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序章
クリスマスの終わり
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それから汐恩とのデートは終わり、今は一人で帰路を辿っていた。家まで送ろうとしたが、汐恩に断られてしまった。
かなりの罪悪感を感じつつも、家にたどり着き、僕は家に入った。すると、待っていたかのように、音羽が玄関まで迎えにきてくれていた。
「おかえり。」
「………ただいま。」
リビングに着き、暖かい空気が僕を出迎えてくれる。
「どうだった?」
音羽が今日の感想を聞いてきた。正直な話、あんまり思い返したくないが、無視するわけにもいかないので答える。
「………楽しかったさ……楽しかったよ…」
楽しい、と言う言葉を口にすればするほど罪悪感が立ち込める。僕は楽しかったかもしれない。だが、汐恩はどうだろうか。途中までは楽しくとも、最後は最悪の形で終わってしまったかもしれない。
「……そっか。」
音羽は微笑んでいた。その笑みを見て、僕は気持ちを吐露したい衝動に襲われる。だが、我慢する。だって、汐恩は僕なんかよりも数十倍、数百倍辛いはずだから。だが、ひとつだけ確かめたいことがあった。それは
「これで…良かったのかな?」
僕の本当の気持ちを伝えること。それで本当に良かったのか。後悔はない。だが、汐恩本当のことを知りたくなかったら、僕はただ傷つけてしまっただけになってしまう。だからこそ、これで良かったのか、僕は知りたくなった。
「汐恩さんの気持ちはわからないけど、私は良かったと思うよ?」
「……ほんとか?」
すると音羽はゆっくりと頷きながら
「うん。本当の気持ちを言ってくれたお陰で気持ちに踏ん切りもつくし、人によりけりだけどまだ諦めないって決意する人も出てくるでしょ?」
「………そんなもんかな。」
「そんなもんなんだよ。」
音羽はそう言ってキッチンの方に向かっていった。キッチンという単語を思い出し、あることに気がついた。
「あ、ケーキ買うの忘れてた。」
いつも25日はケーキを家族で食べるのだが、完璧に忘れていた。だから僕は急いで買いに行こうとして
「多分兄さん忘れるだろうから買っておいたよ!」
音羽は手に持っていたケーキの箱を僕に見せる。その様子に僕は思わず笑った。
「流石は音羽だ。僕のことはなんでもお見通しなんだな。」
その僕の言葉にえっへんとした表情で首肯をする音羽。
「まぁ、食べようよ!色々あったらしいし。」
あんまりお腹は空いていなかったが、食べれば空くだろうということで、僕も食べることにした。
なんやかんやでケーキを平らげ、僕たちは一息つく。
「兄さん落ち込んでたから食べないかと思ったけどバクバク食べてたね。」
「しょうがないだろ。美味かったんだから。」
僕が食べたのはイチゴのショートケーキとガトーショコラ。シンプルだけど1番好きだ。食べているうちにお腹が空いてしまい、気がつけば平らげていた。
「結局兄さんって甘いものに関しては食い意地張ってるよね。」
くすくすと笑いながら言う音羽。
「うるさいなぁ。仕方ないだろ美味いもんは美味いんだから。」
僕ってそんなに食い意地張ってるの?自覚がないから不味いかもしれん。まぁ、実際は甘いものがあったらなんとしてでも食べてるし………そうなのかな?
