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「阿鼻叫喚」
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町外れの森に設置されたテント。松阪シライはヘリコプターに搭載さえたモニターから隼人達の状況を確認していた。
相手は迦楼羅。対策本部最強の敵だ。彼自身、全力で挑んでも勝てなかったが、隼人達なら必ず打ち取ってくれると信じているのだ。
「頼んだぞ。みんな」
シライは画面の向こうで迦楼羅に立ち向かおうとする英雄達に祈りを捧げた。
隼人は動揺していた。目の前で多くの仲間達が一瞬で返り討ちにあったからだ。
「それしきで倒せるとお思いですか?」
迦楼羅がそう呟いた後、目にも止まらない速さで何千個もあろうかと思うほどの羽根を飛ばしてきた。
戦闘員達に着弾して辺りから悲鳴と血しぶきが上がる。
「くそっ!」
隼人はその絶望的な光景に目を奪われていた。度肝を抜かれるような戦慄の光景が広がっている。
加勢に来たことによって僅かに見えた光明は一瞬で閉ざされてしまった。
「いけー!」
「こんなところで終わるかあ!」
生き残っていた戦闘員達が立ち向かっていくも、しかし、瞬く間に原型をとどめない肉片に変わってしまった。
「この程度なら問題ありませんね」
余裕のある口調で死体の山を見つめる。言葉通り、迦楼羅にとって並みの戦闘員を山ほど相手にしようと何の問題もない。
数百の修羅場をくぐり抜けてこれまで多くの戦闘員を葬ってきた異形の怪物。
これまで戦って来た幹部達とは比較にならないほどの強さだ。
「はあああ!」
隼人は下に滑り込んで、掬い上げるように刀身を振った。しかし、予想していたと言わんばかりに容易く躱されてしまった。
「読みが甘いですね」
「がはっ!」
迦楼羅の強烈な膝蹴りが隼人の鳩尾にめり込んだ。声にならない鈍痛と溝の奥から何かこみあげて、口から吐き出た。
数分前に飲んだ飲料水が胃液とともに不快感を交えて空中に飛び散った。隼人は勢いで後方に吹き飛び、柵に背中を強く打ち付けた。
「み、んな」
嘔吐により、一時的に気力がそぎ落とされて、立ち上がる気が起きない。
目の前では迦楼羅が圧倒的な実力で突撃していく戦闘員達を次々と斬り倒していく光景だ。
「グアアあああ!」
「ぎゃああああ!」
壁や床に張り付いた血しぶき、積み重なる仲間達の屍。当事者は死屍累々の中、剣についた血を振り払っていた。
仲間の血だ。今日この日のために血が滲むような苦難を乗り越えた者達の想いが刻まれた尊い血だ。
「ぐっ」
隼人は腸が煮えくり返るようになるほどの憤りを奥歯に負荷をかけてどうにか抑える。
「松阪くん。一旦休んで」
結巳が隼人の側に駆け寄って、声をかけてきた。彼女自身も決して、軽傷ではない。
「休めるかよ。俺だけ。みんな戦ってんのによ」
顳顬から流れ出る血を抑えながら、背中を起こした。ここで自分が引けば,間違いなく後ろの仲間たちは死ぬ。
震える両膝に喝を入れて無理やり立ち上がった。周囲では鷹や揚羽が地面や壁で身を預けていた。
「私の斬撃をもろに受けて、立ち上がるとは」
「絶対倒す」
口の中に漂う血の味を噛み締めながら、隼人は迦楼羅の元に駆け出した。
「邪魔です」
「ぐはっ!」
迦楼羅からの強烈な拳が心臓付近に当たった。隼人は地面を転がりながら、柵に背中を打ち付けた。
「あっ、あっ」
胸に強い衝撃を受けたせいか息を吐けない。その間にも迦楼羅が攻撃の態勢に入っているのが視界の端で見えていた。
