【完結】ええと?あなたはどなたでしたか?

ここ

文字の大きさ
8 / 12

第八話

イルマン公爵家にいるアリサは、時々やって来るお父様にもだいぶ慣れた。
「公爵家のみなさんに、感謝を忘れてはいけないよ。使用人の方々にも、丁寧に接しなさい」
「リューさまは、いつも褒めてくれるよ。みんなと仲良しでえらいねって」
「それならいい。そろそろバーグマン家に帰らないかい?」
「リューさまがそうしろって言ったらそうする」
バーグマン子爵は、すでにリュエルと話している。リュエルはアリサが帰りたいなら仕方ないと言った。
たしかに子爵家では新しい使用人を雇わないと四六時中一緒にいるのは難しい。
今、アリサから目を離すのは危ないだろう。結局ご好意に甘えることにした。
「アリサ、また来るからね」
「はい!」

アリサは基本的には邸内にいて、リュエルにべったりだが、その日はリュエルはどうしても外せない用事で外出していた。
アリサはお絵描きをしていた。
動物の絵を描いては、侍女たちに何の動物か当ててもらうのだ。
アリサの絵は独特なため、なかなか当たらない。
「豚さん!」
「当たり!マーガレットが優勝!」
アリサはやっとマーガレットと呼べるようになった。
ちなみに優勝者には料理長サム特製のお菓子詰め合わせが贈られた。
「アリサ様、お茶にしましょう」
マーガレットとリルナは支度を始めた。
お茶菓子には先ほどの優勝賞品の一部も入れた。マーガレット用にはかなり量が多かったのだ。

「アリサ様、次は何をいたしましょう?」
「リューさまはまだ帰って来ないの?」
不安そうなアリサにあわてて、
「もうすぐです。あと少し」
言ってみたものの、いつ帰るかはわからない。
アリサは泣き出してしまった。
一生懸命泣くのをこらえていたが、ついに止められず、号泣という困ったことになった。
マーガレットとリルナはアリサの気を引くため、綺麗なリボンを机の上に並べ始めた。もしアリサが泣き出したら、使うように坊ちゃんが用意していたのだ。
「リュエル様からのプレゼントです。
どれがよろしいですか?お気に入りを髪に編んで、お帰りを待つのはいかがですか?」
ぐすっぐすっと泣きながら、アリサは机の上を見た。
それぞれ凝っていて、見飽きない。

「これはいかがでしょう。緑はリュエル様の色ですし、今日のドレスにも合いますよ」
緑色のリボンにはレースが上品についていて、とても可愛い。
「アリサ、これにする」
「かしこまりました」
リルナが、アリサの髪をとかし、リボンを髪に編み込んでいく。
「さあ、どうですか?」
「わぁ!」
アリサはその日、リュエルが帰るまでご機嫌に過ごした。


あなたにおすすめの小説

白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

「お幸せに」と微笑んだ悪役令嬢は、二度と戻らなかった。

パリパリかぷちーの
恋愛
王太子から婚約破棄を告げられたその日、 クラリーチェ=ヴァレンティナは微笑んでこう言った。 「どうか、お幸せに」──そして姿を消した。 完璧すぎる令嬢。誰にも本心を明かさなかった彼女が、 “何も持たずに”去ったその先にあったものとは。 これは誰かのために生きることをやめ、 「私自身の幸せ」を選びなおした、 ひとりの元・悪役令嬢の再生と静かな愛の物語。

危害を加えられたので予定よりも早く婚約を白紙撤回できました

しゃーりん
恋愛
階段から突き落とされて、目が覚めるといろんな記憶を失っていたアンジェリーナ。 自分のことも誰のことも覚えていない。 王太子殿下の婚約者であったことも忘れ、結婚式は来年なのに殿下には恋人がいるという。 聞くところによると、婚約は白紙撤回が前提だった。 なぜアンジェリーナが危害を加えられたのかはわからないが、それにより予定よりも早く婚約を白紙撤回することになったというお話です。

記憶が戻ったのは婚約が解消された後でした。

しゃーりん
恋愛
王太子殿下と婚約している公爵令嬢ダイアナは目を覚ますと自分がどこにいるのかわからなかった。 眠る前と部屋の雰囲気が違ったからだ。 侍女とも話が噛み合わず、どうやら丸一年間の記憶がダイアナにはなかった。 ダイアナが記憶にないその一年の間に、王太子殿下との婚約は解消されており、別の男性と先日婚約したばかりだった。 彼が好きになったのは記憶のないダイアナであるため、ダイアナは婚約を解消しようとするお話です。

結婚して5年、冷たい夫に離縁を申し立てたらみんなに止められています。

真田どんぐり
恋愛
ー5年前、ストレイ伯爵家の美しい令嬢、アルヴィラ・ストレイはアレンベル侯爵家の侯爵、ダリウス・アレンベルと結婚してアルヴィラ・アレンベルへとなった。 親同士に決められた政略結婚だったが、アルヴィラは旦那様とちゃんと愛し合ってやっていこうと決意していたのに……。 そんな決意を打ち砕くかのように旦那様の態度はずっと冷たかった。 (しかも私にだけ!!) 社交界に行っても、使用人の前でもどんな時でも冷たい態度を取られた私は周りの噂の恰好の的。 最初こそ我慢していたが、ある日、偶然旦那様とその幼馴染の不倫疑惑を耳にする。 (((こんな仕打ち、あんまりよーー!!))) 旦那様の態度にとうとう耐えられなくなった私は、ついに離縁を決意したーーーー。

【完結】公爵令嬢は、婚約破棄をあっさり受け入れる

櫻井みこと
恋愛
突然、婚約破棄を言い渡された。 彼は社交辞令を真に受けて、自分が愛されていて、そのために私が必死に努力をしているのだと勘違いしていたらしい。 だから泣いて縋ると思っていたらしいですが、それはあり得ません。 私が王妃になるのは確定。その相手がたまたま、あなただった。それだけです。 またまた軽率に短編。 一話…マリエ視点 二話…婚約者視点 三話…子爵令嬢視点 四話…第二王子視点 五話…マリエ視点 六話…兄視点 ※全六話で完結しました。馬鹿すぎる王子にご注意ください。 スピンオフ始めました。 「追放された聖女が隣国の腹黒公爵を頼ったら、国がなくなってしまいました」連載中!

夫は私を愛していないそうなので、遠慮なく離婚します。今さら引き止められても遅いです

藤原遊
恋愛
王妃付き護衛騎士である夫に、「お前を愛したことはない」と告げられた。 理由は単純。 愛などなくても、仕事に支障はないからだという。 ──そうですか。 それなら、こちらも遠慮する必要はありませんね。 王妃の機嫌、侍女たちとの関係、贈り物の選定。 夫が「当然のように」こなしていたそれらは、すべて私が整えていたもの。 離婚後、少しずつ歯車は狂い始める。 気づいたときにはもう遅い。 積み上げてきた信用は、静かに崩れていく。 一方で私は、王妃のもとへ。 今さら引き止められても、遅いのです。

婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが

マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって? まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ? ※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。 ※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。