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022:地下3階5
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宝箱の中身を回収したら探索の再開だ。
通路を戻り、先ほど通り過ぎた分岐点まで戻る。その左側への分かれ道がまだ調べていない場所になっていて、そこへ進む。道はしばらく進んだ先で部屋になっていて、さらにその部屋から先へと続く通路も正面に見通すことができた。どうやら魔物などもいないようだった。
先を行くフリアが通路へと進み、少し行ったところで突然ビーーーーーーーーッという激しい音が辺りに響いた。
フリアが、え、え、と周囲を見渡すが幸いこの周辺の魔物はすでに倒していて、前方、通路の先の方にも何かがいる様子はない。警報音もしばらくして鳴り止み、何事もなくすんだようだった。
「え、もしかしてここ通るだけで鳴るの? 何にもないんだけど、足元も天井も何かあるようには見えないんだけど」
周囲を見渡し足元を触りと探っていたフリアが嘆く。調べてわからない仕掛けなどどうすることもできない。
「そこを通ると鳴るってことか? どういう仕組みなんだ」
「分かんない。ね、ここにいるから通っていってよ。誰か通るたびに鳴るんなら大変だよ」
一人通るたびに鳴るような仕掛けだと、どこかで近くの魔物が気がつくかもしれない。そういう事態を避けるために、すでに鳴らしてしまったフリアが動かず、ほかの全員が通り過ぎてから動くことにした。幸いこれで以降は警報音が鳴ることもなく部屋の中へと移動することができた。
「さて、この部屋は何も‥‥壁に何か書いてあるな」
周囲を見渡していたクリストが気がついた。
左側の壁の中央辺りに文字のようなものが何行かに渡って書き込まれていたのだ。
「これは、何が書いてあるんだ? 誰か読めるか?」
壁に書かれている文章に使われている文字は、ここヴェントヴェール国や周辺国で使われている共通語とは違っていた。
「うーん、古語に見えるけれど、僕には難しいかな」
「確かに古語っぽいわね、待って、読めると思う。えーっと‥‥」
クリスト、エディ、フリアは完全にお手上げだったが、魔法を学んでいるフェリクスとカリーナには多少はなじみのある文字だったようだ。特に幅広く学んでいたカリーナは文字の知識も豊富だ。
「えー、追われる、追われて、いる、ここ、め、めふぃっと?って読めばいいのかしら。めふぃっとに追われてここにいる。開く、あ、違うか否定だわね、開かない、門、扉、あー、扉を開けられない、ね。数字の6、階数、戻る? 6階に戻る。別、道、探す、かな。6階に戻って別の道を探す。たぶんこれで全部よ」
カリーナが単語を読み、文章になるようにつなげていく。その結果は非常に興味深いものだった。
「めふぃっとってのはあの魔物のことかもな。で、それに追われていると。扉を開けられないってのはあの鍵のかかっていた扉だろう。それでここから6階に戻って、別の道を探す、と」
「6階に、戻る、か」
「ここは3階だ。あの扉を開けられたらその先にあるのは2階への階段だよな。6階ってのは何だ? あん? もしかしてあれか、これを書いたのは下から上がってきた誰かってことになるのか? それで6階ってことは俺たちから見て、5階か?」
このダンジョンが見つかったのはつい先日のことだ。そしてダンジョンを本格的に探索しているのは自分たちが最初のはずだ。
しかも使われている文字が古語かそれに近い言葉。共通語と言われる人の間で普及している言葉はここ数百年の間は変わっていないはずで、古語となるとそれ以前の話、亜人や獣人、魔人らとの間で使われていた言葉にまでさかのぼることになる。このダンジョンにはそんな言葉を使って書き残している誰かがいたということだった。
「‥‥面白いわよね。5階へ行けば答えがあるかもしれないわよ。少なくともこれを書いた誰かの痕跡は、下で見つかるかもしれないわ」
