【完結】令嬢は愛されたかった・冬

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ファリナ用の新しい洋服をファリナのクローゼットにかけると、ファリナは、その光景をニコニコしながら、眺めた。
初めて自分のためだけに並んでいる服。
厳しい冬でも暖かく外出できそうな真っ白なコート。薄紫色のキラキラした飾りが上品に縫い付けられたドレス。
植物画から切り取ったような模様のワンピース。

「ミーはどれが好き?」
聞いてみると、ミーは意外なことを言った。
「そのコート、幻の魔獣の毛皮からできている。お前以外が着たらあっという間にあの世行きだ」
「え?」
「なんであんな普通の店にあったか知らないけど、見た目じゃわからないのは確かだな。ちょっと試着したぐらいなら、害はないし。アビゼルはわかってて選んだんだ」
あったかくて武装もできる、よかったなとミーは言う。
ファリナは思考停止してしまった。

だいたいファリナには自分の力に対する自信がまるでなかった。
全属性で魔力最大。
本当にそんなすごいものなのだろうか?
ちがっていたら、どうしよう。
ファリナには帰る場所がどこにもない。
ミーと会うまで、メリー以外は、誰もファリナを見てくれなかった。

それが急に大きく変化した。ミーと師匠。ふたりともファリナを見てくれる。
ファリナはふたりに見捨てられたくない。一生懸命魔法を習う。自信はないけど、そう決めている。
決めてはいるけれど、ちゃんとできなかったら、どうしたらいいんだろう。
ファリナの居場所はもうこの塔の中にしかないのに。

そうだ、とファリナは思いついた。
魔法が使えなかったら、この塔の中の召使いになればいい。お皿洗いやモップがけなら、できる。
それに、ミーがいればもうさみしくない。
今までとはちがうのだ。
ファリナの人生は全然ちがうものになった。

「おい、練習を始めるぞ」
アビゼルの声がする。
ミーが、ファリナの肩に飛び乗る。
「今行きます」
ファリナは気づいていないが、いつもより大きな声になっている。
ファリナ自身は気づいていないが、
ファリナは少しずつ変わって行っている。
春はもうすぐそこなのだ。


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