大好きなんだっ ~キミとボクと彼女の理由~

トキノトキオ

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新しい朝

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「お、おはよう~」
「え? あ、ああ。おはよう」

 いつもの通学路、シノブが歩いていると道端にカオルが待っていた。めずらしく隠れてもいなかったし飛びかかっても来なかった。

「どうしたんだよシノブ。なんか様子が変だぜ?」
「そ、そう? ど、どんな感じ?」
「え? ど、どんな感じっても……んー、ムズムズする感じ?」
「なんだよそれは」
「んとー、なんかさ、シノブ……いつも以上に……いや、なんでもない」
「な、なんだよ。いつも以上になんだってんだよ」
「いや……その……キ、キレイっていうかさ……いやいやゴメンゴメン」
「あ、ああ。やっぱね。そうなんだね」
「なんだよ。一人で納得して」
「あのさシノブ。前に聞いたこと覚えてる?」
「な、何を」
「ボクがさ。もしもさ。じょ、女子だったらさ……」

 シノブらしからぬほどモジモジと打ち明けようとしたとき、例の坂に差し掛かった。

「キャ―――ッどいてどいてどいて~どいてくださ~いぃぃぃぃぃ」

 チアキだ。チアキの自転車が昨日と同じタイミングで暴走してきた。

 ――ガッシャ―――ンッ
 
 そして、同じように衝突した。いいや、今日は少し違った。昨日と同じようにしてカオルは自転車を抑え、チアキは吹き飛んだ。そしてふたりは衝突した。しかし……

「ムチュッ」

 カオルはうまく受け身を取ることができずペシャンっと潰れてしまった。そしてそのまま抱きついたようにクチビルとクチビルが重なった。

「お、おい。大丈夫か? オマエら……今日もキスするとか……ワザとなのか?」
「そ、そんなワケあるかい!」
「ま、まあ。そりゃそーか……」

 シノブは手を伸ばした。チアキの方に。

「なんでだよシノブ。なんでボクじゃなくてチアキの方に手を伸ばすんだよ」
「や、そ、それはコイツが……」
「そーです、そーですよ! 女の子を優先すべきです」
「へ? だからチアキ、お前の方に手を伸ばしてるワケだが……」
「どーもこーもないんです! コレからはカオルさんを大事にしてあげてください!」
「お、おいチアキ……どーしたんだよ」
「どーしたもこーしたも……離婚です!」

 そう叫びながらチアキの目にはまた涙が溢れ出した。

「なに泣きながらワケわからないコト言ってんだよ」
「ワケワカメもシオコンブもないんです! 離婚ったら離婚なんですよ! ま、まさに一身上の都合ってヤツなんですぅ」
「えとー。ちなみに……結婚してないから、離婚とかにはならないんだぜ?」
「ハウっ」

 チアキはまた走って行ってしまった。

「ったく、なんなんだってんだよアイツ。な?」

 今度こそシノブはカオルの方に手を差し伸べた。

「う、うん。そうだね」

 カオルはシノブの手を掴み、立ち上がるとその胸にもたれた。が

「って、また調子にのるな! カオルは変わってなくて良かったぜー」
「え?」

 カオルは『なんでだよ!』と言おうとしたがやめた。

「俺はさ。いつものままのオマエが好きだからな」
「あ、ああ……ありがと」

 カオルはシノブの笑顔を見てそれ以上何もいえなかった。

「っていうかアイツ! また自転車とカバン置いて行きやがったぞ! ワザとか? ワザとなのか?」
 
 二人はまた自転車を押して学校へとむかった。
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