勘違いから始まる反逆王

わか

文字の大きさ
43 / 59
開拓

第44話 鞘の価値

しおりを挟む

 クレイモラン領での戦闘が始まってから3日。
 建物からは、火と煙が。井戸の水は、毒に汚染され、食料は、奪われる。泣き叫べば殺され、慈悲にすがろうとすると殺され、立ち向かうと殺され、逃げると殺される。

 それが3日続けばどうなる?

 答えは、自害するか、息を潜め縮こまるの2つらしい。

 どうしようもないし、どうもできない。

 「随分、静かになったもんだ。街灯や建物から漏れ出る灯りが無くなったおかげで、星が良く見える。そう、思わないか?クレアさん?」

 俺は、今、伯爵家にお邪魔している。そして、とある一室の扉を開け、中に居たクレアさんに話しかけた。

 「ふっ...あははははっ。私は...私は、貴方がここまでするとは思っていなかった!もういいでしょ!?私たちは、罪の対価を支払いました!まだ、足りないのですか!?」

 情緒不安定になっているクレアさん。誰に痛めつけられたかは知らないが、顔が腫れている。

 「契約を破ったのは、貴女です...クレア・フォン・クレイモランさん。私や私の仲間に八つ当たりしないでください。」

 顔を歪め、口元から血を流すクレアさんは、鞘から剣を抜き、俺に斬り掛かる。それを最小限の動きで避ける。何度も避ける。

 「はぁ、はぁ、はぁ。化け物...」

 「息が上がるのが早いですね、クレアさん。我々との契約を破るだけでなく、あまつさえ攻撃をするとは...正気の沙汰ではないですね?」

 自分がどういう結末になるのか分かった上で、歯向かってくるのは、時間の無駄でしかない。

 「うるさい...黙れ、黙れ黙れ黙れ黙れ!なんで私がこんな目にあわないといけないのですか!!全ては、あなた達が悪いのです!」

 「責任転嫁は、やめて頂きたい。喚いたところで、状況が変わることはありませんよ?」

 洗礼された動きであれば、避けずに受け止め、払い除けていた。しかし、怒りに身を任せ、子供が駄々こねているような動きでは、到底、剣は俺に届かない。

 「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。私は!私は、貴方のせいで、毎日怯えて生活をしていました!こんなことになるなら、初めから、こうべを垂れ、慈悲を請いました!」

 「はぁ、そうですね。それが賢い選択でした。でも、それをしなかった。クレアさんの選択が間違ったせいで、このような惨状が生まれた。どう考えても、クレアさん。貴女が悪いのです。」

 「ああぁぁぁぁっ!それ以上言うなっ!」

 横になぎ払われた剣を、伯爵家の紋章が施されたナイフの鞘で受け止める。

 「そ、そのナイフは!!返せっ!」

 返して欲しいなら、剣を振るうのをやめて頂きたいのだが...。鞘で受け止め度、紋章が削れていく。

 「クレアさん?どうして、そこまでして、返して欲しいのですか?」

 ピタッと動きをとめ、鞘を見つめる。傷ついた鞘は、もう、伯爵家の紋章と判別出来ない。

 「アルディア国王陛下から献上された代物だから...我が家の家宝であり、上流貴族である証明!それを、貴方たちが奪って傷付けたせいで!私たちは、笑い者にっ!」

 「なんだ。それだけの為に、必死になっていの?笑える。俺も一国の王だ。やるよ、これ。」

 貴族にとって、民の命よりも大事な代物だったらしい。こんな鞘のために、多くの命が無くなった。

 「あははははっ!やっと、やっと取り戻したわ!これで、私は許される!」

 投げつけた鞘を宝物のように、抱きしめ歓喜するクレアさん。

 「聞いて呆れるという言葉の意味がよく分かったよ。アホくさ。伯爵もこれのためだけに、俺たちに喧嘩を売ったのかよ...理解出来ん。全く理解出来ん。もう、いいや。もう、帰るわ。」

 色々と情報を聞き出す予定だったけど、どうでも良くなった。我々の存在なんて、どうでもいいのか?本当に、考えていないのか?見えないのか?ふざけるなよ。死ねよ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

黒に染まった華を摘む

馬場 蓮実
青春
夏の終わりに転校してきたのは、忘れられない初恋の相手だった——。 高須明希は、人生で“二番目”に好きになった相手——河西栞に密かに想いを寄せている。 「夏休み明けの初日。この席替えで、彼女との距離を縮めたい。話すきっかけがほしい——」 そんな願いを胸に登校したその朝、クラスに一人の転校生がやってくる。 彼女の名は、立石麻美。 昔の面影を残しながらも、まるで別人のような気配をまとう彼女は——明希にとって、忘れられない“初恋の人”だった。 この再会が、静かだった日常に波紋を広げていく。 その日の放課後。 明希は、"性の衝動"に溺れる自身の姿を、麻美に見られてしまう——。 塞がっていた何かが、ゆっくりと崩れはじめる。 そして鬱屈した青春は、想像もしていなかった熱と痛みを帯びて動き出す。 すべてに触れたとき、 明希は何を守り、何を選ぶのか。 光と影が交錯する、“遅れてきた”ひと夏の物語。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。 そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。 大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。 しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。 フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。 しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。 「あのときからずっと……お慕いしています」 かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。 ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。 「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、 シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」 あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

処理中です...