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「……ねえ。これ、デジャヴかしら?」
王都の王城、一番大きな舞踏会場。
煌びやかなシャンデリアの下、着飾った貴族たちがひしめき合い、ざわめいている。
その中心、一段高くなったステージの上に、私は立たされていた。
隣国から物理的に拉致……いえ、連行されてから数時間。
私は風呂に入れられ、磨き上げられ、最高級のシルクのドレス(なぜか私のサイズに完璧に調整されていた。お兄様の仕業ね)を着せられて、ここに放り出されたのだ。
「デジャヴではありませんわ、イーズ様。これは『現実』という名の悪夢ですぅ……」
私の隣には、同じくドレスアップさせられたララさんが、涙目で震えている。
彼女も巻き添えで連れ戻されたのだ。
そして、ステージの下では、ゼクスが騎士団に取り囲まれながら、死んだ魚のような目で虚空を見つめていた。
「静粛に! 皆のもの、静粛に!」
ステージの中央で、よく通る声が響いた。
第一王子、ヴィルフリードだ。
彼は、数ヶ月前の「夜逃げ前夜」と同じように、自信満々に銀髪をかき上げ、私を指差した。
「今宵、再びこの場に集まってもらったのは他でもない! ここにいる我が婚約者、イーズ・ラングマイヤーの『罪』を明らかにし、その全てを精算するためである!」
会場がどよめいた。
「またか」「今度こそ婚約破棄か」「いや、王子のあの嬉しそうな顔を見ろ、何か違うぞ」というヒソヒソ声が聞こえる。
私は深くため息をついた。
学習能力というものが、この国の王族には欠落しているらしい。
「イーズ! 君の罪状は以下の通りだ!」
ヴィルフリードが、やけに分厚い巻物を広げた。
「第一の罪! 愛する婚約者(僕)を置いて、勝手に自分探しの旅に出た『愛の放置罪』!」
「第二の罪! 隣国の要塞を勝手に効率化し、他国の軍事力を底上げした『才能の無駄遣い罪』!」
「第三の罪! 僕が魂を削って書いたポエム1000通を、キャンプファイヤーの燃料にした『情熱の焼却罪』!」
(……全部、お前のせいだろうが!!)
私は心の中でちゃぶ台をひっくり返した。
何が罪よ。ただの私の「正当防衛」と「生存戦略」の記録じゃない。
「そして、最大の罪! それは……これほどまでに僕を愛していながら、それを素直に認めようとしない『ツンデレ偽装罪』である!」
「……は?」
会場の空気が凍りついた。
ツンデレ偽装罪?
貴族たちも、さすがにどう反応していいか分からず、困惑の視線を交わしている。
「そうだ! 君は恥ずかしがり屋だから、わざと僕を避けたり、ポエムを燃やしたりして気を引こうとしたのだろう? だが、もう安心していい。君のその歪んだ愛情表現も、僕は全て受け入れる覚悟ができた!」
ヴィルフリードは、感極まったように両手を広げた。
ダメだ。この王子、ポジティブの方向にバグってる。
「そこで、カイン卿! 証拠の提出を!」
「承知しました、殿下」
ステージの袖から、お兄様が現れた。
彼は完璧な角度でお辞儀をすると、手元の資料を読み上げ始めた。
「調査の結果、イーズが逃亡中に摂取した食事のカロリーと栄養バランスは、王宮で提供される食事と比べて著しく偏っておりました。特に『肉ジュース』なる奇食は、精神的なストレスが極限に達していた証拠。……つまり、彼女は殿下と離れたことで、心身ともに衰弱していたのです」
「……違うわよ! あんたの監視を逃れるための苦肉の策だったのよ!」
「さらに、隣国の王太子に提出した戦略書。あれは、表向きは隣国のためのものですが、その実、行間には『早く私を迎えに来て、ヴィルフリード様』という隠されたメッセージが……」
「ないわよ! 一行たりとも、そんなこと書いてないわよ!」
「……あると仮定した方が、計算上の整合性が取れるのです」
お兄様の眼鏡が怪しく光った。
この兄妹、事実を捻じ曲げてでも「妹は王子を愛している」という結論に着地させようとしている。
これはもう、断罪イベントじゃない。
「公開処刑」という名の、巨大な勘違い発表会だ。
「さあ、イーズ! もう意地を張るのはおやめ! 皆の前で、僕への愛を叫ぶんだ! そうすれば、全ての罪を許し、改めて盛大な結婚式を……」
ヴィルフリードが私に詰め寄ってくる。
その瞳は、疑いようのない「善意」と「愛」で満ちていた。
……ああ、そうか。
こいつら、本気なんだ。
本気でこれが、私のためになると思ってるんだ。
ブチン、と私の中で何かが切れる音がした。
「……いい加減にしなさいよ、このバカ男ども!!!」
私はドレスの裾を蹴り上げ、ステージの中央に躍り出た。
淑女の仮面?
