耳に伝わる。四人がかりで押しても、未だに迦楼羅が優勢に立っているのだ。
「黒揚羽、邪災の音!」
揚羽の刀身から漆黒の斬撃とともに幾千もの黒い蝶が迦楼羅めがけて飛んでいく。
猛毒の蝶。触れれば命取りだが迦楼羅からおそれる気配はなかった。
「くどい」
迦楼羅が背中から黒い翼を生み出した。そこから幾千もの黒い羽根を弾丸のようにいくつも飛ばして来たのだ。
「氷壁!」
「障壁!」
結巳が異能で氷の壁を生み出して、鷹もV因子を利用して、瞬く間に黒い壁を作り上げた。
凄まじい衝撃が壁越しに伝わり、心臓の鼓動が早まる。攻撃を止んだのを見計らい、隼人は走り出した。
「影焔!」
隼人は異能を発動し、一気に加速した。燃えているように体の内側が熱くなっている。
「ほお、これは見事な暗殺剣。適正率も対して高くないだろうにその年でよくもここまでやっているものです」
「どうも!」
迦楼羅を討ち取ろうと攻め込んでいく。己の激情が刀身に宿っているように黒炎が燃えている。
しかし、どれだけ攻め込んでも迦楼羅にはほんのひと掠りもしないのだ。
「炎の勢いから威力の高さは伺えますが、当たらなければ意味がない!」
迦楼羅がV因子を剣に纏いながら、対抗して来た。一つ一つが正確で威力も鉛のように重い。
まるで獲物を刈り取ろうとする一匹の猛禽類そのものだ。その時、迦楼羅めがけて横から何かが飛んで来た。
彼がそれを剣先で防ぐと金属音のような音が聞こえた。隼人は急いで後方に下がって飛んで来たものの正体に目を向けた。
よく見るとそれは対策本部が使用している鉛玉だった。
「何」
迦楼羅が銃弾を持って、首を傾げているとどこか聞き覚えのある音が聞こえる。
それは無数のヘリコプターだった。ヘリコプターがヴリトラの周囲を取り囲んでいたのだ。
「まさか、対策本部の!」
「小癪な真似を」
迦楼羅が飛んでいるヘリコプターに向かって構えた瞬間、鷹と結巳、揚羽が攻撃を阻止した。
「邪魔させないよ。父さん」
「自惚れも大概にしなさい」
「自惚れじゃねえよ。俺達はあんたを倒して、馬鹿げた計画もぶっ潰す」
隼人は刀身を向けて、迦楼羅を睨みつけた。
そして、いくつかのヘリコプターの中から次々と戦闘員達がロープを使って降りてくる。
残りの数機からは戦闘員がヴリトラから湧き出る忌獣を狙撃していた。
ヘリコプターの中から鶏マスクを被ったガタイの良い男性がこちらに向かって来た。
「松阪君! 大丈夫か!」
「庭島さん! 住民の避難は!?」
「粗方完了した! 残りは自衛隊の人に任せた。町に向かっていく忌獣はソラシノがどうにかしてくれている。なら俺達がやることは一つだ」
庭島が迦楼羅の方を向くと同時に他の戦闘員を同じように首を動かした。
「ここで必ず終わらせる! いくぞ!」
庭島が叫び声をあげると同時に隼人達は一斉に声を張り上げながら走り出した。
全てはこの戦いを終わらせるために。
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