転生した愛し子は幸せを知る

ひつ

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本編

なんの張り合い?

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 エリック隊長とアルは夕食中、何かと私に絡んできては火花を散らしていた。


「ティア、コレも食べるか?ほら、口開けて。あーん。」


「あ、あーん。」


「美味しいか?」


「うん。美味しいよ。」


 エリック隊長は小さく切り分け、私の口に箸を運ぶ。それを見たアルは何をエリック隊長と競い合っているのか同じように私に海鮮丼を勧めてきた。


「ティア、俺の海鮮丼も美味しいぞ。」


「あ、うん。」


 そう言って私の口もとへ海鮮丼を持ってきたアル。これは食べろという事だよね。気になっていたし嬉しいけどさ。あーん。モグモグ…最高の美味しさだ。


「エビフリャー1つ俺にくれないか?」


「え?いいよ。はいっ!」


 海鮮丼分けてもらったし、エビフリャーの1つや2つあげるよ。と思ってエビフリャーをアルのお皿に乗せてあげようとしたらお皿をずらされた。なんで!?驚いてアルの方を見ると、口を開けて待っていた。


「………はい、あーん」


 アルの口にエビフリャーを持っていくと嬉しそうに耳や尻尾が動いていた。バンさん同様、感情がわかりやすいな。


「ずりぃ!!ティア、俺にも!俺にもくれるよな?」


 だと思った。アルにしたら絶対さっきから張り合ってるエリック隊長も同じこと求めてくると思ってたよ!エビフリャーをエリック隊長の口にも入れてあげる。満足そうでなりよりです。












「ご馳走様でした~」


 プリンも食べ終わり、お腹もぽっこりと満腹を示している。







 その間にエリックとスノウは念話で会話をしていた。


〈それで、ティアを部屋に戻してから話すの?〉


「そうしたいんだが…スノウにも話を聞きたいからお前にはいてほしいんだよ。すると、ティアを部屋に1人でいさせる事になるわけだが…」


〈不安だもんね〉


「まだ寝そうな感じでもないしなぁ」


 エリックはチラッとティアを見るがまだ目はぱっちりしており、寝そうな雰囲気がない。どうしたものか。





「アルも食べ終わった?」


「あぁ。」


「ならアルの部屋で遊ぼう!!エリック隊長、私アルの泊まってる部屋にいるね!」


「あっ、お、おい!引っ張るなっ!」



 私、空気読める子!えっへん!さっきからエリック隊長が私をチラチラ見てたからね。概ね、今日の事を話すんだろうけど、聞かせたくないって感じかな?現にアルと2人で遊ぶって言っても心配性のエリック隊長がダメだって言わない(顔は愉快な事なってるけど)。ニールさんたちもダメとは言わない(アルに何か目で全員訴えてるけど。特にニールさんが「分かってますよね?」と声には出てないが目がそう言ってる気がする。)



 私はアルを引っ張り退場するとしよう!アルも子供だよ?私だって話に混ざれないのにアルだけ聞けるとかずるいもんね!巻き込んでやる!



「アルベルタ、ティアを頼んだからな?いいか?頼んだからな?ティアの遊び相手として頼んだからな!!」


「分かったからその物騒な剣から手を離せよ!!」


「あぁ?剣なんて…あっ、無意識に。悪りぃ悪りぃ。」


 絶対悪いなんて思っていないな。グラムから手を下ろさないしエリック隊長。言ってる事と行動が伴ってない。



「全く…お前の父さんと保護者どもは面倒だな。」


 アルはもう敬語を使うのをとうにやめたらしい。そんでもって、げっそりしてない?アルはビスに部屋の鍵を受け取るとしっかりと私の手を握り引っ張った。さっきまで私が引っ張っても全然動かなかったのに、今度は私が引っ張られる番なの!?


「ほら行くぞ。」


「うん!」


「後で迎えに行くからな!」


「はーい!」


 エリック隊長が永遠の別れのような表情で見送っている。同じ宿にいるからね!?


「アルベルタ様、何かあったら…」


「心配するな。俺が簡単に負けるわけ」


「いえ、そうではなく、ティアちゃんにという意味です。」


「お前もか!!ビス、お前の仕事は何なのか忘れてないか!?俺の護衛だぞ?その護衛対象から離れるというのに、俺の心配はどこに置いてきた!?ティアとの出会いで捨ててきたのか!?」


 アルがご乱心である。


「ティアちゃんが関わると知らないアルベルタ様が見れておもしろ…いえ、新発見ですのでついつい楽しく…あ、その微笑ましく思えまして。」


「フォローするならちゃんとしろ!?お前もだいぶ面白ろおかしくなってるからな!!」


「私はもともとこのような性格ですので。一応は主人に仕える身、護衛らしく振る舞うのは当たり前でしょう。ですが今回、アルベルタ様の素を見せていただけた事ですし、私も素でいいかと…というかいい加減、面倒で疲れると思いまして。今更、前のように接するよりアルベルタ様もこちらの方が宜しいでしょう?確固たる主従としての信頼関係を築くにあたって私の人となりは知っておいていただけないとアルベルタ様も心を開いてはくださらないでしょうしね?現に今までお仕えしてきて、今の1度もこのような姿はお見せいただいたことはありませんでしたしねぇ」


「グヌヌ…」


「今のアルベルタ様は年相応で結構親しみやすくて、良いと思いますよ?」


 アルは「うるさいっ!」と言うと再び歩き出した。ふと見たアルの顔がほんのり赤くなっていたのは見間違いではないだろう。


 早々と歩くアルにクスクス笑いながら、私とアルは食事処をあとにした。







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