混成魔獣は牙を剥く

をずわるど

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第一章

第六話 【ギルド】

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少年ライは緊張していた。

目の前に建っている一際大きな建物。

そこは〈ボークディート〉のギルドである。

彼らが言うにはこの街で怪しまれないように、彼らの身内ということでギルドに冒険者登録する必要があるそうだ。

それにしても、大きなギルドだった。


「ガッハッハッ!!心配するなライ。オレらがいれば登録はすぐに終わる。……少し話し合う必要があるかもしれんがな。」

『大丈夫かな…。』


口では言わずに心に留めておくライだった。

それには理由があった。ライはほんの一回だけ、レイラに言ってしまったのだ。


(ライ君…なんで他は出来て回復魔法は出来ないの?)

(レイラお姉ちゃんの教え方がヘタクソなんだもん。)


思わず口に出た本音。

しょうが無かった。どうしても触れたくないとは思っていたが触れてしまったのである。

その瞬間レイラの何かが切れた音がした。

するとライは、自分の気遣いがどれだけ些細な事かを知った。レイラの怒りはそれどころじゃなかったからである。

ライは必死で謝った。しかし、手遅れだった。


(ライ君?この世界にはね、言ってもいい事と駄目な事があるのよ?)


そう言うとレイラは、ライが気づかない力で回復魔法をライのツギハギへ使った。

ライの体にはレイラしか知らない秘密があった。
ライの体はツギハギだらけである、それは元々だ。

あとから付いた傷はレイラに治してもらっていた。その時に、レイラが興味本位でツギハギの傷を治そうとしたのだ。

その時、ライの体に食らったことのない痛みが走った。
正直、泣きそうなくらいの痛みだった。

そもそも回復魔法は、回復し過ぎると内側からトゲが刺してくるような痛みが来るのである。

それはライの体も一緒であったのだ。

そう考えると、ライのツギハギの傷は自分の体がまともでは無いということを言っているようなものだった。

だが、その時はそんなことよりも、自分の体の痛みで頭がいっぱいだったため、ライ自身は覚えていない。

そしてレイラの怒りを買ったライは必死に痛みに耐えるのであった。

そうして学んだのである。

思ったことをすぐに口にするのはやめようと。
そして、レイラを絶対に怒らせてはいけないということを。

そして今に至るわけである。

レイラが怒った時の恐怖と痛みは今でも覚えている。

そんなライの隣ではレイラが手を繋いでいる。
恐ろしいことに、レイラ本人は怒った時の記憶が無いのである。

齢11にして、ライは姉とは恐ろしいものだと知らされたのである。

それはそうとして、ギルドの中はとても綺麗で、隅々まで掃除が行き届いていた。

何よりも驚いたのは、ルーシィ達の人気である。

ありとあらゆる冒険者から挨拶をされていたのだ。

ほんの少し、自分も嬉しかったのは四人には内緒である。

そんなことを思っていたら、受付嬢の前まで来ていた。


「やあ!!サーシャ嬢。」

「あっ!!お疲れ様です!!」


ルーシィがサーシャというその人は、受付嬢と言うらしい。レイラよりも少し大人っぽいと思ったのはレイラには内緒だ。

するとサーシャは手際よく受付の処理をしていた。

そして、自分の名前の入ったランクバッジを貰い、あっという間に冒険者登録されていた。
まさにできる女であろう。

そして渡されたバッジにはEと書いてあった。


「なんで僕はランクがEなんですか?」

「ああ、それはね。まだ新しく入ったばかりだからよ。実力の知らない人をいきなり信用はできないからよ。だから、ギルドに信頼されてる人ほど、ランクが高いのよ。」

「ランクはどうやったら上がるんで……」

「クエストをたくさん受けて、たくさんクリアすることよ。」


言い終わる前に答えられた。そう言うと思われてたみたいで、少し悔しかった。

そもそも冒険者のランクは。

   Sランク 英雄
   Aランク 一流
   Bランク ベテラン
   Cランク 中堅
   Dランク 一人前
   Eランク 新人   となっている。

そして魔物も。

   Sランク 一国を蹂躙するレベル
   Aランク 戦争が起きるレベル
   Bランク 街が危機になるレベル
   Cランク 村が壊滅するレベル
   Dランク 野生の魔物レベル
   Eランク 野生の動物レベル  となっている。

これらを知っているだけでも、十分クエストは受けることが出来るらしい。

逆に言うと、これらを知っていない冒険者は実力を測れないため、受けれるクエストが決められるらしい。

先程のランクで、冒険者も魔物も、Sランクがいたがそれらは数えれるほどしか居ないそうだ。

そうして、無事に冒険者登録が終了した。

そして、これからが、彼らの楽しみであった街への買い出しである。

だがライは、ギルドの中に悪意があるのを感じていた。

少しの不安を残したまま彼らはギルドを後にした。
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みんなの感想(3件)

assult
2019.08.22 assult

レイラにも秘密があるのですか?真相が楽しみです

をずわるど
2019.08.22 をずわるど

それはまだまだ先かもしれませんよ?
言いきれませんがね………|ω・`)

解除
assult
2019.08.22 assult

ライの純粋な感じと仲間の暖かみが読んでいて癒されます

解除
assult
2019.08.20 assult

文章書くの凄く上手だなと思いました。キャラも個性的ですし、何より謎があるから読んでいて楽しいです。あまり普段見ることのないタイプのファンタジーだったので新鮮で面白いです。応援してます頑張ってください!

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