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第三話 ホットミルク
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ある日、開店と同時に若い女性客が入ってきた。帽子を深く被り、サングラスをかけている。何だか、ワケありみたいだな。その女はテーブル席に腰掛けた。
「いらっしゃいませ。ご注文はいかがなさいますか?」
「あの、ホットミルクってできます?」
「ええ、可能です」
「じゃあ、それで」
「かしこまりました」
俺は冷蔵庫から牛乳を取り出し、温め始めた。ホットミルクを頼む客なんて、珍しいな。コーヒーが飲めない客でも、たいていオレンジジュースか何かを頼むものだが。
「お待たせしました。ホットミルクです」
「ありがとうございます。助かるわ、コーヒーは飲まないようにしてるから」
「そうでしたか。オレンジジュースなどもご用意しておりますよ」
「ああ、身体が冷えちゃうんですよ」
「そうでしたか」
健康に気を使っているみたいだな。サングラスで変装しているあたり、モデルか何かだろうな。
その後、俺はランチタイムに向けて仕込みをしていた。女の方を見ると、店に置いてある新聞を読んでいた。新聞を読むなんて最近の若者にしては珍しいな。店で購読してるから俺も暇つぶしに読みはするけど、前まではそんな習慣なかったからな。
しばらくすると、女に声を掛けられた。
「すいません、電話をお借りしても?」
「構いませんよ」
いまどき、携帯を持っていないのだろうか。珍しいな。女は仕事先に電話していたようで、待ち合わせの時間等を確認していた。
「貸していただき、ありがとうございました」
「いえ、どういたしまして。携帯電話をお持ちでないんですか?」
「ああ、トラブルの種ですから。この仕事を始めたときに解約しちゃったんですよ」
なんだか達観しているな。というか、プロ意識が高いと言うべきだろうか。健康に気を使ったり、新聞で知識を仕入れたり。なかなか真似できないな。
しばらくしたあと、女は荷物をまとめ始めた。
「お会計ですか?」
「ええ、お願いします」
女から千円札を受け取り、おつりを返した。
「ありがとうございました。お仕事、どうぞ行ってらっしゃいませ」
「あら、ありがとうございます。行ってきますわ」
女はにこやかに返事をし、出口の方へ歩き出そうとした。と、そのとき、二人組の男性客が店に入ってきた。
いらっしゃいませー、と言う間もなく、二人組の片方が女を見て大きな声を出した。
「え!もしかして、みみたんですか?」
誰?と思っていると、女はいつの間にかサングラスを外していた。そして、とびっきりの笑顔で――
「はーーい!! おバカアイドル、みみたんどぇーす!!」
と言った。
やっぱり、プロ意識は高いようだった。
「いらっしゃいませ。ご注文はいかがなさいますか?」
「あの、ホットミルクってできます?」
「ええ、可能です」
「じゃあ、それで」
「かしこまりました」
俺は冷蔵庫から牛乳を取り出し、温め始めた。ホットミルクを頼む客なんて、珍しいな。コーヒーが飲めない客でも、たいていオレンジジュースか何かを頼むものだが。
「お待たせしました。ホットミルクです」
「ありがとうございます。助かるわ、コーヒーは飲まないようにしてるから」
「そうでしたか。オレンジジュースなどもご用意しておりますよ」
「ああ、身体が冷えちゃうんですよ」
「そうでしたか」
健康に気を使っているみたいだな。サングラスで変装しているあたり、モデルか何かだろうな。
その後、俺はランチタイムに向けて仕込みをしていた。女の方を見ると、店に置いてある新聞を読んでいた。新聞を読むなんて最近の若者にしては珍しいな。店で購読してるから俺も暇つぶしに読みはするけど、前まではそんな習慣なかったからな。
しばらくすると、女に声を掛けられた。
「すいません、電話をお借りしても?」
「構いませんよ」
いまどき、携帯を持っていないのだろうか。珍しいな。女は仕事先に電話していたようで、待ち合わせの時間等を確認していた。
「貸していただき、ありがとうございました」
「いえ、どういたしまして。携帯電話をお持ちでないんですか?」
「ああ、トラブルの種ですから。この仕事を始めたときに解約しちゃったんですよ」
なんだか達観しているな。というか、プロ意識が高いと言うべきだろうか。健康に気を使ったり、新聞で知識を仕入れたり。なかなか真似できないな。
しばらくしたあと、女は荷物をまとめ始めた。
「お会計ですか?」
「ええ、お願いします」
女から千円札を受け取り、おつりを返した。
「ありがとうございました。お仕事、どうぞ行ってらっしゃいませ」
「あら、ありがとうございます。行ってきますわ」
女はにこやかに返事をし、出口の方へ歩き出そうとした。と、そのとき、二人組の男性客が店に入ってきた。
いらっしゃいませー、と言う間もなく、二人組の片方が女を見て大きな声を出した。
「え!もしかして、みみたんですか?」
誰?と思っていると、女はいつの間にかサングラスを外していた。そして、とびっきりの笑顔で――
「はーーい!! おバカアイドル、みみたんどぇーす!!」
と言った。
やっぱり、プロ意識は高いようだった。
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