15 / 94
015:地下3階1
しおりを挟む
次に目指すのは地下3階だ。
調査としては最低限5階までは到達する、可能ならば昇降機を発見することと、さらに6階への階段を発見してほしいと決まっている。
最低限到達すべき目標のちょうど中間地点までは来たということだ。ここからは目標フロアへ到達するだけでも時間がかかるようになってくる。そろそろ長時間の探索を考える段階へ入りつつあり、その点でもギルドの方ではセルバ家から委託されているというキャンプ用品をあれこれと見せられ、これらの評価もと頼まれている。ローグといってもサバイバル系の能力に振っているフリアなどは興味津々ではあった。
1階は相変わらず角を曲がったところにいるラットをエディが盾で押しやっている間にさっさと通り抜ける方法で通り抜けると、以降は罠も魔物も遭遇することはなく真っすぐ階段へ。
さらに2階もフリアの気配察知を頼りに魔物との遭遇そのものを回避する方向で最短で3階への階段に到達した。
問題はここからだった。階段を下りた場所が今回も安全な部屋だったので、ここで準備を整える。そして階段の正面にある扉にフリアが取り付いたところでさっそくこれまでとは違う展開を迎えた。
「鍵なし、罠なし、気配あり。なんだろ、動かないね」
「いきなりか、動かないのなら仕方がない。まずは3階の最初の魔物ってのを確かめるか。エディ、頼む」
「分かった。場所を換わろう」
フリアが下がり、クリストが扉が開いたところから中を確認、状況次第では即座に戦闘に移行できるように待機。体勢が調ったところでエディが扉に手をかけると、それをそっと押し開けた。
薄暗い部屋の中にランタンの光が差し込む。その光の中でズリズリと何かがこすれる音が響き、太く長くとぐろを巻いていたものがゆっくりと動き出した。
「ジャイアント・スネークか、見たところそこまででかくはないのが救いだな。エディ、頭を頼む。俺が後ろから行く」
部屋に入ったエディに対してジャイアント・スネークが頭をもたげ、とぐろを解く。頭からかみつきにくるか、それとも尻尾を振り回して打撃を狙うか。
エディが盾を構えたところへ、頭上からかぶりつこうかという勢いで頭が高く上がり、そして降ってくる。それをじっくりと見定めていたエディは構えていた盾を大きく振り回し、襲いかかってきた頭部を殴りつけた。
かみつきに行ったところを大きく横へと弾かれたジャイアント・スネークは、その勢いを尻尾へと移し、振り回して盾を振り上げて開いたエディの胴体へたたきつけようと狙う。
だが、それを待っていたのがクリストだった。エディの背後から付いてくるようにしていたクリストが左側へ大きく踏み出し、たたきつけようと向かってくる尻尾に対して剣を構え体ごとぶつけるようにして突撃した。
尻尾の勢いを利用して剣は深々と刺さり、そしてクリストの突撃の勢いが振り回された尻尾の力を上回ったことでジャイアント・スネークの体が引っ張られ伸びてしまう。そうなればあとはエディが目の前に落ちてきた頭部に剣を突き刺して終わりだ。
全長5メートルにはなろうかというジャイアント・スネークも、より強度の高い冒険者の前ではなすすべもなかった。
「よし、片付いたな。もういいぞ」
いくら部屋が広いとはいってもジャイアント・スネークが全力で暴れ回るには手狭で、戦闘のために入っていたのはエディとクリストだけだった。他の仲間は戦闘終了を確認してからの入室になる。振り回される尻尾に巻き込まれることは避けたかったし、部屋の外からでも魔法は届く。
さっそく頭部と首の付け根から魔石を取り出し、念のため討伐証明として牙を切り取る。ギルドへ持ち帰ればこのジャイアント・スネークの正式な名称や毒の有無などがわかるだろう。
その間にフリアは入ってきた扉から見て左右の壁にある次への扉を調べていた。
「右、鍵あり、罠なし、気配なし。左、鍵なし、罠なし、気配なし」
「鍵あり? 早速か。ひとまず鍵は置いておいて、なしの方から埋めていくか」
方針が決まったところでフリアが扉を開ける。
「あれ、同じ広さの部屋だね。正面と左右に扉」
階段室、そして先ほどの部屋と続いて、さらに同じ広さの部屋だった。違いは扉の枚数くらいのものだ。
フリアは引き続き扉を順番に調べていく。
「うーん、全部鍵なし、罠なし、気配なしだよ」
「よし、まずは正面から」
部屋に入ったところから真っすぐに部屋を横切り、正面の扉を開ける。
「おー、やったね。宝箱発見」
「来たか。今回は早かったな。てーか部屋のサイズはまた一緒か? ここは同じ大きさの部屋が連続する作りか?」
「そうかも、この部屋は箱あり、扉なし、罠もなさそう。さっきの部屋の扉の先が同じ広さの部屋なら、そういうエリアっていうことだろうね」
