大好きなんだっ ~キミとボクと彼女の理由~

トキノトキオ

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チアキの能力

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 ――昼休み、学食。
 
「ねえキミ、バカなのかい? マヌケなのかい? それとも痴呆症を患っているのかい? ボク言ったよね? シノブに近づくなってさ」

 テーブルにはシノブとチアキが並んで座っていた。その前にカオルが後からやって来た。

「俺が連れてきたんだよ、カオル」
「な、なんでだよ」
「そりゃあ転校生だからだよ。案内が必要だろ?」
「そ、そんなのクラスのバカ女どものに任せればいいじゃないか」
「まーそ~なんだがなあ~なんつーか、ほら、例の宣言でみんな引いちゃってサ。寄りつかないんだよ」
「ちっ、シノブは優しすぎるんだ。だからつけこまれるんだよ」
「おいシノブ! いい加減にしろよ」
「あのぉ~」

 ふたりの間に不穏な空気が漂ったのを察知した……わけではなく、チアキが口を開いた。

「なんだってんだ?」
「おトイレドコでしょう?」
「トイレ?」
「ええ……なんか、股の辺りがモゾモゾとしまして……」
「ちっ、下品なコトを言うなよ。トイレは……」

 シノブはトイレを指差そうとしたが途中でやめた。

「い、いや。ついて来い。案内してあげるよ」

 カオルは立ち上がると手招きをして見せた。

「カオル~暴力とかふるうなよー」
「そんなコトするかよ!」

 チアキに言われて気がついたのだが、実のところカオルも下腹部に違和感を感じたのだ。

「にしても今日はついてない。朝から変な女とキスするハメになるし、シノブってばこんなヘナチョコ娘を面白いとか言うし、こんなバカでマヌケな女のせいでボクは……」
「あのぉ~独り言? ですか? 聴こえてるんですけどぉ~」
「そりゃそーだろ」
「はぁ~なぜでしょう?」
「なぜかだって? それはね、聞こえるように言っているからだよ!」
「そ、そうなんですね! 良かった」
「はーあ? 何が良かったんだい?」
「てっきり私の持つ能力――テレパシー能力がまた出たのかと思ったので~」
「テ、テレパシー能力?」
「はい! なぜだか昔からそーいう心の声が聴こえるんです」
「えっと……昔から……そういう独り言……っていうか他人の声が聴こえたりしたの?」
「ええ~。だいたいが悪口なんですけどねぇ~えへへへへ」
「な、なるほど……重症なんだね」
「えへへへへ。それほどでもー」
「いや、別に褒めてないよ?」

 トイレの前につき、カオルが男子トイレに入ろうとすると、チアキは小さく言った。

「あのぉ。そっちは男子トイレだと思うのですケドぉ……」
「なに? ボクに言ってるのかい?」
「え、ええ……」
「そんなことは分かってるんだよ! 何度だって言うけどね、ボクは男子なの!」

「カオルちゃんってばやっぱ頑固。せっかく過去のことは水に流して、女の子同士友達になれると思ったのにな~」
「っておいおい。まだ言うの? ちょっと正拳突きでも食らわせてやりたい衝動にかられるけど、そんなことしたらシノブに嫌われちゃうからな。しかし……天性の勘違い資質の持ち主にして頑固とか……手に負えないよ」
 
 カオルは立ち止まると振り返った。

「いーかい? 誰がなんと言おうとボクは男子なんだから男子トイレに入るんだよ。で? キミはどこまでついてくるつもりだい?」
「へ?」

 気づけばチアキは男子トイレの中にまでカオルのあとをついて入ってきていた。

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