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第五話
「リューさまは、働かなくていいの?」
アリサはリュエルと発音できなくて、呼び名はリューさまに落ち着いた。
話す内容もいつも子どもみたいなわけではなく、目覚めたときのように年齢相応なときもある。記憶がバラバラになってしまったようだ。
「今はね。アリサが元気になったら、一緒に学園に行こうね」
公爵家の使用人たちはひそかに驚いていた。リュエルはあまり表情が変わらない。それがアリサと話しているときだけは生き生きとしている。
笑顔なんて初めて見た、という侍女が多かった。
自然とアリサへの対応も変わってくる。
公爵家令息が大事にしているアリサ。
となると、子爵家の令嬢とはいえ、アリサは公爵家の最上級のお客様と認識され始めた。
「リューさま、アリサこれ嫌い」
昼食を一緒に食べているときに、アリサはピーマンをなんとかフォークで捕まえてリュエルに見せている。
「ピーマンだね。好き嫌いはよくないよ。ほら、あーん」
リュエルがチーズを多めにからめたピーマンを差し出すと、少し躊躇ったアリサだったが、口を開けた。
リュエルが餌付けって楽しいと変な趣味の扉を開け始めた頃、アリサのお皿にあったピーマンはなくなっていた。
「リューさま、この絵本を読んでほしいの」
アリサは読み書きができなくなっていた。教えてもいいのだが、元はできるのだから、焦らなくてもよいだろうとリュエルが読み聞かせていた。
読み聞かせのときのアリサの定位置は、リュエルの足の間だ。小さな子よりは大きいアリサだったが小柄なので、背の高いリュエルとの身長にはかなり差がある。
「うん、いいよ。アリサはこの本が好きだね」
「だって」
「うん?」
「おうじさまが」
「声が小さくて聞こえないよ、アリサ」
「王子様がリューさまに似てるの」
そう言うとアリサは真っ赤になった。
リュエルもだ。
「読もうか」
しばらく沈黙していた2人だが、リュエルは絵本を読み始めた。
「アリサ、庭を散歩しようか?」
リュエルが声をかけても、返事がない。
アリサはすやすやと眠っていた。
しばらく寝顔を見ていたが、今日はそれほど暖かくはない。
風邪をひいては大変だ。
リュエルはそうっとアリサを抱き上げると、ベッドへ運んだ。
起きてしまわないか心配だったが、アリサはぐっすり寝ているようだ。
また寝顔をしばらく見ていた。
アリサの婚約者であるミゲルはアリサの外見が気に入らないようだが、リュエルには理解できなかった。茶色い髪に今は閉じられている灰色の瞳。優しい色合いで、リュエルは気に入っている。
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笑顔なんて初めて見た、という侍女が多かった。
自然とアリサへの対応も変わってくる。
公爵家令息が大事にしているアリサ。
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「リューさま、アリサこれ嫌い」
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リュエルが餌付けって楽しいと変な趣味の扉を開け始めた頃、アリサのお皿にあったピーマンはなくなっていた。
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「うん、いいよ。アリサはこの本が好きだね」
「だって」
「うん?」
「おうじさまが」
「声が小さくて聞こえないよ、アリサ」
「王子様がリューさまに似てるの」
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「読もうか」
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