「そうだな。1階のゴーストの所の文字は俺でも読めた。ってことはこれを書いたのとは当然別で、まああれはダンジョンが用意したものなんだろう。そうなると、な。俺たちは上から下を目指していて、ダンジョンもそれに合わせて難易度が上がっている。それに対してこれを書いた誰かは下から上を目指していて、そして古語を普通に使っているってことになって。‥‥これは確かに面白いな」
これは果たして時代の差か。はるか昔に下から上を目指した誰かがいて、今の時代に上から下を目指す自分たちがいるのか。その答えは今はない。だがこれから自分たちはまだ下を目指すのだ。その先に答えにつながるものが見つかるかもしれなかった。
フェリクスが壁に書かれていた文字を丁寧に紙に書き写すのを待ってから探索を再開する。もう少し古語に詳しい誰かに正しく訳してもらう必要があるからだ。
部屋の先は通路になっていて、少し先で左右に分かれる丁字路になっている。どちらもまだ先があるようだった。
「まずは右からだな」
通路を右へと進むとその先で再び左右に分かれる丁字路に差し掛かる。そしてその右側は、少し先で下り階段へとつながっていた。
「ここにあったか。左はどうだ?」
先行して左側を調べに行っていたフリアがすでに戻ってきている。特に問題になるようなことはなかったのだろう。
「この先で右にこう、曲がって、その先は部屋になっていたよ。それで水場があった」
「3階の他の階段と作りは同じか。階段は通路に直結で、近くに水場のある部屋。よし、あとは戻ってあの先だな? そこは埋めておくか」
メッセージの残されていた部屋に近い丁字路まで戻り、先ほどとは逆側の通路を調べることにする。少し進むとそこは部屋になっているようだった。
「いるね、複数、たぶん3」
気配を察したフリアが警告する。
「3か、数が多いな」
「今のうちにブレスをかけて、それから部屋の中へスローを入れるわ」
「よし、あとは基本通りだな。部屋の入り口を俺とエディでふさぐ形で当たる。フェリクスも攻撃魔法を頼む。フリアは遠距離だけ狙えるときにな」
方針を決めるとカリーナがブレスの魔法で前衛を強化、そして部屋へと近づくと入り口に陣取って中の魔物に向かい、挑発するように動きながらエディがほえた。
「茶、茶、赤! 3体!」
最初に出会ったのと同じちりのようなものをまとったものが2体、そして初めて見る真っ赤なものが1体だった。
「スロー!」
部屋の中へと弱体化の魔法が飛ぶ。これでしばらくの間は魔物の動きが阻害される。
「アイス・ストーム!」
赤い魔物の色から火は不利と判断したフェリクスが強力な冷気の魔法を放つと、部屋の中央付近に固い氷の粒が大量に降り注いだ。赤い魔物はやはり火系だったのか、氷を次々と受けて動きが止まりふらふらとする。
そしてまだ持ちこたえている茶色い魔物に対しては接近したエディとクリストが剣を振るった。氷の粒によってすでにダメージを受けているところへ剣の攻撃を受けたことで、耐えきれなくなった茶色い魔物が倒されていく。さらに好機と見たフリアが後方から赤い魔物に向かってナイフを投げ込んだ。
スローの魔法で動きを鈍らされている所へ集中して攻撃を受けて魔物が次々に倒されていく。あとは爆発に巻き込まれないように通路へ入って盾で防ぎきれば終わりと思えた。茶色い魔物が爆発を起こし、ちりをまき散らす。すぐにもう1体の茶色い魔物も爆発を起こしてちりをまき散らしたことで、辺りにはもうもうと細かい、魔物と同じ茶色をした粉じんが立ちこめた。
そこへ最後に倒された赤い魔物も爆発を起こし、周囲に赤い岩のような溶けた塊のようなものをまき散らした。それは通路へ下がりきったかというタイミングだったか。経験から爆発そのものは大したことがないと油断していたということもあったかもしれない。しのいだと判断して部屋の中を見ると、その中程でカッと白く光る瞬間が見て取れた。
その直後だった。
ドカンッというこれまでに聞いたこともない激しい爆発音と、そして爆風が部屋から通路へと押し出されるようにあふれていく。
通路にしか行き場のなかった空気の圧力が盾を構えていたエディを襲った。
