転生した愛し子は幸せを知る

ひつ

文字の大きさ
128 / 314
本編

古代遺跡25

グラムside


「おい!ティア、しっかりしろ!ティア!」


 魔力暴走しかけている気配を感じ急いでガキのもとへと駆けつけた。


「グラム、ティアは大丈夫なんだよな!?」


 顔色のひどいガキを見てパニックになるエリック。


⦅落ち着けエリック。ガキは大丈夫だ。このガキ、無意識にだがエリックを傷つけないように魔力暴走を自力で抑えてやがる。暴れている魔力は俺様が引き受ける。エリック、お前はガキから離れるなよ?お前が少しでも離れた瞬間、このガキの魔力は爆発するぞ。だから絶対離すなよ?⦆


 それだけこのガキはエリックを信頼しきっている。故にエリックが傷つくことを恐れている。失うこともだ。このガキにとってエリックは最大の弱点だ。このガキの1番でいたいからしたらエリックの事が邪魔で仕方ないだろう。まだが手出しできないことが救いか。


「ティア…ティア…」


 ティアか…ガキの荒ぶる魔力を吸収しながら気付く。ガキの側には分厚い本が落ちていた。いや本じゃない。日記帳だ。俺様はこれを知っている。俺様に約束を取り付けたここの創造主である小娘が持っていたものだ。そしてここに置いていった忌々しい小娘ガキの軌跡だ。くそっ。見ちまったのかよ。なにか気付いたのか?それとも思い出したのか?分からない。こればっかりはその時その時で違うからな。



ダダダダダダ



「エリックさんっ!!」



 おうおうおう。どうやら他の奴らも駆けつけたようだな。って、ちょっと待って。この気配…


〈ティアーー!!!どこのどいつだティアに何かしたのは…殺すぞ。〉



⦅ゲッ…厄介なのが来やがった。ただでさえガキの魔力を吸収して抑えるので忙しいってのに。ガキフェンリル、久しぶりの挨拶はなしか?それともその今にも殺さんとする殺気を飛ばすのがお前なりの挨拶なのか?⦆