そんなもの、隣国の雪山に捨ててきたわ!
「誰が愛の逃避行よ! 誰がツンデレよ! 私はね、あんたのその暑苦しい勘違いと、お兄様のねちっこい管理から逃げ出したかっただけなのよ!」
会場が静まり返る。
公爵令嬢が、王子に向かって「バカ男」と叫んだのだ。
本来なら不敬罪で即刻投獄レベルだが、私の勢いに全員が気圧されていた。
「罪を精算するですって? 上等じゃない。精算しましょうよ!」
私は、ステージの下にいるゼクスに向かって叫んだ。
「ゼクス! あんた、元騎士団長なら法律には詳しいわよね!? 今すぐ『精神的苦痛に対する慰謝料請求』と『ストーカー行為禁止命令』の申請書を用意しなさい!」
「……は? お前、本気か?」
「本気よ! 訴えてやるわ! この数ヶ月間の私の逃亡生活にかかった費用、精神的ストレス、そして『肉ジュース』を飲まされた屈辱! 全部まとめて、国家予算レベルの慰謝料を請求してやるんだから!」
私はヴィルフリードとカインを交互に指差した。
「証人はここにいる全員よ! さあ、第二回戦の始まりよ! 今度は私が、あなたたちを『断罪』してあげるわ!」
私の宣戦布告が、王城の広間に響き渡った。
愛の劇場は、泥沼の法廷闘争へと幕を開けようとしていた。
王都の王城、一番大きな舞踏会場。
煌びやかなシャンデリアの下、着飾った貴族たちがひしめき合い、ざわめいている。
その中心、一段高くなったステージの上に、私は立たされていた。
隣国から物理的に拉致……いえ、連行されてから数時間。
私は風呂に入れられ、磨き上げられ、最高級のシルクのドレス(なぜか私のサイズに完璧に調整されていた。お兄様の仕業ね)を着せられて、ここに放り出されたのだ。
「デジャヴではありませんわ、イーズ様。これは『現実』という名の悪夢ですぅ……」
私の隣には、同じくドレスアップさせられたララさんが、涙目で震えている。
彼女も巻き添えで連れ戻されたのだ。
そして、ステージの下では、ゼクスが騎士団に取り囲まれながら、死んだ魚のような目で虚空を見つめていた。
「静粛に! 皆のもの、静粛に!」
ステージの中央で、よく通る声が響いた。
第一王子、ヴィルフリードだ。
彼は、数ヶ月前の「夜逃げ前夜」と同じように、自信満々に銀髪をかき上げ、私を指差した。
「今宵、再びこの場に集まってもらったのは他でもない! ここにいる我が婚約者、イーズ・ラングマイヤーの『罪』を明らかにし、その全てを精算するためである!」
会場がどよめいた。
「またか」「今度こそ婚約破棄か」「いや、王子のあの嬉しそうな顔を見ろ、何か違うぞ」というヒソヒソ声が聞こえる。
私は深くため息をついた。
学習能力というものが、この国の王族には欠落しているらしい。
「イーズ! 君の罪状は以下の通りだ!」
ヴィルフリードが、やけに分厚い巻物を広げた。
「第一の罪! 愛する婚約者(僕)を置いて、勝手に自分探しの旅に出た『愛の放置罪』!」
「第二の罪! 隣国の要塞を勝手に効率化し、他国の軍事力を底上げした『才能の無駄遣い罪』!」
「第三の罪! 僕が魂を削って書いたポエム1000通を、キャンプファイヤーの燃料にした『情熱の焼却罪』!」
(……全部、お前のせいだろうが!!)