足元を緩めていたと言うこともできるかもしれない。だが、そんなことなど関係がないほどの勢いだった。爆風はエディを押しやり、一瞬の判断から危険を察して踏ん張ろうとした足元をすくい、そのままの勢いで脇のクリストにも襲いかかると2人をまとめて後方へと吹き飛ばした。
すぐ後ろにいたフェリクスとカリーナ、そしてフリアにも巻き込むようにしてぶつかり、さらに後方へと向かって激しい圧力が吹き飛ばす。そしてその爆風の向こう側、部屋の中央付近からチラリと赤いものが立ち上がるのが見えた。
激しく吹き飛ばされた彼らを続けて炎の渦が襲った。
壁に、床に、天井に打ち付けられてそのまま通路を吹き飛ばされた彼らの上を炎がなめていく。その勢いと熱が通路を埋め尽くした。
このエリア特有の倒すと爆発する魔物3体を一気に倒しきった後の出来事だった。
爆発に次ぐ爆発をしのぎきったと考えていたところに、予期していなかったさらに大きな、今度は本物の爆発が発生したのだ。
爆風と炎が立て続けにクリストたちに襲いかかり、通路の中を吹き飛ばし飲み込んでいった。その爆風と炎の勢いはすさまじかったが、その分だったのか収まるのもまた早かった。炎は通り過ぎるとすぐに消え、その時には爆風も収まっていた。だがそれらに巻き込まれた彼らはすぐに動くことはできなかった。
壁に、天井に、床にと激しくたたきつけられたダメージは大きく、そして一瞬とはいえ炎に熱に飲み込まれたダメージが深刻だったのだ。特に最も前にいたエディは盾で一瞬は防げたとはいえ状態が良くなく、全く動くこともできなくなっているようだった。
「う、ぐ、‥‥」
うめき声を上げたのはクリストか。わずかに体を動かしているのがわかる。その横でずりっというエディが動いた音が聞こえた。少なくとも息はあるはずで、今は何とか動けるような状態なのだろうか。
爆風の前にその2人に突っ込まれる形で後方に押し流された3人は通路のあちらこちらで倒れている。動きはまだ見えない。
「‥‥だ、だいじょう、ぶ、か」
クリストが身を起こそうとしているようだ。そのかすれた声に反応したように後方、通路の先で倒れ伏していたカリーナの手が動いた。
「‥‥ます、ヒー、リン、グ、わー、ド‥‥」
こもったような小さな声とともに魔法が発動すると、全員の体に体力の回復をもたらす光が降り注いだ。
「う、お、ああ、だい、じょうぶ、だ」
とても大丈夫そうには聞こえない声だったが、エディが手を持ち上げるのが見えた。回復魔法の効果はやはり大きい。
クリストも何とか体を起こすことに成功し、仲間の様子を見渡した。
フェリクスはずりずりと体を動かして壁に寄りかかるようにして身を起こし、カリーナはまだ動けずにいるらしいフリアの方へはいずって移動すると、もう一度回復魔法をかけていた。
ようやく頭を起こすところまで回復したのかフリアも動き出し、これで全員の生存は確認できた。
「すまん、もういちど、回復まほうを、たのむ」
腰のポーチを探っていたクリストが言うと、カリーナが待ってというように手を上げて、そのまま寝転がってしまう。まだ回復しきれていないのだ。
本当ならここで回復薬のポーションを使って回復したかったのだが、やはりあの爆発に瓶が耐えられなかったようで、収納の中で粉々になって割れてしまい、中身は流れ出してしまっていた。
「ふぅ、ふぅ、‥‥マス・ヒーリング・ワード」
寝転がって少し落ち着いたのか、再びカリーナが回復魔法を使い、全員の上に光が降り注いだ。これでどうにか動ける程度まで体力の回復ができただろう。
「みんな、大丈夫か。エディ、動けるか?」
「ああ、どうにかな、だが、待ってくれ、休憩しよう」
どうにか体を起こせるところまで来たらしいエディが壁に寄りかかるが、盾を持ち上げることは諦めたようだ。その盾がひしゃげているところに今回の爆発の恐ろしさが詰まっていた。
「ああ、これ以上は無理だ。一端回復しよう。ポーションがあるなら使ってくれ。俺は割れた」
「やっぱりそうなるわよね。体力だけじゃなさそうだから、状態異常の回復もかけるわ。ただしこれで私は魔法はほとんどなくなるからね」
