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028:地下5階4
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「よし、倒せたな。皆大丈夫か?」
倒れたホブゴブリンもゴブリンも動かないと判断し、戦闘終了を宣言する。多少の攻撃を受ける場面もあったものの大きなダメージはなさそうだった。
「はあ、攻撃に追加効果があるように魔法を仕込んでいたのね。あれは考えていなかったわ」
あれはこちらがブレスなどをそうしたように、戦闘開始前に自分に対して使っていた魔法の効果なのだろう。さすがにこの段階まで来ればゴブリンといえど考えてくるし、その行動が冒険者を上回ることもあるということだ。
「ブレスとスローが効いている間にどれだけ削れるかが勝負だったが、これも俺とフェリクスの攻撃力がゴブリンを圧倒できるという判断あってのことだ。そうでなければウォール系で魔物の動きを制限して各個撃破を狙うか。それもメイジに吹き払われるようなら逆にピンチになるか? スリープでアーチャーを眠らせてメイジ速攻がいいか? まあここまでたどり着くようなパーティーならそう下手な手は打たないとは思うが、なかなか考えさせてくれる」
区切りの良い5階、10階には強力な魔物がいるかもしれないという話はギルドからも聞かされていた。ボス、という言い方をしていたか、先ほどのホブゴブリンなどまさにそれだろう。
一部の特殊な魔物を除けばおおむね順調に難易度は上昇してきた。それで5階という区切りでボス戦だ。パーティーの実力が問われる場面だったと言えるだろう。自分たちはその場面をエディの防御力とカリーナの魔法を頼りに強引に削りきることで勝利をつかんだのだ。
ホブゴブリンを含む5体の魔物との戦闘を終わらせ、一息ついたところで探索を再開することになるのだが。
「魔法の残りはどうだ?」
「もう厳しいかな。多少は大丈夫だよ? でも心許ないね」
「そうね、今まさにヒーリングをかけたいけれど、ちょっと残りが怖いから控えているのよね」
この戦闘で多少のダメージを受けているし、魔法もかなり消費してしまっていた。確かにまだ少しは残せているが、探索を続けるとなると心許ないということになる。
「よし、ここを片付けたら階段室で休憩にしよう。魔法が回復するまできっちりな。それから鍵を使った先だ」
まだ昇降機を見つけていないのだ。そしてこの部屋にはどうやら専用の鍵が必要な扉のための板鍵がある。
エディとクリスト、フェリクスが魔物の後始末に、カリーナとフリアは部屋の奥にある鍵と宝箱、そして扉の確認に動く。
「4階にあった板鍵と一緒だね。溝が彫ってある。それで、そこの扉が、うん、この扉は3階のあの扉と同じかな。スロットがあって、この板鍵が使えるっぽいね。使えるかな?」
「開けていいぞ、だが気をつけろよ」
「うん。気をつける。気配はないね、よし、板鍵セット。おー、今度は溝がオレンジになったよ」
「場所で色を変えているのかしら。良くできているわね」
「開いたね、開けてみる」
どうやら板鍵で扉は開いたらしく、キッというノブをつかんでそっと扉を押し開ける音が響く。
フリアとカリーナが重なるようにして扉を開けた隙間から先をのぞき見る。
「通路に照明がある。明るい。それで、見つけた。たぶん見つけたと思う」
「何をだ?」
「昇降機」
どうやらここにあったらしい。探していた昇降機にたどり着くにはボスを倒して鍵を手に入れる必要があったようだ。
気になっていたそれの発見の報告に、どれどれといった様子で魔物の後始末も途中で止めてクリストたちも通路の先を見に来る。
「ほら、向こう。まだだいぶ先だけど、あれ、そうじゃない?」
「ああ、1階で見たやつな気がするな。当たりでいいだろう。だが途中で右に分かれ道があるのは何だ? 昇降機以外にまだあるのか?」
「気になるね。階段室の扉につながるにしてもまだ少し距離があるよ」
「これは、確かに気になるな。だが途中で魔物と出くわしましたは今は危険だ。今回はこの扉の先が当たりだったってことまででいい。後始末をしたら階段室に戻って休憩だ」
3階も扉の先は脅威度が一段階上がっていた。ここもまたそうである可能性はあった。
現状魔法の残りが心許ないので、ひとまず安全な場所での休憩が必要だろう。
