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異世界で生き残るには? チャック・○リスなら大丈夫
ドラゴンと最後の戦い
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俺たちの目の前には、禍々しい光景が広まっていた。
それは混沌。
街を、そしてこの世界を飲みこまんばかりに空を覆い始めていた。
「なんじゃこりゃ……」
俺は呆然とその様子を見る。
空には、一見、にわか雨が降るのかと思うような黒雲が広がったように見えるが、絶対雲じゃないね、これ。どす黒い紫のなか禍々しい光が渦巻く、ここ最近、ローゼと行動をともにして、やばいものにもだいぶ鈍感となった俺をして、ビビらせる、あまりにもおどろおどろしげな光景であった。
それを見て、
「うわー。これ、矛盾ですね」
「む!(そうだ)」
「矛盾?」
自信満々に解説する二人。
「そうです矛盾ですよ。このまま、これを放っておくと世界を壊してしまいかねないですよ」
「なんで?」
俺は、二人がなんでそんな自信満々なのか訝しく思いながら言う。
「なんでって、使い魔殿はそんなことも知らないんですか? 世の摂理を超えるようなことを繰り返した歪みがたまってついに世界の修復能力を超えてしまたのですよ。世界が弾性領域から塑性領域に変化してしまったのですよ」
「はい?」
「変化が戻れる範囲を超えてしまったのですよ」
いや、それはわかってる。俺がびっくりしたのはこの駄メイドが、弾性領域だ塑性領域だと、少し難しげな言葉を使っていることだが……それこそがこの世界が取り返しのつかない変調を迎えていると言う証拠かもしれない。
「む! 世界に少々の矛盾を与えても世界は元に戻る弾力を持っているが、限界を越えると世界構造は降伏してしまって、変形が残ってしまう——塑性変形領域に入ってしまう。その後もコットレル雰囲気の効果などもあり、しばらく変化に対して構造は抵抗するが、限界を越えると崩壊する」
ああ、なんかローゼまともなことを言い出した。
これじゃ……この世界本気でやばいかもしれない。
でも、なんだ——このアホコンビがまともになるほどの世界の歪みがなんで起きたのかと言うと、
「ヘイ、ガイ! ミーのせいなのかな? このワールドのエマージェンシーは?」
俺は遠慮がちに首肯する。
世界を、崩壊させてしまうほどのありえない矛盾で満たしてしまうような事実を積み重ねることができる。それはこの人以外に考えられないだろう。
「ノリスさん……」
「ふふふ。この程度のピンチでミーがコンヒューズすることもナッシングだが……」
事実ノリスの目に宿った決心の気持ちに俺は気づく。
「ミーそのものがこのフェノメノンをコーズしているのだとすれば……しょうがない……」
「それは……」
「バディ。ミーはこの世界から消えるしかないようだ」
*
この世界には、いやどんな世界にも事実ノリスの存在は過分すぎるのだろう。世界が存在するか事実がそんざいするのかの二者択一しかありえないのだ。どちらかが消えなければならない。世界が消えたところで、事実ノリスならば何も困らないのかもしれないが、彼は我々を助けることを選んでくれたようだ。
しかし、
「ラスト・ウイッシュ。ガール、頼みがイグジスト」
「む! わかった」
消える前に一つだけ、彼には願いがあるようだった。
「アチョー! アチョ! アチョ! アチョー!」
ローゼは事実ノリスの頼みに応じて、ある一人の伝説を召喚していた。
「サンクス。これでノープロブレム……」
「アチョー! アチョ! アチョ! アチョー!」
それは李小龍であった。
「キョアー! アチョー!」
「…………」
怪鳥音を放ちながらノリスをまわるリー。軽やかなステップを踏みながら、目で追えないほど素早い突き、蹴り——回し蹴り。
ノリスはリーの攻撃を悠然とした構えで受けきると逆に思い突きにローキック——回し蹴り。
吹き飛ぶリー。しかし、不屈の目を輝かせながら立ち上がると、連続したハイキック、突き——回し蹴り。
今度はノリスが倒れ地面に横たわる。
そして、立ち上がったノリスだが、連続したフックがあたりまた倒れてしまう。
映画『ドラゴンへの道』での二人の格闘シーンを思わせるような激しい戦いだった。一進一退の攻防が続き、映画でならこのままノリスが押されて最後に負けるはずであったが……。
「どっちもすごいですね」
「む!(すごい)」
シナリオのないこの戦い。二人は拮抗したまま、そのままいつまでも戦い続けているかのようであった。片方が攻め込めば、隙を見てもう片方が攻め込む。その繰り返し。まるで息のあったダンスのような戦いは永遠のように見えた。いや、その鍛えられた肉体同士の交錯。その瞬間に永遠があるのだった。
「だが、このままでは……」
俺は、終わりのない戦いから目を離し、もはや天の半分を呑み込まんばかりに広がった紫色のどろどろ、混沌を見つめた。
このままでは世界が終わってしまう!