ようやく動けるようになったカリーナが全員に回復魔法をかけていく。体力に加えて恐らく打撲ややけどといった異常もあっただろう、それの回復を行うためだ。
「今のは何だったんだ? あの魔物の爆発とは別のようだったが」
体力が戻ってきたクリストの疑問に答えられるものはいなかった。
茶色い魔物2体が爆発してちりがまき散らかされた。続けて赤い魔物が爆発して赤いものが飛び散った。そこまでは分かるのだが、そこからどうして激しい爆発を起こして、そして炎が吹き上がったのかが分からなかった。
とにかくあの組み合わせであの順番で倒した結果、ああいう現象が起きたと考えておくしかなかった。
ギルドに報告する上で重要になるのはとにかく状況を正確に伝えることだ。そしてその状況を再現しないように注意することだ。
少なくともこれ以上魔物が現れるようなことはなく、通路に腰を下ろして回復に努めることができたことは幸運だったといえるだろう。
「どうだ、もう動けるか? 大丈夫そうだな。いつまでもこうしていてもどうしようもない。再開しよう」
激しい戦闘はどうかわからなかったが、動ける状態まで回復したことが確認できたところで探索を再開した。
しかし装備は痛み、これ以上は回復魔法も使えないとなると探索を継続することは難しい。今回はここまでとして地上へ戻ることにした。
「あ、待ってくれ、部屋の中に宝箱が」
そこでエディが気がついた。まだ部屋の中を見ていなかったのだ。とはいえようやく動ける状態になったところだ。耐久力が低く装備も軽装のフリアが最もダメージが深刻だったのだ、無理はさせられない。
「いや、俺が開けよう。鍵がかかっていたらこれはなしだ。エディ、盾を貸してくれ」
クリストがエディから盾を借り受け、それを宝箱の正面に立てかけると、陰から腕だけを伸ばして蓋に手をかける。鍵がかかっていなければこれで開く。罠があれば盾で防ぐ。それだけの話だ。開かなければその時はもうこの宝箱は諦めるだけのことだ。
鍵はかかっていなかったのか蓋は抵抗なく持ち上げることができ、これで宝箱は開けることができた。だが開いた、と思った瞬間に盾に衝撃があり、ガンッという音が響く。
「罠はあったか‥‥、あー、ダーツか? だいぶ勢いはあった気がしたが、よし、これで問題なしだ。中身は、と。何だ? オーブ? 何か丸いものだな」
取り出したのは手のひらに乗る程の大きさのガラスの球体だった。
「これだけ苦労したんだ。良いものだといいんだが」
苦戦したというわけではないが、想定外の大きな損害を受けてしまっていた。その分を取り戻せるくらいの成果がこの宝箱から見つかってくれたら少しは気も晴れるのだが。
すでに4階への新しい階段を見つけてあり、そして6階を目指すというメッセージを信じるのならばその先は5階へと続くだろう。これで3階の調査は終了ということになる。
現在の状態を回復し、痛んでしまった装備を整え直すまでは調査は中断するしかない。今回はここまでとして引き返すしかないのだ。いくら階段がすぐそこだと言っても、そこに危険がないとは言い切れないのだから。
メッセージのあった部屋から進む通路の警報器は帰りでもやはり響き渡ったが、すでにこの辺りの魔物は倒しきっているため戦闘はない。その先、鍵のかかっていた扉から階段までの間も一度通った後だ。念のため慎重に扉を開けてのぞき見てからの進行ではあったが、魔物が再び出現しているということもなく、無事に2階への階段を上ることができた。
その先はすでに何度も通った道だ。完全に安全というわけではなかったが今の状態であっても脅威に感じるような状況にはならない。
魔物がいたら即座にフェリクスの魔法で片付けるという方針ではいたが、その魔物と出会うこともなく、2階、そして1階と安全に戻ってくることができた。
地上への階段を上る足は安心したからか異様に重く感じ、そして地上の陽の下へと出られたときは安心からかため息が漏れていた。