「だとしても少しは自重しなよ。太るよ?」
「ハハッ。僕が太らない体質だってお前も知っているだろう。それに、僕は気がついているぞ。お前が少しずつ。だが着々と太り続けていることに。」
僕の言葉に目を見開く音羽。
「な、なんで知ってるの!?」
「カマかけただけなんだけど。自爆してるぞ。」
「ムキ~!!」
何に対して怒ってるのか、さっぱりわからん。自業自得だろう。すると、途端に音羽の表情が怒り顔から優しい笑みに変わった。その顔で僕を見つめてくるので思わずたじろぐ。
「な、なんだよ…」
「やっぱり兄さんはその調子だよ。確かに兄さんの性格上気に病んじゃうかもしれないけど、その調子でバカ言ってた方が兄さんらしくて良いよ!」
「馬鹿ってなんだよ馬鹿って…」
全くもって慰めているのか貶しているのかわからないやつである。だが、その言葉によって少しだけ心が軽くなったのも事実で
「ありがとう。」
僕はそう告げるのだった。
「どういたしまして!」
そこから僕たちは少し馬鹿なことを話して、笑ったり怒ったりして、気がつけば日を跨いでいて、寝ることになったのだった。
そんなこんなで、楽しかったり辛かったり、色々とあった今年のクリスマスは、幕を閉じるのであった。
かなりの罪悪感を感じつつも、家にたどり着き、僕は家に入った。すると、待っていたかのように、音羽が玄関まで迎えにきてくれていた。
「おかえり。」
「………ただいま。」
リビングに着き、暖かい空気が僕を出迎えてくれる。
「どうだった?」
音羽が今日の感想を聞いてきた。正直な話、あんまり思い返したくないが、無視するわけにもいかないので答える。
「………楽しかったさ……楽しかったよ…」
楽しい、と言う言葉を口にすればするほど罪悪感が立ち込める。僕は楽しかったかもしれない。だが、汐恩はどうだろうか。途中までは楽しくとも、最後は最悪の形で終わってしまったかもしれない。
「……そっか。」
音羽は微笑んでいた。その笑みを見て、僕は気持ちを吐露したい衝動に襲われる。だが、我慢する。だって、汐恩は僕なんかよりも数十倍、数百倍辛いはずだから。だが、ひとつだけ確かめたいことがあった。それは
「これで…良かったのかな?」
僕の本当の気持ちを伝えること。それで本当に良かったのか。後悔はない。だが、汐恩本当のことを知りたくなかったら、僕はただ傷つけてしまっただけになってしまう。だからこそ、これで良かったのか、僕は知りたくなった。
「汐恩さんの気持ちはわからないけど、私は良かったと思うよ?」
「……ほんとか?」
すると音羽はゆっくりと頷きながら
「うん。本当の気持ちを言ってくれたお陰で気持ちに踏ん切りもつくし、人によりけりだけどまだ諦めないって決意する人も出てくるでしょ?」
「………そんなもんかな。」
「そんなもんなんだよ。」
音羽はそう言ってキッチンの方に向かっていった。キッチンという単語を思い出し、あることに気がついた。
「あ、ケーキ買うの忘れてた。」
いつも25日はケーキを家族で食べるのだが、完璧に忘れていた。だから僕は急いで買いに行こうとして
「多分兄さん忘れるだろうから買っておいたよ!」
音羽は手に持っていたケーキの箱を僕に見せる。その様子に僕は思わず笑った。
「流石は音羽だ。僕のことはなんでもお見通しなんだな。」
その僕の言葉にえっへんとした表情で首肯をする音羽。
「まぁ、食べようよ!色々あったらしいし。」
あんまりお腹は空いていなかったが、食べれば空くだろうということで、僕も食べることにした。
なんやかんやでケーキを平らげ、僕たちは一息つく。
「兄さん落ち込んでたから食べないかと思ったけどバクバク食べてたね。」
「しょうがないだろ。美味かったんだから。」
僕が食べたのはイチゴのショートケーキとガトーショコラ。シンプルだけど1番好きだ。食べているうちにお腹が空いてしまい、気がつけば平らげていた。
「結局兄さんって甘いものに関しては食い意地張ってるよね。」
くすくすと笑いながら言う音羽。
「うるさいなぁ。仕方ないだろ美味いもんは美味いんだから。」
僕ってそんなに食い意地張ってるの?自覚がないから不味いかもしれん。まぁ、実際は甘いものがあったらなんとしてでも食べてるし………そうなのかな?
「だとしても少しは自重しなよ。太るよ?」
「ハハッ。僕が太らない体質だってお前も知っているだろう。それに、僕は気がついているぞ。お前が少しずつ。だが着々と太り続けていることに。」
僕の言葉に目を見開く音羽。
「な、なんで知ってるの!?」
「カマかけただけなんだけど。自爆してるぞ。」
「ムキ~!!」
何に対して怒ってるのか、さっぱりわからん。自業自得だろう。すると、途端に音羽の表情が怒り顔から優しい笑みに変わった。その顔で僕を見つめてくるので思わずたじろぐ。
「な、なんだよ…」
「やっぱり兄さんはその調子だよ。確かに兄さんの性格上気に病んじゃうかもしれないけど、その調子でバカ言ってた方が兄さんらしくて良いよ!」
「馬鹿ってなんだよ馬鹿って…」
全くもって慰めているのか貶しているのかわからないやつである。だが、その言葉によって少しだけ心が軽くなったのも事実で
「ありがとう。」
僕はそう告げるのだった。
「どういたしまして!」
そこから僕たちは少し馬鹿なことを話して、笑ったり怒ったりして、気がつけば日を跨いでいて、寝ることになったのだった。
そんなこんなで、楽しかったり辛かったり、色々とあった今年のクリスマスは、幕を閉じるのであった。
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