しかし……。
「Don’t think. feel! (考えるな。感じろ)」
突然、攻撃の手を止めたリーは彼の名セリフを言う。
首肯するノリス。
そして二人とも体を天の混沌に向けると、
「アチョー!」
「ウォオオオオオオオオ!」
走り出した二人は天に向かって飛び蹴りをしながらシルエットになり……混沌とともにこの世界から消えていくのであった。
*
まったくすごい奴だったぜ。
今回の騒動が終わり、やっと自分の部屋に戻り、いつもどうり、もう残り少ないルートビアを俺はちびちびとやりながら、今回の騒動のことを思い返していた。
世界の摂理を超えた最強の男として創造された事実ノリス。突然現れて、強烈な印象を残しながら、あっという間に消えて行った。
「もう少し話したりとかしてみたかったかな……」
いるときはハラハラのしどうしだったとはいえ、いなくなってみると、なんとも言えない寂しさを感じる俺だった。あんなすごい漢と会う機会は今後ないのかも? と思うととても残念な思いが心の中につのる。俺は、すごい機会を、みすみすと流されるままに過ごして、逃してしまったのでは?
でも、ならばせめて、またチャック・ノリス・ファクトでも検索するかとパソコンに向かうのだが、
「あれ?」
チャック・ノリスと打ち込んでも——検索結果がでない。
どうしたのか?
「ん?」
俺は、なんだか背中に視線を感じて振り返り——そこには誰もいない?
いや……。
——Googleはチャック・ノリスを検索しない。
——何故ならあなたがチャック・ノリスを見つけるのではなく、
——チャック・ノリスがあなたを見つける事を知っているからだ
俺はその時、確かに事実の存在をそこに感じたのだった。
彼は、多分、あらゆる場所に存在する。
なにせ——事実なのだから。
それは混沌。
街を、そしてこの世界を飲みこまんばかりに空を覆い始めていた。
「なんじゃこりゃ……」
俺は呆然とその様子を見る。
空には、一見、にわか雨が降るのかと思うような黒雲が広がったように見えるが、絶対雲じゃないね、これ。どす黒い紫のなか禍々しい光が渦巻く、ここ最近、ローゼと行動をともにして、やばいものにもだいぶ鈍感となった俺をして、ビビらせる、あまりにもおどろおどろしげな光景であった。
それを見て、
「うわー。これ、矛盾ですね」
「む!(そうだ)」
「矛盾?」
自信満々に解説する二人。
「そうです矛盾ですよ。このまま、これを放っておくと世界を壊してしまいかねないですよ」
「なんで?」
俺は、二人がなんでそんな自信満々なのか訝しく思いながら言う。
「なんでって、使い魔殿はそんなことも知らないんですか? 世の摂理を超えるようなことを繰り返した歪みがたまってついに世界の修復能力を超えてしまたのですよ。世界が弾性領域から塑性領域に変化してしまったのですよ」
「はい?」
「変化が戻れる範囲を超えてしまったのですよ」
いや、それはわかってる。俺がびっくりしたのはこの駄メイドが、弾性領域だ塑性領域だと、少し難しげな言葉を使っていることだが……それこそがこの世界が取り返しのつかない変調を迎えていると言う証拠かもしれない。
「む! 世界に少々の矛盾を与えても世界は元に戻る弾力を持っているが、限界を越えると世界構造は降伏してしまって、変形が残ってしまう——塑性変形領域に入ってしまう。その後もコットレル雰囲気の効果などもあり、しばらく変化に対して構造は抵抗するが、限界を越えると崩壊する」
ああ、なんかローゼまともなことを言い出した。
これじゃ……この世界本気でやばいかもしれない。
でも、なんだ——このアホコンビがまともになるほどの世界の歪みがなんで起きたのかと言うと、
「ヘイ、ガイ! ミーのせいなのかな? このワールドのエマージェンシーは?」
俺は遠慮がちに首肯する。
世界を、崩壊させてしまうほどのありえない矛盾で満たしてしまうような事実を積み重ねることができる。それはこの人以外に考えられないだろう。
「ノリスさん……」
「ふふふ。この程度のピンチでミーがコンヒューズすることもナッシングだが……」
事実ノリスの目に宿った決心の気持ちに俺は気づく。
「ミーそのものがこのフェノメノンをコーズしているのだとすれば……しょうがない……」
