戦国に英雄無し

山光 海闇

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【数の力】

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尾張を統一した織田軍は、その勢いで今川家に落とされていた砦なども取り戻していた。   しかしこれが今川義元を怒らせた…砦を落とされた今川軍は二万五千の大軍で尾張に進攻して来た。


永禄三年 五月某日
織田軍  軍義

   今川軍二万五千が進攻の知らせを受け凍り付く様な空気の中で軍義は行われていた。
   織田軍の武将達が勢揃いでの軍義!この中に場違いの美少年が二人居る。信長の小姓だ…   
   今に例えると会社の重役会議に社長が愛人と同席となりあり得ない状況だが、時は戦国で小姓はいざとなれば信長の盾になる若武者だ。要するに信長の小姓は殿様(ホモ)の愛人と殿様の盾と言う実に恐ろしい職業である‼


   いっこうに進まない軍義に痺れを切らした信長が叫ぶ‼

「今川義元の首を私に差し出すのは誰だ!」

家臣達はうつ向いたまま黙り込む。

   圧倒的な兵力差で誰の目から見ても、勝ち目の無いイクサ…   降伏か全滅か2つに1つの状況で重臣達の大半が降伏を思案していたが信長はそんなことに納得しないする訳がない、現に今も“今川義元の首を取れ”の一点張りだ。   
      家臣達は腹をくくった!


          武・士・と・し・て・し・ぬ


「信長様このイクサ余りにも兵力が違い過ぎます我らにもはや勝ち目は無いものと…」

信長の顔がイビツに歪み怒りに震える!

「勝ち目は無いだと…!?
負ければ私は殺される…   お前、私に死ねと言うのか‼
   私は死なん…   死んでたまるかぁ~!!!   死ぬのは今川義元とお前だぁ~!!」

   叫ぶと同じに、手に取った刀を抜いて切り付けた。   慌てて家臣達が信長から刀を奪おうとする!

「信長様何卒お許しを!!お許し下さい!」

   やっとの思いで刀を取り上げた家臣達が信長を必死に落ち着かせる…
   さいわい切り付けられた武将は重症だが命に別状は無かった。

   ヒステリックな信長は激昂したかと思えば今度は怯えた眼差しで家臣達に問う。

「このイクサ今川義元には勝てないと…言うのか?」

うつ向く家臣達…

「負けたら私は殺される…くっ…兵力が違うだと!織田の兵士が弱いのか?」

「兵士の数が同じなら…いや倍の数でも必ず勝って見せましょう!ですが…今度の敵は二万五千以上の大軍、数が違い過ぎます…」

「数が同じか倍…ならば勝てる…
ならば……!」

   何かを言いかけてから、考え込み下を向く信長…
   
「後は、任せる…」
そう言うと小姓と共に退席してしまった。

   軍義は砦でギリギリまで踏ん張り籠城する…何としても城は守り抜く作戦で話合われた。


   その日の夜中に信長は馬廻りなどの側近達数人と密談をする。
   感情を剥き出しにする信長だが警戒心が人一倍強いため様々な事を想定する能力が高かった…
   軍義では今川の内通者が居る可能性を考えて作戦を言いとどまった。   戦国時代も情報戦が重要でスパイが横行していた…いわゆる忍者などがその類いだ。

「いいか、これから私が言う事は内密…そう隠密行動です。これから貴方達にやって貰う事は…我が軍の兵士を増やし、敵の兵士を減らす事…今川義元にバレずに!」

   皆が考えを巡らす…単純に言えば敵将などの寝返りだ、味方が増えて敵が減る。

「…しかし、どのようにして?」

「誰か、家康を覚えてないか?   向こうに居るのよ…家康は人質として今川に居た時期が長くて今川家の事を憎んでる…
   きっと他にも家康の様に今川を嫌っている奴がいるはず」

   家康は幼少の頃、尾張で暮らして居た事がるため…信長は家康が今川に人質として行くなどの因縁がある事を知っていた。

「織田に寝返りそうな奴を探すのですね」

「他にも金をやるでも、人質をとるでも何でもいいの…」

「分かりました」

   織田軍が圧倒的不利な状況で寝返る者を探すのは至難の技だが側近達は直ぐに行動を開始した。信長に逆らえ無いのは恐怖だけでは無い…みな知っているのだ、信長を喜ばせれば大抵の物は貰える事を…誰もが豪華な褒美に釣られ動き出す。

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