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040:地下7階3
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地下6階の拠点としている物置に戻り休憩を取る。
茶を入れ、食事を用意し、睡眠を取るのだ。
そういえば茶葉として紅茶以外に緑茶とハーブも仕入れておいたのだ。ハーブはステラが持っていた物と同じだということだが、ギルドの鑑定で精神を安定させる効果があると判明している。もっとも紅茶も緑茶も似たような効能はあるのだが、今日ははっきりと精神安定の効果があるハーブティーを選択した。
今回の探索で入手した魔石や宝箱の中身などはネックレス以外はまとめておく。いずれギルドの職員が来て回収していくだろう。
ネックレスに鑑定のスクロールを使ったところ、プレイヤービーズ・ネックレスという名称で、キュア・ウーンズが2つ、レッサー・レストレーション、グレーター・レストレーション、ブレスが1つずつ封じられていた。非常に有効な魔道具だったため、今後の非常用の装備品として持っていくことに決めた。
ゆっくり、しっかりと休憩を取り回復したところで探索を再開する。今回も引き続き7階、ただしあの気味の悪いエリアはなしだ。階段を下りたら前回とは異なる左へと進む。しばらく進むと丁字路に差し掛かる。
「左は通路、右も通路だけどその先が部屋になっていて何かいる。たぶんオーク。たぶん3かな?」
「やはり増えたな。だがまあオークだ、さっさとやるか」
無視して左に行くこともできるが、今後は魔物も部屋から出て後を追ってくるということも考えられた。近いのならば片付けておいた方が安心だ。
部屋の中がうかがえる距離まで近づく。相手も気がついたようでそれぞれ手に武器を持ってこちらを見ていた。
「スリープ!」
カリーナの魔法が放たれる。
手前左側の1体が眠りについたのかその場に崩れ落ちるが、右側と奥にいた2体は特に影響を受けなかったようでそのままだ。
「マジック・ミサイル!」
フェリクスの魔法の矢が手前に1本、奥に2本と飛び、命中する。
そこへ武器を構えたエディとクリストが迫る。手前右のオークは斧を振り上げたが、そこへエディの盾が差し込まれ振り下ろすことができない。空いた腹にはエディが正面へ突き出すように構えていた斧が深く刺さった。
奥のオークが持っていた武器は槍で、そのまま真っすぐに突き出されたが、それはクリストが剣で横へと受け流し、そのまま距離を詰めた。接近してしまえば槍よりも剣の方がはるかに速い。左右に切り裂くように剣を振るうと、最初のマジック・ミサイルの分と合わせてダメージが許容量を超えたのか、そのまま後ろにズンッと音を立てて倒れていった。眠っているオークには起きる気配はなく、そうなれば後は急所を一突きして終了だ。
「よし、こんなもんだな。安心のオークだ、3体でも変わらん。で、この部屋はこれで終わりだな? よし、先に進もう」
部屋を出て真っすぐに通路を進んでいく。左に行けば階段という分かれ道を過ぎ、またしばらく進むと左側に通路が現れた。その通路の先は扉に行き着くようで、今回はそのまま真っすぐ進むことにする。
「ん? 何かいる」
通路の先に魔物か。
「あ、臭いやつ」
「マジか、やりたくないと言いたいところだが、仕方がないよな」
「いつまでも避けていられないし、最悪最後は強風で吹き飛ばすことにするよ」
6階で一度遭遇し、倒した後の悪臭に耐えられずに通り抜けることを諦めた魔物だった。
「あ、奥にもいる。最低2」
「わかった。弱いやつだ。できるだけ切らないようにしてみるか」
もしかしたら内蔵が臭いのかもしれない。切らずに殴り倒す方法を選択する。
これだけ騒いでいればさすがに気が付かれるだろう、魔物もすでにこちらに向かって腕を広げて迫ってくる。
クリストが剣を寝かせ、切るのではなく殴るようなやり方で左から剣を振る。そこへエディが盾で殴りつけ、通路の奥へと弾くようにする。恐らくこれだけでも倒せるが、今回は臭うだろうか。
通路の奥の方にいたもう1体も迫ってきていたが、そこへ弾き飛ばされた魔物がぶつかりもつれ合うように転がる。
「ファイアー・ボルト!」
そこへフェリクスの魔法が放たれ、2体がまとまって転がる火の玉と化し、火が消える頃には動かない大きな塊と化していた。
「どうだ? 臭うことは臭うが切るよりはましだな?」
「これ以上は仕方がないだろう、できればこれ以上は出てほしくはないがな」
殴ったこと、遠くに弾き飛ばしたこと、火で燃やしたこと。どれが効果があったのかあるいは全てか。いずれにせよ今回はそこまでひどい臭いをまき散らすこともなく倒すことに成功したようだった。
