「最強とひまわり」

蛙鮫

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「交流」

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雲ひとつない空の下、俺はクラスメイト達とグラウンドに立っていた。目の前には隣のクラスメイト達が横一列に並んでいる。

 今は体育の時間。これから授業でサッカーが始まる。相手チームは所々、自身に満ちた表情を浮かべている生徒が見られる。

「なあ、ソラシノ君ってサッカー出来る?」

「ルールは知っているけど、あんまりやった事ないんだ」
 身体訓練の一つとしてスポーツはいくつかかじった事があるが、外でやるのは初めてだ。
「そっか。まあ無理そうなら俺とかにパスしてくれ」

「わかった」
 クラスメイトがそういうと自分の陣地に向かった。

 相手チームからのキックオフが始まるとこちらに駆け上がってきた。モヒカン頭の生徒が華麗なドリブルで僕のクラスメイトを次々と抜き去って行く。

 おそらく経験者だろう。このままでは点数を入れられる。

「ちょろいぜ!」
 俺はすぐさまモヒカン頭の元に向かった。そして、すぐさまボールを奪った。

「なっ!」
 驚く彼を尻目に俺は一人で相手のゴールまで上がった。

「なんなんだ。あの動き」

「早い」
 次々と妨害してくる相手を突破して、ゴールめがけてサッカーボールを蹴り込んだ。

 ボールはゴールに吸い込まれるように入ってこちらのチームに加点された。

「うおおおお! ソラシノやるな!」

「びっくりしたぜ」

「ありがとう」
 クラスメイトに感謝の言葉を受けて、思わず口角が上がった。俺はその調子でプレイを続行した。

 結果は俺達の圧勝だった。

「すげええよ。あのモヒカン頭。鈴木って言うんだけどよ。サッカー部なんだぜ」

「俺達。いつも、あいつにやられていたんだ」

「そうか」
 鈴木という生徒は経験者というだけあり実力は確かにあったが、自分一人で上がって行く、失敗したチームメイトに怒鳴るなどややワンマンなところが見られた。

「それにしても動きとかパス回しとかまじで上手かったけど本当に未経験か?」

「未経験だよ」
 戦場で出て入れば、仲間の位置などを把握しなければならない。その培った能力がこの試合で発揮されたらしい。

 まさか戦いで身についた身体能力がこんな形で役に立つとは思わなかった。

 ふとグラウンドの外を見るとベンチに北原が座っていた。

「参加しないのか?」
 駆け寄って声をかけると、彼女がなんともぎこちない表情を浮かべた。

「私。昔から体があまり強くなくて。本当はみんなみたいに走ったりしたいんだけどね」

「そうか」

「さっ! お昼ご飯の時間だよ! 一緒に行こう」

「うん」
 いつも通り明るい表情の北原に戻り、俺は彼女の後をついて行った。



「ソラシノ君! ご飯一緒に食べよう!」

「良いよ」
 北原に誘われて、一緒に昼食を取ることにした。他にも彼女の友人数人がおり、彼女達も俺を快く歓迎してくれた。

「ソラシノ君はそれだけ?」
 北原がそう言って、今朝コンビニで買ってきた栄養補給ゼリーを指差した。

「ああ、あまり食べないんだ」
 基本的に食事は夕食以外、軽く済ますのが習慣になっていた。 一方、彼女は自前の弁当があり、中には卵焼き、ミートボール、アスパラベーコンなど数多くの料理が盛り込まれていた。

「はい。あげる!」
 そう言って彼女が俺に卵焼きを差し出した。

「良いのか?」

「うん!」
 彼女の善意を受け取り、卵焼きを口にした。卵の優しい甘みが口いっぱいに広がり、それはそれは美味なものだった。

「美味いな。手作りなのか?」

「うん。私。一人暮らしだからさ」

「そうか。大変だな」

「ううん。慣れっ子だよ!」
 北原がそう言って、向日葵が咲いたような笑みを浮かべた。

「私もソラシノ君にあげちゃお!」

「私も!」

「ほれほれ!」
 気づけば俺の昼食はとても彩に満ちたものとなった。

 夕方。北原と下校をしていた。彼女は相変わらずこれでもかと口を動かしている。

 すると俺の視界にある人物が目にはいった。
「あれは」

「庭島くん?」
 クラスメイトの庭島が今にも崩れそうな廃工場の中に入って行くのが見えたのだ。

「行こう!」
 北原が突然、俺の手を掴んで行くようにせがんできた。

「どうして?」

「庭島くん。他校の生徒と喧嘩しているってよく聞くからもしかしたらその関連かも。助けないと!」
 彼女が必死の表情で俺に訴える。助けに行くことは問題ない。しかし、彼女のいう通り、不良達がいるというのなら彼女も巻き込まれる可能性が高い。

「分かった。ならそこで待っていてくれ。俺一人で行く。何かあれば電話する。良いね?」

「うん」
 俺は庭島君の後を追って、廃工場の中に入って行く。廃工場の広場につくと思わず目を見開いた。

 北原の予想通り、庭島が複数の男達と戦っていたのだ。彼は傷だらけになりながらも、相手を殴り倒している。

 その証拠に辺りには何人もの男が口から泡を吹いて、倒れていた。

 しかし、額から流れる血と体の傷から見るに庭島は限界だった。このままではマズイ。

「待て」
 俺の声に反応して、不良達がこちらに目を向けた。
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