冒険者になって長い時が過ぎ、初めてダンジョンから戻ってきた時のことなど遠い昔となってしまってはいたが、この陽の下へ戻って来れたという気持ちは強く強く全員の心の中にあった。
通路を戻り、先ほど通り過ぎた分岐点まで戻る。その左側への分かれ道がまだ調べていない場所になっていて、そこへ進む。道はしばらく進んだ先で部屋になっていて、さらにその部屋から先へと続く通路も正面に見通すことができた。どうやら魔物などもいないようだった。
先を行くフリアが通路へと進み、少し行ったところで突然ビーーーーーーーーッという激しい音が辺りに響いた。
フリアが、え、え、と周囲を見渡すが幸いこの周辺の魔物はすでに倒していて、前方、通路の先の方にも何かがいる様子はない。警報音もしばらくして鳴り止み、何事もなくすんだようだった。
「え、もしかしてここ通るだけで鳴るの? 何にもないんだけど、足元も天井も何かあるようには見えないんだけど」
周囲を見渡し足元を触りと探っていたフリアが嘆く。調べてわからない仕掛けなどどうすることもできない。
「そこを通ると鳴るってことか? どういう仕組みなんだ」
「分かんない。ね、ここにいるから通っていってよ。誰か通るたびに鳴るんなら大変だよ」
一人通るたびに鳴るような仕掛けだと、どこかで近くの魔物が気がつくかもしれない。そういう事態を避けるために、すでに鳴らしてしまったフリアが動かず、ほかの全員が通り過ぎてから動くことにした。幸いこれで以降は警報音が鳴ることもなく部屋の中へと移動することができた。
「さて、この部屋は何も‥‥壁に何か書いてあるな」
周囲を見渡していたクリストが気がついた。
左側の壁の中央辺りに文字のようなものが何行かに渡って書き込まれていたのだ。
「これは、何が書いてあるんだ? 誰か読めるか?」
壁に書かれている文章に使われている文字は、ここヴェントヴェール国や周辺国で使われている共通語とは違っていた。
「うーん、古語に見えるけれど、僕には難しいかな」
「確かに古語っぽいわね、待って、読めると思う。えーっと‥‥」
クリスト、エディ、フリアは完全にお手上げだったが、魔法を学んでいるフェリクスとカリーナには多少はなじみのある文字だったようだ。特に幅広く学んでいたカリーナは文字の知識も豊富だ。
「えー、追われる、追われて、いる、ここ、め、めふぃっと?って読めばいいのかしら。めふぃっとに追われてここにいる。開く、あ、違うか否定だわね、開かない、門、扉、あー、扉を開けられない、ね。数字の6、階数、戻る? 6階に戻る。別、道、探す、かな。6階に戻って別の道を探す。たぶんこれで全部よ」
カリーナが単語を読み、文章になるようにつなげていく。その結果は非常に興味深いものだった。
「めふぃっとってのはあの魔物のことかもな。で、それに追われていると。扉を開けられないってのはあの鍵のかかっていた扉だろう。それでここから6階に戻って、別の道を探す、と」
「6階に、戻る、か」
「ここは3階だ。あの扉を開けられたらその先にあるのは2階への階段だよな。6階ってのは何だ? あん? もしかしてあれか、これを書いたのは下から上がってきた誰かってことになるのか? それで6階ってことは俺たちから見て、5階か?」
このダンジョンが見つかったのはつい先日のことだ。そしてダンジョンを本格的に探索しているのは自分たちが最初のはずだ。
しかも使われている文字が古語かそれに近い言葉。共通語と言われる人の間で普及している言葉はここ数百年の間は変わっていないはずで、古語となるとそれ以前の話、亜人や獣人、魔人らとの間で使われていた言葉にまでさかのぼることになる。このダンジョンにはそんな言葉を使って書き残している誰かがいたということだった。
「‥‥面白いわよね。5階へ行けば答えがあるかもしれないわよ。少なくともこれを書いた誰かの痕跡は、下で見つかるかもしれないわ」
「そうだな。1階のゴーストの所の文字は俺でも読めた。ってことはこれを書いたのとは当然別で、まああれはダンジョンが用意したものなんだろう。そうなると、な。俺たちは上から下を目指していて、ダンジョンもそれに合わせて難易度が上がっている。それに対してこれを書いた誰かは下から上を目指していて、そして古語を普通に使っているってことになって。‥‥これは確かに面白いな」