「それは……」
「バディ。ミーはこの世界から消えるしかないようだ」
*
この世界には、いやどんな世界にも事実ノリスの存在は過分すぎるのだろう。世界が存在するか事実がそんざいするのかの二者択一しかありえないのだ。どちらかが消えなければならない。世界が消えたところで、事実ノリスならば何も困らないのかもしれないが、彼は我々を助けることを選んでくれたようだ。
しかし、
「ラスト・ウイッシュ。ガール、頼みがイグジスト」
「む! わかった」
消える前に一つだけ、彼には願いがあるようだった。
「アチョー! アチョ! アチョ! アチョー!」
ローゼは事実ノリスの頼みに応じて、ある一人の伝説を召喚していた。
「サンクス。これでノープロブレム……」
「アチョー! アチョ! アチョ! アチョー!」
それは李小龍であった。
「キョアー! アチョー!」
「…………」
怪鳥音を放ちながらノリスをまわるリー。軽やかなステップを踏みながら、目で追えないほど素早い突き、蹴り——回し蹴り。
ノリスはリーの攻撃を悠然とした構えで受けきると逆に思い突きにローキック——回し蹴り。
吹き飛ぶリー。しかし、不屈の目を輝かせながら立ち上がると、連続したハイキック、突き——回し蹴り。
今度はノリスが倒れ地面に横たわる。
そして、立ち上がったノリスだが、連続したフックがあたりまた倒れてしまう。
映画『ドラゴンへの道』での二人の格闘シーンを思わせるような激しい戦いだった。一進一退の攻防が続き、映画でならこのままノリスが押されて最後に負けるはずであったが……。
「どっちもすごいですね」
「む!(すごい)」
シナリオのないこの戦い。二人は拮抗したまま、そのままいつまでも戦い続けているかのようであった。片方が攻め込めば、隙を見てもう片方が攻め込む。その繰り返し。まるで息のあったダンスのような戦いは永遠のように見えた。いや、その鍛えられた肉体同士の交錯。その瞬間に永遠があるのだった。
「だが、このままでは……」
俺は、終わりのない戦いから目を離し、もはや天の半分を呑み込まんばかりに広がった紫色のどろどろ、混沌を見つめた。
このままでは世界が終わってしまう!
しかし……。
「Don’t think. feel! (考えるな。感じろ)」
突然、攻撃の手を止めたリーは彼の名セリフを言う。
首肯するノリス。
そして二人とも体を天の混沌に向けると、
「アチョー!」
「ウォオオオオオオオオ!」
走り出した二人は天に向かって飛び蹴りをしながらシルエットになり……混沌とともにこの世界から消えていくのであった。
*
まったくすごい奴だったぜ。
今回の騒動が終わり、やっと自分の部屋に戻り、いつもどうり、もう残り少ないルートビアを俺はちびちびとやりながら、今回の騒動のことを思い返していた。
世界の摂理を超えた最強の男として創造された事実ノリス。突然現れて、強烈な印象を残しながら、あっという間に消えて行った。
「もう少し話したりとかしてみたかったかな……」
いるときはハラハラのしどうしだったとはいえ、いなくなってみると、なんとも言えない寂しさを感じる俺だった。あんなすごい漢と会う機会は今後ないのかも? と思うととても残念な思いが心の中につのる。俺は、すごい機会を、みすみすと流されるままに過ごして、逃してしまったのでは?
でも、ならばせめて、またチャック・ノリス・ファクトでも検索するかとパソコンに向かうのだが、
「あれ?」
チャック・ノリスと打ち込んでも——検索結果がでない。
どうしたのか?
「ん?」
俺は、なんだか背中に視線を感じて振り返り——そこには誰もいない?
いや……。
——Googleはチャック・ノリスを検索しない。
——何故ならあなたがチャック・ノリスを見つけるのではなく、
——チャック・ノリスがあなたを見つける事を知っているからだ
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彼は、多分、あらゆる場所に存在する。
なにせ——事実なのだから。
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