部屋の中には罠などはなく、そして今回は扉もなかった。その代わりに部屋の奥、壁際には宝箱が静かに座していた。
「鍵なし、罠なし」
そそくさと宝箱に近寄ったフリアが確認する。
「開けていいぞ」
わーいと言わんばかりに蓋に手をかけてさっと開けた。
中を見てその結果に満足したのかにっこりと笑う。
「何だ、いいものだったのか?」
「うん、宝石だね。5個ある」
「宝石! 2階は結構良かったけれど、今回はどうかしら」
その結果にカリーナが反応する。やはり結果が分かりやすいものは盛り上がる。
半透明で中央に金色の入った茶色いもの1つ、細いしま模様のある緑色のもの1つ、桃色の石に緑色の模様の入ったもの1つ、青い石の中に黄色の斑点のあるもの1つ、暗い灰色のもの1つ。
「宝石というよりも石っていう感じね‥‥ちょっと地味じゃないかしら」
「鑑定を楽しみにしておけばいいさ。だが幸先はいいな」
まだ3階の探索は始まったばかりなのだ。戦闘もあったが、まださして移動すらしていないというのにすでに宝箱があったのだ。これは先行きに期待が持てる展開だった。
「さあ次だ。戻って右へ行こう」
部屋を一つ戻り、左右の扉のうち右を選択。そちらへ進むとそこもまた同じ広さの部屋になっていた。そして扉は正面と右。
「どちらも鍵なし、罠なし、気配あり。何となくだよ、何となくだけど正面の扉の方が気配が大きい気がする」
「サイズ違いか種類違いか、よし、まずは右を見よう。さっきのやつと同じくらいか? わかった、エディ頼む」
気配の大きさが先ほどの部屋にいたものと同じ程度ということであれば脅威度もそこまで差はないだろうと思われた。であればやることは同じだ。正面にエディ、脇にクリスト。できるだけ魔法は使わずに片付ける。
「なるほどジャイアント・スネーク、ここはそういうエリアか」
開けた扉の先では、先ほどの部屋と同じ程度の大きさのジャイアント・スネークが、こちらも同じように頭をもたげ、ズリズリと尻尾を移動させようとしていた。
同じ魔物、同じ状況ということであれば、やることも同じだ。
エディが盾を構えて頭を誘い、これを弾く。そしてたたきつけようと動いてきた尻尾めがけてクリストが突撃し、これを縫い留める。あとは頭をつぶして終わりだ。
「よし、終わりだ。部屋の大きさも同じだし、違いは扉がどこにあるかだけか。もしかしたらどの部屋にいるのかは来るたびに違うのかもな」
「ありそうだな、魔物のいる部屋、宝箱のある部屋がそのたびに違う。ありそうだ」
この部屋にはあとは扉が1つ、左側の壁にあるだけだった。
「鍵なし、罠なし、気配あり。これは同じパターンだね」
「決まりだな。あとはその大きそうな気配というのがどうなのかくらいか。続けて進むぞ、エディ頼む」
そうなれば展開はまったく同じだ。扉を開け、エディがジャイアントスネークを正面から相手取り、クリストが尻尾を止める。やることは変わらない。
「うん、左の扉が鍵なし、罠なし、気配大きいのあり、これがさっきの扉の先と同じところだろうね。それで右が鍵なし、罠なし、気配なし。うん。最後正面、あれ?」
「どうした?」
左右の扉を確認して、正面の扉を確かめようと近寄ったフリアの動きが止まった。反応は危険があってのものではない。何か違うものがあったのだ。
「見て、これ、何かはめるようになっているよ」
フリアが指し示した場所、扉のノブの上に5センチ程度の幅の何かをはめ込むような形のスロットが付いていた。
「これは、別にカギが必要とか、そういうものか?」
「ちょっと調べてみる、待ってね‥‥うん、駄目だね、強引に開けられるようなものでもなさそう。これはここ用の鍵が必要なんじゃないかな」
ここに来て初めての展開だった。扉を開けるためには専用の鍵が必要になりそうだった。
「これは考えたところで意味はなさそうだな。別のエリアで鍵を見つけてこいってことだろう。まずは他を埋めていこう。次はそっちの、大きなやつがいそうな所を確認してみるか」
現状専用の鍵といっても何の手がかりもない。地図を埋めていくうちにどこかで手に入るなり手がかりを得られるなりするだろうと考えられた。今することは地図の他の部分を埋めていくことだ。
大きめな気配が感じられるという扉に取りかかる。
基本的にやることは同じだ。エディが前で構え、クリストが攻撃に入る。他の仲間は必要とあれば参戦できるように準備して待機だ。
「なるほど今までの奴らよりは大きいな。だがこの程度ならやることは同じだ」
扉を開けて確認された部屋にいたのは今までと同じジャイアント・スネークだったが、大きさが違っていてこちらの方が明らかに大きい。これだけ大きさに違いがあれば脅威度も上がりそうなものだが、それもこのパーティーにとってはそれほど意味はなかった。自分たちもまた十分な経験を積んだ強力なパーティーなのだ。