これは果たして時代の差か。はるか昔に下から上を目指した誰かがいて、今の時代に上から下を目指す自分たちがいるのか。その答えは今はない。だがこれから自分たちはまだ下を目指すのだ。その先に答えにつながるものが見つかるかもしれなかった。
フェリクスが壁に書かれていた文字を丁寧に紙に書き写すのを待ってから探索を再開する。もう少し古語に詳しい誰かに正しく訳してもらう必要があるからだ。
部屋の先は通路になっていて、少し先で左右に分かれる丁字路になっている。どちらもまだ先があるようだった。
「まずは右からだな」
通路を右へと進むとその先で再び左右に分かれる丁字路に差し掛かる。そしてその右側は、少し先で下り階段へとつながっていた。
「ここにあったか。左はどうだ?」
先行して左側を調べに行っていたフリアがすでに戻ってきている。特に問題になるようなことはなかったのだろう。
「この先で右にこう、曲がって、その先は部屋になっていたよ。それで水場があった」
「3階の他の階段と作りは同じか。階段は通路に直結で、近くに水場のある部屋。よし、あとは戻ってあの先だな? そこは埋めておくか」
メッセージの残されていた部屋に近い丁字路まで戻り、先ほどとは逆側の通路を調べることにする。少し進むとそこは部屋になっているようだった。
「いるね、複数、たぶん3」
気配を察したフリアが警告する。
「3か、数が多いな」
「今のうちにブレスをかけて、それから部屋の中へスローを入れるわ」
「よし、あとは基本通りだな。部屋の入り口を俺とエディでふさぐ形で当たる。フェリクスも攻撃魔法を頼む。フリアは遠距離だけ狙えるときにな」
方針を決めるとカリーナがブレスの魔法で前衛を強化、そして部屋へと近づくと入り口に陣取って中の魔物に向かい、挑発するように動きながらエディがほえた。
「茶、茶、赤! 3体!」
最初に出会ったのと同じちりのようなものをまとったものが2体、そして初めて見る真っ赤なものが1体だった。
「スロー!」
部屋の中へと弱体化の魔法が飛ぶ。これでしばらくの間は魔物の動きが阻害される。
「アイス・ストーム!」
赤い魔物の色から火は不利と判断したフェリクスが強力な冷気の魔法を放つと、部屋の中央付近に固い氷の粒が大量に降り注いだ。赤い魔物はやはり火系だったのか、氷を次々と受けて動きが止まりふらふらとする。
そしてまだ持ちこたえている茶色い魔物に対しては接近したエディとクリストが剣を振るった。氷の粒によってすでにダメージを受けているところへ剣の攻撃を受けたことで、耐えきれなくなった茶色い魔物が倒されていく。さらに好機と見たフリアが後方から赤い魔物に向かってナイフを投げ込んだ。
スローの魔法で動きを鈍らされている所へ集中して攻撃を受けて魔物が次々に倒されていく。あとは爆発に巻き込まれないように通路へ入って盾で防ぎきれば終わりと思えた。茶色い魔物が爆発を起こし、ちりをまき散らす。すぐにもう1体の茶色い魔物も爆発を起こしてちりをまき散らしたことで、辺りにはもうもうと細かい、魔物と同じ茶色をした粉じんが立ちこめた。
そこへ最後に倒された赤い魔物も爆発を起こし、周囲に赤い岩のような溶けた塊のようなものをまき散らした。それは通路へ下がりきったかというタイミングだったか。経験から爆発そのものは大したことがないと油断していたということもあったかもしれない。しのいだと判断して部屋の中を見ると、その中程でカッと白く光る瞬間が見て取れた。
その直後だった。
ドカンッというこれまでに聞いたこともない激しい爆発音と、そして爆風が部屋から通路へと押し出されるようにあふれていく。
通路にしか行き場のなかった空気の圧力が盾を構えていたエディを襲った。
足元を緩めていたと言うこともできるかもしれない。だが、そんなことなど関係がないほどの勢いだった。爆風はエディを押しやり、一瞬の判断から危険を察して踏ん張ろうとした足元をすくい、そのままの勢いで脇のクリストにも襲いかかると2人をまとめて後方へと吹き飛ばした。
