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第一章 聖剣に転生?
不幸中の転生
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レディース
アーーーーン ド
ジェントルマーーーーン……
パルテノン神殿を彷彿とさせる荘厳な建造物の中央ホールに声が響いた。人々の視線が中央ステージに集まっていく。
「さあ! さあさあさあ! みなさまお待ちかね! いよいよ今宵のメーンの登場です!」
――ワァァァァァァァアアアアア……
会場じゅうから、地響きのように歓声が沸き起こった。
「ああ、そうだ。みんな俺の登場を待っているんだ。これほどまでに注目されたことが前の人生であったろうか。いいや、ない。あるはずがない。俺は……ほんの少し前、死んだときのことを思い出していた……」
――ガタン ガタン ゴトン ゴトン……
「はぁ~、はぁ~、くそ、くそくそくそ! なんだこの人ばかりのギュウギュウの電車は!」
俺の名前は原晴英16歳。ゲームのアカウント名はハルトだ。そんな俺は、何十日ぶりかに学校に行くために電車に乗っていた。満員の電車に乗ると、とたんに呼吸が苦しくなっていく。人と接することが苦手な俺にとって、そこは地獄だった。しかし、本当の地獄はここからだった。
「きゃぁぁあああ! 痴漢! 痴漢よ!」
黄色い叫び声がして、とたんに車内が静まった。ったく、こんな満員の車内で迷惑なやつだ。その時、俺はそんなこと思っていた。しかし……
「アンタ! 降りなさいよ! 警察に突き出してやるんだから!」
黄色い声を出した女子は俺の手をつかんでいる。
「いや、は? お、俺は、俺は違う! 違う! 痴漢なんかじゃないんだ~~~~」
俺は手を振り払い走り出した。逃げたって無駄だってのは分かる。でも、その瞬間、そんなことまで考える暇はなかった。そしてそれは起こった。
「え?」
――キキキキキキィィイイイイ
ガッシャーん!!!!!!
俺はホームから転落すると、ちょうど入ってきた電車に跳ねられて……死んだ。死んだんだ。
「ちきしょう! ちきしょうチキショウちきしょう! 冤罪だ! 冤罪なんだよ! 何も悪いことなんかしてないのに死ぬなんて……」
すると声がした。柔らかく温かい声がした。
”我は神なり……”
ま、まあ。自分で自分を神だと言っているのは少し怪しくもあるが、たぶん、神様なのだろう。そんな雰囲気の声はしている。
”汝、神の子……ええっと……ハラ……ハルヒデよ。汝、生き返ることを欲するか?”
「生き……返る? やり直せるってことか? ああ……お願い……いや……どうだろう? 生き返っても……同じじゃないのか? 苦痛ばかりの人生をもう一度とか……無理だ、無理だ無理だ無理だ! ってことでノーサンキューでお願いします!」
”されば神の子よ。汝、異なる世界への転生を欲するか?”
「異なる……世界への? 転生?」
異世界転生、この言葉の響きに心が動かない男子がいるだろうか? その言葉の誘惑に勝てる男子がいるだろうか? いいや、いるわけがない。そうだろ?
「お、お願いします。特盛で! あ、特盛ってのは……あれです。うーんと……できれば働かないで勇者になれるような感じでお願いできればありがたいのですが! あと名前はハルトでオネシャス!」
そうだ。読書家の俺に蓄えられた膨大な知識によれば、転生時の望みはいろいろと言ったもん勝ちなのだ! だよな?
”………そうか……よかろう。それでは汝、神の子ハルトよ、次に目覚めるのは異世界。ある意味動かなくてよくて、ある意味勇者以上の存在だ。よりよき生を………”
そのあと、気が付けば今に至る、だ。ホールの中央で、なにか赤い布を被せられていた。
「そうだ。俺は……生まれ変わった。生まれ変わったんだ! 皆に期待される勇者に! 英雄に! はっはっはは~がんばるぞ~異世界!」
――ドゥルルルルルルルルゥ……
やがて、ドラムロールが鳴り響くと、いよいよその熱気は高まっていく。つられて俺の期待もどんどん高まっていった。
「今、俺はどんな容姿なんだろう? カッコいいには決まっているが、ワイルド系やクール系など勇者の容姿はさまざまだからな。まあ、あんまり前の顔とか気に入ってたわけじゃないから、どうでもいいけれど」
そんなことばかり考えていた。
――ドゥルルルルルルルルゥ…… ジャン!
