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「……鏡よ鏡。この世で最も罪深い男は、一体誰かな?」
王都の王宮、豪奢な装飾が施された自室。アルフォンス王子は、全身が映る大きな鏡の前で、うっとりと自らの姿を眺めていた。
彼は今、特注の白い軍服に身を包んでいる。マントには金糸で「愛」という文字を刺繍させようとしたが、裁縫師に泣きながら止められたため、代わりに大きな薔薇のブローチをつけていた。
「……やはり私だな。私の溢れ出す魅力が、二人の令嬢を狂わせてしまった。罪だ。あまりにも重すぎる罪だ」
アルフォンスは、髪を指先でくるりと巻き、物憂げな溜息をついた。
「殿下、出発の準備が整いました。……その、本当に騎士団を動かすのですか? 相手は女性二人のはずですが……」
部屋の隅で控えていた近習が、疲れ切った声で尋ねた。
「何を言う。相手はただの女性ではない。愛に破れ、魔道(筋肉)に魂を売ったチャーミーだぞ? 報告によれば、彼女は今や素手で城壁を破壊するほどの怪力を得ているというではないか」
「それは流石に噂に尾ひれがついているかと……」
「いいえ! 愛の力は、時に人を化け物に変えるのだ! あいつは今頃、離宮の冷たい床で、私の名前を叫びながら枕を千切り捨てているに違いない……!」
アルフォンスは、自らの想像に胸を打たれ、目元をハンカチで押さえた。
「おお、チャーミー……! 婚約破棄という名の劇薬が、君をそこまで追い詰めてしまったのか! 窓から飛び降り、夜の森を駆け抜けたのも、全ては私の関心を引くための、命懸けのパフォーマンスだったのだな!」
「……殿下、彼女はあの時、確かに『ラッキー!』と叫んでいたと記憶しておりますが」
「あれは照れ隠しだ! 究極のツンデレというやつだ! 本心では『行かないで、私のアルフォンス!』と心の中で血を流しながら叫んでいたはずだ!」
王子はバッと振り返り、机の上に置かれた何十枚もの紙束を掴み取った。
「見てくれ、この新作ポエムを! タイトルは『断崖の愛、あるいは大胸筋の咆哮』だ! これを読み聞かせれば、彼女の洗脳も解け、元のしおらしい(?)チャーミーに戻るはずだ!」
「……マリアンヌ様についてはどうお考えで?」
「マリアンヌも不憫な子だ。チャーミーの放つ『圧倒的な絶望のオーラ』に当てられ、無理やり薪を割らされているのだろう。私の腕の中に飛び込んできた時のために、香水の濃度を三倍にしておいたぞ」
アルフォンスは、シュッシュッと自分に香水を振りかけ、満足げに鼻を鳴らした。
「さあ、出発だ! 愛の救出劇の始まりだ! 全軍、離宮へ向けて進軍せよ! ……あ、それと、道中の村々で私のブロマイドを配るのも忘れるなよ?」
「……御意(もう帰りたいい)……」
近習は深く頭を下げ、王子の後に続いた。
王宮の門前では、ゼノンが「手加減してやってくれ」と祈っていた部下たちが、複雑な表情で隊列を組んでいた。
「おい……。本当に行くのかよ。相手はあの『怪力聖女』だぞ」
「隊長(ゼノン)もあっちにいるんだろ? 俺たち、板挟みじゃないか……」
騎士たちの不安をよそに、アルフォンス王子は白馬に跨り、颯爽と剣を引き抜いた。
「目標、チャーミーの離宮! 愛の鉄槌を下しに行くぞーっ!」
「「「「…………はーい(棒読み)」」」」
こうして、勘違いの極みに達した王子軍は、意気揚々と(?)王都を出発した。
彼らが離宮で待ち受けている「本当の地獄(トレーニング)」を知るのは、もう少し先のことである。
王都の王宮、豪奢な装飾が施された自室。アルフォンス王子は、全身が映る大きな鏡の前で、うっとりと自らの姿を眺めていた。
彼は今、特注の白い軍服に身を包んでいる。マントには金糸で「愛」という文字を刺繍させようとしたが、裁縫師に泣きながら止められたため、代わりに大きな薔薇のブローチをつけていた。
「……やはり私だな。私の溢れ出す魅力が、二人の令嬢を狂わせてしまった。罪だ。あまりにも重すぎる罪だ」
アルフォンスは、髪を指先でくるりと巻き、物憂げな溜息をついた。
「殿下、出発の準備が整いました。……その、本当に騎士団を動かすのですか? 相手は女性二人のはずですが……」
部屋の隅で控えていた近習が、疲れ切った声で尋ねた。
「何を言う。相手はただの女性ではない。愛に破れ、魔道(筋肉)に魂を売ったチャーミーだぞ? 報告によれば、彼女は今や素手で城壁を破壊するほどの怪力を得ているというではないか」
「それは流石に噂に尾ひれがついているかと……」
「いいえ! 愛の力は、時に人を化け物に変えるのだ! あいつは今頃、離宮の冷たい床で、私の名前を叫びながら枕を千切り捨てているに違いない……!」
アルフォンスは、自らの想像に胸を打たれ、目元をハンカチで押さえた。
「おお、チャーミー……! 婚約破棄という名の劇薬が、君をそこまで追い詰めてしまったのか! 窓から飛び降り、夜の森を駆け抜けたのも、全ては私の関心を引くための、命懸けのパフォーマンスだったのだな!」
「……殿下、彼女はあの時、確かに『ラッキー!』と叫んでいたと記憶しておりますが」
「あれは照れ隠しだ! 究極のツンデレというやつだ! 本心では『行かないで、私のアルフォンス!』と心の中で血を流しながら叫んでいたはずだ!」
王子はバッと振り返り、机の上に置かれた何十枚もの紙束を掴み取った。
「見てくれ、この新作ポエムを! タイトルは『断崖の愛、あるいは大胸筋の咆哮』だ! これを読み聞かせれば、彼女の洗脳も解け、元のしおらしい(?)チャーミーに戻るはずだ!」
「……マリアンヌ様についてはどうお考えで?」
「マリアンヌも不憫な子だ。チャーミーの放つ『圧倒的な絶望のオーラ』に当てられ、無理やり薪を割らされているのだろう。私の腕の中に飛び込んできた時のために、香水の濃度を三倍にしておいたぞ」
アルフォンスは、シュッシュッと自分に香水を振りかけ、満足げに鼻を鳴らした。
「さあ、出発だ! 愛の救出劇の始まりだ! 全軍、離宮へ向けて進軍せよ! ……あ、それと、道中の村々で私のブロマイドを配るのも忘れるなよ?」
「……御意(もう帰りたいい)……」
近習は深く頭を下げ、王子の後に続いた。
王宮の門前では、ゼノンが「手加減してやってくれ」と祈っていた部下たちが、複雑な表情で隊列を組んでいた。
「おい……。本当に行くのかよ。相手はあの『怪力聖女』だぞ」
「隊長(ゼノン)もあっちにいるんだろ? 俺たち、板挟みじゃないか……」
騎士たちの不安をよそに、アルフォンス王子は白馬に跨り、颯爽と剣を引き抜いた。
「目標、チャーミーの離宮! 愛の鉄槌を下しに行くぞーっ!」
「「「「…………はーい(棒読み)」」」」
こうして、勘違いの極みに達した王子軍は、意気揚々と(?)王都を出発した。
彼らが離宮で待ち受けている「本当の地獄(トレーニング)」を知るのは、もう少し先のことである。
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