聖剣転生!~短小だからって、ナメないでもらってイイですか?

トキノトキオ

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第二章 キャラバン

後ろの正面

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「うわぁああああああ。や、や、やめてくれ! 俺は虫と蛇とムカデとタコとエビと亀だけはダメなんだよ! あ、あとカエルも! あ、あとゴキブリも!」

 足元に向かって黒いサソリが無数に這ってきている。その光景を見て俺は卒倒しそうだった。小さいものが沢山いる状態が苦手なんだ。
 
「ふむ……アナタ、ダメ人間ってヤツデスね。まーいいデス。さっきも言ったように、聖剣を鍛えるには聖剣同士の戦いでなければならないのデス!」

 バラカンが両腕を払うとサソリたちは飛び散り円形に砂浜のステージができた。ステージの周りには無数のサソリがこちらを睨んでいる。

「いいデスか? これは縛りです。このステージから逃げようとすればワタクシにもこのサソリは襲い掛かるのデス! ので、存分に殺し合える! い~~~デショウ?」
「ちっ、狂ってやがるな」
「ふむふむ。まーなんでもイイデスがねえ~剣を構えなさい。じゃないと、今度という今度は死にマスデスよ!」

 バラカンは再び回転しながら飛び上がった。周囲にキラキラとした光が見える。
 
「やややややおおおおあおあおあおあおおおおおお」

 バラカンが落ちてくると無数の斬撃が、左右だけでなく背後からも襲い掛かってきた。バラカンの周りで光っていたのは高速で振り回される大ガマの刃に太陽が乱反射していたのだ。その刃が俺に襲い掛かってきた。
 
「ふむふむふむう。なかなかのもんじゃないデスか。ワタクシの死神廻廊デスフォールレベル1を受けきるとは」

 そうだ。俺は聖剣を構えるとカラダが勝手に動き出し、その目に見えぬ斬撃すべてをはじき返していた。

「こ、これはもしや! 俺TUEEEEEE! なんじゃねーの!」
「おースゴイスゴイ、スゴイデース! じゃ、次もダイジョーブデスよね?」

 ――死神廻廊デスフォールレベル2!

「う、うわわわわ、ちょ、ちょっと、ちょっとちょっとま……」

 バラカンは速度を上げた。するとだんだんと受けきれなくなり、ときどき服を裂いたりしだした。ついには肌も……
 
「ま、まずいマズいまずいぞ、フツーに完全にまっとーにやばい! やられる!」

 血が流れると、意識が遠のいて来た。
 
「ハルハルぅ~」
「し、心配するなリルル……ま、まだ大丈夫だ」

 それまでぽか~んとしていたリルルが困ったような顔をして叫んだ。
 
「ハルハルぅ~モフモフさんは守ってあげてね!」
「へ? いやいやいや~そこは俺の心配しよーよ」
「ダメだよ~ノイエちゃん悲しむよ~」
「はーあ? 知らねーし、知らねーよこんなやつ!」

 俺はナマケモノに八つ当たりしてしまった。こんな闘いの最中、気持ちよさそうに寝ているナマケモノに腹が立ったのか、その頭を殴りつけた。

「グノ? グノノノノノノ~!」
「え? えええええ~」

 するとなんとナマケモノは立ち上がった。立ち上がるとあからさまに怒った顔をして、俺の頭の上に両腕を持ち上げた。そして……バラカンの剣にぶつかった。

「グノ?」

 それは一瞬のことだった。バラカンのカマが止まって見えた。いや、ナマケモノに触れ本当に止まったのかもしれない。そのスキを俺は見逃さなかった。いいや正確にいうのなら、俺の聖剣は見逃さなかった。聖剣は突然光ると俺のカラダを引きずるように突進してバラカンに斬りかかった。
 
 ――シュパパパパパパパパパパパパパァーン

 それはナマケモノのせいじゃなくスローモーションに見えた。俺は……いいや俺の聖剣はバラカンの服を切り刻んでいった。青白い肌が露わになっていく。すると遊ぶようにその肌を薄く、縦横に傷つけていった。

「や、やめろやめろやめろやめろ!!!!」

 俺は叫んでいた。自分に叫んでいた。そうだ。それは不思議な感覚だった。俺のカラダが俺じゃないような。自分自身を一歩後ろから見ているような感覚だった。体が暴走しているようだった。

「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」
「ナルホド……それが……アナタの本性デスね……」

 俺の足元でバラカンがうなだれている。俺のカラダは左手で右手にある聖剣を捕まえてなんとか停止した。

「違う、違う違う違う。こんなことをしたいんじゃない!」
「本当にそ~デスかねえ~。まーいずれにしても、ワタクシの負けデス! 煮るなりヤルなりお好きにしてくだサイ」

 バラカンは目を閉じた。

「い、いや、いや、ただ、この都市の人たちの毒を消してくれればいいんだよ」
「本当にそれだけでよいのデスか?」
「ああ、十分だ」
「そーデスか……残念デス」
「え?」
「いえいえいえ別に、こっちの話デス! さースコルピオ! ヤルのデス」

 バラカンが叫ぶと黒サソリ達は反転。あっという間にバラカンのカラダを包んでしまった。
 
「え? や、お、おい! バラカン? バラカン!!!」

 やがて黒サソリは霧のように消えてしまった。そこにはバラカンの姿はなかった。そして町のあちこちで歓声があがった。

「ど、毒が……消えた!」

 なるほど、指先の黒い文様がゆっくりと消えていった。

「バラカンは……死んだのか?」

 俺は自分をごまかしていた。死んだ、のではない。殺したのだ。

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