方針を決めると魔物の後始末に戻る。魔石の回収と、装備品、特にホブゴブリンの使っていたグレートソードやメイジの使っていたスタッフなどの回収。それから宝箱だ。
「ここは何かな-。鍵なし、罠なし、開けるよ。おー、ポーション。でも瓶が違うような?」
取り出した瓶はここで今までに出たポーションとは確かに瓶が違っていた。丸瓶に首が長く、ガラスの球体になっている栓がはまっている。そして色は赤だったが中でポコポコと泡が発生していた。
「色は普通の回復薬だが、泡なんてなかったような気がするな。瓶も違う、鑑定待ちでいいだろう」
ひととおりの回収が済んだところで一度部屋から出て通路を戻り階段室へ。このルートは今のところ一度も魔物と出会っていない。
階段室に戻ると扉の前に荷物を置き直し、そこからそれぞれに必要なものを取り出して床に並べる。ここからは魔法が回復するまで長時間の休憩になるのだ。
ちなみに部屋の奥にある扉はボス部屋で見つけた板鍵で開くことができた。ということはこの扉とボス部屋の奥の扉とは恐らくこの先でつながっているのだろうと想像させた。開けた先が通路になっていることを確認したら鍵を抜き、これでもうこの扉が開くことはないという状況を作る。もう1つの扉の前には荷物を積んだので向こう側に何かが来たとしてもそう簡単には開かない。そして魔物が階段を使う例は今のところなかったことから、この部屋は安全だと考えられた。
「よし、こんなもんだろう。階段に向かってこっちの壁際を休憩に使おう。で、階段の向こう側の隅、水場の反対側だな。あそこを囲ってトイレだな。スライムは、そういえばスライムを見つけていないな、その辺にいないか?」
「あー、部屋の中にはいないね。通路にはいたかな。ちょっと見てくるよ」
掃除スライムが必要な場面はやはり休憩の時なのだが、危険も値打ちもない魔物なために普段はまったく意識していなかった。
フリアが気配のないことを確認してから荷物をどかし、通路に出たフェリクスがすぐに戻ってくる。
「探すとすぐに見つかるのがここのスライムのいいところだね。せっかくだから3つ捕まえてきたよ」
素手で抱えていてもダメージを受けることなどもない安全な魔物というところもいい。これで掃除に活躍してくれるというのだから言うことはなかった。
トイレのところに1つ、水場の近くにも2体を放り出しておく。あとは必要な時に使うだけだ。
簡易トイレを組み立て革袋を取り付ける。それを階段の向こう側の隅に置き、手前に布を張って目隠しにする。これでトイレスペースは完成だ。
寝床に関してはカリーナとフリアは折り畳み簡易ベッドに空気で膨らませるマットというものを持ち込んでいた。
男性陣はいつも通りの布袋にわらを詰めたマットを丸めてきていた。
広げられた簡易ベッドを見たエディの感想が狭くて無理というものだったが、実際に幅も長さも足りず、強度からも不安定に感じて使えなかったのだ。
女性陣には十分なサイズだったようでマットに空気を吹き込んでいる。まだ不慣れなようで手間取ってはいるが、それは回数で解決できることだろう。
ベッドにマットを載せてそこに腰を降ろしたフリアはさらに折り畳みのテーブルも取り出して置く。
その上に植物油を使うという調理台のようなもの、パン、鶏肉のくん製、タマネギなどを並べていく。
「作るのか?」
「うん、せっかくだから。だって保存食だけってつまらないじゃない」
「そんなもんかね‥‥」
「保存食ってあれでしょ、ジャーキー、乾パン、ドライフルーツ」
「そうだぞ、十分だろう?」
「小休憩でつまむものならそれでいいでしょうけれどね、これからゆっくりしようって時にそれだけなのはね、やっぱり」
「うん。今回はちゃんとしたパンも持ってきた。パンを焼いて、スープを作る」
「マジか、そこまでするのか?」
「練習してきた。やる」
女性陣はやはり食事にうるさくなるらしく、カリーナも参加してパンを食べやすい厚さに切っていく。
フリアは水場から鍋に水をくんできてそれをコンロに載せる。コンロの火は小型の着火具だというものを使っていた。
カチッカチッと小さな音を何度かさせるとすぐにコンロの芯に火が付き炎を上げる。
まもなく鍋の湯が沸き始め、そこへくし形に切ったタマネギと薄く削いだ鶏肉を投げ込み、さらにスープの素だという四角いものを入れて煮始める。スープはこれで完成だというのだから驚きだ。
パンはそのまま食べても良いし、スープの後に焼いても良い。