これまで通りエディが構えて頭部を待ち受けこれを弾く、振り回される尻尾に対してはクリストが剣を差し動きを押さえる。それで終わる。フリアが参加する分には構わないが、魔法が必要になる段階までは行かなかった。
「よし、こんなもんだ。確かに大きいが、しょせんはジャイアント・スネークだな」
「色が違うような気はするね。こっちの方が茶色いのかな。さっきまでのは少し紫が入っていなかった?」
ここまで出番のないフェリクスがジャイアント・スネークの魔石を取り出しながら感想を言う。言われてみれば確かに少し色は違うか。これもただのサイズ違いなのか、種類が違うのか、ギルドに戦果を持ち帰れば鑑定でわかるだろう。
「扉に鍵なし、罠なし、気配あ。さっきまでの大きさになるかな。たぶん同じだね」
部屋の広さも同じ、扉のタイプも同じ、気配も同じ。
ここはそういうエリアということで確定で、この扉の先も同じなのだろう。
扉を開けた先にいたのは今まで通りのサイズのジャイアント・スネークで、これまでどおり手早く処理されて終わった。
そして部屋の広さも変わらず、扉も正面に一つ。
「鍵なし、罠なし、気配なし、と。開けるね」
開けた先は同じ広さの部屋で、今度は扉がなかった。
「残念何もなし。運が良ければ宝箱があった部屋なのかも」
「そんな感じだな。これでこっち側が埋まったか。戻ってその鍵が開けられないところまで戻って正面だな」
同じ広さの部屋が続くエリアも一方の端が確認できたことになった。
その向こう側は専用の鍵がなければ開けられない扉の先ということになるのだろう。その鍵が必要な部屋まで戻ると、残る正面の扉の先を確認した。
「お、部屋じゃないな。そうなると部屋が続くエリアはここで終わりってことか」
扉の先は通路になっていた。
フリアが先行して先へ進むと、通路は右へと曲がっている。その先もしばらく続き、そして扉へと行き着いた。
「鍵あり、罠なし、気配あり。うーん、大きいよ。かなり大きい。それに音がするね、これは特別大きなジャイアント・スネークだと思う」
「このエリアのボスってことか? よし、エディと俺が突っ込む。フェリクス、一発頭に魔法を頼む。ダメージを稼ぐだけでいい。フリアとカリーナは支援を」
鍵を外したフリアが後列に移動、エディが扉に手をかけそっと開けると、すぐに今までとは比較にならないほど大きな、シュルシュル、ズルズルというヘビの動く音が聞こえてきた。
「マジック・ミサイル!」
戦闘開始を告げたのは頭部めがけて放たれたフェリクスの魔法だった。ミサイル3発が勢いよく頭部に命中し、確実にダメージを与える。
15メートルはあろうかという巨大なヘビが痛みに身もだえする。部屋を埋めようかという巨体が動く様はそれだけで恐怖を感じさせるものだったが、部屋の広さ自体は今までとそう変わらないように見え、そうなるとその巨大すぎる体を思うがまま動かすには少し狭かった。
強い力を込めて尻尾をたたきつけたかったかもしれないが、長い助走を付けられない分だけ勢いは落ちる。尻尾の直撃もエディの盾の前に押さえ込まれてしまった。そしてそこへすかさずクリストが斬りかかり、尻尾へ大きな傷を残す。
「ベイン! よっし、入った! これでもうそこまで強い攻撃はできないわ」
カリーナの魔法が決まる。相手の攻撃力を削ぐ弱体化が入ったのだ。
ジャイアント・スネークの攻撃は基本的にその巨体を生かしたかみつきやたたきつけ、締め付けといった行動だ。その肝心の攻撃力を削られてしまってはエディの防御力を突破できなくなってしまう。
正面に立つエディが盾でかみつきを受け止め、剣で切りつける。クリストもそこへ参加して剣で、そして頃合いと見たフリアもナイフで、それぞれ攻撃を加え、最後にもう一度フェリクスのマジック・ミサイルが命中したところで戦闘は終了した。
調査としては最低限5階までは到達する、可能ならば昇降機を発見することと、さらに6階への階段を発見してほしいと決まっている。
最低限到達すべき目標のちょうど中間地点までは来たということだ。ここからは目標フロアへ到達するだけでも時間がかかるようになってくる。そろそろ長時間の探索を考える段階へ入りつつあり、その点でもギルドの方ではセルバ家から委託されているというキャンプ用品をあれこれと見せられ、これらの評価もと頼まれている。ローグといってもサバイバル系の能力に振っているフリアなどは興味津々ではあった。
1階は相変わらず角を曲がったところにいるラットをエディが盾で押しやっている間にさっさと通り抜ける方法で通り抜けると、以降は罠も魔物も遭遇することはなく真っすぐ階段へ。