迫り来る死と連動する心臓の鼓動。隼人はゆっくりと立ち上がろうとした時、迦楼羅に向かって誰かが飛びかかった。
「ほう。まだ立ちますか。揚羽」
「ええ。お父様に勝ち、この戦いを終わらせる。初めて出来た友達をこれ以上、傷つけさせない!」
真っ白な手足から血を流しながら、迦楼羅に挑んでいく。彼女が必死な表情で食らいついているが、対する迦楼羅からは何の焦りも感じられない。
「遅い。足も振りも返しも全てが遅い」
迦楼羅が揚羽の刀を躱して、強烈な正拳突きを鳩尾に叩き込んだ。血を吐くと共に彼女は遥か後方まで飛んだ。
「あんた。血は繋がっていないとはいえ娘だろ? 情はないのか」
「情? この愚物にそんなものは不必要です。ここまで手塩に掛けて育てたというのに私に傷一つつけられない出来損ない」
迦楼羅の心無い発言に隼人の内側で沸々と怒りがこみ上げた。口に広がる血を舐めながら、ゆっくりと立ち上がる。
「後悔するなよ! その言葉の責任を取らせる!」
隼人は怒りに任せて勢いよく刀身を振ったが容易く止められてしまった。
「しかし、哀れですね。仲間というものは。初めから情愛など抱かなければ心が揺れて、先ほどのように動きに粗が出来る事もない」
迦楼羅が張り付くような冷たい声で語りかけてきた。
「あんたの為に死んで行った幹部達はどうなんだよ」
「私のために戦う。それを選んだのは彼らの意志ですよ。それを私が汲み取るかは別です」
「そうかい。死んで言った奴らが報われないな」
隼人は呆れと憤りを交えたため息をついた。組織で活動している以上、その中で情が生まれるはずである。
ところが、目の前の怪物にはそんなものはなかったのだ。敵を打ち取ったことに後悔はしていない。同情もしない。
しかし、迦楼羅の身勝手極まりない発言を聞いて、悪態をつかずにはいられなかった。
「迦楼羅!」
隼人は傷だらけの体に鞭を打って、仇にめがけて走り出した。
相手は迦楼羅。対策本部最強の敵だ。彼自身、全力で挑んでも勝てなかったが、隼人達なら必ず打ち取ってくれると信じているのだ。
「頼んだぞ。みんな」
シライは画面の向こうで迦楼羅に立ち向かおうとする英雄達に祈りを捧げた。
隼人は動揺していた。目の前で多くの仲間達が一瞬で返り討ちにあったからだ。
「それしきで倒せるとお思いですか?」
迦楼羅がそう呟いた後、目にも止まらない速さで何千個もあろうかと思うほどの羽根を飛ばしてきた。
戦闘員達に着弾して辺りから悲鳴と血しぶきが上がる。
「くそっ!」
隼人はその絶望的な光景に目を奪われていた。度肝を抜かれるような戦慄の光景が広がっている。
加勢に来たことによって僅かに見えた光明は一瞬で閉ざされてしまった。
「いけー!」
「こんなところで終わるかあ!」
生き残っていた戦闘員達が立ち向かっていくも、しかし、瞬く間に原型をとどめない肉片に変わってしまった。
「この程度なら問題ありませんね」
余裕のある口調で死体の山を見つめる。言葉通り、迦楼羅にとって並みの戦闘員を山ほど相手にしようと何の問題もない。
数百の修羅場をくぐり抜けてこれまで多くの戦闘員を葬ってきた異形の怪物。
これまで戦って来た幹部達とは比較にならないほどの強さだ。
「はあああ!」
隼人は下に滑り込んで、掬い上げるように刀身を振った。しかし、予想していたと言わんばかりに容易く躱されてしまった。
「読みが甘いですね」
「がはっ!」
迦楼羅の強烈な膝蹴りが隼人の鳩尾にめり込んだ。声にならない鈍痛と溝の奥から何かこみあげて、口から吐き出た。
