見知らぬ世界の兄弟星

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第1章 未知との出会いは唐突に

1-3 異文化交流と兄弟喧嘩

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 ショウヘイは歓迎の宴を終え、客間にいた。フカフカのベッドに飾られている絵画、天井のシャンデリアと、格調高い部屋だ。レイジはブーツ(正確には半長靴という)と何かの道具一式を持ってどこかに行ってしまった。靴磨きにでも行ったのだろう。爪先に顔が映るほど磨くとは、物好きめ。ショウヘイはそんな簡単に考えていた。

 ショウヘイはベッドに倒れ込み、天井を眺める。レイジに借りた迷彩のTシャツに、パスカルから借りたジーンズというラフな格好だ。

 近くの棚にはレイジの戦闘服がハンガーで吊り下げられている。あの背のうに入っていた着替えだ。他にも下着類や食料弾薬が入っていた。

 シャンデリアが輝き、なんとも身分不相応に思えて仕方ない。ふと、腕時計を見ると20時10分を指していた。ここに時計はあるのかと見回すと、それらしき物があった。珍しい事に、1日に針が一周するタイプの文字盤のようだ。それを参考に時計合わせを終え、再び寝転んだ。

 コンコン、と扉がノックされる。レイジならノックなんてしない。誰だろうと思いつつ、ショウヘイはドアを開けた。ドアの前に立っていたのはアリソンだった。

「あら、1人?」

「兄貴なら靴磨きしに行ったよ」

「しっかりしてるのね……そこの着替えもビシッとしてるし……」

 アリソンの指摘通り、ハンガーにかけられているレイジの替えの戦闘服はしっかりアイロンがけがされていて、ズボンの線がしっかりと出来ている。洗濯糊は無かったようだが、それでも十分な程にしっかりしていた。つい30分前に鍋でお湯を沸かし、そのお湯を入れた鍋の底でアイロン掛けをしていた。

「まあいいや。お邪魔しまーす!」

「へ?」

 アリソンはずかずかと部屋に入ると(元々アリソンの家だが)ショウヘイのベッドに飛び込んだ。そして、ベッドに置いてあった数学の参考書をペラリと開くと、すぐに投げ捨てた。受験生のショウヘイが悲鳴をあげたのは言わずもがな。

「なにこれ意味わかんなーい!」

「数学Ⅲの参考書だぞ!? いきなりわかってたまるか!って酒臭え!宴会の後も飲んだの!?」

「ちょっとだけよ……」

「見るからに酔ってる!」

 理系のショウヘイは数学Ⅲは得意ではないが出来る方だ。レイジは理系ではあったが数学が苦手で、『数学Ⅲは人間がやるものじゃない』と言っていたほどだ。

「そもそも字が読めないし、この暗号何!?」

「数式だよ。こうやって解くの」

 ショウヘイはノートとシャーペンを取り出すと、複素数平面の式を解き始めた。アリソンはそれを隣で興味深げに眺めている。ショウヘイは複雑な計算式を正確かつ迅速に解いていく。

「よし、解けた」

 複雑な数式は簡単な式になった。アリソンはそれを見て目をキラキラ輝かせている。異世界の知識に興味津々なようだ。

「凄い! あの複雑なのをこんなに簡単に出来るなんて……いや、出来なくてもいいや。使わないだろうし。ところでショウヘイっていい家の出?」

「いや、一般的な家庭だけど?」

「嘘。庶民にはこんなの出来ないよ。まあいいや。ねえ、他のもやって見せて」

 ショウヘイはアリソンに急かされ、次々と数式を解いていった。まさか異世界で受験勉強をやる羽目になるとは、と思いつつも、美少女に応援されるなら悪くないやと思っていた。

 時同じくして屋敷の裏口でレイジは半長靴を磨いていた。迷彩のズボンにオリーブドラブのTシャツという格好だ。シャツはレンジャー訓練のチームTシャツで、仲間たちの名前と『時に力を、時には優を』という文字と、ダイヤモンドと月桂樹のエンブレムがプリントされている。