食用になる魔物の種類が分かってきたらダンジョン内で狩ってきて焼いても良いだろう。野菜や調味料は持ち込むしかないが、場所を考えなければ十分な食事情になると言えるだろう。
「ダンジョンですることじゃない気がするんだがな」
「でも水場があるんだし飲める水だって鑑定でも出ているんだからありなんじゃない?」
ランタンを使っているのだから火気厳禁というわけでもない。調理をしてはいけないという理由はないのだ。
スープの香り、焼けるパンの香りが食欲を誘う。
その香りに負けた男性陣も湯を沸かし、ジャーキーを火であぶってパンに乗せる。繰り返しになるが食が充実するのは悪いことではない。悪いことではないのだ。
食事が終わり、トイレも済ませたらあとは寝るだけだ。
男性陣は寝具の上で、女性陣はベッドとマットの上で横になる。とにかく魔法の回復には時間がかかるので、睡眠で体力と魔法を回復させることが最も効率が良いのだ。
とにかく回復することだ。何しろ明日には昇降機を調べ、そして地下6階へ行くという目標があるのだから。
簡易ベッドとマットの組み合わせは慣れるのに多少時間は必要なようだったが、床の硬さを感じない、小さく畳めるという点は高評価だった。
目覚めたところで水場で顔を洗い、さらに湯を沸かしておく。湯冷ましで水分を補給するのだ。朝食、恐らく朝食という時間だっただろう、それはパンの残りで済ませる。朝から腹一杯にするのはあまり良いことではない。体調不良はダンジョン探索の大敵なのだ。
荷物を全て片付け、まとめ終えたらそれを背負う。ここからは一度昇降機へ向かい、そこに荷物を置いての探索という計画だった。
扉を開け、通路へ出る。そのまま右へと進んでいき、ボス部屋を目指す。ボスが復活しているということもなく、部屋の奥の専用の鍵が必要な扉を板鍵で開け、その先、壁に取り付けられた照明によって明るくなっている通路を進んでいく。
通路を少し進むと右への分かれ道、そして正面へそのまま進むと部屋につながり、その部屋の奥には昨日確認していたもの、1階で見た覚えのある昇降機があった。
「1階で見たやつだな。そして籠もここにある。で、どうやれば動くんだ?」
昇降機の形自体は1階と同じようだった。となると縦坑に、籠、そして右側にレバーのようなものがあったはず。
見に行くとそこにはレバーのようなものが刺さった装置があった。ただしレバーの位置が違っている。
「形は同じか。あとは使い方なんだが」
「おおい、こっちに何かあるぞ」
周囲をぐるぐると回っていたエディが何かに気がついたようだ。
場所は昇降機のちょうど裏側か。そちらに回ると昇降機の枠に操作盤のようなものが取り付けられていた。
その操作盤は左側に上下に切り替えるようなスイッチがあり、上にオン、下にオフと書いてある。そのスイッチはオフの位置を指していた。さらに右側には溝の掘られた細長い板状の棒のようなものがフックに掛けられている。
「これをオンにすればいいのか? いいんだよな? よし、入れてみるぞ」
見ているだけでは何も変わらない。意を決したクリストがスイッチをオンに切り替えると、どこか足元深く、縦坑のもっとずっと下の方からガチン、ギリギリギリとかすかに音が聞こえ始めた。
「これで使えるようになったのか?」
「下の音が作動音のように聞こえるな。あとは使い方か?」
「今までのパターンだとこの板が鍵になりそうなんだが、持って行ってみよう」
細長い板状の棒をフックから取り外す。次はこれを使う場所だ。
部屋の中を見回しながら昇降機の正面へ戻ってくるが、部屋の中に仕組みがあるというわけではなさそうだった。
そうなると残りは昇降機の中、籠の中か。
「これは扉になるのかな、取っ手があるし、どうだろう、ああ、開くね。これで開けて、籠に乗り込んで、中から閉める。ここまではいいね」
クリストとフェリクスが籠に乗り込んで周りを見渡す。
「ん? これじゃないか?」
右奥側の柱部分にそれらしき物を見つけたようで、そこへ棒を差し込んでみる。
ピー、という軽い音が響いた。
すると棒を差し込んだ場所の上、同じくらいの幅で金属の板のようなものがあると見ていた場所が左右にスライドして開き、中から1、5、10と書かれた丸いボタンが姿を見せた。そのボタンは1と5は点灯しているが、10は暗い。
「こういう仕組みか‥‥そして10階はまだダメらしいな」
「10階まで行って同じように何かしないといけないんだろうね」
もう一度棒を抜くとまたピーと音がしてスライドが閉じる。どうやらこの棒が使うための鍵ということだ良いようだった。
