9 / 12
第九話
リュエルはアリサの馬車に細工した人物を探させていた。見つかったとの報告を受けて、確認に出向いた。もちろんその人物も憎い。だが、命令したのが誰かを解明したかった。
「俺はやってない」
「俺はやったかもしれないが、脅されて仕方なく」
のどっちかだと男は言う。
後者なら、と手を出した。
その手に金貨を握らせると、
「ミゲル・ファイアット」
そして、男は去って行く。
「追いましょうか?」
「いや、いい。お前の死体は見たくない」
相手が悪い。証言などさせられない。
ミゲルを糾弾することはかなり難しくなった。
邸に帰ると使用人たちの目がなんだか冷たい。
「何があった?」
「アリサ様はずっと起きてお待ちになっていました。リボンを見せたくて。
リュエル様がなかなか帰って来られないため、泣きながら、やっとお休みになりました」
「あー。こんなに遅くなるつもりはなかったんだ」
使用人たちは冷たい眼差しのまま、リュエルの手伝いを始めた。
翌日の朝、いつもより早めにアリサのところへ行くと、アリサは抱きついてきた。
「リューさま」
「うん。昨日はごめんね。そのリボンよく似合っている」
「リューさま」
「うん」
そうしてしばらく抱き合っていた。
使用人たちは静かに見守った。
「えっ、アリサとですか?」
朝ご飯の後に呼び出されたリュエルに公爵夫人はにこやかに続けた。
「そう。私とふたりでお茶をしたいの」
「母上、アリサは子どもです。お茶の作法も、母上への言葉遣いもわかっていません。失礼があるかと心配です」
「それは構わないわ。リュエルがあんなに大切にしている令嬢ですもの。ちゃんと会っておきたいだけよ」
リュエルは、母に弱い。優しい人だが、一癖あるし、リュエルの女性関係にも目を光らせている。
「私も同席していいですね?」
「あら、ダメよ。女性同士で話したいのだから」
そう押し切られた上、今日のおやつタイムに決行と言われて、リュエルは慌てた。
「アリサ、僕の母上がね、アリサとお茶をしたいんだって。急だけど、大丈夫かな?」
あんまり大丈夫じゃないよなあと思いたがら、尋ねてみる。
「わかった。お着替えしてくる」
あれ?と思うほどアリサは乗り気だ。
お母様だ!アリサにはいないもん!
リューさまのお母様なら、きっと優しいもん!アリサの本来の記憶が混ざっているのか、アリサはバーグマン家に母親がいないことを覚えていた。
アリサが3つのときに弟を産んで亡くなった母。
父は再婚せずに2人を育ててきた。
決して口にはしなかったが、アリサには母親という存在に特別な思いがある。
「俺はやってない」
「俺はやったかもしれないが、脅されて仕方なく」
のどっちかだと男は言う。
後者なら、と手を出した。
その手に金貨を握らせると、
「ミゲル・ファイアット」
そして、男は去って行く。
「追いましょうか?」
「いや、いい。お前の死体は見たくない」
相手が悪い。証言などさせられない。
ミゲルを糾弾することはかなり難しくなった。
邸に帰ると使用人たちの目がなんだか冷たい。
「何があった?」
「アリサ様はずっと起きてお待ちになっていました。リボンを見せたくて。
リュエル様がなかなか帰って来られないため、泣きながら、やっとお休みになりました」
「あー。こんなに遅くなるつもりはなかったんだ」
使用人たちは冷たい眼差しのまま、リュエルの手伝いを始めた。
翌日の朝、いつもより早めにアリサのところへ行くと、アリサは抱きついてきた。
「リューさま」
「うん。昨日はごめんね。そのリボンよく似合っている」
「リューさま」
「うん」
そうしてしばらく抱き合っていた。
使用人たちは静かに見守った。
「えっ、アリサとですか?」
朝ご飯の後に呼び出されたリュエルに公爵夫人はにこやかに続けた。
「そう。私とふたりでお茶をしたいの」
「母上、アリサは子どもです。お茶の作法も、母上への言葉遣いもわかっていません。失礼があるかと心配です」
「それは構わないわ。リュエルがあんなに大切にしている令嬢ですもの。ちゃんと会っておきたいだけよ」
リュエルは、母に弱い。優しい人だが、一癖あるし、リュエルの女性関係にも目を光らせている。
「私も同席していいですね?」
「あら、ダメよ。女性同士で話したいのだから」
そう押し切られた上、今日のおやつタイムに決行と言われて、リュエルは慌てた。
「アリサ、僕の母上がね、アリサとお茶をしたいんだって。急だけど、大丈夫かな?」
あんまり大丈夫じゃないよなあと思いたがら、尋ねてみる。
「わかった。お着替えしてくる」
あれ?と思うほどアリサは乗り気だ。
お母様だ!アリサにはいないもん!