ドラムロールが止まると、人々の間を静寂が満たしていった。
中央ステージにかけられた深紅の布が払われる。
スポットライトが集まる。
すると一斉に歓声が沸き上がり……
かけたが、それはタメ息に変わった。
「なんだよ~もったいつけやがってオモチャじゃねーか」
「うわーちっちぇーあんなのいるかよ!」
「ありえねー、損した~金返せ~」
会場は荒れに荒れ、座布団やら石やら湯呑なんかが飛んできた。
「みなさま、落ち着いてください。モノを投げないでください~! あー、魔法を放つのもやめてください!」
しまいには投石器や火矢、毒矢、魔法までが飛んでくる始末だった。
「え? ん? あ? ど、どういうことだ? 俺、今……どんな状態?」
ライトに目がくらんで見えないものの、人々からは怨嗟の視線が痛いほどだったし、考え限りうるすべての罵詈雑言にさらされて俺は逃げ出そうとした。しかし、できない。体が動かないのだ。そもそも顔も動かせない。
「ど、どーなってんだよ!!!!!」
「ふむぅ~まいりましたなあ~。まあこんな珍剣、いくらボクでも売れませんってーの。ったく。おい! コイツはもう下げてくれ! このままじゃ暴動だぞ!」
俺の叫びなど無視して、アナウンスを決めていた男が俺を握ると放り投げた。
「え?」
その時、俺は気が付いた、裏幕へと投げ飛ばされる途中にあった鏡に自分の姿が映ったのだ。
「えええええええ――――――――――っ! 俺、剣なの? 剣になってるの???」
そうだ……俺は異世界に転生してきた。異世界の聖剣に転生してきたのだった。
さらに言えば、転生初日に聖剣業界からも追放された。
「た、短小だからってナメんなよ!」
アーーーーン ド
ジェントルマーーーーン……
パルテノン神殿を彷彿とさせる荘厳な建造物の中央ホールに声が響いた。人々の視線が中央ステージに集まっていく。
「さあ! さあさあさあ! みなさまお待ちかね! いよいよ今宵のメーンの登場です!」
――ワァァァァァァァアアアアア……
会場じゅうから、地響きのように歓声が沸き起こった。
「ああ、そうだ。みんな俺の登場を待っているんだ。これほどまでに注目されたことが前の人生であったろうか。いいや、ない。あるはずがない。俺は……ほんの少し前、死んだときのことを思い出していた……」
――ガタン ガタン ゴトン ゴトン……
「はぁ~、はぁ~、くそ、くそくそくそ! なんだこの人ばかりのギュウギュウの電車は!」
俺の名前は原晴英16歳。ゲームのアカウント名はハルトだ。そんな俺は、何十日ぶりかに学校に行くために電車に乗っていた。満員の電車に乗ると、とたんに呼吸が苦しくなっていく。人と接することが苦手な俺にとって、そこは地獄だった。しかし、本当の地獄はここからだった。
「きゃぁぁあああ! 痴漢! 痴漢よ!」
黄色い叫び声がして、とたんに車内が静まった。ったく、こんな満員の車内で迷惑なやつだ。その時、俺はそんなこと思っていた。しかし……
「アンタ! 降りなさいよ! 警察に突き出してやるんだから!」
黄色い声を出した女子は俺の手をつかんでいる。
「いや、は? お、俺は、俺は違う! 違う! 痴漢なんかじゃないんだ~~~~」
俺は手を振り払い走り出した。逃げたって無駄だってのは分かる。でも、その瞬間、そんなことまで考える暇はなかった。そしてそれは起こった。
「え?」
――キキキキキキィィイイイイ
ガッシャーん!!!!!!