〈あ"ぁ?ふざけてるの?どこの誰かと思えば使えない魔剣じゃないか。お前がティアに何かしたの?答え次第では魔剣だろうが容赦なく消えてもらうから。〉


 まだガキだってのに流石は神獣フェンリルってことか。威圧感がとんでもない上に殺気とか…勘弁してくれ。エリックもだが他の奴らも下手に動けなくなっちまってる。


⦅俺様は今、このガキの魔力を吸収してやってるんだ。邪魔をするな。ガキがこんな風になった原因はそこに落ちてるだろ?⦆


〈そこ?ーーッ!!こ、これ…まさかティアは読んだの?〉


⦅だからこの状況なんだろうが!分かったならさっきと殺気を引っ込ませろ。⦆


 ガキフェンリルは大人しく殺気を引っ込めた。ふぅ、余計に疲れたぜ。



「「「はぁはぁ…」」」


 エリックたちもガキフェンリルの殺気から解放された事で力が抜け呼吸がし易くなったんだろう。皆、額に汗が浮かんでいる。



 
 これでガキの魔力吸収に専念できる。










⦅よしっ!これでもう大丈夫だろう。⦆



 俺様はガキが落ち着いたのを確認し聞こえるように伝えた。安堵の様子が周りの奴らの様子から窺える。



「なぁ、お前たちの会話から察するに原因はこの分厚い本なんだよな?」



〈⦅本じゃない。日記帳…⦆〉



 見事にガキフェンリルと被った。忌々しい日記帳である事を知っている為、つい俺様たちは低い声になってしまった。


「日記帳…これはティアのなのか?」


と一括りにすればそうなのかな。こんなものなんで作ったんだろうね。僕は…この日記帳が大嫌いだ。〉


⦅俺様も同感だ。これは嫌なものだ。俺様自身の弱さ、惨めさを痛感させられる。⦆


 俺様は一度、二度、三度、いやもう何回だろうな。数えきれないほどこの日記帳と出会い知ってしまった。俺様にはこの日記帳を消せない。物理的にも精神的にも。


「ならっ!!私が魔法で消します!!」


〈ニール…やれるものならやってみなよ。〉


 ハーフエルフは緑魔法の風の刃で切り裂いた。清々しいほどに粉レベルまでにな。


 だが…



「「「なっ!?」」」


 そう。日記帳は復活した。はじめから切り裂かれた事など無かったとでいうように。それもガキの手元に。


 熊の獣人やエルフも日記帳を手に取っては試すが結局はいつの間にかガキの手元へ還ってくる。ガキと出会ってしまったから、もう還ってくる事が出来るようになってしまった。ガキが日記帳に出会う前なら、破壊してもガキの元へと還ることはなかった。どこか別の場所で復活していたはずだ。故に二度目にこの日記帳を目にした時は俺様は恐怖したものだ。確かに俺様が斬って消滅させたはずだったから。その後も縁あって日記帳と出会うことが何度もあった。日記帳単体の時もあれば……と一緒の事もあった。次第にこの日記帳は生きた証なんだって痛感した。それを消す事は生きていた事を否定する事になる。そう思うと俺様はこの日記帳を消せなくなってしまった。



〈もうやめたら?無駄なんだから。僕だって何度も試したんだから!本当に消したい…〉



 ガキフェンリルは俺様とは違い物理的に消せないだけだ。なにせ生きた年月が俺様とは違う。俺様はここだけじゃない長い年月を外で生きてきた。だからこそ何度も出会いと別れを繰り返した。その中で精神的にも消せなくなったがガキフェンリルからしたらこの日記帳は小娘リーナガキティアにしか当てはまらない。視野が狭いって言うのか?まぁその考えも悪くないと思うが。これにどれだけの想いが詰まっていて何で存在しているのかそこまで頭が回ってない。まだまだ親のバルフには追いつかないだろうな。消したいのに消せないまるで悪循環だな。本当に忌々しい限りだ。



⦅その日記帳はもうガキのものだ。破壊しても還ってくる。余計な事はしない方がいい。逆に破壊…消さなければガキの元へと戻ることはない。エリックたちが持っていても大丈夫だということだ。⦆


 大抵は取り憑かれたようにずっと本人は持参し続けるがな。


「ならティアがこの日記帳をもう見たくないと願うならば俺たちが遠ざけても問題はないってことだな。」


⦅あぁ。⦆



「とにかくここから出ませんか?これ以上はティアさんに危険です。」



 ハーフエルフの意見には満場一致で賛成し、エリックがガキを抱えて外へと出た。







 


感想 169

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

愛する夫が目の前で別の女性と恋に落ちました。

ましゅぺちーの
恋愛
伯爵令嬢のアンジェは公爵家の嫡男であるアランに嫁いだ。 子はなかなかできなかったが、それでも仲の良い夫婦だった。 ――彼女が現れるまでは。 二人が結婚して五年を迎えた記念パーティーでアランは若く美しい令嬢と恋に落ちてしまう。 それからアランは変わり、何かと彼女のことを優先するようになり……

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

『愛人を連れて帰ってきた翌朝、名前すら呼ばれなかった私は離縁状を置いて旅に出ます。これからは幸せになります――そう思っていました。』

まさき
恋愛
夫に名前すら呼ばれず、冷たく扱われ続けた私は、ある朝、ついに限界を迎えた。 決定打は、夫が見知らぬ女性を連れて帰ってきたことだった。 ――もういい。こんな場所に、私の居場所はない。 離縁状を残し、屋敷を飛び出す。 これからは自由に、幸せに生きるのだと信じて。 旅先で出会う優しい人々。 初めて名前を呼ばれ、笑い、温かい食事を囲む日々。 私は少しずつ、“普通の幸せ”を知っていく。 けれど、そのたびに――背中の痣は、静かに増えていた。 やがて知る、自らの家系にかけられた呪い。 それは「幸せを感じるほど、命を削る」という残酷なものだった。 一方その頃、私を追って旅に出た夫は、焦燥の中で彼女を探し続けていた。 あの冷たさも、あの女性も、すべては――。 けれど、すべてを知ったときには、もう遅くて。 これは、愛されていなかったと信じた私が、 最後にようやく“本当の愛”に気づくまでの物語。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました

ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。 ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。 王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。 そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。 「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」