リューさまのお母様なら、きっと優しいもん!アリサの本来の記憶が混ざっているのか、アリサはバーグマン家に母親がいないことを覚えていた。
アリサが3つのときに弟を産んで亡くなった母。
父は再婚せずに2人を育ててきた。
決して口にはしなかったが、アリサには母親という存在に特別な思いがある。
あなたにおすすめの小説
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
「お幸せに」と微笑んだ悪役令嬢は、二度と戻らなかった。
パリパリかぷちーの
恋愛
王太子から婚約破棄を告げられたその日、
クラリーチェ=ヴァレンティナは微笑んでこう言った。
「どうか、お幸せに」──そして姿を消した。
完璧すぎる令嬢。誰にも本心を明かさなかった彼女が、
“何も持たずに”去ったその先にあったものとは。
これは誰かのために生きることをやめ、
「私自身の幸せ」を選びなおした、
ひとりの元・悪役令嬢の再生と静かな愛の物語。
危害を加えられたので予定よりも早く婚約を白紙撤回できました
しゃーりん
恋愛
階段から突き落とされて、目が覚めるといろんな記憶を失っていたアンジェリーナ。
自分のことも誰のことも覚えていない。
王太子殿下の婚約者であったことも忘れ、結婚式は来年なのに殿下には恋人がいるという。
聞くところによると、婚約は白紙撤回が前提だった。
なぜアンジェリーナが危害を加えられたのかはわからないが、それにより予定よりも早く婚約を白紙撤回することになったというお話です。
記憶が戻ったのは婚約が解消された後でした。
しゃーりん
恋愛
王太子殿下と婚約している公爵令嬢ダイアナは目を覚ますと自分がどこにいるのかわからなかった。
眠る前と部屋の雰囲気が違ったからだ。
侍女とも話が噛み合わず、どうやら丸一年間の記憶がダイアナにはなかった。
ダイアナが記憶にないその一年の間に、王太子殿下との婚約は解消されており、別の男性と先日婚約したばかりだった。
彼が好きになったのは記憶のないダイアナであるため、ダイアナは婚約を解消しようとするお話です。
結婚して5年、冷たい夫に離縁を申し立てたらみんなに止められています。
真田どんぐり
恋愛
ー5年前、ストレイ伯爵家の美しい令嬢、アルヴィラ・ストレイはアレンベル侯爵家の侯爵、ダリウス・アレンベルと結婚してアルヴィラ・アレンベルへとなった。
親同士に決められた政略結婚だったが、アルヴィラは旦那様とちゃんと愛し合ってやっていこうと決意していたのに……。
そんな決意を打ち砕くかのように旦那様の態度はずっと冷たかった。
(しかも私にだけ!!)
社交界に行っても、使用人の前でもどんな時でも冷たい態度を取られた私は周りの噂の恰好の的。
最初こそ我慢していたが、ある日、偶然旦那様とその幼馴染の不倫疑惑を耳にする。
(((こんな仕打ち、あんまりよーー!!)))
旦那様の態度にとうとう耐えられなくなった私は、ついに離縁を決意したーーーー。
【完結】公爵令嬢は、婚約破棄をあっさり受け入れる
櫻井みこと
恋愛
突然、婚約破棄を言い渡された。
彼は社交辞令を真に受けて、自分が愛されていて、そのために私が必死に努力をしているのだと勘違いしていたらしい。
だから泣いて縋ると思っていたらしいですが、それはあり得ません。
私が王妃になるのは確定。その相手がたまたま、あなただった。それだけです。
またまた軽率に短編。
一話…マリエ視点
二話…婚約者視点
三話…子爵令嬢視点
四話…第二王子視点
五話…マリエ視点
六話…兄視点
※全六話で完結しました。馬鹿すぎる王子にご注意ください。
スピンオフ始めました。
「追放された聖女が隣国の腹黒公爵を頼ったら、国がなくなってしまいました」連載中!
夫は私を愛していないそうなので、遠慮なく離婚します。今さら引き止められても遅いです
藤原遊
恋愛
王妃付き護衛騎士である夫に、「お前を愛したことはない」と告げられた。
理由は単純。
愛などなくても、仕事に支障はないからだという。
──そうですか。
それなら、こちらも遠慮する必要はありませんね。
王妃の機嫌、侍女たちとの関係、贈り物の選定。
夫が「当然のように」こなしていたそれらは、すべて私が整えていたもの。
離婚後、少しずつ歯車は狂い始める。
気づいたときにはもう遅い。
積み上げてきた信用は、静かに崩れていく。
一方で私は、王妃のもとへ。
今さら引き止められても、遅いのです。
婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが
マリー
恋愛
寝食を忘れるほど研究にのめり込む婚約者に惹かれてかいがいしく食事の準備や仕事の手伝いをしていたのに、ある日帰ったら「母親みたいに世話を焼いてくるお前にはうんざりだ!荷物をまとめておいてやったから明日の朝一番で出て行け!」ですって?
まあ、癇癪を起こすのはいいですけれど(よくはない)あなたがまとめてうちの実家に郵送したっていうその荷物の中、送っちゃいけないもの入ってましたよ?
※またも小説の練習で書いてみました。よろしくお願いします。
※すみません、婚約破棄タグを使っていましたが、書いてるうちに内容にそぐわないことに気づいたのでちょっと変えました。果たして婚約破棄するのかしないのか?を楽しんでいただく話になりそうです。正当派の婚約破棄ものにはならないと思います。期待して読んでくださった方申し訳ございません。