さらに2階もフリアの気配察知を頼りに魔物との遭遇そのものを回避する方向で最短で3階への階段に到達した。
問題はここからだった。階段を下りた場所が今回も安全な部屋だったので、ここで準備を整える。そして階段の正面にある扉にフリアが取り付いたところでさっそくこれまでとは違う展開を迎えた。
「鍵なし、罠なし、気配あり。なんだろ、動かないね」
「いきなりか、動かないのなら仕方がない。まずは3階の最初の魔物ってのを確かめるか。エディ、頼む」
「分かった。場所を換わろう」
フリアが下がり、クリストが扉が開いたところから中を確認、状況次第では即座に戦闘に移行できるように待機。体勢が調ったところでエディが扉に手をかけると、それをそっと押し開けた。
薄暗い部屋の中にランタンの光が差し込む。その光の中でズリズリと何かがこすれる音が響き、太く長くとぐろを巻いていたものがゆっくりと動き出した。
「ジャイアント・スネークか、見たところそこまででかくはないのが救いだな。エディ、頭を頼む。俺が後ろから行く」
部屋に入ったエディに対してジャイアント・スネークが頭をもたげ、とぐろを解く。頭からかみつきにくるか、それとも尻尾を振り回して打撃を狙うか。
エディが盾を構えたところへ、頭上からかぶりつこうかという勢いで頭が高く上がり、そして降ってくる。それをじっくりと見定めていたエディは構えていた盾を大きく振り回し、襲いかかってきた頭部を殴りつけた。
かみつきに行ったところを大きく横へと弾かれたジャイアント・スネークは、その勢いを尻尾へと移し、振り回して盾を振り上げて開いたエディの胴体へたたきつけようと狙う。
だが、それを待っていたのがクリストだった。エディの背後から付いてくるようにしていたクリストが左側へ大きく踏み出し、たたきつけようと向かってくる尻尾に対して剣を構え体ごとぶつけるようにして突撃した。
尻尾の勢いを利用して剣は深々と刺さり、そしてクリストの突撃の勢いが振り回された尻尾の力を上回ったことでジャイアント・スネークの体が引っ張られ伸びてしまう。そうなればあとはエディが目の前に落ちてきた頭部に剣を突き刺して終わりだ。
全長5メートルにはなろうかというジャイアント・スネークも、より強度の高い冒険者の前ではなすすべもなかった。
「よし、片付いたな。もういいぞ」
いくら部屋が広いとはいってもジャイアント・スネークが全力で暴れ回るには手狭で、戦闘のために入っていたのはエディとクリストだけだった。他の仲間は戦闘終了を確認してからの入室になる。振り回される尻尾に巻き込まれることは避けたかったし、部屋の外からでも魔法は届く。
さっそく頭部と首の付け根から魔石を取り出し、念のため討伐証明として牙を切り取る。ギルドへ持ち帰ればこのジャイアント・スネークの正式な名称や毒の有無などがわかるだろう。
その間にフリアは入ってきた扉から見て左右の壁にある次への扉を調べていた。
「右、鍵あり、罠なし、気配なし。左、鍵なし、罠なし、気配なし」
「鍵あり? 早速か。ひとまず鍵は置いておいて、なしの方から埋めていくか」
方針が決まったところでフリアが扉を開ける。
「あれ、同じ広さの部屋だね。正面と左右に扉」
階段室、そして先ほどの部屋と続いて、さらに同じ広さの部屋だった。違いは扉の枚数くらいのものだ。
フリアは引き続き扉を順番に調べていく。
「うーん、全部鍵なし、罠なし、気配なしだよ」
「よし、まずは正面から」
部屋に入ったところから真っすぐに部屋を横切り、正面の扉を開ける。
「おー、やったね。宝箱発見」
「来たか。今回は早かったな。てーか部屋のサイズはまた一緒か? ここは同じ大きさの部屋が連続する作りか?」
「そうかも、この部屋は箱あり、扉なし、罠もなさそう。さっきの部屋の扉の先が同じ広さの部屋なら、そういうエリアっていうことだろうね」
部屋の中には罠などはなく、そして今回は扉もなかった。その代わりに部屋の奥、壁際には宝箱が静かに座していた。
「鍵なし、罠なし」
そそくさと宝箱に近寄ったフリアが確認する。
「開けていいぞ」
わーいと言わんばかりに蓋に手をかけてさっと開けた。
中を見てその結果に満足したのかにっこりと笑う。
「何だ、いいものだったのか?」
「うん、宝石だね。5個ある」
「宝石! 2階は結構良かったけれど、今回はどうかしら」
その結果にカリーナが反応する。やはり結果が分かりやすいものは盛り上がる。
半透明で中央に金色の入った茶色いもの1つ、細いしま模様のある緑色のもの1つ、桃色の石に緑色の模様の入ったもの1つ、青い石の中に黄色の斑点のあるもの1つ、暗い灰色のもの1つ。
「宝石というよりも石っていう感じね‥‥ちょっと地味じゃないかしら」
「鑑定を楽しみにしておけばいいさ。だが幸先はいいな」