 よく磨かれた半長靴の爪先は月明かりを跳ね返している。教育が終わって正式に部隊配属になってからは真面目に半長靴を磨く奴は減った。だが、レイジだけはいかなる時も真面目に磨き続けていた。自己満足でしかないが、身なりをしっかり整えた方がカッコいい。レイジはそう思っていた。

「こんな所で何をしているの?」

 レイジは正面から聞こえた声に反応し、作業を中断して顔を上げる。そこにはルフィナが立ち、レイジの作業を不思議そうに眺めていた。

「靴磨き。こいつの爪先を顔が映るまで磨くんだ」

 ウエスと呼ばれる布切れにクリームをつけて薄く塗り広げ、水を含ませたウエスでクリームを溶かして塗り広げる。仕上げにほんのちょっとのクリームと水を含ませたコットンで根気よく磨くのだ。その作業でどんどん半長靴の爪先が綺麗にテカり出した。地味な作業を何十分、時には何時間と続けて完璧に近づけていくのだ。

「マメなんだね。わざわざ自分でやって……」

「こういう些細なことに気を配れるか、それが生死を分けるんだ。だから、常に気を配る。それだけ。」

「軍人、なんだっけ……」

 ルフィナはレイジの隣に座ると、レイジの二の腕に目をやる。普通の仕事ではつかないであろう筋肉がしっかり付いており、所々にある傷跡は訓練の激しさを物語っているようだった。

「その服、何が書いてあるの……?」

 ルフィナはレイジのTシャツを指差す。背中にはびっしりと仲間や教官の名前がプリントされている。

「レンジャー訓練を一緒に切り抜けた仲間と、教官の名前さ。死と隣り合わせの厳しい訓練を乗り越えた連中を、いつまでも忘れないようにこうしてるのさ。」

「そう……レイジはどれ……?」

 ルフィナは指で名前を1つ1つなぞる。その感触がくすぐったくてたまらない。レイジは半長靴を磨く手を止め、身をよじっていた。

「くすぐってえよ……それそれ、それが俺」

 ルフィナが指さした『神崎 零士』の文字。名誉を体1つでつかみ取った証がそこにはあった。不撓不屈の精神を仲間と共に手に入れ、誇らしげにその証を身につけているのだ。

「レイジの名前ってこう書くのね……なんだか不思議な文字。」

「俺からすればこっちで使ってる文字も相当に不思議な文字だと思うけどな」

 あちこちで視界に入るアルファベットに近い文字を見て、レイジは違和感を覚えざるをえなかった。それはきっとショウヘイも同じだろう。

「そうかな……時々丸みがあって可愛いと思うけど……」

「文字に可愛いも何もあるのか?」

 レイジは不思議に思ったが、そこは女の子独特の感性なのだろうと結論付けた。正直、女の子の感性に深く突っ込んでも理解することは不可能なのだ。

「よく見れば可愛い。観察は大事。物事は表面だけ見るんじゃなくて、細かいところまでよく見るといい。」

「細かいところまで、か……」

 レイジは半長靴を磨き終え、巾着袋に道具を戻していく。少しだけ、細かいところというのを意識してみようと思ったが、今は気にすべき細かいところが見当たらない。強いて言えばズボンにまだアイロンをかけていないくらいか。

 レイジが立ち上がるとルフィナも立ち上がる。部屋にでも戻るのだろうか。レイジは自分に割り当てられた部屋に向けて歩き出す。すると、その後ろからルフィナも付いてくる。ルフィナの部屋は反対方向のはずなのに。

「道間違ってないか?」

「レイジの部屋にお邪魔するから間違いじゃない」

「え、マジ?」

 レイジは少し不安を感じた。荷物は整頓しているが、弟が部屋で何をやっているかわからないのだ。もしかしたら散らかしているかもしれないし、勉強しているかもしれない。

 レイジは覚悟を決めて部屋のドアを開ける。その目の前で広がるのは、ベッドの上で向き合うショウヘイとアリソン。そして、2人の間にはレイジの88式鉄帽、通称てっぱちと丸めて輪ゴムで固定したノートが置かれていた。

 その只ならぬ雰囲気にレイジとルフィナはその場で固まる。そして、ショウヘイがその沈黙を打ち破った。

「叩いて被ってジャンケンポン!」

 ショウヘイがグー、アリソンがパーを出す。その次の瞬間、2人は己の反応速度の限界に挑んだ。

 ショウヘイがてっぱちに手を伸ばし、アリソンが丸めたノートに手を伸ばす。それぞれ得物をつかみ、ショウヘイはてっぱちを頭へ運び、アリソンはショウヘイの頭めがけて丸めたノートを振り抜く。

 勝負は一瞬だった。ショウヘイが被ったてっぱちがアリソンの一撃を見事に防いでいた。カコン、という音が部屋に響き、再び沈黙を生む。勝利を確信し、笑みを浮かべるショウヘイ。あとコンマ1秒早ければと歯ぎしりするアリソン。そして、ワナワナと震えるレイジ、そんなレイジとショウヘイ、アリソンに順番に目をやるルフィナ。

 沈黙を真っ先に破ったのはレイジだった。棒立ちから見事なスタートダッシュを決めると、ショウヘイに向かって跳躍し、華麗な飛び蹴りを繰り出したのだ。

「俺のてっぱちで何してるんだこの野郎!」

「ぶへらぁっ!?」

 蹴飛ばす瞬間、レイジはショウヘイの頭からてっぱちをもぎ取っていた。暗視装置を装着するための器具がつけられたそのてっぱちは一応官品である。それをこんなことに使われたら堪ったものではない。

 レイジはベッドの上に着地し、ショウヘイはベッドから吹き飛んで床に頭をしたたかに打ち付けてしまった。ゴツンという鈍い音が辺りに響く。床はリノリウムか何かだろうか。

「いってーえ!」

「このアホンダラ! 俺のてっぱちで遊ぶな!」

「まあまあ、そう怒らないで……」

 苦笑いを浮かべたアリソンがレイジを宥めにかかる。ルフィナはその様子にクスリと笑っていた。まるで兄弟喧嘩だ。(レイジとショウヘイは本当に兄弟ゲンカをしているが)ルフィナはアリソンとケンカした事なんてなかったので、2人がとても新鮮に見えた。

 ルフィナがクスクス笑っている間に、レイジとショウヘイは取っ組み合いを始めていた。アリソンの説得は効かなかったようだ。

 ショウヘイのビンタが甲高い音を立てる。それに耐えたレイジが石頭(物理)で頭突きを繰り出す。ゴン、という鈍い音が響き、双方にダメージが入る。もう止めることを諦めたアリソンはルフィナと一緒に2人を煽り立てていた。

「おい何の騒ぎだ?」

 ドタバタとケンカしている音を聞きつけたパスカルがやって来た。それに遅れてゼップも部屋を見て笑う。

 レイジとショウヘイはお互いにビンタを繰り出しあっていた。どっちが耐えられるかという我慢比べだ。ペチンペチンと響く音と、真っ赤に腫れた頬、涙目になりながらも意地を張って耐える2人。仕事を放り出してやって来たハミドとアーロンもそれの観戦を始め、しばしの余興となった。おひねりと歓声が飛び交う。

 特に血に飢えた護衛という名の傭兵3人組は一番盛り上がっていた。どっちが勝つか賭けを始め、アリソンとルフィナは男の兄弟とはこんなものなのかと笑いながら見ている。

 10分くらいしただろうか。軍配はレイジに上がった。とうとう耐えきれなくなったショウヘイが痛えと叫んだのだ。唇が切れ、頬が腫れながらもレイジは高らかに勝鬨をあげる。その健闘を讃えて拍手が巻き起こり、客間は熱気に包まれた。