数分前に飲んだ飲料水が胃液とともに不快感を交えて空中に飛び散った。隼人は勢いで後方に吹き飛び、柵に背中を強く打ち付けた。
「み、んな」
嘔吐により、一時的に気力がそぎ落とされて、立ち上がる気が起きない。
目の前では迦楼羅が圧倒的な実力で突撃していく戦闘員達を次々と斬り倒していく光景だ。
「グアアあああ!」
「ぎゃああああ!」
壁や床に張り付いた血しぶき、積み重なる仲間達の屍。当事者は死屍累々の中、剣についた血を振り払っていた。
仲間の血だ。今日この日のために血が滲むような苦難を乗り越えた者達の想いが刻まれた尊い血だ。
「ぐっ」
隼人は腸が煮えくり返るようになるほどの憤りを奥歯に負荷をかけてどうにか抑える。
「松阪くん。一旦休んで」
結巳が隼人の側に駆け寄って、声をかけてきた。彼女自身も決して、軽傷ではない。
「休めるかよ。俺だけ。みんな戦ってんのによ」
顳顬から流れ出る血を抑えながら、背中を起こした。ここで自分が引けば,間違いなく後ろの仲間たちは死ぬ。
震える両膝に喝を入れて無理やり立ち上がった。周囲では鷹や揚羽が地面や壁で身を預けていた。
「私の斬撃をもろに受けて、立ち上がるとは」
「絶対倒す」
口の中に漂う血の味を噛み締めながら、隼人は迦楼羅の元に駆け出した。
「邪魔です」
「ぐはっ!」
迦楼羅からの強烈な拳が心臓付近に当たった。隼人は地面を転がりながら、柵に背中を打ち付けた。
「あっ、あっ」
胸に強い衝撃を受けたせいか息を吐けない。その間にも迦楼羅が攻撃の態勢に入っているのが視界の端で見えていた。
迫り来る死と連動する心臓の鼓動。隼人はゆっくりと立ち上がろうとした時、迦楼羅に向かって誰かが飛びかかった。
「ほう。まだ立ちますか。揚羽」
「ええ。お父様に勝ち、この戦いを終わらせる。初めて出来た友達をこれ以上、傷つけさせない!」
真っ白な手足から血を流しながら、迦楼羅に挑んでいく。彼女が必死な表情で食らいついているが、対する迦楼羅からは何の焦りも感じられない。
「遅い。足も振りも返しも全てが遅い」
迦楼羅が揚羽の刀を躱して、強烈な正拳突きを鳩尾に叩き込んだ。血を吐くと共に彼女は遥か後方まで飛んだ。
「あんた。血は繋がっていないとはいえ娘だろ? 情はないのか」
「情? この愚物にそんなものは不必要です。ここまで手塩に掛けて育てたというのに私に傷一つつけられない出来損ない」
迦楼羅の心無い発言に隼人の内側で沸々と怒りがこみ上げた。口に広がる血を舐めながら、ゆっくりと立ち上がる。
「後悔するなよ! その言葉の責任を取らせる!」
隼人は怒りに任せて勢いよく刀身を振ったが容易く止められてしまった。
「しかし、哀れですね。仲間というものは。初めから情愛など抱かなければ心が揺れて、先ほどのように動きに粗が出来る事もない」
迦楼羅が張り付くような冷たい声で語りかけてきた。
「あんたの為に死んで行った幹部達はどうなんだよ」
「私のために戦う。それを選んだのは彼らの意志ですよ。それを私が汲み取るかは別です」
「そうかい。死んで言った奴らが報われないな」
隼人は呆れと憤りを交えたため息をついた。組織で活動している以上、その中で情が生まれるはずである。
ところが、目の前の怪物にはそんなものはなかったのだ。敵を打ち取ったことに後悔はしていない。同情もしない。
しかし、迦楼羅の身勝手極まりない発言を聞いて、悪態をつかずにはいられなかった。
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