「さて、これで帰りは楽になったようだ。ひとまず通路を埋めてしまおう」
昇降機を見つけ、使い方も理解した。これでひとまずの目的は達成されたといっていいだろう。
あとは気になっている部分を見て、できれば6階も少し調査しておきたかった。
昇降機を背に部屋を出て通路へ戻り、分かれ道を左へと曲がる。通路はしばらく続いてから丁字路に差し掛かった。
右へ曲がりしばらく歩き続けると、その先は専用の鍵が必要な扉に行き着く。先ほど手に入れた板鍵をスロットにはめると何の問題もなく開けることができた。そして扉を開けた先は階段室になっていた。
「やはりここにつながるか。地図も合っているな。そうなると残りはこの先なんだが、怪しくも思えるが何があるかな」
すでに階段室と昇降機が見つかっている。専用の鍵が必要なエリアでまだ未発見のものとなると何があるか。興味が引かれた。
再び通路を引き返し、今度は正面の残る通路へと進む。
その通路はしばらく進んだ先で下り階段へとたどり着いた。
「は、また階段か? 3階と同じパターンなのか?」
「さっきの部屋の階段は4階から下りてきてそう時間をかけずにたどり着けるよね。それにボスと戦う必要もない。こっちの階段は必ずボスと戦って鍵を手に入れておかないといけない。どちらかというと、こっちの階段が正解のような気がするよね」
フェリクスが言うように、階段室の階段を使うのならボスと戦う必要がない。4階から階段室までならば今のところ一度も魔物と出会っていないということもあって、移動が容易のように感じられる。
そうなるとやはりボスを倒さなければならないこちらの階段の方がより良いルートのように思えた。
「よし、とにかくこれで地図は埋まったな。さーて、次はどちらを見るか。やはり通常のルートのように見える向こうからか」
隠された階段の方が正しいルートだったとしても難易度次第では階段室からのルートの方が良いかもしれないし、そういったことは結局のところ実際に行ってみなければ分からないのだ。
昇降機を使って1階に戻って一度ギルドに戻るという選択肢もあったが、今は階段が気になっていた。また来られるではない。今見ておきたかった。
倒れたホブゴブリンもゴブリンも動かないと判断し、戦闘終了を宣言する。多少の攻撃を受ける場面もあったものの大きなダメージはなさそうだった。
「はあ、攻撃に追加効果があるように魔法を仕込んでいたのね。あれは考えていなかったわ」
あれはこちらがブレスなどをそうしたように、戦闘開始前に自分に対して使っていた魔法の効果なのだろう。さすがにこの段階まで来ればゴブリンといえど考えてくるし、その行動が冒険者を上回ることもあるということだ。
「ブレスとスローが効いている間にどれだけ削れるかが勝負だったが、これも俺とフェリクスの攻撃力がゴブリンを圧倒できるという判断あってのことだ。そうでなければウォール系で魔物の動きを制限して各個撃破を狙うか。それもメイジに吹き払われるようなら逆にピンチになるか? スリープでアーチャーを眠らせてメイジ速攻がいいか? まあここまでたどり着くようなパーティーならそう下手な手は打たないとは思うが、なかなか考えさせてくれる」
区切りの良い5階、10階には強力な魔物がいるかもしれないという話はギルドからも聞かされていた。ボス、という言い方をしていたか、先ほどのホブゴブリンなどまさにそれだろう。
一部の特殊な魔物を除けばおおむね順調に難易度は上昇してきた。それで5階という区切りでボス戦だ。パーティーの実力が問われる場面だったと言えるだろう。自分たちはその場面をエディの防御力とカリーナの魔法を頼りに強引に削りきることで勝利をつかんだのだ。
ホブゴブリンを含む5体の魔物との戦闘を終わらせ、一息ついたところで探索を再開することになるのだが。
「魔法の残りはどうだ?」
「もう厳しいかな。多少は大丈夫だよ? でも心許ないね」
「そうね、今まさにヒーリングをかけたいけれど、ちょっと残りが怖いから控えているのよね」
この戦闘で多少のダメージを受けているし、魔法もかなり消費してしまっていた。確かにまだ少しは残せているが、探索を続けるとなると心許ないということになる。
「よし、ここを片付けたら階段室で休憩にしよう。魔法が回復するまできっちりな。それから鍵を使った先だ」
まだ昇降機を見つけていないのだ。そしてこの部屋にはどうやら専用の鍵が必要な扉のための板鍵がある。