悪臭を我慢しながら探索を再開する。
通路は少し先で右に分かれ道が現れ、さらにその先で右の壁に扉、そしてさらにその先で左に分かれ道と続き、それらを通り抜けて直進を続けると通路は右に折れ、さらに左に折れて部屋へと行き着いた。
部屋の中には何もなく、正面と左へ通路がつながっている。
先に部屋の中へ踏み入ったフリアがそこで止まって部屋の中央の床を見ている。
「どうした?」
「うーん、ここも中央は避けた方がいいかも」
中央を避けた方がいいと言った部屋は他にもあった。危険が本当にあるのかは分からないが避けられるのならば避けておいた方がいい。中央を避けて部屋の壁際をぐるっと回るようにして正面から続く通路へと入る。その通路はしばらく進むと扉に行き着いた。
今度はこの通路からの分かれ道を埋めていく。まずは一つ戻って中央が怪しい部屋から右への通路だ。
そちらへと進んで途中の右壁に扉があり、さらに長く真っすぐな道を進んでいくとやがて部屋へと行き着いた。
「臭いやつ、たぶん2。それと知らないやつ、これも2」
「多いな。で、臭いやつが邪魔だな」
「まとまっていてくれたらウォールでつぶすか分離するかできるよ」
「そうだな、それで行こう。このまま静かに前進。行けそうならやってくれ」
方針を決め通路を進むと、次第に部屋の中の様子が見えてきた。
手前側には立ち上がったブタのような、灰色で、そして大きな爪と牙を持った魔物が2体。そして奥側にはあの臭い魔物だ。
「ウィンド・ウォール!」
フェリクスが魔法を唱えると、ブタのような魔物と臭い魔物の中間辺り、地面から風が吹き上がる。その力は強く4体の魔物をまとめて巻き上げ、臭い魔物は部屋の奥の方へと放り投げられるようにして遠ざかった。
ブタのような魔物は手前側に落ち、そしてギャーギャーとわめきながら風の壁に向かって手を振り回した。
こちらを見ていない、そう判断したクリストが駆け込み、エディも続く。
ブタのような魔物の背後からそれぞれに一突き。倒しきれなかったと判断したらそこから切り捨てる形にもっていき、それで終了だ。
吹き飛ばされる格好になった臭い魔物は、奥の方でまとめて転がったまま動かなかった。どうやら吹き飛ばされたときのダメージだけで倒せたようだ。
「見たことのない魔物だが強くはないな。どれ魔石は、ああ、普通に心臓のところか」
見た目は2足歩行のブタだが、一応人型といっていいだろう魔物は比較的魔石が心臓付近にあることが多い。どうやらこの魔物もその通りのようだった。
奥に転がった臭い魔物は、まだ多少臭うが、やはり切らなかったことが良かったのかそこまでもない。どうにか部屋の隅に押しやり、そのまま放置することにする。魔石を取るために切り開くことはしたくなかった。
部屋の奥には通路がつながっていて、そこは少し先で左に曲がり、曲がってすぐのところに右への分かれ道があった。そちらへは入らずに通路をそのまま真っすぐ進んでいくと、また部屋へと行き着く。
その部屋の入り口から中を見て驚いたのかフリアが振り返って手招きをしている。
危険がすぐそこにということではないようだが、何があったのか。
「どうした?」
「見て、すごく分かりやすく罠」
ん? と部屋の中を見れば四角い部屋の角から角へ、大きくXを描くように溝が走っている。天井はと見上げればそこにもやはりXの形で溝。これはどう見ても罠だった。だがどう見ても罠という状況ではあったが立ち止まっていては何も始まらない。
「ちょっと入ってみるね」
フリアがそう言って部屋の中に踏み入る。
するとどこか上の方からか、ガコンという何かが動く音がした。そしてブオンッという大きな風を切るような音がして、斧のような鎌のような、銀色に良く磨き上げられた弧を描く刃物が手前側右の天井から現れ、そして対角線上、左奥の天井の溝へと動いて消えた。すぐにまたブオンッという風を切る大きな音。今度は右奥の天井から刃が現れ、手前左の天井へと消える。どうやら振り子になっているようで、天井のXの中央にその根元があるようだった。
今度は左奥の天井から刃、そして次は左手前から刃。
「えー、これは怖いけれど、別に危なくはないね?」
「そうだよな。これだけきっちり交互に動くなら単に刃の来ないところを通ればいい。気は使うが、危なくはないな」
「こういうのってあれだよね、魔物が、それこそシャドウみたいなのとかがいたら怖いよね」
「ああ、そうか、そうだな。あれがいたらやばい。避けようがなくなる。魔法を使われるのも痛いな。そうか、本来はそういう使い方か」
天井から刃物が現れるだけなら避けていけばいいだけだ。
