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ダーリング
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――2年B組の教室
シノブは2年B組、カオルは2年A組、別々のクラスだった。
――ガラガラガラ―――ッ
「お、シノブぅ~重役出勤ってヤツ?」
「うっせーよ」
密かに皆勤賞を目指していたシノブは少し機嫌が悪かった。ホームルームも終わり、授業がはじまる寸前に教室に入ると、乱暴に自分の机にカバンを置いて座り込んだ。
「ど、ども~よろしくですぅ~」
「って、オマエ!」
昨日まで空席だった隣の席に、見れば誰かが座っている。さっきの暴走自転車少女、侑杏千明だ。
「あわわわわ! あ、アナタは私のフィ、フィアンセ様! こ、こんなトコロまで私を追いかけて来てくださったのですね!」
「パードゥン?」
「パリ、ロンドン? えっと……」
ちなみに『パードゥン?』とは、I beg your pardon? のように使われる英語で『もう一度言ってください』という意味である。と学校では習うが、実際にはあまり使われないらしい。……とはいえ、そんなことはまったく関係なく聞き間違えるのがチアキだった。
「は~あ?」
「は~……あっ! ハ、ハ、ハーネムーンのことですか! 新婚旅行! き、気が早いのですねダーリンは!」
「いやいやいやいや……とりあえずコレ、オマエんだろ?」
コ、コイツは天然だ。喋れば喋るほど話がこじれる! そんな気がしてシノブは、とりあえず持ってきていたカバンをチアキに手渡した。
「あわわわわ。コ、コレは私のカバン! 持ってきてくれたのですね! ありがとうございます!」
『転校生がシノブのフィアンセ宣言!』のニュースはあっという間に校内を駆け巡った。カバンを渡したことで、すでに同棲していて一緒に通学している。というような尾ひれまでついて、次の休み時間にはカオルの耳に到達していた。
「ねえねえキミ。どーいうつもりなんだい?」
当然、カオルは2年B組に乗り込んできた。
「あ、アナタは私のファーストキスを奪った美少女戦士! ど、ど、どーいうつもりとは、どーいうコトでしょう?」
「いきなり現れて、ボクのシノブに近づいてきて、どーいうつもりかって聞いてるんだよ。っていうか美少女でも戦士でもないけどね!」
「えっと、それは……ハネムーンはどこが良いか考えてたところです」
「ちょっとシノブ! 説明を要求するよ!」
「クックク……」
「いや、笑ってないでさ、はやく説明!」
シノブは、チアキが転校生で、自分の隣の席だというコトを説明した。笑いながら。
「な、なにもおかしくなんかないよ。それがどーして同棲だとかハネムーンだとかいう話になるんだい?」
「あーまーそれはアレだ。コイツ、なんつーか……うーん……スーパー勘違い女だから? かな?」
「もうダーリンたら、スーパーな感じとか、運命感じたとか恥ずかしいじゃないですかぁ」
「ダ、ダ、ダーリン? 運命???」
「な? 変だろコイツ」
「変だろコイツじゃないよ。だいたい蕁麻疹はどーしたんだよ。シノブは女子アレルギーじゃなかったのかよ」
「あ、そーだった。えっと……」
シノブが腕をまくると小さな赤いポツポツが現れた。
「あわわわわ! こ、コレは! サブイボ? ダーリン寒いんですか?」
チアキはシノブの手を取ると表裏をひっくり返すように腕を見回し、手のひらを太陽に透かしてみたりした。
「サブイボってなんだよ」
「サブイボとは関西地方で言うところの鳥肌のことでっす」
「鳥肌? 鳥肌なんかじゃないよ! キミだよキミ! キミが近づくからシノブの女性アレルギーが出てるんだよ!」
そう言ってカオルはチアキからシノブを引き剥がした。
「えー、じゃあなんで、えっと……カオルさんは大丈夫なの?」
「だから! ボクは男だって言ってるじゃないか」
「うーん……それってギャグのつもりなんですかね? ちょっと飽きましたけど。カオルさんてばケッコーシツコイのですね」
「や、なに言ってるんだい。本当のコトだよ」
「ふーんー。ま、愛し合う二人の間には障害はつきもの! コレは富めるときも病めるときも、の病めるときターンね! ダーリン! 二人で乗り越えましょう!」
「なっ」
――キーン コーン カーン コーン……
カオルが顔を赤くして何かを言おうとしていると始業チャイムが鳴った。
「い、いいかい? 昼休みにまた来るからね! それまでボクのシノブに近づくんじゃないよ?」
そう言い残してカオルは去っていった。
「近づくなって言われてもぉ~お隣の席なんですケドぉ~…………」
チアキはそういいながら口を膨らませたりしていたが、次の瞬間にはお腹が減ったーとか言っていた。
