一人の恋の話

にしぬん

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恋の自覚

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俺、喜瀬 浩きせ ひろ16歳にはずっと好きな人がいる。

相手は幼馴染で自分より身長が少し低い男の子。昔からお隣さんで、小中高とずっと同じ学校でおなじクラスの名字が近いから席もよく近くになる。そんな自分と相手は昔ながらずっと一緒にいるため、親友以上家族同然の存在だった

自分がそれで満足出来なくなったのは相手が中学1年生の時だった普段なら気にしないのにやけに相手を見てしまう。何故だろうかわけも分からなかったが気づいてしまったんだ。相手のことを一人の男としてみてしまっていることを

自覚してしまってからは相手の顔をろくに見れなくなってしまう。それと同時に家族同然の親友をそんな目で見ている自分が気持ち悪く見えた。だけど、自覚してしまった以上はこの芽生えてしまった恋心と向き合わないといけない

だけどそう簡単に区別できるわけなく、相手を数日避けてしまっていた日のこと

「最近避けているだろ」

学校が終わるチャイムが鳴り、1人で帰ろうとしているところに相手が現れては、相手が不満そうに声をかけてきてくれた。それは良かったの良くないのか自分はよくわかっていないが相手の不満そうな顔に少し嬉しく思ってしまうに吐き気がした

『なんでもないよ…ちょっと考え事してた』

そんなことを伝えると相手は「隠し事してるだろ!隠し事は俺たちの間には無しだからな」と伝えてきてくれた。その言葉に自分の中を見透かされた気がして、焦ってしまい相手を見ずことも出来ずに『そんなわけないだろうっ』と苦し紛れな言い訳を述べてしまう
自分は本当にそんなことを言いたいわけじゃない

本当に言いたかった言葉は………なんだっけ

ここで相手のことが好きでしたなんて言ってしまえば、相手に拒絶される。もし相手が自分の気持ちをくんだとしても親友からは発展しないのに何を期待しているのだろうか

「大丈夫か?…なんか具合悪そうだぞ」

心配そうにこちらを見ている相手に、ここで相手のこと好きでしたなんて言ったらどんな顔をするのだろうか

『ねぇ…俺さ…好きな人が出来たんだ』

ふとそんなことを相手に対して呟くとキョトンとした顔で相手は数秒何も言わずに考えた後に「本当かっ!?」と嬉しそうな顔をしては「どんな子か!?隣の山田さんか!?」と女の子を呼ぶ姿を見て

(あぁ…やはり世間では異性は異性をすきになるっていうことが普通なのか)

相手が異性の名を呼ぶ度に胸がちくりとしてしまう。傲慢なこの心の中をぶちまけた瞬間、相手は俺の事を拒絶してしまうのだろうか

それを考えながら相手の質問攻めを受けながら自分が相手に対して歪んでいっていることを自覚しながら帰った中学1年生のことだった

あれから数年が経ち、自分は相手と同じ高校に通うことになる

あれから相手は自分が好きな人のことをずっと聞かれる
『…優しくて絵が好きなやつ』と答えるが名前だけは教えなかった。相手はもしかしてと異性の名をあげるも自分ははぐらかすばかりで相手は真相にたどりつけていない様子でそれを見るだけで満足してしまっている自分がどんどん薄汚れていっているような気がして吐き気が増す一方だった。

だが、この関係が続くのならばよかったと思った

とある日、相手が部活を始めると言った。別に相手は絵が上手いわけで美術部に入ることは相手にとってプラスになるだろうと考えたが、その美術部に入ったことにより相手は次第に変わっていってしまった

自分は部活などやる気がないので、暇つぶしに相手と美術部に見学に向かうことになり、美術部の教室の目の前に来るとドアが勢いよく開いては「もしかして見学に来てくれた子?!」と嬉しそうにする眼鏡をかけた優しそうな女性がいた

「は、はい」

と相手が緊張気味な声で答えると女性は微笑んで自分たちを美術部に招き入れた。入ると作品が並べてあり、それを見ながら準備された椅子に腰かけると「ここはね今部員が私だけなの…」とたんたんと説明する相手に真剣な眼差しで見つめる相手は「俺入ろうかな…」と呟くと聞き逃さなかった女性は嬉しそうに相手の手を握る。

その瞬間を見た自分の気持ちは(触るな!)と叫んでいた。握られると照れている相手を見ては(お前はやはり俺とは結ばれないんだな)と自分の価値観と相手の価値観が違うことを自覚させられる

相手はその後、美術部に入部をした。自分も誘われたが絵が下手という言い訳を伝える。本当は相手と女性が仲良くなる瞬間を見たくなっただけだ

どんどん自分の心が醜くなっていく

そんなことを知らない相手はこの日から変わったように一緒に帰っていたのに部活があるからと一緒に帰らなくなった。その代わりに相手は女性と一緒に帰っていた

そこは俺の場所なのに…そこすら取られてしまうのかと焦りと嫉妬で顔を歪ませる

俺はあの女性には叶わない。俺は女性のような体つきではなくガタイがいい身長も高いし、髪も短髪で男らしい顔立ちだ

こんな俺なんかは相手に振り向いて貰えないだろう

だからこの気持ちは心奥深くにしまい込む。誰にもバレないように
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