だがそこに魔物が加わればどうか。特に普通には見ることのできない魔物や、こちらの動きを制限するような魔法を使う魔物、そういうものがいたらどうなるか。それは確かに危険だと言える。
「これこそいつかどこかで使うかもよっていう見せ物なのかも」
考えてみればまだ7階なのだ。この下にはまだ階層がある。そのどこかで本気でこちらを倒しに来るような罠と魔物の組み合わせを使ってくる可能性はあるのだ。そのためのテスト、こちらの反応を見るため、そして予備知識を得ておかせるための見せ物だと考えると、この意味のない配置にも納得がいった。
「まあ今回はこういうものがあるってことを知ったってことでいいだろう。さあ、次は正面だ。よく見てから通れば危なくはないからな、移動しよう」
刃が通り過ぎてから溝の上で立ち止まらないように移動すれば安全だ。どうということはなかった。
そのまま正面の通路へ進み、しばらく行くと正面の壁がなくなり、手すりがあった。
「吹き抜けだね。どの辺りだろう、地図見せて。うーん? たぶんここから正面に見えていたところ?」
「ああ、ちょっとずれたね。うん。位置的にはそうなんじゃないかな」
どうやら階段を降りて右へ進んだところの手すりから見通せた反対側の手すり、そこへたどり着いたようだった。
「そうするとこのまま進むと、この曲がって最初の所の扉か、ここへ出そうだな」
おおよその予想が付いたところで移動を再開する。手すりに沿って移動すると進む先の方からわめく声が聞こえてくる。何かいる。
吹き抜け部分が終わり、部屋へと行き着いた。
「さっきのブタみたいなの。4。なんだけど、けんかしてる?」
部屋へと近づいていくとその様子が見えてくる。部屋の中には先ほど倒した立ち上がったブタのような魔物がいて、互いに殴り合ったりつかみ合ったりとけんかの真っ最中のようだった。
「魔物同士で争うなんてあるのか‥‥しかも同種だぞ」
野生の魔物ならばいざ知らず、ここはダンジョンだ。わざわざ同種でまとめて配置されたというのにその同種の間でけんかをするなど見たこともなかった。
「ちょっと見てる。どうなるんだろ」
慌てて飛び込むような状況ではないし、どうなるのかも興味があった。
殴り合いが続き、4体のもみ合いから1体が顎の辺りをきれいな形で殴られたことで形勢は固まったようだ。ふらついたその1体に他の3体が群がり激しく殴り始める。そして殴っていた1体が立ち上がって両手を突き上げ大きくほえた。ほかの2体はと見れば、そのまま倒れた1体の腕や足にかみつき、頭を振ってその肉をかみちぎった。
「え、おなかが空いたから?」
「どうもそうらしいな、ダンジョンの魔物も腹が減るのか。そうかグールも一応食っていたな」
あのグールも一応はラットやスネークというダンジョンの魔物を食らっていた。そう考えればこのシチュエーションもないわけではないのか。だがそれにしては同種の魔物同士で、しかもこちらがたどり着くより早くから殴り合いを始めるなどあり得るのだろうか。いずれにせよこれで対象の魔物は1体減った。しかも食事の真っ最中だ。やるなら今だろう。
「マジック・ミサイル」
フェリクスの魔法の矢が1体に1本ずつ命中する。そこへエディとクリストが駆け込んで武器を振り回すとその魔物たちはなすすべもなく切り倒された。仲間同士で争いこちらに気がつきもしていないのだ、それはそうなる。
「よし、これでいいな。後はなし。通路がそっちにあるだけか」
部屋に入って右手に通路がつながっている。それ以外には宝箱などもないようだった。魔物の後始末したら先へ進む。通路はすぐにまた部屋へつながり、その部屋には左手に扉があるだけで魔物もいなかった。扉を調べるためにフリアが移動し、しゃがみこんで調べ始める。
「鍵あり、罠なし、気配なし、と」
カチャカチャと道具を動かし解錠した。と、その時頭上でカタという音がした。
「ん? 何か音がした?」
続けて扉の方へ移動してきたクリストたちも頭上を気にする。
カタ、カタ。
「嫌な予感。ね、盾をこう、上に。扉を開けるからすぐに出て」
これまでに天井が下がってくる罠や物が落ちてくる罠はあった。そういうパターンの可能性が高かった。
フリアが扉を開け、そこから外へ出る。盾を頭上に構えていたエディが出ようとしたところで上から落ちてきたものが盾に当たってガンッという音を立てた。
そのまま確認もせずに外へ出ると、続けざまに部屋の中にガンッガンッと硬い物が落ちてくる音がする。振り返ると、ガチャンガタガチガンッと立て続けに激しい音を立てて石のブロックが大量に落ちてきて部屋を埋め尽くし、もうもうと煙を巻き上げていた。