まだ3階の探索は始まったばかりなのだ。戦闘もあったが、まださして移動すらしていないというのにすでに宝箱があったのだ。これは先行きに期待が持てる展開だった。
「さあ次だ。戻って右へ行こう」
部屋を一つ戻り、左右の扉のうち右を選択。そちらへ進むとそこもまた同じ広さの部屋になっていた。そして扉は正面と右。
「どちらも鍵なし、罠なし、気配あり。何となくだよ、何となくだけど正面の扉の方が気配が大きい気がする」
「サイズ違いか種類違いか、よし、まずは右を見よう。さっきのやつと同じくらいか? わかった、エディ頼む」
気配の大きさが先ほどの部屋にいたものと同じ程度ということであれば脅威度もそこまで差はないだろうと思われた。であればやることは同じだ。正面にエディ、脇にクリスト。できるだけ魔法は使わずに片付ける。
「なるほどジャイアント・スネーク、ここはそういうエリアか」
開けた扉の先では、先ほどの部屋と同じ程度の大きさのジャイアント・スネークが、こちらも同じように頭をもたげ、ズリズリと尻尾を移動させようとしていた。
同じ魔物、同じ状況ということであれば、やることも同じだ。
エディが盾を構えて頭を誘い、これを弾く。そしてたたきつけようと動いてきた尻尾めがけてクリストが突撃し、これを縫い留める。あとは頭をつぶして終わりだ。
「よし、終わりだ。部屋の大きさも同じだし、違いは扉がどこにあるかだけか。もしかしたらどの部屋にいるのかは来るたびに違うのかもな」
「ありそうだな、魔物のいる部屋、宝箱のある部屋がそのたびに違う。ありそうだ」
この部屋にはあとは扉が1つ、左側の壁にあるだけだった。
「鍵なし、罠なし、気配あり。これは同じパターンだね」
「決まりだな。あとはその大きそうな気配というのがどうなのかくらいか。続けて進むぞ、エディ頼む」
そうなれば展開はまったく同じだ。扉を開け、エディがジャイアントスネークを正面から相手取り、クリストが尻尾を止める。やることは変わらない。
「うん、左の扉が鍵なし、罠なし、気配大きいのあり、これがさっきの扉の先と同じところだろうね。それで右が鍵なし、罠なし、気配なし。うん。最後正面、あれ?」
「どうした?」
左右の扉を確認して、正面の扉を確かめようと近寄ったフリアの動きが止まった。反応は危険があってのものではない。何か違うものがあったのだ。
「見て、これ、何かはめるようになっているよ」
フリアが指し示した場所、扉のノブの上に5センチ程度の幅の何かをはめ込むような形のスロットが付いていた。
「これは、別にカギが必要とか、そういうものか?」
「ちょっと調べてみる、待ってね‥‥うん、駄目だね、強引に開けられるようなものでもなさそう。これはここ用の鍵が必要なんじゃないかな」
ここに来て初めての展開だった。扉を開けるためには専用の鍵が必要になりそうだった。
「これは考えたところで意味はなさそうだな。別のエリアで鍵を見つけてこいってことだろう。まずは他を埋めていこう。次はそっちの、大きなやつがいそうな所を確認してみるか」
現状専用の鍵といっても何の手がかりもない。地図を埋めていくうちにどこかで手に入るなり手がかりを得られるなりするだろうと考えられた。今することは地図の他の部分を埋めていくことだ。
大きめな気配が感じられるという扉に取りかかる。
基本的にやることは同じだ。エディが前で構え、クリストが攻撃に入る。他の仲間は必要とあれば参戦できるように準備して待機だ。
「なるほど今までの奴らよりは大きいな。だがこの程度ならやることは同じだ」
扉を開けて確認された部屋にいたのは今までと同じジャイアント・スネークだったが、大きさが違っていてこちらの方が明らかに大きい。これだけ大きさに違いがあれば脅威度も上がりそうなものだが、それもこのパーティーにとってはそれほど意味はなかった。自分たちもまた十分な経験を積んだ強力なパーティーなのだ。
これまで通りエディが構えて頭部を待ち受けこれを弾く、振り回される尻尾に対してはクリストが剣を差し動きを押さえる。それで終わる。フリアが参加する分には構わないが、魔法が必要になる段階までは行かなかった。
「よし、こんなもんだ。確かに大きいが、しょせんはジャイアント・スネークだな」
「色が違うような気はするね。こっちの方が茶色いのかな。さっきまでのは少し紫が入っていなかった?」
ここまで出番のないフェリクスがジャイアント・スネークの魔石を取り出しながら感想を言う。言われてみれば確かに少し色は違うか。これもただのサイズ違いなのか、種類が違うのか、ギルドに戦果を持ち帰れば鑑定でわかるだろう。
「扉に鍵なし、罠なし、気配あ。さっきまでの大きさになるかな。たぶん同じだね」
