「最強とひまわり」

蛙鮫

文字の大きさ
5 / 54

「新しい友」

しおりを挟む
廃工場の中、不良達が俺を睨んでいる。

「なんだ? お前? こいつの仲間か?」
 不良の一人が地面で倒れている庭島君を指差した。彼は疲れたような目で俺の方を見ていた。

「ははは! 良かったなあ! お友達が助けに来てくれてよ!」

「まさかだと思うけど、この数を相手取ろうってのか?」
 一際、体格のいいリーダー格の男が不良達を引き連れる。皆、釘バットや鉄パイプ。アイスピックに警棒など様々な武器を持っていた。

 俺は息を整えて、戦闘に臨んだ。
「問題ない。俺一人で十分だ」

「なめやがって! 野郎ども!」

「おう!」
 リーダー格の男の叫び声と同時に男達が俺の元に走って来た。

「ヒャッハー!」

「隙だらけだ」
 俺は襲いかかって来た男を張り倒して、警棒を奪った。

「ふん!」

「がはっ!」

「ごほっ!」
 俺は寄って来た不良二人を倒して、そこから一人、また一人と膝や手首を重点的に攻撃していく。

 素人相手だと動きそのものが遅いからいくらでも対応できる。

「お前ら! 何やってんだ! 相手は一人だぞ!」

「分かっている! でもこいつありえねえくらい強え!」
 俺は襲いかかって来た男達を無力化して、とうとうリーダー格の男のみとなった。

「クソ!」
 男が眉間に皺を寄せて、鉄バットを振って来た。力任せの単調な大振り。あまりに隙だらけだ。

「舐めんなああああ!」

「遅いよ」
 俺は躱した後、両膝と両腕を素早く叩いて戦闘不能に追い込んだ。

「クッソ」
 歯ぎしりする男を尻目に俺は庭島君の元に近寄っていく。

「庭島君。大丈夫?」

「お前は転校生? なんでここに」

「庭島君が入っていくのが見えたから」
 俺は倒れている庭島君に肩を貸して、工場の外に向かった。

「ソラシノ君! 庭島君! 大丈夫?」
 北原が驚いた様子でこちらに駆け寄って来た。無理もない。同級生が傷だらけになっているのだ。

「病院に行ったほうがいいんじゃないか?」

「いい。これくらい」
 庭島君がそう言って、立ち上がった。しかし、体のところは傷だらけで見るからに辛そうだった。

「ならここで待ってて!」
 突然、北原がどこかへと走って行った。

「どうして喧嘩になったの?」

「あいつら。他校の生徒をカツアゲしてたんだよ。だから助けたら因縁つけられて、のったらボコられた」

「なるほどね。でも無茶だよ。一人で複数人相手は」

「お前は全員ボコっただろう? しかも傷ひとつ付いてねえ。本当ナニモンだよ」

「ただの学生だよ」
 忌獣を相手取って来た俺に比べれば、不良は大した事なかった。

「お待たせ!」
 しばらくするとコンビニ袋を持った彼女が戻って来た。

 中身はガーゼや湿布が入っていた。

「せめて傷くらいは直そう。バイ菌入ったら大変だし」
 北原がどこかぎこちない手つきで庭島の傷口にガーゼを当てていく。彼女の献身的な姿勢に思わず目を見張った。

「はい! 終わり! もう大丈夫ね!」
 北原が白い歯を見せて、笑った。暖かな笑顔に影響されたのか、庭島の微かに口角をあげていた。

 この日、俺に新しい友達ができた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

双五、空と地を結ぶ

皐月 翠珠
ファンタジー
忌み子として生まれた双子、仁梧(にこ)と和梧(なこ)。 星を操る妹の覚醒は、封じられた二十五番目の存在"隠星"を呼び覚まし、世界を揺るがす。 すれ違う双子、迫る陰謀、暴かれる真実。 犠牲か共存か─── 天と地に裂かれた二人の運命が、封印された星を巡り交錯する。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

処理中です...