「ええー。待っていてくれたのはいいんだけど、こんなに落ちてくるんだ」
「ちゃんと出られるようなタイミングで落ちる辺りがな。あの降りてくる天井だとか、動く刃だとか、避けられるようになっている。こういうところだよな」
「避けられないようなところで一度に落とせばいいのに、そういうことはしない。こういうところだよね」
クリストたちを倒すための罠ではなかった。こういう罠があるぞ、使い方があるぞと見せてくるだけで、罠で致命傷を与えようなどとは考えていないように思える。
もしもここよりも下層で致命的な使い方をしてくるのなら今回のこれは単なる披露だ。見せたかっただけだ。
「まあ今考えることじゃない。次だ次。これでここに戻るな? よし、脇道と扉を確認しながらここまで進もう」
部屋を出たところから通路を真っすぐに進むと丁字路に突き当たる。ここを左に曲がってしばらく進めば右に分かれ道、その先では右に扉だ。
まずは分かれ道を調べることにしてそこまで進み、そちら側に踏み入れてみれば、すぐに変化が現れた。地面が土に変わったのだ。
「今度は木じゃないね、壁にツタかな? びっしり、あ、実がなってる」
通路が土に変わってすぐ突き当たりに行き着き、そこは壁一面を埋めるようにしてツタが生えていた。そしてその枝のあちこちに茶色く堅い実が付いている。どうやらここも収穫をしろという場所のようだ。
フェリクスが革袋に実を集めていくと、全部で14個が採れた。この実の効果効能についてはギルドに任せることにしよう。もしかしたら良いものかもしれないし、悪いものかもしれない。これまでに見つかったものを考えると薬効成分はありそうだったが、それはギルドに任せた方が良いことだった。
茶を入れ、食事を用意し、睡眠を取るのだ。
そういえば茶葉として紅茶以外に緑茶とハーブも仕入れておいたのだ。ハーブはステラが持っていた物と同じだということだが、ギルドの鑑定で精神を安定させる効果があると判明している。もっとも紅茶も緑茶も似たような効能はあるのだが、今日ははっきりと精神安定の効果があるハーブティーを選択した。
今回の探索で入手した魔石や宝箱の中身などはネックレス以外はまとめておく。いずれギルドの職員が来て回収していくだろう。
ネックレスに鑑定のスクロールを使ったところ、プレイヤービーズ・ネックレスという名称で、キュア・ウーンズが2つ、レッサー・レストレーション、グレーター・レストレーション、ブレスが1つずつ封じられていた。非常に有効な魔道具だったため、今後の非常用の装備品として持っていくことに決めた。
ゆっくり、しっかりと休憩を取り回復したところで探索を再開する。今回も引き続き7階、ただしあの気味の悪いエリアはなしだ。階段を下りたら前回とは異なる左へと進む。しばらく進むと丁字路に差し掛かる。
「左は通路、右も通路だけどその先が部屋になっていて何かいる。たぶんオーク。たぶん3かな?」
「やはり増えたな。だがまあオークだ、さっさとやるか」
無視して左に行くこともできるが、今後は魔物も部屋から出て後を追ってくるということも考えられた。近いのならば片付けておいた方が安心だ。
部屋の中がうかがえる距離まで近づく。相手も気がついたようでそれぞれ手に武器を持ってこちらを見ていた。
「スリープ!」
カリーナの魔法が放たれる。
手前左側の1体が眠りについたのかその場に崩れ落ちるが、右側と奥にいた2体は特に影響を受けなかったようでそのままだ。
「マジック・ミサイル!」
フェリクスの魔法の矢が手前に1本、奥に2本と飛び、命中する。
そこへ武器を構えたエディとクリストが迫る。手前右のオークは斧を振り上げたが、そこへエディの盾が差し込まれ振り下ろすことができない。空いた腹にはエディが正面へ突き出すように構えていた斧が深く刺さった。
奥のオークが持っていた武器は槍で、そのまま真っすぐに突き出されたが、それはクリストが剣で横へと受け流し、そのまま距離を詰めた。接近してしまえば槍よりも剣の方がはるかに速い。左右に切り裂くように剣を振るうと、最初のマジック・ミサイルの分と合わせてダメージが許容量を超えたのか、そのまま後ろにズンッと音を立てて倒れていった。眠っているオークには起きる気配はなく、そうなれば後は急所を一突きして終了だ。
「よし、こんなもんだな。安心のオークだ、3体でも変わらん。で、この部屋はこれで終わりだな? よし、先に進もう」
部屋を出て真っすぐに通路を進んでいく。左に行けば階段という分かれ道を過ぎ、またしばらく進むと左側に通路が現れた。その通路の先は扉に行き着くようで、今回はそのまま真っすぐ進むことにする。
「ん? 何かいる」