部屋の広さも同じ、扉のタイプも同じ、気配も同じ。
ここはそういうエリアということで確定で、この扉の先も同じなのだろう。
扉を開けた先にいたのは今まで通りのサイズのジャイアント・スネークで、これまでどおり手早く処理されて終わった。
そして部屋の広さも変わらず、扉も正面に一つ。
「鍵なし、罠なし、気配なし、と。開けるね」
開けた先は同じ広さの部屋で、今度は扉がなかった。
「残念何もなし。運が良ければ宝箱があった部屋なのかも」
「そんな感じだな。これでこっち側が埋まったか。戻ってその鍵が開けられないところまで戻って正面だな」
同じ広さの部屋が続くエリアも一方の端が確認できたことになった。
その向こう側は専用の鍵がなければ開けられない扉の先ということになるのだろう。その鍵が必要な部屋まで戻ると、残る正面の扉の先を確認した。
「お、部屋じゃないな。そうなると部屋が続くエリアはここで終わりってことか」
扉の先は通路になっていた。
フリアが先行して先へ進むと、通路は右へと曲がっている。その先もしばらく続き、そして扉へと行き着いた。
「鍵あり、罠なし、気配あり。うーん、大きいよ。かなり大きい。それに音がするね、これは特別大きなジャイアント・スネークだと思う」
「このエリアのボスってことか? よし、エディと俺が突っ込む。フェリクス、一発頭に魔法を頼む。ダメージを稼ぐだけでいい。フリアとカリーナは支援を」
鍵を外したフリアが後列に移動、エディが扉に手をかけそっと開けると、すぐに今までとは比較にならないほど大きな、シュルシュル、ズルズルというヘビの動く音が聞こえてきた。
「マジック・ミサイル!」
戦闘開始を告げたのは頭部めがけて放たれたフェリクスの魔法だった。ミサイル3発が勢いよく頭部に命中し、確実にダメージを与える。
15メートルはあろうかという巨大なヘビが痛みに身もだえする。部屋を埋めようかという巨体が動く様はそれだけで恐怖を感じさせるものだったが、部屋の広さ自体は今までとそう変わらないように見え、そうなるとその巨大すぎる体を思うがまま動かすには少し狭かった。
強い力を込めて尻尾をたたきつけたかったかもしれないが、長い助走を付けられない分だけ勢いは落ちる。尻尾の直撃もエディの盾の前に押さえ込まれてしまった。そしてそこへすかさずクリストが斬りかかり、尻尾へ大きな傷を残す。
「ベイン! よっし、入った! これでもうそこまで強い攻撃はできないわ」
カリーナの魔法が決まる。相手の攻撃力を削ぐ弱体化が入ったのだ。
ジャイアント・スネークの攻撃は基本的にその巨体を生かしたかみつきやたたきつけ、締め付けといった行動だ。その肝心の攻撃力を削られてしまってはエディの防御力を突破できなくなってしまう。
正面に立つエディが盾でかみつきを受け止め、剣で切りつける。クリストもそこへ参加して剣で、そして頃合いと見たフリアもナイフで、それぞれ攻撃を加え、最後にもう一度フェリクスのマジック・ミサイルが命中したところで戦闘は終了した。
0
あなたにおすすめの小説
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。
キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。
弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。
偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!
バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話
紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界――
田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。
暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。
仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン>
「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。
最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。
しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。
ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと――
――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。
しかもその姿は、
血まみれ。
右手には討伐したモンスターの首。
左手にはモンスターのドロップアイテム。
そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。
「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」
ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。
タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。
――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――
オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】
山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。
失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。
そんな彼が交通事故にあった。
ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。
「どうしたものかな」
入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。
今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。
たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。
そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。
『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』
である。
50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。
ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。
俺もそちら側の人間だった。
年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。
「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」
これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。
注意事項
50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。
あらかじめご了承の上読み進めてください。
注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。
注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。
アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。
そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。
【魔物】を倒すと魔石を落とす。
魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。
世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。
アガルタ・クライシス ―接点―
来栖とむ
SF
神話や物語で語られる異世界は、空想上の世界ではなかった。
九州で発見され盗難された古代の石板には、異世界につながる何かが記されていた。
同時に発見された古い指輪に偶然触れた瞬間、平凡な高校生・結衣は不思議な力に目覚める。
不審な動きをする他国の艦船と怪しい組織。そんな中、異世界からの来訪者が現れる。政府の秘密組織も行動を開始する。
古代から権力者たちによって秘密にされてきた異世界との関係。地球とアガルタ、二つの世界を巻き込む陰謀の渦中で、古代の謎が解き明かされていく。
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる