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ご令嬢
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雪那と菜々子は念の為、警察病院で検査を受ける事になった。
幸い二人とも異常はないとのことだったが…。
「雪那さま!!」
突然、叫び声と共に雪那にしがみついた若い女性がいた。
周囲はぎょっとするが、雪那は落ち着き払っている。
「あら、麗華さまではありませんの。お久しぶりですわ」
話しながら彼女をそっと引き剥がす。
長い髪にゆるくパーマをかけた、20代前半位の女性で、なかなかの美人だ。
「わたくし、雪那さまが事故に遭われたと聞いて、居ても立っても居られませんでしたの」
彼女は泣きださんばかりに訴える。
彼女は高遠麗華…。
現警視総監・高遠権之助の一人娘で、都内のお嬢様大学に通う女子大生だ。
「まぁ、わざわざありがとうございます。
幸い怪我はないのですが、念の為検査を、というご厚意でこちらに参りましただけですのよ。
麗華さまにもご心配頂いて痛み入りますわ」
「そうでしたの…。それならば良かったですわ」
麗華はほっとしたジェスチャーをすると、今度は菜々子に喰ってかかる。
「ちょっとあなた!神代警視と同乗していながら危険な目に遭わせるなんて、どういうつもりなの!?」
いきなり矛先を向けられて、菜々子はキョトンとする。
「麗華さま、それは誤解ですのよ」
雪那は二人の間にサッと割って入る。
「彼女は部下ではなく、インターポールからいらした桜樹菜々子警視。わたくしの大切な女性で、警視庁の警護対象でもありますの」
「それでは…」
麗華の顔色が変わる。
雪那は続ける。
「桜樹警視を危険な目に遭わせてしまったのは、むしろわたくしの失態ですわ。それに…」
「彼女はインターポールを代表して来ていますの。麗華さまとは言え、失礼は許されませんわよ」
雪那は静かに、だがピシャリと言い放つ。
「もっ…申し訳ございません!
でも、わたくし…雪那さまが心配で…」
「幸い大した事はありませんし、夜も遅いのでどうかもうお引き取り下さいませ」
「…わかりましたわ」
麗華は、シュンとしてしまう。
雪那は始終素っ気なかった。
特に麗華のようなタイプには、好意も拒絶もはっきり言葉と態度で示さないと後々面倒な事になるので、雪那の対応は間違ってはいない。
「はぁ…かえって、疲れたわ~」
菜々子はむしろこの様に冷たい雪那を知らないので、少なからず驚いている。
「よかったの?」
雪那は心から迷惑そうに言う。
「アタシは一部の煩い連中から次期警視総監と噂されているの。そして彼女は警視総監の娘。
だから彼女はアタシの婚約者気取りみたいな所があるのよ。
今のうちにはっきりと違う、ということを思い知らせてあげた方がいいのよ」
(それって…)
菜々子は複雑な表情になる。
(私がユキの出世を邪魔しているのではないかしら)
雪那はすぐに菜々子の不安そうな顔に気付く。
「何て顔してるの。あれだけ言ったでしょ?
アタシはナナじゃなきゃダメなの。
ナナはそうじゃないの?」
「わたしだって、ユキ以外の人は考えられないわ。
でもわたし、本当にユキの婚約者で良いのかしら…?」
「警視総監の地位なんか興味ないし、今時世襲制でもないでしょ。
もし万が一出世したくなったとしても、もっとマシな方法考えるわ。
それに出世した所でナナが隣にいなきゃアタシには意味がないの。
ナナがいなくなる方が、おおごとだわ」
「とにかく今は余計な事は棚上げして、犯人を捕まえる事だけ考えましょ」
「…そうね」
菜々子はまだ引っ掛かってはいたが、とりあえずは現在解決すべき案件に集中しなければいけない、と気持ちを切り替えた。
幸い二人とも異常はないとのことだったが…。
「雪那さま!!」
突然、叫び声と共に雪那にしがみついた若い女性がいた。
周囲はぎょっとするが、雪那は落ち着き払っている。
「あら、麗華さまではありませんの。お久しぶりですわ」
話しながら彼女をそっと引き剥がす。
長い髪にゆるくパーマをかけた、20代前半位の女性で、なかなかの美人だ。
「わたくし、雪那さまが事故に遭われたと聞いて、居ても立っても居られませんでしたの」
彼女は泣きださんばかりに訴える。
彼女は高遠麗華…。
現警視総監・高遠権之助の一人娘で、都内のお嬢様大学に通う女子大生だ。
「まぁ、わざわざありがとうございます。
幸い怪我はないのですが、念の為検査を、というご厚意でこちらに参りましただけですのよ。
麗華さまにもご心配頂いて痛み入りますわ」
「そうでしたの…。それならば良かったですわ」
麗華はほっとしたジェスチャーをすると、今度は菜々子に喰ってかかる。
「ちょっとあなた!神代警視と同乗していながら危険な目に遭わせるなんて、どういうつもりなの!?」
いきなり矛先を向けられて、菜々子はキョトンとする。
「麗華さま、それは誤解ですのよ」
雪那は二人の間にサッと割って入る。
「彼女は部下ではなく、インターポールからいらした桜樹菜々子警視。わたくしの大切な女性で、警視庁の警護対象でもありますの」
「それでは…」
麗華の顔色が変わる。
雪那は続ける。
「桜樹警視を危険な目に遭わせてしまったのは、むしろわたくしの失態ですわ。それに…」
「彼女はインターポールを代表して来ていますの。麗華さまとは言え、失礼は許されませんわよ」
雪那は静かに、だがピシャリと言い放つ。
「もっ…申し訳ございません!
でも、わたくし…雪那さまが心配で…」
「幸い大した事はありませんし、夜も遅いのでどうかもうお引き取り下さいませ」
「…わかりましたわ」
麗華は、シュンとしてしまう。
雪那は始終素っ気なかった。
特に麗華のようなタイプには、好意も拒絶もはっきり言葉と態度で示さないと後々面倒な事になるので、雪那の対応は間違ってはいない。
「はぁ…かえって、疲れたわ~」
菜々子はむしろこの様に冷たい雪那を知らないので、少なからず驚いている。
「よかったの?」
雪那は心から迷惑そうに言う。
「アタシは一部の煩い連中から次期警視総監と噂されているの。そして彼女は警視総監の娘。
だから彼女はアタシの婚約者気取りみたいな所があるのよ。
今のうちにはっきりと違う、ということを思い知らせてあげた方がいいのよ」
(それって…)
菜々子は複雑な表情になる。
(私がユキの出世を邪魔しているのではないかしら)
雪那はすぐに菜々子の不安そうな顔に気付く。
「何て顔してるの。あれだけ言ったでしょ?
アタシはナナじゃなきゃダメなの。
ナナはそうじゃないの?」
「わたしだって、ユキ以外の人は考えられないわ。
でもわたし、本当にユキの婚約者で良いのかしら…?」
「警視総監の地位なんか興味ないし、今時世襲制でもないでしょ。
もし万が一出世したくなったとしても、もっとマシな方法考えるわ。
それに出世した所でナナが隣にいなきゃアタシには意味がないの。
ナナがいなくなる方が、おおごとだわ」
「とにかく今は余計な事は棚上げして、犯人を捕まえる事だけ考えましょ」
「…そうね」
菜々子はまだ引っ掛かってはいたが、とりあえずは現在解決すべき案件に集中しなければいけない、と気持ちを切り替えた。
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