私は心の中でちゃぶ台をひっくり返した。
何が罪よ。ただの私の「正当防衛」と「生存戦略」の記録じゃない。
「そして、最大の罪! それは……これほどまでに僕を愛していながら、それを素直に認めようとしない『ツンデレ偽装罪』である!」
「……は?」
会場の空気が凍りついた。
ツンデレ偽装罪?
貴族たちも、さすがにどう反応していいか分からず、困惑の視線を交わしている。
「そうだ! 君は恥ずかしがり屋だから、わざと僕を避けたり、ポエムを燃やしたりして気を引こうとしたのだろう? だが、もう安心していい。君のその歪んだ愛情表現も、僕は全て受け入れる覚悟ができた!」
ヴィルフリードは、感極まったように両手を広げた。
ダメだ。この王子、ポジティブの方向にバグってる。
「そこで、カイン卿! 証拠の提出を!」
「承知しました、殿下」
ステージの袖から、お兄様が現れた。
彼は完璧な角度でお辞儀をすると、手元の資料を読み上げ始めた。
「調査の結果、イーズが逃亡中に摂取した食事のカロリーと栄養バランスは、王宮で提供される食事と比べて著しく偏っておりました。特に『肉ジュース』なる奇食は、精神的なストレスが極限に達していた証拠。……つまり、彼女は殿下と離れたことで、心身ともに衰弱していたのです」
「……違うわよ! あんたの監視を逃れるための苦肉の策だったのよ!」
「さらに、隣国の王太子に提出した戦略書。あれは、表向きは隣国のためのものですが、その実、行間には『早く私を迎えに来て、ヴィルフリード様』という隠されたメッセージが……」
「ないわよ! 一行たりとも、そんなこと書いてないわよ!」
「……あると仮定した方が、計算上の整合性が取れるのです」
お兄様の眼鏡が怪しく光った。
この兄妹、事実を捻じ曲げてでも「妹は王子を愛している」という結論に着地させようとしている。
これはもう、断罪イベントじゃない。
「公開処刑」という名の、巨大な勘違い発表会だ。
「さあ、イーズ! もう意地を張るのはおやめ! 皆の前で、僕への愛を叫ぶんだ! そうすれば、全ての罪を許し、改めて盛大な結婚式を……」
ヴィルフリードが私に詰め寄ってくる。
その瞳は、疑いようのない「善意」と「愛」で満ちていた。
……ああ、そうか。
こいつら、本気なんだ。
本気でこれが、私のためになると思ってるんだ。
ブチン、と私の中で何かが切れる音がした。
「……いい加減にしなさいよ、このバカ男ども!!!」
私はドレスの裾を蹴り上げ、ステージの中央に躍り出た。
淑女の仮面?
そんなもの、隣国の雪山に捨ててきたわ!
「誰が愛の逃避行よ! 誰がツンデレよ! 私はね、あんたのその暑苦しい勘違いと、お兄様のねちっこい管理から逃げ出したかっただけなのよ!」
会場が静まり返る。
公爵令嬢が、王子に向かって「バカ男」と叫んだのだ。
本来なら不敬罪で即刻投獄レベルだが、私の勢いに全員が気圧されていた。
「罪を精算するですって? 上等じゃない。精算しましょうよ!」
私は、ステージの下にいるゼクスに向かって叫んだ。
「ゼクス! あんた、元騎士団長なら法律には詳しいわよね!? 今すぐ『精神的苦痛に対する慰謝料請求』と『ストーカー行為禁止命令』の申請書を用意しなさい!」
「……は? お前、本気か?」
「本気よ! 訴えてやるわ! この数ヶ月間の私の逃亡生活にかかった費用、精神的ストレス、そして『肉ジュース』を飲まされた屈辱! 全部まとめて、国家予算レベルの慰謝料を請求してやるんだから!」
私はヴィルフリードとカインを交互に指差した。
「証人はここにいる全員よ! さあ、第二回戦の始まりよ! 今度は私が、あなたたちを『断罪』してあげるわ!」
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