エディとクリスト、フェリクスが魔物の後始末に、カリーナとフリアは部屋の奥にある鍵と宝箱、そして扉の確認に動く。
「4階にあった板鍵と一緒だね。溝が彫ってある。それで、そこの扉が、うん、この扉は3階のあの扉と同じかな。スロットがあって、この板鍵が使えるっぽいね。使えるかな?」
「開けていいぞ、だが気をつけろよ」
「うん。気をつける。気配はないね、よし、板鍵セット。おー、今度は溝がオレンジになったよ」
「場所で色を変えているのかしら。良くできているわね」
「開いたね、開けてみる」
どうやら板鍵で扉は開いたらしく、キッというノブをつかんでそっと扉を押し開ける音が響く。
フリアとカリーナが重なるようにして扉を開けた隙間から先をのぞき見る。
「通路に照明がある。明るい。それで、見つけた。たぶん見つけたと思う」
「何をだ?」
「昇降機」
どうやらここにあったらしい。探していた昇降機にたどり着くにはボスを倒して鍵を手に入れる必要があったようだ。
気になっていたそれの発見の報告に、どれどれといった様子で魔物の後始末も途中で止めてクリストたちも通路の先を見に来る。
「ほら、向こう。まだだいぶ先だけど、あれ、そうじゃない?」
「ああ、1階で見たやつな気がするな。当たりでいいだろう。だが途中で右に分かれ道があるのは何だ? 昇降機以外にまだあるのか?」
「気になるね。階段室の扉につながるにしてもまだ少し距離があるよ」
「これは、確かに気になるな。だが途中で魔物と出くわしましたは今は危険だ。今回はこの扉の先が当たりだったってことまででいい。後始末をしたら階段室に戻って休憩だ」
3階も扉の先は脅威度が一段階上がっていた。ここもまたそうである可能性はあった。
現状魔法の残りが心許ないので、ひとまず安全な場所での休憩が必要だろう。
方針を決めると魔物の後始末に戻る。魔石の回収と、装備品、特にホブゴブリンの使っていたグレートソードやメイジの使っていたスタッフなどの回収。それから宝箱だ。
「ここは何かな-。鍵なし、罠なし、開けるよ。おー、ポーション。でも瓶が違うような?」
取り出した瓶はここで今までに出たポーションとは確かに瓶が違っていた。丸瓶に首が長く、ガラスの球体になっている栓がはまっている。そして色は赤だったが中でポコポコと泡が発生していた。
「色は普通の回復薬だが、泡なんてなかったような気がするな。瓶も違う、鑑定待ちでいいだろう」
ひととおりの回収が済んだところで一度部屋から出て通路を戻り階段室へ。このルートは今のところ一度も魔物と出会っていない。
階段室に戻ると扉の前に荷物を置き直し、そこからそれぞれに必要なものを取り出して床に並べる。ここからは魔法が回復するまで長時間の休憩になるのだ。
ちなみに部屋の奥にある扉はボス部屋で見つけた板鍵で開くことができた。ということはこの扉とボス部屋の奥の扉とは恐らくこの先でつながっているのだろうと想像させた。開けた先が通路になっていることを確認したら鍵を抜き、これでもうこの扉が開くことはないという状況を作る。もう1つの扉の前には荷物を積んだので向こう側に何かが来たとしてもそう簡単には開かない。そして魔物が階段を使う例は今のところなかったことから、この部屋は安全だと考えられた。
「よし、こんなもんだろう。階段に向かってこっちの壁際を休憩に使おう。で、階段の向こう側の隅、水場の反対側だな。あそこを囲ってトイレだな。スライムは、そういえばスライムを見つけていないな、その辺にいないか?」
「あー、部屋の中にはいないね。通路にはいたかな。ちょっと見てくるよ」
掃除スライムが必要な場面はやはり休憩の時なのだが、危険も値打ちもない魔物なために普段はまったく意識していなかった。
フリアが気配のないことを確認してから荷物をどかし、通路に出たフェリクスがすぐに戻ってくる。
「探すとすぐに見つかるのがここのスライムのいいところだね。せっかくだから3つ捕まえてきたよ」
素手で抱えていてもダメージを受けることなどもない安全な魔物というところもいい。これで掃除に活躍してくれるというのだから言うことはなかった。
トイレのところに1つ、水場の近くにも2体を放り出しておく。あとは必要な時に使うだけだ。
簡易トイレを組み立て革袋を取り付ける。それを階段の向こう側の隅に置き、手前に布を張って目隠しにする。これでトイレスペースは完成だ。
寝床に関してはカリーナとフリアは折り畳み簡易ベッドに空気で膨らませるマットというものを持ち込んでいた。