 2人は熱気が冷めたあと、何であんなバカなことをしたのだろうと頭を抱えていた。人の家でいきなり大乱闘なんて真似をして、つまみ出されなかっただけ幸運かもしれない。むしろ、ゼップは喜んでいるようだった。曰く、男兄弟いなかったから兄弟ゲンカを間近で見るのは始めてとのことだ。

「やれやれ、お姉さんびっくりしたぞー?」

 レイジはルフィナに連れられてどこか行ってしまい、部屋に残されたアリソンとショウヘイはのんびりと話をしていた。その間にもアリソンは魔法で手元に氷を作り出し、それでショウヘイの頬を冷やしていた。

「だろうな……そんなことより、魔法って本当にあるのな……」

「何当たり前の事を言ってるのよ? 暗号型魔術は結構簡単なのよ?」

「その暗号ってどんなのさ?」

 アリソンは人差し指を顎の辺りに当てて少し考え込むような仕草を見せたあと、ショウヘイにも分かりやすく説明を始めた。

「暗号はこう……魔法陣を描いて起動するタイプの魔法の総称よ。それぞれ属性や効果を表す魔法式……ああ、魔法式っていうのはこの丸い魔方陣に何かの言語を入れて意味を与えたものの総称。それを幾つか組み合わせて作るの。」

「なるほど、化学式っぽいものか……」

 水素原子2つに酸素原子1つを組み合わせて水を作るように、水と冷却の魔法式を組み合わせて氷を作る。ショウヘイにはそれが覚えやすかった。

「化学式って何かわからないけど……とりあえず、暗号は書くのが大変だから、予めメモに書いておくの。使うときはその暗号に手をかざせば発動できるわ。」

「つまりショートカット機能か。便利だな……」

「使ってみる?」

 アリソンはさっき使ったのと同じ、氷の暗号をショウヘイに差し出す。ショウヘイはそれに手をかざし、アリソンの説明を受けながら氷を出そうとする。

 掌の上で小さな氷の塊が出来始めた。それがどんどん大きくなっていき、ソフトボールくらいの大きさになった。ヒンヤリと冷気を放っていて、握っていると凍傷になってしまいそうだ。

 それを見ていたアリソンは何かに気づいたのか、顎に手を当ててうなりだした。

「魔力は人それぞれと聞くけど……ショウヘイはパスカルが魔晶石を埋め込んだからやっと使えてるって感じかしら……ちょっとこれは……」

「使えなかったらこの世界では致命的?」

「まあ、かなり痛いわね。使えてるだけまだマシじゃない?」

 ショウヘイは天を仰いだ。異世界に放り出しておいてそりゃないぜ神様。そう心の中で叫んだ。兄には1人で戦争できそうな(ショウヘイにはそう見える)重装備があるのに、俺には役に立ちそうにない参考書だけかい。そんな理不尽さに打ちのめされそうになった。

「頭でっかちで使えないとか……高学歴だけど仕事できないダメな奴の典型例じゃねえか俺?」

「学歴が何かは知らないけどね。とりあえず対策はあるからまたあとで考えましょ」

 ショウヘイは深くため息をついた。寝ても覚めても勉強勉強言われる毎日を抜け出せて、もしかしたら普通に生きていたらできない事ができるかもしれないと期待を膨らませていただけショックは大きい。

 ショウヘイはメモを取り出し、魔法に関することや疑問に思ったことを書き出していく。些細な情報が何かの手がかりになるかもしれないのだ。大陸の名前、言語、魔法、色々な謎がある。それを今はメモに書き残し、状況が落ち着くまで寝かせておくことにした。