すぐ後ろにいたフェリクスとカリーナ、そしてフリアにも巻き込むようにしてぶつかり、さらに後方へと向かって激しい圧力が吹き飛ばす。そしてその爆風の向こう側、部屋の中央付近からチラリと赤いものが立ち上がるのが見えた。
激しく吹き飛ばされた彼らを続けて炎の渦が襲った。
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このエリア特有の倒すと爆発する魔物3体を一気に倒しきった後の出来事だった。
爆発に次ぐ爆発をしのぎきったと考えていたところに、予期していなかったさらに大きな、今度は本物の爆発が発生したのだ。
爆風と炎が立て続けにクリストたちに襲いかかり、通路の中を吹き飛ばし飲み込んでいった。その爆風と炎の勢いはすさまじかったが、その分だったのか収まるのもまた早かった。炎は通り過ぎるとすぐに消え、その時には爆風も収まっていた。だがそれらに巻き込まれた彼らはすぐに動くことはできなかった。
壁に、天井に、床にと激しくたたきつけられたダメージは大きく、そして一瞬とはいえ炎に熱に飲み込まれたダメージが深刻だったのだ。特に最も前にいたエディは盾で一瞬は防げたとはいえ状態が良くなく、全く動くこともできなくなっているようだった。
「う、ぐ、‥‥」
うめき声を上げたのはクリストか。わずかに体を動かしているのがわかる。その横でずりっというエディが動いた音が聞こえた。少なくとも息はあるはずで、今は何とか動けるような状態なのだろうか。
爆風の前にその2人に突っ込まれる形で後方に押し流された3人は通路のあちらこちらで倒れている。動きはまだ見えない。
「‥‥だ、だいじょう、ぶ、か」
クリストが身を起こそうとしているようだ。そのかすれた声に反応したように後方、通路の先で倒れ伏していたカリーナの手が動いた。
「‥‥ます、ヒー、リン、グ、わー、ド‥‥」
こもったような小さな声とともに魔法が発動すると、全員の体に体力の回復をもたらす光が降り注いだ。
「う、お、ああ、だい、じょうぶ、だ」
とても大丈夫そうには聞こえない声だったが、エディが手を持ち上げるのが見えた。回復魔法の効果はやはり大きい。
クリストも何とか体を起こすことに成功し、仲間の様子を見渡した。
フェリクスはずりずりと体を動かして壁に寄りかかるようにして身を起こし、カリーナはまだ動けずにいるらしいフリアの方へはいずって移動すると、もう一度回復魔法をかけていた。
ようやく頭を起こすところまで回復したのかフリアも動き出し、これで全員の生存は確認できた。
「すまん、もういちど、回復まほうを、たのむ」
腰のポーチを探っていたクリストが言うと、カリーナが待ってというように手を上げて、そのまま寝転がってしまう。まだ回復しきれていないのだ。
本当ならここで回復薬のポーションを使って回復したかったのだが、やはりあの爆発に瓶が耐えられなかったようで、収納の中で粉々になって割れてしまい、中身は流れ出してしまっていた。
「ふぅ、ふぅ、‥‥マス・ヒーリング・ワード」
寝転がって少し落ち着いたのか、再びカリーナが回復魔法を使い、全員の上に光が降り注いだ。これでどうにか動ける程度まで体力の回復ができただろう。
「みんな、大丈夫か。エディ、動けるか?」
「ああ、どうにかな、だが、待ってくれ、休憩しよう」
どうにか体を起こせるところまで来たらしいエディが壁に寄りかかるが、盾を持ち上げることは諦めたようだ。その盾がひしゃげているところに今回の爆発の恐ろしさが詰まっていた。
「ああ、これ以上は無理だ。一端回復しよう。ポーションがあるなら使ってくれ。俺は割れた」
「やっぱりそうなるわよね。体力だけじゃなさそうだから、状態異常の回復もかけるわ。ただしこれで私は魔法はほとんどなくなるからね」
ようやく動けるようになったカリーナが全員に回復魔法をかけていく。体力に加えて恐らく打撲ややけどといった異常もあっただろう、それの回復を行うためだ。
