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【罠】
しおりを挟む津々木蔵人は信長が何故、謀反を企てた自分達を赦免したのか分からず何か裏があると思い信長の出方を警戒していた…
… あの信長が母親に泣き付かれたぐらいで命を狙った俺たちを許す筈がない…御前が何か弱味でも握っていたら信行様の耳に必ず入るからそれは無い…
とにかく信長が何か仕掛けて来る前に奴を殺さなければ! このまま殺されるのを待っている訳にはいかない…何とかして信行様をまたやる気にさせなければ …
信長に恐ろしい仕置きをされるのではと怯える津々木蔵人は信行の下に勝家を連れて行く…織田信行、柴田勝家、津々木蔵人の三人は密談を始める。
「赦免された事を勝家殿はどう思っている」
「信長が逆らった者を生かしておくとは思えない、赦免は偽りかと…」
「信行様は我々が赦免されたのは何故だと思いますか?」
「…母の御前が庇ってくれたからだと聞いてるが」
「あの冷酷な信長が母親の言うことを聞くタマとは思えません‼」
「確かに母上は信長を嫌っていて中が悪かったが、実の母だ…信長も情にほだされたのでは…」
「信長の事です、油断させて何かとんでもない事を考えてるに違いありません…たぶん武士として死ぬ事は許されない…
思いもよらぬ方法で我らを苦しめてから酷い殺し方をするはず…」
勝家はすでに信長の傀儡で、本当の赦免を餌に操られている…勝家の役目は信行にまた謀反を企てる様に仕向ける事だ。
「蔵人の言う通りだと思います…殺られる前に、信長の首を狙うべきです‼」
「しかし…今の私に従う者は少ない、返り討ちになるのが関の山だ…」
蔵人が口を挟み話は勝家に都合良くすすむ。
「一度、謀反に失敗した者がまた襲って来るとは余り考え無いのでは…それに今度は謀反では無く暗殺が良いかと…」
勝家が蔵人の言う暗殺計画を煽る…
「蔵人の言う通り、暗殺なら少数で済みます。しかも今なら信長の屋形に御前様が御一緒に居ます…協力してくれるはず…」
「御前様が信長の屋形に居るうちに暗殺を実行しましょう‼ 貴方こそ織田家の当主に相応しいのです!」
「御前様との連絡は古株の自分が一番怪しまれない…お任せを」
… こんなに上手く事が運ぶとは…まぁ誰でも殺そうとした相手に許されるとは思うまい、身の危険を感じて跳ねるしか無いか …
御前と連絡を取ってから綿密な計画を立てる事で話をまとめた三人だが、勝家はその足で信長に計画の報告をしに向かった。信長暗殺の計画を立てた信行だが、その計画が信長の罠だとは気づかずに破滅へと進み出す。
信長は信行を誘い出すために病気のふりをする。勝家はこの事を先ず城に広めて噂になってから信行に報告する事で信憑性を高めた。
「信行様どうやら信長の病気は本当のようです…この機会に跡目の書状を書かせては…」
「跡目は嫡男だろう…そんな書状を書かせてどうするのだ?」
「男色の信長には実子はいません…側室に子を産ませてますが皆欲の皮が突っ張った重臣達の子です」
信長はホモセクシャルなため正室に当然子供はいない…しかし欲の皮が突っ張った重臣達が対外的にも子供は必要として自分の子を身籠った女を側室として嫁がせ産まれた子を跡取りにして実権を握ろうと企んでいた。
そのため子供に興味の無い信長は奇妙、お次、三七など子供に出鱈目な名前を付けてふざけていた。
「なので誰を跡目にするか分かりませんが名前など改ざんして信行様にして仕舞えば良いのです…ようは信長を暗殺した後に重臣達の反感を買わないためには遺書のような書状があると良いかと…」
勝家の案に乗り気の蔵人罠だとも知らずに後押しをする。
「当主になった後を考えると確かに重臣達の反感を買うのは避けたいところ…信長の見舞に行って上手く奴に書状を書かせましょう。御前様の力を借りれば上手くいくはず…」
「勝家、母上と話す機会を上手く作ってくれ」
「……御前様には今まで通りこの勝家が連絡をしておきます」
「この暗殺に書状が重要なら…私が直接母上に……」
「お待ち下さい! 信長は御前様を屋形から出さない様にしております…理由はたぶん信行様に会わさないため…御前様の母心を苦しめているのでしょう」
「そうなると私が行っても会えないか…分かった勝家、頼むぞ‼」
「お任せ下さい……」
… 哀れな信行…御前は何も知らぬ…信長様は久し振りの再会を喜ぶ御前の目の前で首を跳ねるつもりだ……まったく鬼畜な発想だが、信長様の強さはこの残虐性かも知れんな ……
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