「うん、やっぱコイツは天然だわ。記念物的なやつだわ」
そう思うシノブだった。
シノブは2年B組、カオルは2年A組、別々のクラスだった。
――ガラガラガラ―――ッ
「お、シノブぅ~重役出勤ってヤツ?」
「うっせーよ」
密かに皆勤賞を目指していたシノブは少し機嫌が悪かった。ホームルームも終わり、授業がはじまる寸前に教室に入ると、乱暴に自分の机にカバンを置いて座り込んだ。
「ど、ども~よろしくですぅ~」
「って、オマエ!」
昨日まで空席だった隣の席に、見れば誰かが座っている。さっきの暴走自転車少女、侑杏千明だ。
「あわわわわ! あ、アナタは私のフィ、フィアンセ様! こ、こんなトコロまで私を追いかけて来てくださったのですね!」
「パードゥン?」
「パリ、ロンドン? えっと……」
ちなみに『パードゥン?』とは、I beg your pardon? のように使われる英語で『もう一度言ってください』という意味である。と学校では習うが、実際にはあまり使われないらしい。……とはいえ、そんなことはまったく関係なく聞き間違えるのがチアキだった。
「は~あ?」
「は~……あっ! ハ、ハ、ハーネムーンのことですか! 新婚旅行! き、気が早いのですねダーリンは!」
「いやいやいやいや……とりあえずコレ、オマエんだろ?」
コ、コイツは天然だ。喋れば喋るほど話がこじれる! そんな気がしてシノブは、とりあえず持ってきていたカバンをチアキに手渡した。
「あわわわわ。コ、コレは私のカバン! 持ってきてくれたのですね! ありがとうございます!」
『転校生がシノブのフィアンセ宣言!』のニュースはあっという間に校内を駆け巡った。カバンを渡したことで、すでに同棲していて一緒に通学している。というような尾ひれまでついて、次の休み時間にはカオルの耳に到達していた。
「ねえねえキミ。どーいうつもりなんだい?」
当然、カオルは2年B組に乗り込んできた。
「あ、アナタは私のファーストキスを奪った美少女戦士! ど、ど、どーいうつもりとは、どーいうコトでしょう?」
「いきなり現れて、ボクのシノブに近づいてきて、どーいうつもりかって聞いてるんだよ。っていうか美少女でも戦士でもないけどね!」
「えっと、それは……ハネムーンはどこが良いか考えてたところです」
「ちょっとシノブ! 説明を要求するよ!」
「クックク……」
「いや、笑ってないでさ、はやく説明!」
シノブは、チアキが転校生で、自分の隣の席だというコトを説明した。笑いながら。
「な、なにもおかしくなんかないよ。それがどーして同棲だとかハネムーンだとかいう話になるんだい?」
「あーまーそれはアレだ。コイツ、なんつーか……うーん……スーパー勘違い女だから? かな?」
「もうダーリンたら、スーパーな感じとか、運命感じたとか恥ずかしいじゃないですかぁ」
「ダ、ダ、ダーリン? 運命???」
「な? 変だろコイツ」
「変だろコイツじゃないよ。だいたい蕁麻疹はどーしたんだよ。シノブは女子アレルギーじゃなかったのかよ」
「あ、そーだった。えっと……」
シノブが腕をまくると小さな赤いポツポツが現れた。
「あわわわわ! こ、コレは! サブイボ? ダーリン寒いんですか?」
チアキはシノブの手を取ると表裏をひっくり返すように腕を見回し、手のひらを太陽に透かしてみたりした。
「サブイボってなんだよ」
「サブイボとは関西地方で言うところの鳥肌のことでっす」
「鳥肌? 鳥肌なんかじゃないよ! キミだよキミ! キミが近づくからシノブの女性アレルギーが出てるんだよ!」
そう言ってカオルはチアキからシノブを引き剥がした。
「えー、じゃあなんで、えっと……カオルさんは大丈夫なの?」
「だから! ボクは男だって言ってるじゃないか」
「うーん……それってギャグのつもりなんですかね? ちょっと飽きましたけど。カオルさんてばケッコーシツコイのですね」
「や、なに言ってるんだい。本当のコトだよ」
「ふーんー。ま、愛し合う二人の間には障害はつきもの! コレは富めるときも病めるときも、の病めるときターンね! ダーリン! 二人で乗り越えましょう!」
「なっ」
――キーン コーン カーン コーン……
カオルが顔を赤くして何かを言おうとしていると始業チャイムが鳴った。
「い、いいかい? 昼休みにまた来るからね! それまでボクのシノブに近づくんじゃないよ?」
そう言い残してカオルは去っていった。
「近づくなって言われてもぉ~お隣の席なんですケドぉ~…………」
チアキはそういいながら口を膨らませたりしていたが、次の瞬間にはお腹が減ったーとか言っていた。
「うん、やっぱコイツは天然だわ。記念物的なやつだわ」
そう思うシノブだった。
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