「今のは何だったんだ? あの魔物の爆発とは別のようだったが」
体力が戻ってきたクリストの疑問に答えられるものはいなかった。
茶色い魔物2体が爆発してちりがまき散らかされた。続けて赤い魔物が爆発して赤いものが飛び散った。そこまでは分かるのだが、そこからどうして激しい爆発を起こして、そして炎が吹き上がったのかが分からなかった。
とにかくあの組み合わせであの順番で倒した結果、ああいう現象が起きたと考えておくしかなかった。
ギルドに報告する上で重要になるのはとにかく状況を正確に伝えることだ。そしてその状況を再現しないように注意することだ。
少なくともこれ以上魔物が現れるようなことはなく、通路に腰を下ろして回復に努めることができたことは幸運だったといえるだろう。
「どうだ、もう動けるか? 大丈夫そうだな。いつまでもこうしていてもどうしようもない。再開しよう」
激しい戦闘はどうかわからなかったが、動ける状態まで回復したことが確認できたところで探索を再開した。
しかし装備は痛み、これ以上は回復魔法も使えないとなると探索を継続することは難しい。今回はここまでとして地上へ戻ることにした。
「あ、待ってくれ、部屋の中に宝箱が」
そこでエディが気がついた。まだ部屋の中を見ていなかったのだ。とはいえようやく動ける状態になったところだ。耐久力が低く装備も軽装のフリアが最もダメージが深刻だったのだ、無理はさせられない。
「いや、俺が開けよう。鍵がかかっていたらこれはなしだ。エディ、盾を貸してくれ」
クリストがエディから盾を借り受け、それを宝箱の正面に立てかけると、陰から腕だけを伸ばして蓋に手をかける。鍵がかかっていなければこれで開く。罠があれば盾で防ぐ。それだけの話だ。開かなければその時はもうこの宝箱は諦めるだけのことだ。
鍵はかかっていなかったのか蓋は抵抗なく持ち上げることができ、これで宝箱は開けることができた。だが開いた、と思った瞬間に盾に衝撃があり、ガンッという音が響く。
「罠はあったか‥‥、あー、ダーツか? だいぶ勢いはあった気がしたが、よし、これで問題なしだ。中身は、と。何だ? オーブ? 何か丸いものだな」
取り出したのは手のひらに乗る程の大きさのガラスの球体だった。
「これだけ苦労したんだ。良いものだといいんだが」
苦戦したというわけではないが、想定外の大きな損害を受けてしまっていた。その分を取り戻せるくらいの成果がこの宝箱から見つかってくれたら少しは気も晴れるのだが。
すでに4階への新しい階段を見つけてあり、そして6階を目指すというメッセージを信じるのならばその先は5階へと続くだろう。これで3階の調査は終了ということになる。
現在の状態を回復し、痛んでしまった装備を整え直すまでは調査は中断するしかない。今回はここまでとして引き返すしかないのだ。いくら階段がすぐそこだと言っても、そこに危険がないとは言い切れないのだから。
メッセージのあった部屋から進む通路の警報器は帰りでもやはり響き渡ったが、すでにこの辺りの魔物は倒しきっているため戦闘はない。その先、鍵のかかっていた扉から階段までの間も一度通った後だ。念のため慎重に扉を開けてのぞき見てからの進行ではあったが、魔物が再び出現しているということもなく、無事に2階への階段を上ることができた。
その先はすでに何度も通った道だ。完全に安全というわけではなかったが今の状態であっても脅威に感じるような状況にはならない。
魔物がいたら即座にフェリクスの魔法で片付けるという方針ではいたが、その魔物と出会うこともなく、2階、そして1階と安全に戻ってくることができた。
地上への階段を上る足は安心したからか異様に重く感じ、そして地上の陽の下へと出られたときは安心からかため息が漏れていた。
冒険者になって長い時が過ぎ、初めてダンジョンから戻ってきた時のことなど遠い昔となってしまってはいたが、この陽の下へ戻って来れたという気持ちは強く強く全員の心の中にあった。
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