通路の先に魔物か。
「あ、臭いやつ」
「マジか、やりたくないと言いたいところだが、仕方がないよな」
「いつまでも避けていられないし、最悪最後は強風で吹き飛ばすことにするよ」
6階で一度遭遇し、倒した後の悪臭に耐えられずに通り抜けることを諦めた魔物だった。
「あ、奥にもいる。最低2」
「わかった。弱いやつだ。できるだけ切らないようにしてみるか」
もしかしたら内蔵が臭いのかもしれない。切らずに殴り倒す方法を選択する。
これだけ騒いでいればさすがに気が付かれるだろう、魔物もすでにこちらに向かって腕を広げて迫ってくる。
クリストが剣を寝かせ、切るのではなく殴るようなやり方で左から剣を振る。そこへエディが盾で殴りつけ、通路の奥へと弾くようにする。恐らくこれだけでも倒せるが、今回は臭うだろうか。
通路の奥の方にいたもう1体も迫ってきていたが、そこへ弾き飛ばされた魔物がぶつかりもつれ合うように転がる。
「ファイアー・ボルト!」
そこへフェリクスの魔法が放たれ、2体がまとまって転がる火の玉と化し、火が消える頃には動かない大きな塊と化していた。
「どうだ? 臭うことは臭うが切るよりはましだな?」
「これ以上は仕方がないだろう、できればこれ以上は出てほしくはないがな」
殴ったこと、遠くに弾き飛ばしたこと、火で燃やしたこと。どれが効果があったのかあるいは全てか。いずれにせよ今回はそこまでひどい臭いをまき散らすこともなく倒すことに成功したようだった。
悪臭を我慢しながら探索を再開する。
通路は少し先で右に分かれ道が現れ、さらにその先で右の壁に扉、そしてさらにその先で左に分かれ道と続き、それらを通り抜けて直進を続けると通路は右に折れ、さらに左に折れて部屋へと行き着いた。
部屋の中には何もなく、正面と左へ通路がつながっている。
先に部屋の中へ踏み入ったフリアがそこで止まって部屋の中央の床を見ている。
「どうした?」
「うーん、ここも中央は避けた方がいいかも」
中央を避けた方がいいと言った部屋は他にもあった。危険が本当にあるのかは分からないが避けられるのならば避けておいた方がいい。中央を避けて部屋の壁際をぐるっと回るようにして正面から続く通路へと入る。その通路はしばらく進むと扉に行き着いた。
今度はこの通路からの分かれ道を埋めていく。まずは一つ戻って中央が怪しい部屋から右への通路だ。
そちらへと進んで途中の右壁に扉があり、さらに長く真っすぐな道を進んでいくとやがて部屋へと行き着いた。
「臭いやつ、たぶん2。それと知らないやつ、これも2」
「多いな。で、臭いやつが邪魔だな」
「まとまっていてくれたらウォールでつぶすか分離するかできるよ」
「そうだな、それで行こう。このまま静かに前進。行けそうならやってくれ」
方針を決め通路を進むと、次第に部屋の中の様子が見えてきた。
手前側には立ち上がったブタのような、灰色で、そして大きな爪と牙を持った魔物が2体。そして奥側にはあの臭い魔物だ。
「ウィンド・ウォール!」
フェリクスが魔法を唱えると、ブタのような魔物と臭い魔物の中間辺り、地面から風が吹き上がる。その力は強く4体の魔物をまとめて巻き上げ、臭い魔物は部屋の奥の方へと放り投げられるようにして遠ざかった。
ブタのような魔物は手前側に落ち、そしてギャーギャーとわめきながら風の壁に向かって手を振り回した。
こちらを見ていない、そう判断したクリストが駆け込み、エディも続く。
ブタのような魔物の背後からそれぞれに一突き。倒しきれなかったと判断したらそこから切り捨てる形にもっていき、それで終了だ。
吹き飛ばされる格好になった臭い魔物は、奥の方でまとめて転がったまま動かなかった。どうやら吹き飛ばされたときのダメージだけで倒せたようだ。
「見たことのない魔物だが強くはないな。どれ魔石は、ああ、普通に心臓のところか」
見た目は2足歩行のブタだが、一応人型といっていいだろう魔物は比較的魔石が心臓付近にあることが多い。どうやらこの魔物もその通りのようだった。
奥に転がった臭い魔物は、まだ多少臭うが、やはり切らなかったことが良かったのかそこまでもない。どうにか部屋の隅に押しやり、そのまま放置することにする。魔石を取るために切り開くことはしたくなかった。
部屋の奥には通路がつながっていて、そこは少し先で左に曲がり、曲がってすぐのところに右への分かれ道があった。そちらへは入らずに通路をそのまま真っすぐ進んでいくと、また部屋へと行き着く。
その部屋の入り口から中を見て驚いたのかフリアが振り返って手招きをしている。
危険がすぐそこにということではないようだが、何があったのか。
「どうした?」
「見て、すごく分かりやすく罠」