俺はホームから転落すると、ちょうど入ってきた電車に跳ねられて……死んだ。死んだんだ。
「ちきしょう! ちきしょうチキショウちきしょう! 冤罪だ! 冤罪なんだよ! 何も悪いことなんかしてないのに死ぬなんて……」
すると声がした。柔らかく温かい声がした。
”我は神なり……”
ま、まあ。自分で自分を神だと言っているのは少し怪しくもあるが、たぶん、神様なのだろう。そんな雰囲気の声はしている。
”汝、神の子……ええっと……ハラ……ハルヒデよ。汝、生き返ることを欲するか?”
「生き……返る? やり直せるってことか? ああ……お願い……いや……どうだろう? 生き返っても……同じじゃないのか? 苦痛ばかりの人生をもう一度とか……無理だ、無理だ無理だ無理だ! ってことでノーサンキューでお願いします!」
”されば神の子よ。汝、異なる世界への転生を欲するか?”
「異なる……世界への? 転生?」
異世界転生、この言葉の響きに心が動かない男子がいるだろうか? その言葉の誘惑に勝てる男子がいるだろうか? いいや、いるわけがない。そうだろ?
「お、お願いします。特盛で! あ、特盛ってのは……あれです。うーんと……できれば働かないで勇者になれるような感じでお願いできればありがたいのですが! あと名前はハルトでオネシャス!」
そうだ。読書家の俺に蓄えられた膨大な知識によれば、転生時の望みはいろいろと言ったもん勝ちなのだ! だよな?
”………そうか……よかろう。それでは汝、神の子ハルトよ、次に目覚めるのは異世界。ある意味動かなくてよくて、ある意味勇者以上の存在だ。よりよき生を………”
そのあと、気が付けば今に至る、だ。ホールの中央で、なにか赤い布を被せられていた。
「そうだ。俺は……生まれ変わった。生まれ変わったんだ! 皆に期待される勇者に! 英雄に! はっはっはは~がんばるぞ~異世界!」
――ドゥルルルルルルルルゥ……
やがて、ドラムロールが鳴り響くと、いよいよその熱気は高まっていく。つられて俺の期待もどんどん高まっていった。
「今、俺はどんな容姿なんだろう? カッコいいには決まっているが、ワイルド系やクール系など勇者の容姿はさまざまだからな。まあ、あんまり前の顔とか気に入ってたわけじゃないから、どうでもいいけれど」
そんなことばかり考えていた。
――ドゥルルルルルルルルゥ…… ジャン!
ドラムロールが止まると、人々の間を静寂が満たしていった。
中央ステージにかけられた深紅の布が払われる。
スポットライトが集まる。
すると一斉に歓声が沸き上がり……
かけたが、それはタメ息に変わった。
「なんだよ~もったいつけやがってオモチャじゃねーか」
「うわーちっちぇーあんなのいるかよ!」
「ありえねー、損した~金返せ~」
会場は荒れに荒れ、座布団やら石やら湯呑なんかが飛んできた。
「みなさま、落ち着いてください。モノを投げないでください~! あー、魔法を放つのもやめてください!」
しまいには投石器や火矢、毒矢、魔法までが飛んでくる始末だった。
「え? ん? あ? ど、どういうことだ? 俺、今……どんな状態?」
ライトに目がくらんで見えないものの、人々からは怨嗟の視線が痛いほどだったし、考え限りうるすべての罵詈雑言にさらされて俺は逃げ出そうとした。しかし、できない。体が動かないのだ。そもそも顔も動かせない。
「ど、どーなってんだよ!!!!!」
「ふむぅ~まいりましたなあ~。まあこんな珍剣、いくらボクでも売れませんってーの。ったく。おい! コイツはもう下げてくれ! このままじゃ暴動だぞ!」
俺の叫びなど無視して、アナウンスを決めていた男が俺を握ると放り投げた。
「え?」
その時、俺は気が付いた、裏幕へと投げ飛ばされる途中にあった鏡に自分の姿が映ったのだ。
「えええええええ――――――――――っ! 俺、剣なの? 剣になってるの???」
そうだ……俺は異世界に転生してきた。異世界の聖剣に転生してきたのだった。
さらに言えば、転生初日に聖剣業界からも追放された。
「た、短小だからってナメんなよ!」
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