「とりあえず、もう遅い時間だから寝ましょう。夜更かしは肌に悪いわよ?」

 アリソンはそう言うと立ち上がってドアに向かう。ショウヘイが腕時計を見ると、23時になっていた。もう寝よう。今日は疲れた。

「俺も寝るよ。おやすみなさい」

「ええ、お休み」

 アリソンは部屋を出る前にショウヘイの方を向くと、ウインクしてから退室した。

「……思わせぶりな態度とるなよ」

 ショウヘイは火照った頬を冷やすのに苦労する羽目になった。レイジに引っ叩かれた熱は引いたのに、別の熱が頬を暖めていた。

 眠れなくなったショウヘイは借りた工具で一円玉とその辺で拾った錆びた釘を削り、粉末にし始めた。それをペンケースにあったセロハンテープに貼り付け、綺麗に丸めて小物入れ代わりにしていたフィルムケースにしまう、そんな作業を繰り返した。

 明日には目が覚めて、自分はいつも通りの自分の部屋で目を覚ます。そんな淡い期待を抱いてはいたが、作業を続けているうちに何もかもが現実なのだと思えてきた。硬い金属の感触と音、体に事あるごとに伝わる痛み。夢で済ますには無理があった。

「何で、俺なのかな……」

 そう呟いた刹那、ショウヘイの頭に痛みが走った。脳みそを掻き回されるかのような不快な感触と激痛にショウヘイは悶絶する。

 意識が混濁する中、何かが見えた。いつも通学に使っている電車の中だろうか。いつも通り、いつもの場所で吊り革に掴まって目的地へ到着するのを待っていたら、目の前が火に包まれた。何が起きたかわからない。何がどうなっている? その次の瞬間にはショウヘイの思考も痛みも消えてしまっていた。

 次に目を覚ますと朝だった。アリソンが心配そうに名前を呼びながら体を揺すっている。顔が近い。整った顔とほんのりといい香りが漂ってくる。これが女の子の匂いかと思うと、だんだん鼓動が早まっていくのがわかった。

「あ、起きた……よかった。魘されてたよ?」

「え……?」

 ショウヘイは額を手で拭う。いつの間にか机に突っ伏して眠っていたようだ。額はびっしょりと汗で濡れており、シャツは汗で色が変わっていた。体育用のジャージも下着もずぶ濡れという有様だった。

「……夢か……にしてはリアルな夢だな……」

「悪夢でも見てたの? まあ、楽しいこと考えれば忘れられるわよ」

 アリソンは立ち上がると気楽に笑ってみせる。開いていた窓から吹き込んできた穏やかな風がアリソンのブロンドの髪を棚引かせ、少しだけ幻想的に見えた。

「悪夢にしてはリアルだったよ。まるで、本当にあったみたいにさ……」

 肩を落とすショウヘイの背中をアリソンはバシバシと叩く。その度にショウヘイの肺から空気が漏れ、痛い痛いと連呼した。

「痛えって! 何するのさ!?」

「夢は夢! 痛みがあるのが現実! それでよし!」

「んな無茶苦茶な……」

 ショウヘイは苦笑いを浮かべつつも、それがありがたく思えた。自分のことを思ってやってくれたのだから、その優しさが嬉しく思えた。それと同時に、裏があるのではないかと勘ぐってしまう自分に嫌気がさす。いきなり現れた正体不明の自分たちをここまで厚遇してくれることに疑念を抱かざるを得ないのだ。

 それを訊こうとしたが止めた。怖かったのだ。この優しさが嬉しくて、とても心地よかったから、突き離されるのが、本心を知ってしまうのが怖くてたまらなかった。

 だから、今はこのぬるま湯に浸かっていよう。苦しむことなく、穏やかに生きられるだろう。今のうちは。そうしてショウヘイは現実逃避に走ってしまった。その度に羨ましく思うのだ。兄はしっかり現実と向き合おうとしているのだから。その強さがとても羨ましかった。振り向かない強さが欲しいと初めて思った。
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