ん? と部屋の中を見れば四角い部屋の角から角へ、大きくXを描くように溝が走っている。天井はと見上げればそこにもやはりXの形で溝。これはどう見ても罠だった。だがどう見ても罠という状況ではあったが立ち止まっていては何も始まらない。
「ちょっと入ってみるね」
フリアがそう言って部屋の中に踏み入る。
するとどこか上の方からか、ガコンという何かが動く音がした。そしてブオンッという大きな風を切るような音がして、斧のような鎌のような、銀色に良く磨き上げられた弧を描く刃物が手前側右の天井から現れ、そして対角線上、左奥の天井の溝へと動いて消えた。すぐにまたブオンッという風を切る大きな音。今度は右奥の天井から刃が現れ、手前左の天井へと消える。どうやら振り子になっているようで、天井のXの中央にその根元があるようだった。
今度は左奥の天井から刃、そして次は左手前から刃。
「えー、これは怖いけれど、別に危なくはないね?」
「そうだよな。これだけきっちり交互に動くなら単に刃の来ないところを通ればいい。気は使うが、危なくはないな」
「こういうのってあれだよね、魔物が、それこそシャドウみたいなのとかがいたら怖いよね」
「ああ、そうか、そうだな。あれがいたらやばい。避けようがなくなる。魔法を使われるのも痛いな。そうか、本来はそういう使い方か」
天井から刃物が現れるだけなら避けていけばいいだけだ。
だがそこに魔物が加わればどうか。特に普通には見ることのできない魔物や、こちらの動きを制限するような魔法を使う魔物、そういうものがいたらどうなるか。それは確かに危険だと言える。
「これこそいつかどこかで使うかもよっていう見せ物なのかも」
考えてみればまだ7階なのだ。この下にはまだ階層がある。そのどこかで本気でこちらを倒しに来るような罠と魔物の組み合わせを使ってくる可能性はあるのだ。そのためのテスト、こちらの反応を見るため、そして予備知識を得ておかせるための見せ物だと考えると、この意味のない配置にも納得がいった。
「まあ今回はこういうものがあるってことを知ったってことでいいだろう。さあ、次は正面だ。よく見てから通れば危なくはないからな、移動しよう」
刃が通り過ぎてから溝の上で立ち止まらないように移動すれば安全だ。どうということはなかった。
そのまま正面の通路へ進み、しばらく行くと正面の壁がなくなり、手すりがあった。
「吹き抜けだね。どの辺りだろう、地図見せて。うーん? たぶんここから正面に見えていたところ?」
「ああ、ちょっとずれたね。うん。位置的にはそうなんじゃないかな」
どうやら階段を降りて右へ進んだところの手すりから見通せた反対側の手すり、そこへたどり着いたようだった。
「そうするとこのまま進むと、この曲がって最初の所の扉か、ここへ出そうだな」
おおよその予想が付いたところで移動を再開する。手すりに沿って移動すると進む先の方からわめく声が聞こえてくる。何かいる。
吹き抜け部分が終わり、部屋へと行き着いた。
「さっきのブタみたいなの。4。なんだけど、けんかしてる?」
部屋へと近づいていくとその様子が見えてくる。部屋の中には先ほど倒した立ち上がったブタのような魔物がいて、互いに殴り合ったりつかみ合ったりとけんかの真っ最中のようだった。
「魔物同士で争うなんてあるのか‥‥しかも同種だぞ」
野生の魔物ならばいざ知らず、ここはダンジョンだ。わざわざ同種でまとめて配置されたというのにその同種の間でけんかをするなど見たこともなかった。
「ちょっと見てる。どうなるんだろ」
慌てて飛び込むような状況ではないし、どうなるのかも興味があった。
殴り合いが続き、4体のもみ合いから1体が顎の辺りをきれいな形で殴られたことで形勢は固まったようだ。ふらついたその1体に他の3体が群がり激しく殴り始める。そして殴っていた1体が立ち上がって両手を突き上げ大きくほえた。ほかの2体はと見れば、そのまま倒れた1体の腕や足にかみつき、頭を振ってその肉をかみちぎった。
「え、おなかが空いたから?」
「どうもそうらしいな、ダンジョンの魔物も腹が減るのか。そうかグールも一応食っていたな」
あのグールも一応はラットやスネークというダンジョンの魔物を食らっていた。そう考えればこのシチュエーションもないわけではないのか。だがそれにしては同種の魔物同士で、しかもこちらがたどり着くより早くから殴り合いを始めるなどあり得るのだろうか。いずれにせよこれで対象の魔物は1体減った。しかも食事の真っ最中だ。やるなら今だろう。
「マジック・ミサイル」