男性陣はいつも通りの布袋にわらを詰めたマットを丸めてきていた。
広げられた簡易ベッドを見たエディの感想が狭くて無理というものだったが、実際に幅も長さも足りず、強度からも不安定に感じて使えなかったのだ。
女性陣には十分なサイズだったようでマットに空気を吹き込んでいる。まだ不慣れなようで手間取ってはいるが、それは回数で解決できることだろう。
ベッドにマットを載せてそこに腰を降ろしたフリアはさらに折り畳みのテーブルも取り出して置く。
その上に植物油を使うという調理台のようなもの、パン、鶏肉のくん製、タマネギなどを並べていく。
「作るのか?」
「うん、せっかくだから。だって保存食だけってつまらないじゃない」
「そんなもんかね‥‥」
「保存食ってあれでしょ、ジャーキー、乾パン、ドライフルーツ」
「そうだぞ、十分だろう?」
「小休憩でつまむものならそれでいいでしょうけれどね、これからゆっくりしようって時にそれだけなのはね、やっぱり」
「うん。今回はちゃんとしたパンも持ってきた。パンを焼いて、スープを作る」
「マジか、そこまでするのか?」
「練習してきた。やる」
女性陣はやはり食事にうるさくなるらしく、カリーナも参加してパンを食べやすい厚さに切っていく。
フリアは水場から鍋に水をくんできてそれをコンロに載せる。コンロの火は小型の着火具だというものを使っていた。
カチッカチッと小さな音を何度かさせるとすぐにコンロの芯に火が付き炎を上げる。
まもなく鍋の湯が沸き始め、そこへくし形に切ったタマネギと薄く削いだ鶏肉を投げ込み、さらにスープの素だという四角いものを入れて煮始める。スープはこれで完成だというのだから驚きだ。
パンはそのまま食べても良いし、スープの後に焼いても良い。
食用になる魔物の種類が分かってきたらダンジョン内で狩ってきて焼いても良いだろう。野菜や調味料は持ち込むしかないが、場所を考えなければ十分な食事情になると言えるだろう。
「ダンジョンですることじゃない気がするんだがな」
「でも水場があるんだし飲める水だって鑑定でも出ているんだからありなんじゃない?」
ランタンを使っているのだから火気厳禁というわけでもない。調理をしてはいけないという理由はないのだ。
スープの香り、焼けるパンの香りが食欲を誘う。
その香りに負けた男性陣も湯を沸かし、ジャーキーを火であぶってパンに乗せる。繰り返しになるが食が充実するのは悪いことではない。悪いことではないのだ。
食事が終わり、トイレも済ませたらあとは寝るだけだ。
男性陣は寝具の上で、女性陣はベッドとマットの上で横になる。とにかく魔法の回復には時間がかかるので、睡眠で体力と魔法を回復させることが最も効率が良いのだ。
とにかく回復することだ。何しろ明日には昇降機を調べ、そして地下6階へ行くという目標があるのだから。
簡易ベッドとマットの組み合わせは慣れるのに多少時間は必要なようだったが、床の硬さを感じない、小さく畳めるという点は高評価だった。
目覚めたところで水場で顔を洗い、さらに湯を沸かしておく。湯冷ましで水分を補給するのだ。朝食、恐らく朝食という時間だっただろう、それはパンの残りで済ませる。朝から腹一杯にするのはあまり良いことではない。体調不良はダンジョン探索の大敵なのだ。
荷物を全て片付け、まとめ終えたらそれを背負う。ここからは一度昇降機へ向かい、そこに荷物を置いての探索という計画だった。
扉を開け、通路へ出る。そのまま右へと進んでいき、ボス部屋を目指す。ボスが復活しているということもなく、部屋の奥の専用の鍵が必要な扉を板鍵で開け、その先、壁に取り付けられた照明によって明るくなっている通路を進んでいく。
通路を少し進むと右への分かれ道、そして正面へそのまま進むと部屋につながり、その部屋の奥には昨日確認していたもの、1階で見た覚えのある昇降機があった。
「1階で見たやつだな。そして籠もここにある。で、どうやれば動くんだ?」
昇降機の形自体は1階と同じようだった。となると縦坑に、籠、そして右側にレバーのようなものがあったはず。
見に行くとそこにはレバーのようなものが刺さった装置があった。ただしレバーの位置が違っている。
「形は同じか。あとは使い方なんだが」
「おおい、こっちに何かあるぞ」
周囲をぐるぐると回っていたエディが何かに気がついたようだ。
場所は昇降機のちょうど裏側か。そちらに回ると昇降機の枠に操作盤のようなものが取り付けられていた。
