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2020-11-13【こんな夢を見た】

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 パジャマの袖をまくったら、両腕に無数のひっかき傷があった。
 何事かと思っていると、布団の中から銀鯖虎ぎんサバトラの猫が顔を出した。

 ああ、そうか。
 あの子が私の手首にしがみつき、指の付け根を甘噛みしながら、後足で盛んに腕を蹴っていたのだ。

 思っていると、猫はぴったり閉めてある掃き出し窓からするりと外へ飛び出して、小さく鳴きながら、歩いて行って行く。

 大変だ。あの子がいなければ、私は君に腕の傷跡の理由を説明できない。
 私は布団を押しのけ飛び起きた。猫のようにすんなりとはいかなかったけれど、私も掃き出し窓をすり抜けた。
 ピンと立った縞模様の尻尾を追いかける。

 猫は北へ向かって走って行った。
 山の裾野に建つビルディングの灰色の壁が見えた頃、私は銀鯖虎を見失った。

 山を切り削った崖の際とギリギリの、ビルとの隙間を小さな影が走って行く。
 私は影を追いかけて、人間一人がやっと通れるほどの細い覆道ロックシェッドへ飛び込んだ。

 覆道ロックシェッドの中はコンクリートの打ちっぱなしで、明かりも窓も色もない。
 細くて狭いその道は、進めば進むほどに天井は低くなり、両方の壁は逼って来る。
 私は身をかがめ、膝を折り、両手を地面に付き、ゆっくり進んでいった。
 膝も掌も肩も腰も頭も、打ちっぱなしのコンクリートにこすれて、ヒリヒリとい痛んだ。

 進んで進んで進んだ末に、どうにも先に進めなくなった時、私の目の前に現れたのは、打ちっぱなし のコンクリートの、硬くて冷たい灰色の壁だった。

 後ろに下がるより他に道はない。
 私は身をよじり、ねじ曲げながら、四つに這って尻から進んだ。

 後ずさるほどに徐々に両の壁は離れ、天井は上がってゆく。
 私の手は地面から離れ、膝は伸ばされ、頭は持ち上がった。

 私は振り向いた。
 長四角い光の中に、尻尾の上がった猫の影が見えた。

 私は走った。
 走って、覆道ロックシェッドを抜けた。
 追いかけて、追いついて、捕まえた。

 うつ伏した私の両腕には、灰色の枕が抱えられている。

 捲れ上がったパジャマの袖の下の腕には、傷一つ無ない。


……そんな夢を見た。
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