フェリクスの魔法の矢が1体に1本ずつ命中する。そこへエディとクリストが駆け込んで武器を振り回すとその魔物たちはなすすべもなく切り倒された。仲間同士で争いこちらに気がつきもしていないのだ、それはそうなる。
「よし、これでいいな。後はなし。通路がそっちにあるだけか」
部屋に入って右手に通路がつながっている。それ以外には宝箱などもないようだった。魔物の後始末したら先へ進む。通路はすぐにまた部屋へつながり、その部屋には左手に扉があるだけで魔物もいなかった。扉を調べるためにフリアが移動し、しゃがみこんで調べ始める。
「鍵あり、罠なし、気配なし、と」
カチャカチャと道具を動かし解錠した。と、その時頭上でカタという音がした。
「ん? 何か音がした?」
続けて扉の方へ移動してきたクリストたちも頭上を気にする。
カタ、カタ。
「嫌な予感。ね、盾をこう、上に。扉を開けるからすぐに出て」
これまでに天井が下がってくる罠や物が落ちてくる罠はあった。そういうパターンの可能性が高かった。
フリアが扉を開け、そこから外へ出る。盾を頭上に構えていたエディが出ようとしたところで上から落ちてきたものが盾に当たってガンッという音を立てた。
そのまま確認もせずに外へ出ると、続けざまに部屋の中にガンッガンッと硬い物が落ちてくる音がする。振り返ると、ガチャンガタガチガンッと立て続けに激しい音を立てて石のブロックが大量に落ちてきて部屋を埋め尽くし、もうもうと煙を巻き上げていた。
「ええー。待っていてくれたのはいいんだけど、こんなに落ちてくるんだ」
「ちゃんと出られるようなタイミングで落ちる辺りがな。あの降りてくる天井だとか、動く刃だとか、避けられるようになっている。こういうところだよな」
「避けられないようなところで一度に落とせばいいのに、そういうことはしない。こういうところだよね」
クリストたちを倒すための罠ではなかった。こういう罠があるぞ、使い方があるぞと見せてくるだけで、罠で致命傷を与えようなどとは考えていないように思える。
もしもここよりも下層で致命的な使い方をしてくるのなら今回のこれは単なる披露だ。見せたかっただけだ。
「まあ今考えることじゃない。次だ次。これでここに戻るな? よし、脇道と扉を確認しながらここまで進もう」
部屋を出たところから通路を真っすぐに進むと丁字路に突き当たる。ここを左に曲がってしばらく進めば右に分かれ道、その先では右に扉だ。
まずは分かれ道を調べることにしてそこまで進み、そちら側に踏み入れてみれば、すぐに変化が現れた。地面が土に変わったのだ。
「今度は木じゃないね、壁にツタかな? びっしり、あ、実がなってる」
通路が土に変わってすぐ突き当たりに行き着き、そこは壁一面を埋めるようにしてツタが生えていた。そしてその枝のあちこちに茶色く堅い実が付いている。どうやらここも収穫をしろという場所のようだ。
フェリクスが革袋に実を集めていくと、全部で14個が採れた。この実の効果効能についてはギルドに任せることにしよう。もしかしたら良いものかもしれないし、悪いものかもしれない。これまでに見つかったものを考えると薬効成分はありそうだったが、それはギルドに任せた方が良いことだった。
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10歳になると、誰もがもらえるスキル。
キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。
弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。
偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
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異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
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間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話
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ここは、地球とはまた別の世界――
田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。
暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。
仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン>
「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。
最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。
しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。
ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと――
――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。
しかもその姿は、
血まみれ。
右手には討伐したモンスターの首。
左手にはモンスターのドロップアイテム。
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「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」
ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。
タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。
――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――
オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】
山親爺大将
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剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。
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そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。
『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』
である。
50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。
ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。
俺もそちら側の人間だった。
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「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」
これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。
注意事項
50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。
あらかじめご了承の上読み進めてください。
注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。
注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。
アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記
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ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。
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アガルタ・クライシス ―接点―
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神話や物語で語られる異世界は、空想上の世界ではなかった。
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修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
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