その操作盤は左側に上下に切り替えるようなスイッチがあり、上にオン、下にオフと書いてある。そのスイッチはオフの位置を指していた。さらに右側には溝の掘られた細長い板状の棒のようなものがフックに掛けられている。
「これをオンにすればいいのか? いいんだよな? よし、入れてみるぞ」
見ているだけでは何も変わらない。意を決したクリストがスイッチをオンに切り替えると、どこか足元深く、縦坑のもっとずっと下の方からガチン、ギリギリギリとかすかに音が聞こえ始めた。
「これで使えるようになったのか?」
「下の音が作動音のように聞こえるな。あとは使い方か?」
「今までのパターンだとこの板が鍵になりそうなんだが、持って行ってみよう」
細長い板状の棒をフックから取り外す。次はこれを使う場所だ。
部屋の中を見回しながら昇降機の正面へ戻ってくるが、部屋の中に仕組みがあるというわけではなさそうだった。
そうなると残りは昇降機の中、籠の中か。
「これは扉になるのかな、取っ手があるし、どうだろう、ああ、開くね。これで開けて、籠に乗り込んで、中から閉める。ここまではいいね」
クリストとフェリクスが籠に乗り込んで周りを見渡す。
「ん? これじゃないか?」
右奥側の柱部分にそれらしき物を見つけたようで、そこへ棒を差し込んでみる。
ピー、という軽い音が響いた。
すると棒を差し込んだ場所の上、同じくらいの幅で金属の板のようなものがあると見ていた場所が左右にスライドして開き、中から1、5、10と書かれた丸いボタンが姿を見せた。そのボタンは1と5は点灯しているが、10は暗い。
「こういう仕組みか‥‥そして10階はまだダメらしいな」
「10階まで行って同じように何かしないといけないんだろうね」
もう一度棒を抜くとまたピーと音がしてスライドが閉じる。どうやらこの棒が使うための鍵ということだ良いようだった。
「さて、これで帰りは楽になったようだ。ひとまず通路を埋めてしまおう」
昇降機を見つけ、使い方も理解した。これでひとまずの目的は達成されたといっていいだろう。
あとは気になっている部分を見て、できれば6階も少し調査しておきたかった。
昇降機を背に部屋を出て通路へ戻り、分かれ道を左へと曲がる。通路はしばらく続いてから丁字路に差し掛かった。
右へ曲がりしばらく歩き続けると、その先は専用の鍵が必要な扉に行き着く。先ほど手に入れた板鍵をスロットにはめると何の問題もなく開けることができた。そして扉を開けた先は階段室になっていた。
「やはりここにつながるか。地図も合っているな。そうなると残りはこの先なんだが、怪しくも思えるが何があるかな」
すでに階段室と昇降機が見つかっている。専用の鍵が必要なエリアでまだ未発見のものとなると何があるか。興味が引かれた。
再び通路を引き返し、今度は正面の残る通路へと進む。
その通路はしばらく進んだ先で下り階段へとたどり着いた。
「は、また階段か? 3階と同じパターンなのか?」
「さっきの部屋の階段は4階から下りてきてそう時間をかけずにたどり着けるよね。それにボスと戦う必要もない。こっちの階段は必ずボスと戦って鍵を手に入れておかないといけない。どちらかというと、こっちの階段が正解のような気がするよね」
フェリクスが言うように、階段室の階段を使うのならボスと戦う必要がない。4階から階段室までならば今のところ一度も魔物と出会っていないということもあって、移動が容易のように感じられる。
そうなるとやはりボスを倒さなければならないこちらの階段の方がより良いルートのように思えた。
「よし、とにかくこれで地図は埋まったな。さーて、次はどちらを見るか。やはり通常のルートのように見える向こうからか」
隠された階段の方が正しいルートだったとしても難易度次第では階段室からのルートの方が良いかもしれないし、そういったことは結局のところ実際に行ってみなければ分からないのだ。
昇降機を使って1階に戻って一度ギルドに戻るという選択肢もあったが、今は階段が気になっていた。また来られるではない。今見ておきたかった。
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弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。
偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!
バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話
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ここは、地球とはまた別の世界――
田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。
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仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン>
「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。
最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。
しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。
ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと――
――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。
しかもその姿は、
血まみれ。
右手には討伐したモンスターの首。
左手にはモンスターのドロップアイテム。
そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。
「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」
ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。
タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。
――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――
オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】
山親爺大将
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剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。
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たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。
そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。
『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』
である。
50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。
ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。
俺もそちら側の人間だった。
年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。
「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」
これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。
注意事項
50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。
あらかじめご了承の上読み進めてください。
注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。
注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。
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